読書まとめ「吃音のある子どもと家族の支援」

 夏休み自主研修の第3回。
 今回の本はこれ。

保護者の声に寄り添い、学ぶ 吃音のある子どもと家族の支援:暮らしから社会へつなげるために
 Amazonでは、書名は
「保護者の声に寄り添い、学ぶ 吃音のある子どもと家族の支援:暮らしから社会へつなげるために」
 になってる。長え。
 
 帯には「尾木ママ 尾木直樹氏推薦!」って書いてあって、推薦コメントが書いてあります。
 私は別に……それはどうでもいいけど……。
  
 前々回の「吃音の合理的配慮」と同様、周囲が行うべき配慮について書いた本……かな。
 
 以下、基本的に全て同書の内容のまとめ。
 

吃音の原因

 吃音は遺伝要因が8割と言われている。
 しかし、親族に吃音がないのに出るケースも珍しくはない。
 
 言い換えれば、環境要因が2割、ということになるが、「環境」とは「育児の不備」というわけではない。
 どんな環境刺激・後天的要因が原因で吃音が起きるのかは現状ではわかっていない。
 
 かつては「吃音の原因は親の愛情不足」などと言われた時代もあったが、実際にはそういう実態は見られないので、親が罪悪感を抱く必要はない。
 

吃音の進展

 多くの場合、吃音は幼児期に連発(「ぼぼぼぼくは……」の形)で始まる。
 その時点では、本人は自分が吃音であることに気づいていない。
 
 ところが、周囲から
「どうしてそんな話し方するの?」
「もう一度ゆっくり言ってごらん」
 などと言われるうち、「自分の話し方は周囲と違うようだ」ということに気づき、「吃らないようにしよう」という工夫をするようになる。
 
 その結果、「長く伸ばしてから続ければ『あ・あ・あ』ってならない」といった気づきを得て、言い方を変えることになる。(そして、また「どうしてあーって伸ばすの?」などと聞かれることになる)
 
 このようにして、連発→伸発→難発と、症状が変化していく(および、発話時に力む、腕を振ってタイミングを取るなどの随伴症状が出たり、発話意欲の低下や、対人恐怖などに繋がったりする)。
 これらは本人なりの苦しい工夫の結果で、一般には、最初の連発の状態が本人にとっては一番話しやすい。
(ただし、稀に最初から伸発などの形で吃音が出る例もある)
 
 つまり、症状が進展するというのは、本人が自分の吃音に気づいているということ。
 
 また、吃音には波がある(症状が出る時期と出ない時期が繰り返される)。
 これも何がきっかけになっているというものではない。
 

周囲の対応

 前提として、吃音そのものを抑えることは困難。
 本人が、自分に吃音があることに引け目を感じずに話せるようにすることが大切。
(周囲の環境作り・本人の気持ち)
 
 吃音は、ゆっくり言おうが落ち着いて言おうが出るものなので、「落ち着いてね」といった声かけは無意味。
 むしろ、「落ち着いてね」=「吃音が出ないようにね」=「吃音は良くないもの」という意味になるので好ましくない。
 
 吃音のトリガーになるのは、「相手・場所・時・内容」の4要素。
 多くの場合、独り言なら吃音は出ない。
 また、歌う時も一般に吃音は出ないが、合唱では出ないのに独唱(相手に伝えなければ、という意識を持った状況)では出る、などの例がある。(個人差がある)
 
「吃音が出ないように」と力むことが却って症状を悪化させることから、以前は「吃音の話題には触れないようにする。本人に意識させないようにするのがよい」という考え方もあった。
 しかし、本人が自分の吃音に気づいているのに「その話題に触れないように避ける」というのは、やはり「吃音はタブー(=恥ずかしいこと)である」という意識を持たせることになり好ましくない。
 たとえ今は気づいていなくても遠からず気づくので、「触れなければ意識しない」というものではない。
 

本人に伝えておくべきこと

「ぼく、あ・あ・あ、ってならなくなったよ」
 と報告されても「よかったね」と返すべきではない(吃音が出るのが「悪いこと」という価値付けになるから)。
 吃音には波があり、再発することが多いことを本人にも伝えておくと良い。
「また、すっと出にくいときがあるかも知れないけどそのままお話ししてね」
 のように。
 
 本人に伝えておく必要があるのは、
 
・話し方が吃音になっていること
・家族も(担任も)気づいていること
・吃音があってもよいのでたくさん話して欲しいこと
・吃音には波があること
・周りの人にもそれらのことを知っておいてもらう必要があること
 

学校などでの配慮

*授業の指導案的なものが載っているのだが詳細は割愛。
 実際の展開は学級の実態などによってだいぶ変わってくると思われる。(本書の中に保護者や教師、子どもの体験談が載っており、その中でもだいぶ千差万別なようなので)
 
 要点としては、
 
・吃音に原因は特にないこと。
・世の中の1%程度は吃音があること。
・吃音(特に連発)が出てもそのままゆっくり聞いてあげること。
・連発をそのまま出すのが本人にとって一番よいこと。
・そのまま出していると段々減っていくこと。(……と教えることになっているし、まあ自然治癒する人もいるけど、そうでない人もいるわけだよね?)
・真似などは決してしないこと。
 
 また、「個性である」「人によって得意不得意がある」といった扱いは避けること、と書いてある。
(テーマはあくまで吃音であり、それがぼけてしまうから、とのこと。ふーむ……)
 
 周囲のからかいが確認できてから周囲の理解を求めるのでは遅い。
 早めに周囲の意識を高めておくことが大切。
 

その他

 作戦会議をする、という話がある。
 模擬面接のようなもの。ソーシャルスキルレーニングというか。
 
「友達から、『なんでそんな話し方なの?』と尋ねられたらどう答えるか」
 あるいは保護者向けに、
「『安易にその話題に触れない方が良いのではないか』と言う担任にどう対応を求めていくか」
 など。
 
 また、吃音の「治療」について。
 流暢性形成法と吃音緩和法、そしてその統合法が存在する。
 いずれにせよ、吃音そのものを「治す」わけではなく、楽に発音できるように訓練するものであり、短期間で効果があるケースもあれば、長い時間が掛かることもある。
 吃音そのものの治療を目指して取り組んでいる医療者もいるが、やはり効果はあったりなかったりで、現状では「治療法」として確立されたものはない。
 
 あと、きょうだい児への対応とか、英検・就業などでの合理的配慮についても少し記述が。
 

感想

 学校や近親者が行うべき対応が具体的に書かれた本としてわかりやすかったです。
 また、上では割愛しましたが、保護者や教師、子ども自身の体験談が載っており、いずれも色々と悩みながら対応している様子がわかり、自分も真剣に対応していかねばならないと感じました。