自治体のマイナンバーカード業務の何が大変か。

 ウチの奥さんは市役所に勤めています。
 現在、市民生活課でマイナンバーカード業務を担当しています。
 これが非常に複雑怪奇な業務だというのでその片鱗を聞いた話。
(以下は妻の話に基づいていますが、メモを取りながら聞いたわけではないので、内容に誤りがあったらそれは私の責任です)

システムが大変。

妻「まず第一に、マイナンバーカード業務で使うシステムは決まってるんだけど、これがすごく使いづらい。
 ぱっと見1つのシステムに見えるんだけど、実はデジタル庁が作ったシステムとJ-LIS(ジェイリス。地方公共団体情報システム機構)が作ったシステムが無理矢理一つの画面に収まってるだけでね」
私「統合したフリをしてるだけのみずほ銀行」
妻「だから、こっちで入力した後ログアウトしてまたログイン、みたいなことがめちゃくちゃある。
 それに、片方のシステムだけでも、
『あれ? さっき入力したデータこっちに反映されないの?』
 みたいなことが本当に多くて。
 ……前に、マイナンバーカードの暗証番号をリセットするアプリを使って、『使いづらい』ってキレてたよね?」
私「あれな……『スマホでできる』っていうからやったけど、使いづらくて地獄かと思った」
妻「あれ作ったのがJ-LIS」
play.google.com
私「マジか……」
 
 このアプリの使いづらいポイントは無数にあり、ユーザーレビューでも皆さん口々に言っているのですが……。
 まず、生年月日の入力が「昭和1年01月01日」から始まるプルダウンメニューで、自分の生年月日までずーーーーーーーっとスクロールしないとならない。
 セキュリティコードの入力にはテンキーが使えます。
 さすがに「0000」からスクロールさせるのは現実的でないと気付いた模様。
 
 それから、私がひっかかったトラップは、マイナンバーカードを読み込ませるとき、「ICカードをセットしてください」という画面になったときにセットしてはいけない、というものでした。

 実際には、その次の次の画面に遷移したところで読み込ませる必要があり、さもないとエラーになります。
 
 それも、
「ICカードの読み込みに失敗しました」
 とかのメッセージが出るのではありません。
 ちゃんと読み込みに成功した電子音が鳴るのに、その後の
「通信中です(この処理には数分かかる場合があります)」
 で実際に数分待たされた上、
「通信がタイムアウトしました。最初からやり直してください」
 になるという、ユーザーには原因のわからない形でエラーが出るのです。
 
 そしてもう一度昭和元年からスクロールしないとならない。
 
 あとは、スマホで顔認証する必要があります。
 眼鏡をかけてはいけません。
 
 これがただの自撮りではなく、画面に「右を向いてください」「片目を閉じてください」とか表示されるので、その指示に従う必要があります。
 
 ところが、この字が小さくて、眼鏡を掛けないと読めない。
 そして、読むために顔を近づけたりすると、その瞬間に不正と判定されて認証が失敗。
 また「昭和元年」からやり直しになります。
 
 眼鏡のおかげで支障なく日常生活を送れているけれど、本来は近眼も身体障害であり、私も身体障害者だったのだ、と、バリアフリーの大切さに改めて気付かせてくれる、素晴らしい配慮と言えるでしょう。
 
 不正に厳しい割に顔認証の精度は低く、怨嗟の声にあふれるユーザーレビューの中で
「部屋を明るくし白い壁を背にするといい」
 などの攻略情報がやりとりされているのが熱い。
 
私「……あのアプリ作ったところが、行政用システムの半分を作ってるの……?」
妻「暗証番号が絡むところはJ-LISの担当」
私「もう二度とあんなアプリ使うものか、と思ったし、奥様も『これは、市民に『スマホでできますよ』とか案内しない方がいいねえ』って言ってたけど……」
妻「そこのシステムを毎日使っています。
 私はもう慣れたけど、初めて触る職員はわけわかんないと思うし、私も、通常の発行業務とかならともかく、レアケースが発生するとわりと混乱する」
 

制度が大変。

妻「マイナンバーカード、とにかくいろんなものと連携してるから、関係省庁が『こういう制度になってまーす』ってドキュメントをドカドカ送ってくるわけ。
 それがいちいち膨大な量でさあ……」
私「マニュアルの山」
妻「マニュアル、ではないんだよね……。
 『AはBとします』『CはBとすることができます』『DはEまたはFであるとき……』みたいな文面が延々と連なってるの。
 具体的に自治体に何をどう処理させたいかが書かれているわけではないから、こっちはそれを読み解いて、具体的な手続きの手順に落とし込まないといけないわけ」
私「逆・手続き型生成」
妻「もうわけがわかんなーい、って時、係長が
 『そうだ、省庁の市民向けサイトを見よう』
 って言って、サイトを見たら、そっちはさすがに一般向けだからある程度わかりやすく手続きの手順が書いてあったりする」
私「市民が市民向けサイトを見るとき、市役所もまた市民向けサイトを見ているのだ」
妻「でも、肝心なところが
 『詳しくは自治体の窓口にお問い合わせください』
 とか書いてあって、いやこっちもわかんないんですけど! ってなることもある」
私「そして誰もわからなくなった」
妻「あと、マイナンバーカード周りはとにかく制度変更が頻繁。
 で、制度改正があるたびにまた膨大な文書が送られてくる。
 それで、制度がどうなってるのかよくわからなくて、省庁から来た通達を確認する時、当然最新版を確認するんだけど、するとそういう時に限って
『以前の通達の通り』
 とか書いてあって、どれだよ! ってなる。
 それに、省庁の人だって、自分とこのマイナンバー関連業務はたぶん把握してるんだろうけど、他の省庁のことは全然知らないものね。
 それが自治体には全部来る。
 マイナンバー制度の全貌を把握してる人は誰もいないんじゃないかなあ……」
私「人間の能力を超えている感がすごい」
妻「それこそAIになんとかして欲しいよね……」
私「ミスが許されない業務にAIは向かない気がする……」
妻「それに、ウチでは、内規的な文書はAIに読ませてはいけない内規になってるんだよね」
 

上が大変。

妻「関係する各省庁から、
『ある自治体でこういうミスがありました』
 みたいな注意喚起がちょくちょく送られてくるんだけど、それが自治体職員をバカにしてる感じが端々から伝わってくるんだよねえ……。
『あのさあ、市民からこういう苦情が来てるんだけど、困るんだよねー。
 お前らバカだから読めないんだろうけど、ちゃんと規則にこう書いてあるだろ? な? 書いてあるよな?
 ちゃんとその通りにやってくんないと困るんだよ。
 ほら、お前らにもわかりやすいように注意喚起の文書書いてやったからな?』
 って感じで」
私「複雑なシステムだし、全国で見れば時にはミスもあるよねえ」
妻「それもあるし、そもそも制度が無理難題な場合も多くて。
 例えば、
『長期出張者は代理人がマイナンバーカードを受け取れることになっている。
 にもかかわらずに窓口で断られた、という苦情が何件も来ている。
 できることになってるんだからお前らちゃんとやれ。ちゃんと規則を読め』
 とか言われるんだけど、長期出張者の代理人が受け取るには、代理人が、
 
・本人のマイナンバーカードの交付通知書
・会社からの辞令
・身分証明書(最低2点。うち1点は顔写真付き)
 
 を持ってくることが必要なのよ。
 辞令の時点でハードル高いんだけど、顔写真付きの身分証なんて、大抵は運転免許証しかないし、免許証は出張してる本人が使ってることが多くて、代理人に預けられないでしょ?
 だから、代理人が窓口まで来たけど身分証がなくてお断りせざるを得ない、ってことが大半なんだよね。それが苦情になってるんじゃないかと思う。
 でもそれは自治体窓口が悪いのか? っていうさあ……。
 
 あと、
『自分の居住する自治体では、事前に予約しないと手続きできないことになっており不便だ、という苦情が何件も来ている。
 国民の利便性を向上させるのがマイナンバーカードだ。予約なしでもちゃんとやれ』
 みたいな『注意喚起』も来るんだけどさあ……。
 だったら予算と人員をくれ!
 ウチは予約制じゃないけど、どうしてそういう自治体がわざわざ予約制にしてるのか、考えてみて欲しいよね」
私「一件一件の手続きが煩雑で時間がかかるのも、受け入れを絞らざるを得ない一因だよね」
妻「大きな自治体の中には、市内各所に『マイナンバーセンター』みたいなのがあって、交付とか更新みたいなよくあるケースはそこで扱って、国外転出とか特急発行みたいな特殊な手続きは本庁で、みたいにしてるところもあるみたい。
 それなら、比較的簡単だけど数が多い手続きはセンターに任せて、本庁はややこしい事例だけに集中できるよね。
 でも、ウチは全部一つの窓口でやってるからねえ……」
 

とにかく大変。

私「ややこしい事例、って例えば」
妻「例えば……特定在留カード。
 これは要するに在留カードがマイナンバーカードと一体化したやつなんだけど、『外国人からは金を取ろう』って考えた人がいたらしくて、手続きに手数料が必要だったの。
 しかもこれが、例えば同じ受け取りでも、『窓口で受け取る場合は270円』『発送の場合は290円』とか、ケースごとに金額がチマチマ違うわけ」
私「うわあ」
妻「その上、その手数料が、入管庁にいくら、J-LISにいくら、って決まってて、両方に分けて納付する必要があるの」
私「うわあ」
妻「しかもその上、入管庁は
『ウチは現金は扱ってません。収入印紙で納付してください』
 J-LISは
『ウチは収入印紙は扱ってません。現金で納付してください』
 とか言うの!」
私「1つの事務の手数料なのに両方必要?」
妻「だから、窓口に来た外国人に、
『郵便局で何百何十円分の収入印紙を買ってきてください』
 とか伝えないといけない。
 日本語が不自由な中国人とかベトナム人とかに」
私「数百円のために現場の負担がすごい」
妻「で、その関連の要項が改正に改正を重ねて今第5版になったんだけど、版を重ねるごとに無料の範囲が増えて、第5版でとうとう全部無料になりました」
私「よかった」
妻「でも、遡って全てが無料になるわけではなくて。
 わざわざ県から注意喚起が来たんだけど、
『無料になるのは10月1日以降の申請についてです。
 交付が10月1日以降であっても、申請がそれ以前である場合は、申請日の規定が有効になります』
 って」
私「……つまり、第5版が出たことでその前の版が無効になるわけではなく……」
妻「そう。1~4版は依然として有効だから、手続きの種類によって手数料の金額が変わるだけでなく、同じ手続きでも申請の期日によって変わる。
 最初から全部無料にしておけばこんなことにならなかったのに……」
私「Papers, Pleaseより酷い」
 
「Papers, Please」は、毎日法令が変わって手続きが複雑になるゲームでしたけど、それでも有効なのは常に「今日の規則」であって、「前の日付の規則を参照しろ」とは言われませんでしたからね……。
 
妻「で、もうこれは特定在留カードまわりのぐちゃぐちゃのほんの一部だし、しかも特定在留カードなんてマイナンバーカードの制度のごくごく一部だからね」
私「氷山の一角のそのまた一角が地獄」
 

皆さんにアドバイス。

妻「現在、とにかくいろんなものがどんどんマイナンバーカードに統一されていますが、運転免許証との一体化などは、当面控えた方がよいと思います。
 
 というのも、現在の規定では、例えばマイナンバーカードを紛失した際の再発行には、身分証明書2点、もしくは顔写真付きの身分証明書が必要なんですね。
 ところが、身分証といっても、保険証はすでにマイナンバーカードと統一している方が多いでしょうし、顔写真付きの身分証は運転免許証しかない方も多いと思います。
 
 だから、万一、運転免許証と一体化したマイナンバーカードを紛失してしまうと、再発行に必要な身分証明書が揃えられない、という事態に陥る可能性があります。
(それに、身分証明書が複数必要なのは紛失時の再発行に限りません)
 
 もっとも、必要な身分証の種類も、しばしば規則が改定され、少しずつ基準が緩められてはいるのですが、それでも、現状では
『身分証を再発行するための身分証がない』
 といった事態は起こりえますので、あまりなんでもかんでも一体化するのは当面は控えた方が安全だと思います」
 
 ともあれ。
 妻の話を聞いて、国民の利便性、行政手続きの簡素化ということなら、縦割り行政をそのまま現場窓口にぶち込むのはやめた方がいいんじゃないかなあ、各自治体がそれぞれに試行錯誤するのはムダだから、デジタル庁がいったん引き受けて一本化してから自治体に投げてくれないもんかなあ、などと思ったことでした。

コンタミ癖。

 休み明けです。
 
 昼休み、2年生のA君が、
「お外に遊びに行くのに赤白ぼうしがない!」
 と、あちこち探しています。
 
A「……あっ、もしかして……あったー! ママ、いつもここにしまうクセがあるんだよな-」
 
「クセ」って。
 
私「お母さんのせいにしないで、自分で持ち物の用意をするといいと思うよ」
 
 するとそばで聞いていたB君が、
B「ぼくは自分で入れて持ってきたよ!」
私「えらいなあ。どこに入れてきたの?」
B「給食着の中」
アプロンアパレル 給食袋(名札付き) 白・フリー(34cm×28cm) 393-32AP(キャッチ)Catch 遮熱 赤白帽子 903035 レッド L
 
 洗濯してあるとはいえ、給食着と赤白帽子を一緒にするのは……どうなんでしょう。
 体育着袋の方がよかったんじゃないかしら。
 
私「そういえば、A君のお母さんは、赤白帽子どこに入れてくれてたの?」
A「給食着の中!」
 
 ……そういうもの?

読んだ本:中世ヨーロッパ ファクトとフィクション

中世ヨーロッパ: ファクトとフィクション
 中世ヨーロッパについて一般に流布しているイメージの数々が、史実とは異なる、ということを指摘し、様々な一次史料から中世の実状を解説する本。
 
「言われてるほど悪くないよ」
 という話です。
 
 一番驚いたのは、いわゆる「ペスト医師」の話。
ペスト医師 疫病 ペストドクター コスプレ 衣装 中世期風 ペストDoctor 鳥人間 ホラー 怖い ハロウィン 仮装 コスチューム ローブ 鳥嘴仮面 マスク パーティー カーニバル 学園祭 文化祭 イベント 大人用 黒 (M)
 あのくちばしみたいなマスク、現存する最古の図像・現物は、いずれも17世紀に作られたもので、実際に中世(5世紀~15世紀)に使われていたという証拠はないのだとか。
 中世の史料には「医師はマスクをせよ」とは書いてあるものの、あんな形状を示唆するものではないと。
 現代の医者だってマスクはしますよね……。
 
 もちろん、中世の医療は確かに未熟で、四体液説のような誤った前提に依拠していました。
 しかし、それでも、患者やその持ち物と接触することで感染が広がる、という事実は認識されており、環境を清潔に保ったり、他者との接触を避けたり、という予防法が実践されていたとのこと。
 
 割と知ってた話としては、
「苛烈な魔女狩りはルネサンス期~近世に行われた。その始まりは中世末期に重なるが、千年間の中世全体で行われたわけではない」
 もちろん中世の庶民は魔術や魔女の実在を信じていましたが、教会はむしろそれを否定していました。
 魔女を名乗ったり、そこに助けを求めたりすると贖罪を求められましたが、それは「自称魔女は詐欺師だから」という立場で、決して「悪魔と契約した魔女が実在するから」ではなく、罰も火炙りとかではなかった。
 
「中世の人は地球が丸いと知っていた」
 コロンブスが支持されなかったのは地球平面説が原因ではなく、地球を小さく見積もりすぎていたのが原因……というのはアシモフも書いていました。
 しかし、トマス・アクィナスの「神学大全」(1274年)にも、地球が丸いことを前提とした記述がある、というのはちょっと驚きました。
 
 著者の主張するところでは、中世が、暴力と圧政、貧困、不潔、迷信と反知性主義……といったものに彩られた、いわゆる「暗黒時代」であった、というイメージは、ルネサンス以降の、プロテスタント、啓蒙主義の人々が、
「教会による千年間の支配はおぞましいものだった。だからそこからの解放は正しい」
 と、自己の正当性を強調するために事実を歪曲したものでした。
 
 さらに、アメリカにおける「中世ヨーロッパ」像は、「旧大陸の後進性」という、優越感やエキゾチズムに基づいてさらに拡大されている、といいます。
 
 そして、「指輪物語」や「ゲーム・オブ・スローンズ」といった「ファンタジー」諸作品が、今なおそのイメージを強化し続けている、と。
「ゼルダの伝説」みたいな日本の作品も時たま名前が挙がるのが面白いです。
(著者はカナダの歴史学者) 
 
 また、主にアメリカにおけるイメージが議論の中心になるので、日本でのイメージ(いわゆる「ナーロッパ」)とのズレも感じられてそこも興味深いです。
 
「馬に乗った騎士同士の戦いは、戦争で重要ではなかった」
 とか。
 
 どうも、向こうでは、馬上の騎士同士の一騎打ちが戦争の帰趨を決する、みたいな描写が多いらしいのです。
 そしてそのイメージは、中世の騎士たち自身によって創作されたものだと。
 日本で言うと軍記物語みたいなものでしょうか。
 
 実際に戦争で主力になったのは歩兵と弓兵だった……というのですが、まあ、そりゃそうですよねえ……。
 
 っていうか、日本の作品だと、そもそも「騎士」が騎乗してないことが多い気がしますが。
 板金鎧は着てるけど、ランス(騎槍)は持ってないし、封建制とかも関係ない、よく考えると騎士というより常備軍の専業軍人(重装歩兵)なのでは? みたいな。
 
 そのほか、「子ども十字軍」「女教皇ヨハンナ」とかも、日本では馴染みの薄い迷信のように思います。
(馬に乗ろうとしたときに偶然お産が始まるとかあり得ないだろ……)
 
 っていうか、日本における「中世ヨーロッパ」観は、むしろアメリカと逆で、清潔で治安も(まあまあ)良く、情報通信が円滑で、中央政府の統治が地方まで行き届き、大抵のケガや病気は魔法やポーションで治る(貧しくて医療を受けられない病人はいるが、伝染病で都市住民が身分の別なくバタバタ死んだりはしない)……という感じのような。
 全国組織(時には超国家組織)としての「冒険者ギルド」とか、その典型的な表れなわけで。
 
 中世ヨーロッパについて新たなことを知れたのに加え、そういう、日本と欧米のイメージの違いを感じられるのも面白い本でした。
 

たのしいハロウィン工作。

 たまには教材開発のこととか書いて教育界に貢献しよう。(大げさ)
 
 先日、授業で「ハロウィンのかざりを作ろう」と題して、こんなものを作りました。
 
 左側のネコの目に注目してください。

 
 仕組みは簡単です。
 実は目の所に穴があいていて、裏に貼った紙皿に黒目が書いてあるのです。

 斜めから見るとよくわかる。
 
 といっても、これは担任が作った試作品です。
 子どもたちは、ちぎり絵でカボチャのおばけやらシーツのおばけやらを作りました。
 
 完成した作品たちを黒板に貼ると、視線が集まってなかなかの壮観。
 
 1年生のS君、黒板に並んだみんなの作品の前を、反復横跳びのごとく左右に行ったり来たりしています。
 
S「せんせー! みんなこっち見てるよ!」
私「そうだねえ、不思議だねえ」
S「みんな僕のこと好きなのかな!?」
 
 ポジティブだな!!
 
私「そうだねえ、そうかも知れないね」
 
 その前向きさを失わないで欲しい。
 



 
 今回の工作はこちらのサイトを参考にしました。
45mix.net
 似たような工作もネットにはいろいろあるので、「教材開発」と言うほどのものではありませんが……。
 トイレットペーパーの芯を使うとか、段ボールで絵を二重にするとかいう方法が紹介されている中、紙皿を使うと大きな作品が楽にできる、というのが新規性でしょうか。
 
 紙皿にもいろいろありますが、普通の画用紙のサイズの絵なら、一番浅いので充分だと思います。
 深い皿を使うと目の動きが大きくなりますが、すると動きすぎて目が合わなくなってしまうのです。
 

こんな感じに。*1
 
 ちなみに、同じ仕組みは、東京ディズニーランドの「ホーンテッドマンション」でも使われているそうです。
【解明】ホーンテッドマンションの仕組み11選!天井の首つり・廊下・伸びる絵はどうなってる?
 
 簡単に作れますので、どうぞおうちでもお子様とお試しください。

*1:画像はhttps://charat.me/kawaii2/create/で作成したものを加工しています。絵心がなくて各方面に申し訳ない。

ペアルック(トリオルック?)

 1年生のS君、朝登校してくると私に尋ねました。
 
S「先生、この服、なんのかっこだと思う?」

 黄色いTシャツにデニムの半ズボン。
 特に何かのキャラクターグッズではありません。
 
私「上が黄色で下がデニム……。わかった! ミニオンズでしょ!」
ミニオン めちゃウケフレンド ボブ
 
S「ちーがーうーよ! ウッディだよ! トイストーリーの!」
タカラトミー(TAKARA TOMY) トイ・ストーリー リアルサイズトーキングフィギュア ウッディ
 
 すまんS君……君の雰囲気があまりにもミニオン寄りなので……。

最近の動画生成AIほんとすごい。(MiniMax H3)

 驚き屋とか言われるかも知れないけど、本当に驚いたので。
 
 まず、こんなポンチ絵を描きます。

 
 それをスマホで撮って、動画生成AIに放り込んで、プロンプトを渡すと……

 
 待つこと数分、こんな動画ができます。

 
 マジか。
 
 ここに載せたのはアニメGIFだから無音ですけど、実際に生成されたmp4では、
「カツッ(棒が地面に当たる音)」
「ポヨン(スライムが跳ねる音)」
「ドテッ(倒れる音)」
 などの効果音がちゃんと入っています。
(BGMも入れてくれる…んだけど、尻切れトンボになりがちなので、入れないようにプロンプトで指示)
 
 振った棒がしなるところや、スライムのぽよんぽよんした感じもばっちり……むしろ、1フレーム目(つまり私が描いた絵)が一番雑。
 
 これ、子どもの描いた絵なんかもアニメにできるってことですよね……。
 ローカルでこれができるとは。
 
 動画生成AI、しばらく前にも試したことがあるんですが、その時は、生成に時間がかかる上に、内容もけっこう破綻しがち(どこまでが人物でどこまでが背景なのかを間違えるとか)だったので敬遠していました。
 それがずいぶん使いやすくなって、本当に、ドラえもんの「アニメーカー」がもうすぐそこに見えます。
 
 しかし何しろ驚いた……というか拍子抜けしたのは、導入がとても簡単だったこと。
 
 ComfyUIは過去にも使っていたのですが、改めてインストールし直したら、以前は必要だった、
「このサイトからこのファイルをダウンロードして、ここにこういう名前のフォルダを作って、あっちからダウンロードしたファイルを展開して、出てきたこういう名前のファイルをこのフォルダに入れて、このファイルを開いて何行目のこの部分を書き換えて……」
 みたいな作業はほとんど不要になっていました。
 
 もう本当に普通のフリーソフトだこれ。
 
 プロンプトはわりあい長い英文で、効果的な指示の仕方も決まっているようですが、それはChatGPTに書いてもらいました。

 動画生成AI(MiniMax H3)で動画を生成します。添付の画像を元に、 動画のプロンプトを英語で作成してください。
 以下のサイトを参考にし、プロンプトを構造化してください。
(画像を元に動画を生成するので、I2VA形式になります)
https://domoai.app/ja/blog/minimax-h3-prompt-guide
動画の内容は以下の通りです。
 
 棒人間が動くモノクロのアニメーション。 少年が、持っていた棒を両手に持ち替え、スライムに殴りかかる。 スライムは後ろに跳ねてそれを避け、棒は地面にぶつかる。少年は驚いた顔をし、バランスを崩す。 スライムは大きく跳ねて少年の頭に乗り、少年は目が×印になり、転ぶ。 スライムはそのまま跳ねて画面左に去る。少年は困った顔でよろよろと立ち上がる。
 効果音は入れますが、音楽は不要です。

 いや……「簡単」とは言うものの、正直に言うと、私の場合、本体をインストールした後、Turbo LoRAという高速化ファイルを入れているし、ちょっとワークフローを変えてシード値を自分で選べるようにしたり(初期状態ではランダム)、ChatGPTが出してきたプロンプトも若干修正したり、同じプロンプトでシード値を変えて何度か試したりしています。
 
 でも、試すだけなら基本そんな作業は不要です。
 

 試行錯誤中の失敗事例。
 なんか髪が生えたりスライムに口ができたりする。*1
 
 まあ、それにしても、びっくりするくらい簡単。
 
 つまり、今までこのブログに載せてきたAI生成画像も動画にできるということ……

「核戦争後の荒廃した世界でネコがフルに武装して抗争する絵」

 最後、「ニャアー」って鳴いて欲しかったんだけど、どうしても「ガオー」って感じになる。GIFではわからないけど。
 

Mist girl。

 

UsgUedZwちゃん。

 
 ともあれ……本当に、手順としてはかなり「誰でもできる」と言ってよい段階に来ていると思います。
 長い動画を生成する方法も段々できてきているとか。
 生成にかかる時間が短くなったのも、試行錯誤が簡単になってありがたいところ(その分、時間がいくらでも溶けるのも事実ですが)。
 
 自分が見たい動画を自分で作ってみたい、自分の絵が動くのを見てみたいという方、試してみてはいかがでしょうか。
 

*1:色がチラチラするのは失敗ではなく、低画質で仮出力したからです。まず低画質で試して、うまくいきそうなら同じシード値で高画質にして再出力する、という手順でやっています。

夏休み読書その2。

 図書館つくづく便利ですね。
 ……お気づきでしょうが、夏休みなので、子どもについては書くことがないのです。
 

コミック会話 自閉症など発達障害のある子どものためのコミュニケーション支援法
「コミック会話 自閉症など発達障害のある子どものためのコミュニケーション支援法」
 
 サブタイトル通り、自閉症スペクトラムなどの子とのコミュニケーション手法のひとつ「コミック会話」を紹介する本。
 
 図書館で予約して借りたらえらく薄い本だったのでびっくりしました。
 
 要するに、「ぼくがこう言って…お母さんがああ言って…」みたいな状況説明を、棒人間と吹き出しで描いていくと、出来事や本人の気持ちを表現しやすいよ、という話。
 その発言の「気持ち」を、吹き出しの色で表現する(うれしい気持ちは緑、怒りは赤、とか)、というのがキモなのかも。

(同書8ページ)
 

(同書付録2)
 
 正直、実際に使っている様子を見ないと、具体的にどんな有効性があるのかよくわからない。
 でも、一つの手法として覚えておきたいと思います。
 
おくれ毛で風を切れ
「おくれ毛で風を切れ」
 
 古賀及子さんのエッセイ。この人の本は読むのたぶん3冊目。
 
 デイリーポータルZで知った方だけど、文章が簡潔かつ活き活きとしているし、お子さんとの関わりを中心とした内容にも温かみがあってとても好きです。時折挟まれる内省も新鮮。
(しかし、稀に登場する「山で暮らす夫」がどういうことなのか気になる……ルリドラゴンか?)
 
「日常の5秒間の瞬間を200字で」というスタンス、できるものなら真似したいところ。
 あとがきで、これらは記録ではなく、「文を書く喜び」「文で遊ぶ楽しさ」のために書いている……という一節があり、好きでやっている人はやっぱり最強だと思います。
 漫画家さんのエッセイ漫画とか見てもよくそう思います。あふれるアウトプット欲。
 
あたし研究: 自閉症スペクトラム~小道モコの場合
「あたし研究: 自閉症スペクトラム~小道モコの場合」
 
 自閉症スペクトラム当事者の小道モコさんが、自分に見えている世界を絵と文章で説明した本。
(ご本人は書いた時点で三十台で、社会人になっています)
 
 この本はとても良かったです。
 
 本人の体験だけでなく、それぞれのテーマについて、精神科医の畠中雄平氏がプロの視点から解説を加えているのも有意義。
 どのページも興味深かったのですが、特に印象に残ったのがこれ。(クリックで拡大するはず)

(同書34~36ページ)
 
 服のタグを完全に(根こそぎ)取り除かないと、体調不良になってしまう、という話。
 
 自閉症スペクトラムの児童が、感覚過敏の特性を持っていることが多い……というのは、わりとよく知られていると思います。
(視覚過敏だったり聴覚過敏だったり、逆に特定の感覚が鈍かったり、具体的な状況はひとりひとり異なる)
 
 かく言う私も、服のタグは切らないと気になって着られないので、だいぶ気持ちがわかります(奥さんにもらったマフラーがチクチクするのがダメで、申し訳ないけど一度も使わずにしまってあるくらい)。
 でも、ここまで徹底して取り除かないとダメ、さもないと無意識に変なところに力が入って体調不良になる……というのは驚きでした。
 
 そして、畠中氏の解説の、
「味覚でも同じことが起こり得ます」
 という指摘にはっとさせられました。
 
 食育の一環として、
「苦手なものでも一口は食べましょう」
 みたいな指導は学校でごく一般的です。
 
 食物アレルギーがあればもちろん食べさせることはありませんが、
「アレルギーでないなら、いろいろな料理・食品に触れて、食の範囲を広げることが本人にとってよいことだ」
 という発想が根底にあります。
 
 それ自体は間違いではない……と思うのですが、発達障害の児童にとっては、
「アレルギーではないけれど、食べると体調不良になる」
 ということがあり得るのだ……というのは、恥ずかしながら考えたことがありませんでした。
 

(同書25ページ)
「やきそばの作り方」の話にあるように、
「発達障害があっても、やり方を工夫することで、うまくできるようになる」「些細な改善で状況が180°変わる」
 というケースも紹介されており、学校でもその子に合わせた方法を工夫したり、本人が工夫できるように支援していくことの意義を感じます。
 
 そんな「工夫」がなくても、がんばればできるし、「がんばればできる」と「できるんじゃん!」「次も頑張りなよ」と言われてしまう、しかし、
「日々の生活の些細なことまでがんばっていたら、疲労困憊してしまいます」
 というのは、本当に周囲が気をつけなければならないことだなあと思います。
(一方で、本書はあくまで「当事者の感じ方」を紹介する本で、具体的な支援策の提案は主眼ではありません)
 続刊もあるそうなので、ぜひ読んでみたいと思います。

(同書42~43ページ。学校は予測不能のジャングル……そうだなあ……)
 
博士の愛した数式(新潮文庫)
「博士の愛した数式」
 
 奥さんに勧められて読んだ小説。良かったです。
 
 事故の後遺症で、80分より前のことは覚えていられない60代の「博士」。
 そこへ家政婦として働きにやってきた「私」
 そして、ふとしたことからしばしば博士と一緒に過ごすようになる、小学5年生の息子。
 その3人の物語です。
 
 記憶力を失った「博士」が、日常の何気ない数字(28とか。220とか)に、その美しさ、かけがえのなさを見出し、数学への愛と熱意を込めて解説する場面がたびたびあります。
 そのいずれの場面でも、素人である聞き手に対する敬意と賞賛を欠かさないのが心温まりました。
「教える」とはこうあるべきなのだろうなあと思います。
 
 主人公が何か大きな困難に立ち向かうようなドラマではなく、ある意味淡々とした「日常系」で、安心して読むことができました。
(もちろん、その「日常」も永遠には続かないわけですが)
 
 とはいえ……「認知症がみんなこんな穏やかなものだったらいいんだがなあ」とは思ったり。
(「博士」の記憶障害は事故の後遺症だから認知症とはちょっと違いますが)