プレコグニション(予見)

 NHK for Schoolには授業でお世話になっています。
 特に、特別支援向け番組の「ストレッチマン」シリーズ。
edu.web.nhk
 
 番組の構成は、毎回ほぼ決まっています。
(ある程度ワンパターンな方が、見る子どもも安心するんだと思います)
 
「ストレッチマン・ゴールド」では、10分間の番組の最初に、生活スキル(消しゴムの使い方だとか、内科検診の受け方だとか)を学びます。
そして、子どもを襲う怪人を撃退した後、番組の最後に「みんなで遊ぼう!」のコーナーがあって、身体を動かす遊びが紹介されます。(最初に学んだ生活スキルに関連していることが多い)
 
「遊び」では、しばしば紙コップを使ったりボールを使ったりします。
*1
 
 番組内で遊んでいる様子を見ると、見ていた子どもたちもやる気が高まり、そのまま同じ活動にスムーズに導入することができます。
 
 そんなある日。
 
 この日は、「ひもを結ぼう」の回を見ました。
 最後のコーナーは、縛ったタオルを使った的当て。

 
「おわり」のテロップが出るやいなや、子どもたちは、
A児「先生、あれやりたいやりたい!」
私「あらー、そうですかー。実はここに、タオルがたくさん用意してあってですねえ……」
B児「やったー!」
 
 すると、2年生のC児が不思議そうに、
「先生、タオル使うの知ってたの?」
 
 不思議ですねえ……。
 

*1:画像は全て上記リンク先の動画から。

読んだ本

 夏休みなので本を読んでます。図書館ってすごい。
 
1:びりっかすの神様
びりっかすの神さま
 児童文学の古典的名作、らしい。
 
 タイトルにある「神様」というのは、むしろ「妖精」といった方が近い、小人のような存在です。
 表紙に載っている、くたびれたおっさんに羽根が生えた生き物(?)がそれです。
 
 この半透明の小さなおっさんは、テストなどでビリをとった子にだけ見えるのです(転校生である主人公が最初にその存在に気付く)。
「神様」を見た子は、彼と心の中で話をすることができます。
 そして、「神様」を見た子同士も、同じようにテレパシーで会話できるようになる……というのがお話のキモ。
 
 一方、子ども達のテレパシーの輪から一人蚊帳の外に置かれる学級担任なんですが、この人が問題があって……。
 何かにつけて小テストを実施しては、その得点順の座席に子どもを座らせる、という学級経営。
 
 それ、今だと人権問題とかになりそう。(本作は1988年初版発行)
 
 巻末の解説でも「嫌らしい教師」と書かれてるので、昭和でもそんな教師普通はいなかった……と思うんですけど。
 でも、「滝山コミューン一九七四」を読んだ後だと、どんな無茶な教育実践も「こんな教師実在しないよ」とは言えなくなる……。
 
 成績順の座席もダメなんですけど、一番ダメだと思ったのは、成績順でビリになった子が周囲からからかわれているのに、それをちゃんと止めないこと。
「そりゃ、いじめだ」
 って、形だけ声はかけるけど、厳しく指導するとかじゃなくて口先だけなんですよね。
 それはいじめを容認しているも同然なわけで。
 
 この先生のダメな部分が端的に描写されている場面だと思いました。
 
 ともあれ。
 最初は「神様」を見て、話し合っていたのは主人公1人だけですが、それがやがて2人になり5人になり……と増えることで、学級内にテレパシーで会話できる子が増え、子ども同士が連帯していきます。
 
 ファンタジーではありますが、「神様」自身は何の神通力もなく、子ども達に助力もしてくれない(物言いもちょっとくたびれている)、というのが、今見るとちょっと斬新。
 むしろ、「テレパシーが普及すると社会はどうなるか」という、ちょっとしたSFのようでもあります。
 なるほど名作でした。
 
2:高校生からわかるマクロ・ミクロ経済学
高校生からわかるマクロ・ミクロ経済学
 高校生にもわかるらしいけど私にはまだ十分理解できた気がしない……。
 
 とりあえず、「貿易赤字は減らさねばならない」というのは間違いだ、というのはわかった、と思います。
 それから、「財政再建しないと国債が暴落してハイパーインフレに!」……的な主張は煽りすぎだ……としつつも、そうならないのは国債が国内で消化できている(買っているのは日本の銀行であり、つまり日本人の預金)からで、国債が増え続けて国内で消化できなくなるとその限りでないので、やっぱり財政収支の黒字化と税と社会保障の一体改革は必要(消費増税含む)、というのが筆者の立場でした。
 初版発行が2013年なので、アベノミクスで異次元緩和が始まった頃の本ですね。
 アベノミクス以後の世界、トランプ関税とかをどう評価するかも読んでみたいところです。
 
3:アート・オブ・スペンディングマネー
アート・オブ・スペンディングマネー: 1度きりの人生で「お金」をどう使うべきか?
「不幸なお金持ちもいるし、貧しくても幸せな人もいるよね?」
 という、言ってしまえば意識高い系の本。
 でも面白かったです。
 
・見せびらかすために金を使うのはやめとけ。本当にその車が好きなら高い車を買ってもいいが、他人を感心させるために買うならやめとけ。効果は長続きしないし、次はもっと高い車を買わなきゃならなくなる。
・思い出は年月が経つにつれてどんどん価値が高まる資産なので、思い出作りは大切にしろ。ただ、必ずしもカネがないと思い出が作れないわけではない。
・たまに贅沢するから幸せな気持ちになるので、毎日贅沢したら退屈なだけ。「チートデイ」を決めること。
・貯蓄は我慢ではない。自立を買うことである。
 
 一番心に残ったのは、「自分の死亡記事を考えろ」でした。
 日本だと「あなたの理想の弔辞を考えよう」とかになるのかしら。
 
 自分が死んだとき、どんな人として記憶されたいか? と考えたとき、豪邸とかブランドの服とかは候補ですらなく、身近な人たちから人としてどう思われていたかが最優先ではないのか? という話。
 私がどんな人として記憶されたいかというと……。
 
 いやまあ、気恥ずかしいのでここに書くのはやめておきましょう。
 皆様の理想の弔辞はどんなものでしょうか。

君は、生き延びることができるか。

 夏休み前に、1年生にもギガ端末が配布されました。*1
 
 私のクラスのS君も、ICT支援員さんに使い方を教わりました。
 
 そして翌日。
 
S君「ぼく、おうちで、パパに
『タブレットの使い方全部わかった』
 って言った」
私「おおー。それは頼もしいねえ」
S君「そしたらパパが
『パパは歳を取ったから、もう新しいこと何も覚えられない』
 って言ってた」
私「はっはっは」
S君「もうガンダムのことしかわかんないって」
 
 ガンダムはわかるんだ……。
 
*2
邦画プレゼン女子高生 邦キチ! 映子さん Season13 (マーガレットコミックスDIGITAL)
 
 ……とはいえ、気がついたら、ほとんどの保護者は私より一回りくらい歳下なんですよね……。
 はっはっは。
 

*1:端末自体は、前年度のうちに用意してありましたが、何しろ1年生は学校生活について覚えなきゃいけないことが山盛りなので、PCの使い方の指導とかはそれらが一段落した後になるのです。

*2:画像は、「邦画プレゼン女子高生 邦キチ! 映子さん」Season13/6本目 機動戦士Gundam GQuuuuuuX -Beginning-(前編)より。
なお、このブログはアフィリエイトを導入していないため、下のリンク先から購入しても私には一文も入りません。安心して購入してください。

うたかた。

 小学校で初めて液体のりを使ったらしいA君。
 
 のりの容器を手に、砂時計のごとく何度もひっくり返ししながら、
「先生、この丸いのなあに?」

「それは空気。中に入った空気が、そういう風に見えるんだよ」
「ふうん……」
 
 それからしばらく経って。
 
 またA君、のりの容器をためつすがめつしながら、
「ずっと使ってるのに、この丸いのぜんぜんなくなんないね」
「いや、それなくならないよ? 逆だよ?」
「えー?」

七夕な季。

S児「せんせー、今日のぱたぱたたき、楽しかった!」
私「うん、たなばた、飾りを作るの楽しかったね」
S児「ぱなばたたき、またやりたい!」
私「たなばた、本番は7月だからね」
S児「たなばたなき?」
私「たなばた」
S児「ぱたばたなき!」
 
 何が楽しかったか、おうちの方には伝わったでしょうか。
 

笹の葉さらさら、星は光り。

 教室に、七夕の壁面飾りを作りました。
 
 子ども達にも、短冊と七夕飾りを作ってもらいました。
 こんなの。
www.youtube.com
 子ども達はたいへん楽しんで作っていました。
 
A児「かざり作るのたのしかった! もっと作りたい!」
私「いいね。いっぱい作ってね」
B児「ぼく、サンタさんも作る!」
私「それはちょっと違うやつ」
 

地上の星(ローカル大スター)。

 実は、今年度から隣の町に異動しています。
 
 異動して驚いたことのひとつは、この町には、今まで存在すら知らなかったご当地シンガーソングライター(仮に「タナカジロー」さんとします)がいたことです。
 
 全然知らない人だったのですが、当地の小学生の間では、大スターの扱いを受けています。
 
 というのも、本校では、給食の時間、週1ペースで「タナカジローさんの日」があって、食事中にその歌がフルで流れるので、ジローさんは全校生が知っている「有名人」なのです。
 
 それで、非常にもやもやするのは、その二郎さんが、時たま地元新聞の記者などに伴われて本校にやって来て、体育館でライブをやることです。
 昼休み~清掃の時間とか、午前中の休み時間~3校時前半とかを充てることが多いようです。
 
 ジローさんの体育館ライブのお陰で、子どもたちはタダで生演奏を体験できて、記者は
「地元の小学生と熱唱するタナカジローさん」
 みたいな記事が書けて、二郎さんはタダで宣伝になる。
 
 Win-Win-Winの関係です……と言いたいところなんですが。
 
 それは、「生演奏」の質が良ければの話。
 
 私は音楽のことはよくわかりませんが……正直……大した歌ではないと思います。
 実際、町外では全然知られてないわけだし。*1
 
 曲はフォーク調。しかしなにしろ詞が凡庸です。
 
 ご当地PRソングや特産品のPRソングは言うに及ばず、家族愛とか反差別とかをテーマにした歌もあって、これがまたどうにもならない内容。
 
 学校で働いていると、子どもが考えた、箸にも棒にもかからない短歌や俳句を見る機会が度々あります。
 
 特に、例えば「差別撲滅標語」みたいなのになると、
 
「こまったら 助け合おうね だれとでも」
「いつだって 差別はしない おやくそく」
「手をつなぎ 明るい未来 作ろうよ」
 
 みたいな、何の当事者性も切実さもないうすっぺらい「作品」を山ほど読むことになります。
 
 しかし、これはまあ仕方のないことです。
 何しろ、子ども達には、短歌や俳句や標語を作りたい、という切実な思いがそもそもないし、題材にするような経験もありません。
 そんな中、短時間で作品をひねり出そうとしているのですから、名作が生まれるはずがありません。
 だから、それは子ども達の責任ではなく、教師の指導に問題があるのです。
 
 しかし、ひるがえってジローさんはどうか。
 
 いやしくもプロでありながら、子どもが45分で書いた空疎な家族愛・反差別作文にただリズムをつけただけ、みたいな歌をリリースしているのは、シンガーソングライターとしてどうなのか。
 
 いやまあ……別に、世の中、レベルの低いシンガーが何人いたっていいんですけど、それが学校の時間に割り込んでくるとなると、
「そこに本当に子ども達の時間を割くだけの教育効果があるのか?」
 ということは考えなきゃならないんじゃないかなあ、と思ってしまいます。
 
 なにぶん、いわば「地元の名士」みたいになっているし、郷土愛的な観点からもお断りしづらいとは思うのですが、それだけに。
 
 少なくとも、給食の時間に流すのはせいぜい月1回くらいでいいんじゃないの、と、思っています。
 
 しかし、改めて考えると。
 
 田中二郎さんは、当地の出身ではない、いわゆるJターンの人です。
 
 都内の会社を退職して地方に移住した後、シンガーソングライターとしてデビュー。
 全国的には知名度が皆無だとしても、身の回りでは有名人扱いされ、登場すれば子ども達から歓声が上がる環境……というのは、ご本人にとっては人生大成功なのかも知れないな、と思います。
 たとえ、全国はおろか隣町でも知名度が皆無だとしても。
 
 そしてまた、ずいぶん前にこんな記事を書きました。
filinion.hatenablog.com
 前にいた市でも、ご当地ジュニアアイドルユニットが存在したのです。
 これまた、市外では全然存在を知られていないユニットが。*2
 
 そう考えると、こういう、「地元のスーパーアーティスト」みたいな人は、地元の外に知られていないだけで、全国にいっぱいいるのかも知れないな……と思わされます。
 
 まあ、子ども達に迷惑がかからないなら、好きなだけ活動していただいていいと思うのですが。
 

*1:なんかよく知らないコンテストでグランプリを獲ったらしいのですがよく知りません。

*2: ちなみに、記事中で触れたユニット、「ラブリーエンジェル(仮名)」ですが、記事を書いた数年後に、プロデューサーを務めていた公民館の人が心臓発作で急逝。
 以後は活動を縮小、新人の募集も停止し、「卒業ライブ」を経て現在はユニットは解散しています。
 公民館職員さんの葬儀にはユニットのメンバーが駆けつけて大泣きしていたとのことで……まあ……ご本人にとってはある意味本望だったかも知れません。