お気持ちって言った方がお気持ちなんですぅー。

 学校には、ソーシャルスキルレーニングが必要なお子さんもおり、それに使う色々な教材があります。
 
 これは、本校にあるソーシャルスキルレーニング用の教材の一つ、「ソーシャルスキルレーニング絵カード(エスコアール)」です。
株式会社エスコアール > 製品情報 > ソーシャルスキルトレーニング絵カード*1

 
 子どもが生活する上で遭遇しうる色々な場面が、紙芝居のような絵カードになっています。
 この教材では、どの場面も、
 
「1:選択を迫られる場面」
「2:悪い例」
「3:良い対応を考えよう」
 
 みたいな感じの3枚1組になっています。
 
 例えば。

 

 隣の子の筆箱が傷んでいるのが気になります。
 

 言い方ァ!
 

「じゃあ、なんて言えば良かったのかな?」
 と考えるのが、ソーシャルスキルレーニングのひとつなわけですね。
 
 こんなのもあります。


 言い方!
p-bandai.jp
 他意もアフィもないリンク。
 
 それはさておき。

私「さて、なんて言えばいいと思う?」
A児「大丈夫だよ、とか言う」
私「そうね。……でも、プレゼントをもらったんだから、まず……」
A児「ありがとう」
 
 よく考えた挙げ句に「大丈夫だよ」って言ってしまうのが、ソーシャルスキルレーニングの必要な子なんですね。
 
 さて。


私「これも良くないよねえ」
A児「注意されて法律とか言い出す人ヤバいでしょ」
私「でも、ホントにこういう人いない? 『そんなのいつ決まったんですかー。何時何分何秒、地球が何回回ったときですかー』とかさ」
A児「いるいる! 『それってあなたの感想ですよね?』とか!」
私「……そのフレーズ、そういう扱いなんだ……」
 
 ソーシャルスキルレーニング。大切ですね。

*1:リンクを踏んでも私には一銭の得もないので安心してください。

「処理水の放出なんて、嫌がられて当然なのでは?」へのブコメ返信など。

 続きというか余談と個人的返信のための記事です。
 それはもう長い(元記事より長い)上に、特に元記事の論旨に補足も変更もないので、よほど興味のあるかただけ読めばいいと思います。
処理水の放出なんて、嫌がられて当然なのでは? - 小学校笑いぐさ日記
 
 さて、ブコメへの返信等、元は本文末尾に書いていたのですが、あまりに長くなったのでこっちへ分割することにしました。
 コメント欄の返信も、本来ならコメント欄へすべきなのでしょうが、最初にえらく残念なコメントがついてしまい、その後いただいた真摯なご意見が下に沈んでしまうため、こちらに書きたいと思います。
(投稿翌日にでも書こうと思っていたのに、夏休みが終わったら忙しくなってしまった……)

*idコールされた記事への返信
id:tyoshikiさんからidコールが2回も来ました。(この記事を書いた後で3回目が来ました)
 
「原口氏・宮台氏・ちだい氏」などは、いかにして自分たちがIAEAやJAEAの科学者たちより科学的知見があるという思い上がった勘違いできるのようになったのか? - 頭の上にミカンをのせる
「テロは知性の伴わない正義感によって起きる」:処理水放出に反対している人がどんどん過激になっていって関東大震災のときに朝鮮人虐殺を実行した人みたいにならないことを祈る - 頭の上にミカンをのせる
 2つも記事書かれてる……。*1
 
 なんで私が呼ばれたのかよくわからないけど、主に
「放出反対派にはこんなバカな奴がいるぞ! どうせお前もその仲間なんだろう! 違うなら違うと言え!」
 みたいな趣旨なのかなー、と理解しました。

もしかしてfilinionさんもこの手の人と同じ理屈なんだろうか・・・? 

 違います。

はてなブログの記事ではこういう立場ではなかったと思うのでもしこの人たちと違う立場であれば明確に「違う」と言ってほしいところです…。

「こういう立場ではなかった」ことがわかってるのに、なんで名指しで「同じ理屈なんだろうか」とか言われるんです……?

filinionさんが他の小学生の生徒と一緒に教えてあげればいいのでは?

 なんでもかんでも義務教育に持ち込むのやめてください。

ついでだからfilinionさんには、このちだいさんの動画に対してどう思うのかぜひ聞いてみたいですよ。hてなのお仲間に忖度して正直な気持ちが言えないなら仕方ないですけど。(原文ママ

はてなのお仲間」!
 私の仲間って誰なんですか……!?
 
 よくスターくれる人はいますけれども(いつもありがとうございます)、仲間なんていないんじゃない……?
 逆に言って、つまりid:tyoshikiさんにはお仲間がいらっしゃるんですか……?
 
 そもそも「忖度」って言うけど、今のはてなで声の大きい人々に忖度しようと思ったら
「放出反対派はバカ! 疑似科学! 中国の回し者!」
 とか叫んでる方が波風立たないのは目に見えてたんですよね……。
 
 私がid:tyoshikiさんの思っているような立場ではないことを示すために、2011年のブコメをいくつかリンクしておきます。(わざわざ自分のブコメ引用するなんて!)

[B! 災害] asahi.com(朝日新聞社):【Q&A】放射能ついた野菜は心配? - 東日本大震災
一言で言うと「洗って食え」。仮に栽培の過程で放射性ヨウ素が中に取り込まれたとしても、出荷する頃にはほとんど消えてるだろうから、それが心配な人はむしろ天然のカリウム40とか炭素14の心配をした方がいい。

[B! 原発] 福島原発事故、もし「フクシマ」がスイスで起きたら - 2 -
家畜を汚染地域外に移動。「汚染されていない牧草地にセシウム137が多少排出されても問題にならない」「補償もいらない上、家畜を殺さずに済んだ」正しいが、その正しさを受け入れる冷静さが日本国民にはあるかな…。

[B! 放射線] 「不検出」なのに、放射能抜き指南? | FOOCOM.NET
仮にもマスメディアが、「危険を煽った方が読者ウケする」みたいなトンデモの論理で行動しては困るんだが…。政府の説明を批判的に検証するのは大切だが、検証もなく無視した上に不健康な食生活に走っては本末転倒。

[B! デマ] 『一箱全て派手な奇形のナス!?』 『それ、天狗なすだろ。』 『知らないって恐いねw美味しいのに。』
「商売ですからね」か。見事なブーメランだ。放射能の恐怖を煽るのがあなたの商売ですからね。/学校でミニトマトとか育てたことないのかな。でこぼこしたのができるのが当然だ、ってわかるはずなのに

[B! 原発] 発電所で起こっていることは隠せても放射線は隠せない | 5号館を出て
すでにみんな言ってるけど、「隠蔽しようにも確かな理由は誰も知らない」だと思う。2号機から白い煙が上がった理由も3号機から黒煙が上がった理由も4号機プールに水があるのかないのかも確実にはわかんないんだから。

 12年前とあんまり立場変わってないですね。
 変わったことといえば、当時もそれほど信じてなかった東京電力への信頼がさらに大幅に減じたことかな……。
 ついでに言うと菊池誠氏への評価はさらにもっと下がりました。当初はあんな人じゃなかったのに……。
 
 ともあれ、id:tyoshikiさんの記事に典型的なように、放出に反対する、あるいは懸念する人々を一括りにして「お仲間」扱い、あるいはステレオタイプ化する傾向こそ、分断を深める危険なものだと思います。
(もちろんそれは反対派にも言えるでしょうけれど)
「反対するのはみんな非科学的な左翼」というのは、まさに菊池誠氏が陥った認知の罠だと思います。
 
 ……なんてことは先方の記事のブコメに書けばいいんですけど、書いた後で確認したらはてブコメントが非表示になってたんですよ……。
 
 私もブコメ書く前にちゃんと確認しなかったので、元から非公開だったのかも知れません。
 でも、インターネットアーカイブで見る限り、少なくとも7月14日の時点ではブコメが公開されてたはず……。*2
https://web.archive.org/web/20230714065423/https://b.hatena.ne.jp/entry/s/www.tyoshiki.com/entry/2023/07/14/003057
 
 なんにせよ、私だけならともかく「はてなのお仲間」などと、独立独歩を重んじるはてな民の気風を侮辱されたのでは黙っているわけにはいかないし、ブコメが非公開ではこちらに書くより仕方ないと思い、今頑張ってこれを書いています。
 
*そしてまた追記で長くなった……。
 この記事を書いた後で、id:tyoshikiさんが新しい記事を書かれました。
いや、filinionさんそれは悪手でしょ…… - 頭の上にミカンをのせる
 要点としては、「自分への言及が最初に来るのは優先順位がおかしい」ということのようです。

私についてあれこれ語るの、どうしても一番最初にやらないといけないことでした?
なんで私の話を一番最初に持ってきたのか説明してもらっていいですか?

 そんなにおかしいかな……?
 なんか誤解に基づいた絡み方をされて「立場を明確にして欲しい」と言われた上、「はてブのお仲間が云々」とか他の方まで根拠なく揶揄されたのだから、私にとっては重要度は低くなかったです。
 
 というか(こちらの事情ですが)この記事をあらかた書き終えて
「でももうちょっと落ち着いて推敲してから公開しようかな……」
 と思っていたらid:tyoshikiさんから2回もidコールが来たので、慌ててこの節を書き足して公開したという……。
 
 だからまあ、むしろid:tyoshikiさんへの返答のためにこの記事を公開したと言えなくもないくらいです。
 
 それに、この記事、次の節は「ブコメで痛いところを突かれました」という話、その次が「『お気持ち』批判して得意げな人なんなの」で、その次に「元記事にも書いたけど工場排水の件は勇み足でした」(この辺が記事のほぼ真ん中)、以降がコメント欄等への返信だから、別に不都合なところを後回しにしてるとも思わないです。
 大体、順序と言っても、こんな長い記事、趣味で読む人は最後まで読むだろうけど読まない人は全然読まないだろうし、idコールされた人は自分の名前が出てくるところだけ読むだろうし……。
(一応、「多少なりとも全文読む人が読みやすいように」という意図で順序を決めてはいます。今回の場合、id:tyoshikiさんが「相手をステロタイプ化する実例」として後の文脈に生きています)
 というか、この記事は前の記事の補足でも訂正でもないほぼ私信なので、優先順位も何も、この記事自体が重要度が低いと思います。最初にそう書いてますし。
 
*いただいてうれしかったブコメ

id:hecaton55 東電が信用できないから反対という意見。信用とか信頼というのは難しいね。あと原発の冷却水は確かに冷却管通っているだけだけど再処理施設も同じなんだっけ?
id:Tailin > 「しかし、原発トリチウムは、配管を冷却水が通った結果できたものです。」本当にそうか?再処理工場でも?

 痛いところを突かれました。
 
 ご指摘の通り、核燃料再処理工場は、使用済み核燃料をバラバラにして溶かした上で成分を分離して再利用する施設です。
 ですから、そこで生成されるトリチウムは、原発の冷却管で生まれるトリチウムとは過程が異なります。
(いや、「福島処理水のトリチウムと海水のトリチウムは同じだ」という立場から見ればもちろん同じですが)
 
 だから「『原発トリチウムは』配管を冷却水が通った結果できたもの」と書いて再処理工場を除外したのですが……しかしこれは詭弁の誹りを免れないと思います。
 
 実際には、再処理工場は福島第一原発と同様に汚染水を内部に抱えています。
「何かあったら汚染水が放出されるおそれがある」という点に関しては、福島第一原発と変わらないかも知れません。
(しかも放出するトリチウムはむしろずっと多い)
 
 ただ、そう言ってしまうとおそらく再処理工場側からは反論があって、
福島第一原発と違ってこちらはちゃんと設計通りに稼働している。デブリがどこにあるかも成分が何かもわからない、内部がどうなってるかもわからない事故原発と一緒にするな」
「こちらはもし政府の決定があれば稼働を停止しトリチウムの放出もなくすことができる。漏れた地下水を垂れ流してる事故原発と一緒にするな」
 ということになるでしょう。
 
 だから、六ヶ所村福島第一原発のどちらが危険なのかは、ちょっと一概には言えないと思います。
 
 で、なんで「痛いところを突かれた」のが「うれしかった」の? マゾなの? と言われるかも知れません。
 マゾではなくて。
 もちろん肯定的なブコメはとてもうれしいです。
 
 しかし、今回の記事がはてな主流派の主張とは異なっているようだ、というのは事前にわかっていました。
 なぜそれが「主流」になってるのかよくわからなかったから書いたわけです。
 ですから、批判的なコメントが多く寄せられるであろうことも予期していました。
 
 ただ、はてなには(たぶん)理系の人が多いし、ネット一般と比べて知的水準も高い(はずだという願望があった)わけです。
 
 だから、批判されるにしても、
「自分よりずっと頭が良く、核物理学や原子力行政に詳しい知的巨人がやって来て、専門知識の棍棒でぺちゃんこにされる」
 みたいな展開を想定していました。
 
 実のところ、このブログは十数年前に一度そういう目に遭ったことがあって。(当時は「はてなダイアリー」でしたが)
 まあそれはそれで……本望かなと。
 
 ところが、投稿初日(100ブクマくらいの時)、実際に寄せられた「批判的」ブコメときたら、
 
「じゃあ水道水はうんこを薄めた水だから飲めないんですか―」
「嫌だとかいうのはお気持ち」
「中国に言え」
「処理水は安全」
「お気持ちヤクザ」
 
 ええー……。
 
 なんか、乙事主様みたいな気持ちになりました。
「わしの一族を見ろ! みんな小さく、バカになりつつある」
 
 いや、「記事のレベルが低いから批判もレベルが低いのだ」と言われたらその通りかも知れませんけど、かつての記事だって別にレベルが高かったわけではないからなあ……。
 
 ともあれそんなわけで、痛いところを突かれるのは少し嬉しかったです。
 戻ってきた、黄泉の国から戦士たちが帰ってきた!
 
 翌朝記事を確認したら、もっと落ち着いたブコメが増えていたのでちょっとほっとしました。
 しかし、「人気コメント」だけを見て記事を判断してはいかんのだなあ、とつくづく思いました。
 それにつけてもYahoo!APIは廃止されるべきである。
 
*「お気持ち」?

tfurukaw 科学の話に「信頼」とか「嫌」とかいう概念を持ち込むこと自体がおかしいんですけどね。あなたが飲んでる水道水、水銀やカドミウム入ってても良いんですよ。基準値内なら。放射性物質になると反応変わるのは何故?
 
sp_fr_v7_2011 嫌かどうかという感情論はどうでもいい。合理性のない「嫌」は、単なる嫌がらせ・加害なんだということを理性的な同胞に周知して、嫌がらせを繰り返す風評加害者を磨り潰す段階に来たというのが今現在。
 
horaix あからさまに「反科学」にベットすると叩かれるから、僕ちゃん科学は分かってますと「引用だけは」して本論はお気持ちで押し切るの成程左翼教員しぐさという感じがする
 
byod 水からの伝言(きれいな言葉をかけるときれいな結晶ができる)系の、事実とお気持ちの区別ができない お気持ち左派教員。自分が言ってるの「いじめられてる側に いじめる側に嫌がられて当然なのでは?」なの自覚して

idコールしようかと思ったけどあんまり建設的な話ができそうな気がしないのでやめました。コールした方がいいと思う読者の方はコメント欄で呼んであげてください)
 
「お気持ち」「感情論」って言えばさも論理的に反論したかのような気分になれる風潮。
 
 もちろん科学的な検証と住民感情の問題は峻別せねばなりません。
 しかし、実際にことを進めるにあたってはその双方を勘案しなければならない、というのは、本件に限らずあらゆる行政施策で当然のことと思います。
(もちろん住民感情が科学的に妥当ならそれに越したことはない)
 
 しかしそれはそれとして、本件の「お気持ち」はそこまで不合理ですか? というのが記事の趣旨です。
 
 例え話をしましょう。
 何かの工事(道路橋の新設でも自宅のリフォームでもいいですが)を行うにあたり、複数の会社にデザイン案の提出を求めたとします。
 そしてA社とB社の2社から応募があったとしましょう。
 
 設計の合理性、建設スケジュール、予算等々において、両者甲乙つけがたい内容だったとします。
 
 しかし、A社はこれまで同様の工事で優れた実績がある一方、B社は施工不良やスケジュール遅延等のトラブルが頻発しているとします。
(まあ、そもそもそんな会社に声をかけるなという話ではある)
 
 その場合、もちろん、「ではA社に頼もう」となるでしょう。
 
 そしてもし、A・B2社ではなく、B社からしか提案がなかったとしたら?
 
「それは嫌だなあ、心配だなあ」
 と考えるのは当然ではないでしょうか。
 
 それを
「設計の合理性で判断すべき! 嫌だというのはお気持ち!」
 で押し切ろうとするのはむしろ不合理でしょう。
 
 私としては、以下のtakeshiketa氏のコメントは趣旨を捉えてくださっていると思います。

id:takeshiketa 理性的な記事と思ったけど吹き上がる人いるんだ。科学的事実と運用面や運用者の脆弱性は切り分けて考えられるのにブクマカーですらそれ峻別できないのか。運用面の指摘を感情と解釈してしまってるひとが多い。

 
*工場排水の件
 本文に追記しましたが、これはまったく私の誤りでした。
id:deztecjp
id:puyop
id:tettekete37564
id:ublftbo
id:ishikawake
id:redreborn
id:nt46
 その他の方々からご指摘をいただきました。
 
 重金属等について、
「海水で希釈すれば海に捨て放題」
 にはならない仕組みが何かあるはずだと思うのですが、まだ不勉強でわかっていません。
 ただ、そこはわかっていなくても、誤認であること自体は明らかだとわかった以上、そう明記すべきだと考えて追記しました。
 
 ともあれ本当にありがとうございました。
 
*コメント欄への返信
id:skippers_people
 コメントありがとうございます。上に書きましたが、ちゃんとしたご意見をいただくのは本当に嬉しい限りです。
 
 論点が幾つかありますが、基本的に
「この記事は疑似科学ではないが、疑似科学的な放出反対論も多く存在する。それが『疑似科学』と批判されるのは当然ではないか」
 というお話と受け取りました。
(「現在の問題は中国の反発と禁輸措置」という問題設定は、私には狭すぎるように思われます。考慮すべきことはもっと幅広いはずです)
 
 id:Toriteba氏も、匿名ダイアリーで同じことを書いていますね。
 
 おっしゃる通り、疑似科学的な意見が疑似科学扱いされるのは当然でしょう。
 しかし、現実はそれだけではありません。
 
 観測範囲問題、というと水掛け論になりがちですが、幸い、今回は私の「観測範囲」を共有していただけると思います。
 
 上に書いたid:tyoshikiさんの記事がその良い例だと思います。
 
 放出反対派に共感を示しただけで、
トリチウムが生物濃縮するとか言ってる連中とお仲間なんだろう!」
 とか言われてしまう現実があります。
 
 skippers_peopleさんのコメントのすぐ下にも、id:gejimayuPさんがコメントを書いていますね。

(略)お金でもたかる気ですか?
 根拠として様々なデータにも触れていらっしゃいますが、科学的、論理的に否定できておらず、最後には「気に入らない」で終わっているようにしか伝わりませんでした(略)
ひろゆき的には「それってあなたの感想ですよね」まぁはてブ自体がそういうものですが(略)
「下水処理した水を川に流すのは許せない!安全基準を満たしてる?だって元はう○こ流した水でしょ!処理場で事故があったらどうするの!ほんのちょっとでもう○こ混じってたら誰が責任とるの!じゃあどうするのかって?コンクリにでも混ぜたら?しらんけど」
レベルの話ですよね~

 この通り「金でもたかる気か」だの「うんこ流した水」だの「気に入らないで終わっているようにしか伝わらない」だの言われるわけです。
(処理水を、下水処理した水に喩えてる人が多いけど、下水処理場の人からは異論があるのでは?
 下水中のウンコは微生物で分解、それを濾過してから放出しているわけですが、トリチウムは生分解も濾過もできないから問題になってるわけで。ウンコみたいに分解できるなら話はずっと簡単だった)
 
 ブコメをざっと見ても、

sekiryo ジミンガーしたいが為にフクシマは死の街に!子供は奇形!コロナは政府は無策で感染者が増え死の国!オリンピックも死の街!で、どれか当たったのか?無関係な人も揶揄った件謝ったのか?そんなに侮辱が楽しいか?
 
preciar バナナのトリチウムもラ・アーグのトリチウムも同じトリチウムであり、それ以外の核種は除去されている。小学校教員に科学リテラシーが無いのは本当に問題だよな/ダムじゃ希釈にならん。何も解ってない馬鹿じゃん

 私は「フクシマが死の街に」とか言ったことないし、むしろ震災がれきで奇形が云々とかいう与太話を批判してたのですが。
 もし、科学に反するものだけが疑似科学扱いされ、日本に反するものだけが反日扱いされる世界ならそれは素晴らしいのですが、現実はこの通りなのです。
 
 私の認識としては、id:kotobuki_84さんの

id:kotobuki_84 序盤は同感。市民の素朴な嫌悪感への攻撃は流石に過剰。/一方で過剰な攻撃は反対側にもあり(例えばid:entry:4741411939266393327)本質は左右の対立と言うより、下が上の足を引っ張る地獄のボトムアップよな(日常茶飯事)

 というのが近いかな、と思います。
  
 私も2009年にこんな図を書いてました。

 当時はまだ「パヨク」という表現はなかった。
 
 知的水準正規分布していると仮定し、なおかつ二つの対立する意見(この図では右派と左派ですが、本件で言えば放出賛成派と反対派)に均等に分かれているとしても、お互いに「自分より愚かな人」を相手の代表と見なし、「対立クラスタはみんな自分より愚かだ」と信じてしまう傾向が人間にはあると思うのですね。

 どちらも同じくらい賢く、同じくらいバカ。
 
 ところでid:preciarさん、バナナの放射能カリウムです。いやもちろんトリチウムも他の農産物と同程度に含まれてるだろうけど、それだとバナナを例に挙げる意味がないので。
 あと、「ダムでは希釈にならないことすらわかってない馬鹿」呼ばわりされてしまったのですが、ダムに流しても希釈にならないと言っているのは今のところpreciarさんだけなので、コメント欄で詳しく説明して下さるとみんなの理解が深まると思います。どうぞよろしくお願いします。
 
*「垂れ流し」?
 前掲のid:Toriteba氏の匿名ダイアリーには、

水を流しているのと同じことに対し、「垂れ流し」といったネガティブな表現を用いて印象操作をすることが疑似科学であると批判される一つの理由

 とあり、id:Toriteba氏としても私は疑似科学扱いされるのは妥当だというご意見であるようです。
 
 しかし、例えば、今回の放出では、東電は一日に460トンの処理水を放出する予定だそうです。
 
 ではこれを、200トンに減らすことはできるでしょうか?
 まあできるでしょう。
 
 では、20トンではどうでしょうか?
 それは無理でしょう。
 
 いや、明日だけとか、一週間だけとかなら可能でしょうが、何年もとなると無理です。
 なぜなら、汚染水が一日に90トンほど増えているから、少なくともその分だけ放出しなければならないのです。
 
 水道水を流しているのとは違い、増やす側にはコントロールできるけれど、減らすには下限がある。
 なぜなら、流れ込んでくる水をコントロールできていないため、少なくとも増えた分だけトコロテン式に放出しないといけないから。
 
 その状況を「垂れ流し」と呼んだのです。
 なるほど強い言葉だったかも知れませんが、それが妥当かどうかはもはや言語感覚の問題で、例えばアミグダリンを「ビタミンB17」と呼ぶみたいな明白な疑似科学ではありません。
(アミグダリンはビタミンではなく、人体に有害な物質だが、それが判明してからも、抗がん作用を持つ健康食品として「ビタミンB17」の名前で市販されていた)
 
id:danjikix
 トリチウムは水素の放射性同位体です。
 化学的な振る舞いが通常の水素とほとんど変わらないため、例えばトリチウム水の形で摂取すると、すでに体内にあった通常の水と入れ替わる形で体内に取り込まれます。
 
 しかし、化学的な振る舞いが通常の水とほとんど変わらないので、後から通常の水を摂取すると、トリチウム水は入れ替わりに体外に排出されることになります。
(約10日で半減するとされています)
 
 ですので、生物蓄積が起きる、というご意見には賛同できません。
 
 もし、トリチウムが生物濃縮するものなら、それを利用してトリチウムを除去することができるので、むしろある意味で朗報なのですが。
 
*ALPS処理水を国内処分する計画はあったのか。
 前掲のid:Toriteba氏が匿名ダイアリーで曰く

長期的取り扱いが未検討であることは、処理水が低レベル放射性廃棄物として国内で処分する予定であることを意味しない。デマである。

 また、id:njamota氏はご自身のブログに
ALPS処理水の処分を回避する計画は存在したのか - たたるこころ
 という記事を書いておいでで、

汚染水の発生量は降水量に大きく影響されるため、事前に正確に見積もることは不可能だからです。(略)
何が言いたいかというと「汚染水発生量抑制対策により処理水の処分を回避するという計画は存在しなかった」ということです。

 と述べています。
 
 まあ……2015年時点で「長期的取り扱いは2016年から話し合う」と言ってるんだから、その時点では、国内処分・海洋放出を含め、いかなる案も存在しなかったとは言えるかも知れませんね。
 
 ただ、元記事にも書いたとおり、2016年の「トリチウム水タスクフォース」では、
・地層注入
・海洋放出
・水蒸気放出
・水素放出
・地下埋設
 の5案が検討されています。
https://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/osensuitaisaku/committtee/tritium_tusk/pdf/160603_01.pdf
 国内処分する案がなかったとは言えない。
 
 それが2019年には海洋放出か水蒸気放出の2案に絞られてしまうのは、「2020年汚染水ゼロ」が不可能なのが誰の目にも明らかになっていく過程が影響していると思います。

東電の廃炉作業の責任者は「なんらかの形で処理水は処分しなければならないものだとずっと考えてきた」と言っていました。

 そりゃあ……なんらかの形で処分しなければならないでしょうね。
 永久にタンクに溜めておくわけにはいかないですから。(私はその記者会見を見ていないので正確な言い回しはわかりませんが)
 
*ロードマップは破綻していないのか?
 id:njamota氏はこう書きます。

そもそもロードマップは、たくさんの作業が同時並行して行われる廃炉において、それぞれの作業の進捗を齟齬のないように計画するためのもののようです。福島第一原発は事故のあった原子炉があるのですから、現場の調査をするのも容易ではなく、次第に明らかになっていく事実に合わせて改定されていくのがロードマップの本来の姿です。その改定を計画の破綻と考えるのもひとつの立場でしょう。でも、わからないなりに見通しを立てて一歩づつ進んでいき、わかったところは計画に反映させていく、そういう方法以外に現実的なやり方があるとは私は思いません。

 もちろんそれはその通りでしょう。
 
 福島第一原発事故のような未曾有の大惨事に対して、予定通り後処理が進んだら驚きです。
 予想外の事態を予想しろと言うのは無理な話でしょう。
 
 ……しかし、「予想外の事態」が起きるたびに、おおむね事態が悪化し計画が後ろに遅延する一方なのはおかしくないでしょうか?
「予想よりうまくいった」という事態が発生して、計画が早まることがあってもいいのでは?
 
 私たちの日頃の業務、生活においても、
「何があるかわからないから早めに出発しよう」
「マージンをみておこう」
 みたいなことは当然ある話ですし、その結果、予定が早まったりすることも日常的にあると思うのですが。
 
 もしかして、東京電力の「廃炉ロードマップ」は、「何もかも順調に進み、予想外のトラブルが起きなければこの期間でできる」という前提に立った計画なのでは……?
 
 ……というのは悪意に考えすぎかも知れませんが(どうかな?)、少なくとも、計画全般、とりわけ燃料デブリの取り出しという重要課題が何年も遅れているにも関わらず、「廃炉完了は30~40年」というゴールだけは「堅持」されているのはさすがにおかしいのでは……?
 
 そのような意味で「破綻」と書いています。
 
*ここから下は、当初は記事末尾に入れてあったけれどこちらに切り出した文章です。
 
IAEAについて。

kotaponx 東電はともかくとしてIAEAを信用しないのは意味がわからないんだよなぁ
osya3 東電を信用しないのはいいとしてどうしてIAEAの存在を無視するんでしょうねえ?
brain-owner 追記をわざわざ書いて「IAEAと書いてあるコメントは完全無視して反論してる」の笑える。ちゃんと「IAEAも信用出来ない!」と書けよ。そしたらお前の方が信用出来ないバカだと解るから。コソコソ隠蔽するなよwww 

 この記事がIAEAと対立するという発想がなかったのでどう返信しようか困ってました。すみませんね。
 
 っていうか、IAEAは「日本の処理水放出計画は科学的に安全」と言ってるし、私もそう思います。
(世の中にはIAEAを信じない人がいるのかも知れないけどそれは私ではありません)
 
 私はIAEAを割と信頼しています。東京電力よりずっと。
 IAEAは今後も日本の処理水放出を監視してくれると言ってるし、それはありがたいことですね。
 
 ただ、IAEAは、東京電力がミスや事故を起こさないことを保証してくれるわけではありません。
 また、いずれ何らかの理由で「計画」が再び反故にされたり、ALPSが停止されたりするような事態を防いでくれるわけでもありません。
 IAEA自身が「法的拘束力を持たない」と言っているとおりです。
 
 もしもその時が来たら、もちろんIAEAは警告を発するでしょうし、世界各国から非難の声が上がるでしょうが、我が国はそれを押しきるだろうと思います。
 我が国が国連機関の勧告を無視する例は、過去になかったわけではありませんし。
 
 たぶん国内では
IAEA反日
「文句を言うならお前らが金を出せ」
 とかいう声が他を圧するのではないでしょうか。
 
*おまけ
 あといくつか興味深いブコメ

cha16 小学校に勤務する人(教員なのかね?)がこんな感じなので日本の教育レベルは推して知るべしという感じでしょうかね。

「論争に勝ったといえるのは、相手があなたの人格を攻撃し始めたときだ」
 という言葉があるのだそうで。
 それをいきなり属性批判から始めるとは(そしてそこにスターがついて上位コメントになるとは)世の中面白いものですね。
 
 私もいきなり勝利宣言したと思われては不本意なので、「こんな感じ」というのがどんな感じなのか、ぜひコメント欄で詳しくご教示ください。
 

totoronoki 他国でどこもやってないなら日本への批判もまだ理解できるが。 (参考)世界の主要な原発におけるトリチウムの年間処分量 https://www.cn.emb-japan.go.jp/files/100193104.pdf

Sephy https://www.env.go.jp/chemi/rhm/r4kisoshiryo/r4kiso-06-03-09.html 日本以上に海に流してる近隣諸国も日本以上に批判してください。よろしくお願いします。20年以上前のデータも参考に https://www.kaiseiken.or.jp/study/lib/news119kaisetu.pdf

 うん、君ら、記事読んでないよね?
 ちゃんと、この記事の中でフランスの話も中国の話もバナナの話もしてるよね?
 君らがリンクした資料もちゃんと読んで書いてるから安心してね?
 
 っていうか、自分が相手の文章まともに読まないくせに相手に「参考資料」を提示できちゃう度胸よな……。

*1:でも文中に「id:」って書いてないのにidコール飛んできたの、仕様がよくわからない。記事にリンク張るとidコールが飛ぶんでしたっけ?

*2: tyoshikiさんより >「はてブ 非公開」で検索するだけでいくらでもそれについてのブログ主の言及が出てくるじゃないですか。  と言われ「なるほど!?」と思って試したのですが、ちょっとITリテラシーが足りなくてよくわからない……。  3月に一週間ほど非公開になさってたらしいことはわかったんだけど。  実はそれからずっと非公開だったけどインターネットアーカイブには非公開のはずのブコメが収集されるんだよという話?

処理水の放出なんて、嫌がられて当然なのでは?

忙しい人のためのこの記事のまとめ。

 処理水放出が、計画上は安全なのはわかる。
 今のところ安全なのもわかる。
 
 でも、これまでの東京電力と日本政府の「廃炉ロードマップ」の進捗や、汚染水の管理状況を見てたら、
「2051年までには放出は終わります!」
「それまで安全に管理します!」
 なんて言われても信じられない人がいて当然なのでは?
 
 そもそも東電の計画通りに進むものなら、今頃は処理水は増えてないはずだったのに。
 風評被害対策は必要だけど、そのためにはまず東京電力
「ちゃんと計画通りに進みます」
 というところを見せることが先決。
 
 現状ではもはや他に処分方法がないんだろうけど、それはあくまで政府と東京電力の手落ち、日本の国内問題で、諸外国には何の責任もない。
 そして、たとえ計画通りに進んだとしても、「安全な処理水放出」を受け入れることに、周辺地域や周辺国には何の利益もない。
 
 そう考えると、疑ったり反対したりする人が国内外にいるのは当然。
 それを疑似科学だの反日だの共産主義者だの言うのはおかしいのでは?
 
 もはや放出はやむを得ないにしても、そうなる前に国内でなんとかできなかったのは実に残念なこと。
 そして、このような状況なのに、処理水放出を(積極的に賛成はしないまでも)容認してくれる国が多いことにこそ、我々は感謝すべきなのでは?
 
(フランスや中国のトリチウムの話も、自然界のトリチウムやバナナのカリウムの話も、本筋とは関係ないけどちゃんと書いてあるので安心して下さい)

 どうも、長すぎて主旨がつかめない文章だったようなので。
 タイトルしか読んでないらしい人には何をどうしても伝わらないでしょうけど……。
 でも、これでも下書きからだいぶ削ったんです(下書きには食品輸出の話とか原子力船「むつ」の話とか書いてあった)。
 
 残りの部分に書いてあるのは、デブリ取り出しの話とか、フォーク准将とか、「ALPS処理水を矢木沢ダムに流したって安全なのは同じだけど嫌でしょ? それと同じよ」とか。
 あと追記部分には、なんか「解釈が間違ってますよ」みたいな指摘ブコメがスター集めてるけどどこが間違ってるんですかって反問したら通報されましたみたいな話が書いてあります。
 

ここから本文

 なんか最近、
「処理水放出に反対するのは疑似科学! 反日勢力! 共産主義者!」
 みたいなことを言ってる人をよく見かけますが、ちょっとおかしいんじゃないですか?
 
 だって、どう言い繕ったって、結局は事故原発の放射性廃水を海に捨ててるわけじゃないですか。
 
 もちろん、
「処理水は汚染水ではなく、ALPSで処理した~」
 という話は知っています。
 
 しかし、その「ALPS処理水」からして、
トリチウム以外の放射性物質を、安全基準を満たすまで浄化した水のこと」
 が公式の定義なわけで、トリチウムは安全基準を満たしていないわけです。
「ALPS処理水」とは何?「基準を超えている」のは本当?|スペシャルコンテンツ|資源エネルギー庁
 
 基準値を満たしてないものを、
「海水で薄めたら基準値以下になったから海に捨ててオッケー!」
 って、工場排水とかでやったら一発で操業停止になるやつだと思うんですが。
 それを政府が率先してやっているの、酷いインチキなのでは?
 
(2023/08/30追記)
 ……と書いたのですが、複数の方から
「工場排水においては、濾過・吸着などの処理工程を経た上で、最終的に希釈して放出することはあり得る」
 というご指摘をいただきました。
 
「ええ? それじゃあ『カドミウムの排水基準は0.03mg/L』とか定めてる意味がなくない?」
 と思ったのですが、あれこれググったところ、一般社団法人日本バルブ工業会が
水質汚濁防止法での規制では排水基準が濃度で管理されるため、希釈して排出すれば規制に抵触せずに大量の汚濁水を排出することが可能となってしまいます」
一般社団法人日本バルブ工業会 - 環境関連情報:水質汚濁防止法と水質総量規制
 って言って総量規制を提案してるので、なるほど事実なのですね……。
(大量の工業用水を使って希釈して下水に流すより、浄化した方が安上がりになる……と言ってる浄化設備会社のサイトもあったので、一般の工場においては実用的にはそうなのかなとも思います)
 
 また、地域によっては、排出水を排水基準に適合させる目的での希釈処理を禁止しているそうです。
 条例で規制するということは、法律には規定がないことの裏返しかと思います。
 
 そのほか、物質の区分によっては総量規制が存在したり、特定地域のみの基準があったり、排水の量によって基準が異なったりと、まだ法制度の全貌が理解できたとは到底言えないのですが、いずれにせよ、前段の記述は恥ずかしながら私の不勉強による勇み足だったことはお知らせしておく必要があると思い、追記します。(理解が深まったらこの「追記」も訂正するかも知れません)
 ご指摘下さった皆様、ありがとうございました。
(追記ここまで)
 
 いやまあ、トリチウム自体、生物学的半減期は10日しかなく、ALPS処理水にも大きな危険性がない、というのも知っています。
 飲んでも安全だというならそうなんでしょう。
 
 なんなら私だって、誰かが
「1000円やるからALPS処理水をコップ一杯飲んでみろ」
 って言ってくれたら毎日2Lくらい飲みます。
 ……そしたらもうそれを仕事にしてもいいな……。水って送料どのくらいになるのかしら。それを生涯の仕事にしたいとは思わないけど。
 
 でも、タダで飲めって言われたらそれはちょっと……。
 
 処理水の「安全」っていうのは、別に体にいいというわけではなくて、
「科学的には普通の水とほとんど変わらないので、健康に与える影響も事実上無視して良いレベルの水」
 という話です。
 
 だったら普通の水を飲んだ方がいいに決まってます。
 
 これがもし、ワクチンとか、水道水の滅菌とか、そういう公衆にプラスな施策への反対論であれば、社会に有害な疑似科学として批判されても当然でしょう。
 しかし、処理水の放出は、周辺地域や周辺国にとってそもそも何のプラスもありません。
 
「最大限うまくいってプラスマイナスゼロですよ、何の見返りもありませんよ、失敗したら……いやあ、管理態勢は万全だから大丈夫ですよ」
 という話に反対されて、怒ったり疑似科学扱いしたりするの、ちょっとおかしいのでは?
 
 そもそも我が国においても、海洋放出は、当初からの計画ではありませんでした。
 
 経済産業省汚染水処理対策事務局の、2015年6月の廃炉ロードマップを見てみましょう。
 
 これによると、2020年内には
「冷却水以外の建屋内の水や汚染水の増加量をほぼゼロに」
 とあります。(2ページ)

https://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/osensuitaisaku/committtee/takakusyu/pdf/001_02_01.pdf
 その先には
「ALPS処理水の長期的取扱いの検討」ともあります。
 
 つまり、本来の計画では、今頃は汚染水の増加は抑えられ、残った処理水は低レベル放射性廃棄物として国内で処分する予定だったわけです。
 
 海に流すなんて望ましくない、やってはいけないことだ、というのは自明だったのです。そりゃそうだ。まだ常識があった。
 
 現在「処理水の放出に『賛成』」って言ってる人だって、まさかこの2015年時点で
「保管なんかする必要ない! 全部薄めて海に流せ!」
 とは思ってなかったんじゃないでしょうか。*1
 
 それじゃあどうして今回海に流すことになったかと言えば、要は廃炉ロードマップが破綻したからです。
 
 前掲の2015年のロードマップにしてからが「改訂版」です。
 例えば、3号機の燃料取り出しが「2015年度上半期」から「2017年度」に、2年以上延期されています。
 
 そしてその後もロードマップは後退に後退を続けました。
 汚染水はゼロどころか毎日何十トンも増え続け、ついには保管しきれなくなった処理水を海に流すことになってしまった……というのが現状です。
 
 東京電力および我が政府の見通しの甘さ、我が国の技術力の不足のために、世界に通じる海に処理水を垂れ流し、原発周辺地域ならびに近隣各国に不安を与える事態になってしまったのです。
 
 この状況で
「放出に反対するのは我が国に対する敵視政策の表れ!」
 などと居丈高に言ってる人は、ちょっと日本人の美徳を思い出すべきではないでしょうか。
 
 それに、処理水って、実際のところいつまで「安全」なのでしょうか。
 
 経産省によると、遅くとも2051年には処理水の放出は終わるそうです。
https://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/hairo_osensui/shirou_alps/pdf/QA_seafood_jp.pdf
 
 しかし、その30年近い期間、本当にちゃんと管理できるのでしょうか?
 本当に2051年には終わるのでしょうか?
 そもそもどうして2051年なのでしょうか?
 
 過去を振り返ってみます。
 前述の通り、2020年内には「ほぼゼロ」にするはずだった汚染水は増え続けました。
 国内で処理するはずだった処理水は保管しきれず海に流すことになりました。
 2021年には開始されるはずだった核燃料デブリの取り出しも、今のところ全く進んでいません。
 
 東京電力のサイトを見ると、
「今後も現場の状況を勘案しながら、柔軟に方向性を調整するステップ・バイ・ステップのアプローチで検討してまいります」
 などと、フォーク准将の「高度の柔軟性を維持しつつ臨機応変に対処する」みたいなことが堂々と書いてあります。

「燃料デブリ」はどうやって取り出すのか?|もっと知りたい廃炉のこと|東京電力
  
 しかし、このような、具体的な見通しがなく、何もかも遅れていく状況でも、廃炉ロードマップの最後、「廃止終了までの期間」だけは、当初からずっと「30~40年後」で変わりません。
 処理水の放出が「最長2051年まで」というのは、つまり「事故後40年で廃炉が完了する」という前提に基づいているのです。
 それは信じてもいいのでしょうか?
 
 そもそも、2011年12月に初公開されて以来、廃炉ロードマップを信じてた人なんているんですか?
 
 ALPSにしても、動かすのはタダではありませんし、故障もします。
 
 10年後、20年後に、東京電力の財務状況が悪化したり日本の財務状況が悪化したりして、浄化処理を行えなくなる可能性はないのでしょうか?
 
 よく、フランスは、あるいは中国は、今回の処理水放出(22兆Bq/年)よりもずっと多くのトリチウムを排出している、なんて言われます。(泰山第三原発が143兆Bq/年)
 まことにその通りで、例えば日本国内でも、六ヶ所村の再処理工場からは一京Bq/年を超えるトリチウムが出るので、そういう意味では処理水の放射能は少量です。
 
 しかし、原発トリチウムは、配管を冷却水が通った結果できたものです。
 ALPS処理水のような、何か間違ったら核燃料デブリ由来の核種が出てきてしまいかねない施設とは異なります。
(もちろん、中国の原発も、事故を起こせば福島第一原発みたいな状況に陥るでしょうが、それで福島第一原発の安全性が高まるわけではない)
 
 ましてや、「トリチウムは自然界にもある」だの「バナナのカリウムの方が放射線量が高い」だのというのは比較になりません。
 店のバナナは明日事故を起こして放射能が10倍になったりはしませんから。
 
 東京電力はバナナとは違い、2014年にはタンクの操作ミスで高レベル汚染水を100トンほど漏出させています。
福島第1原発のタンクから100トンの高濃度汚染水漏れ=東電 | ロイター
 
 2011年には、その時点で保管しきれなくなった低レベル汚染水一万トンを海洋放出しています。(これは事故ではない)
低レベル汚染水 4日夜放出へ | 東京電力 福島第一原発事故 関連ニュース | NHK 40年後の未来へ 福島第一原発の今
 
 いずれも「処理水」ではない汚染水なのですが、「環境への影響はない」ということになっています。
 
 そう考えると、たとえば10年後にはALPSの運用が止まって、ただの汚染水をそのまま垂れ流して、
「環境への影響はない」
「海水で100万倍に薄めてるから環境基準を満たしている」
「予算がないんだから他に現実的な方策がない」
 とか言ってる可能性も……そしてその状況が2060年にも2080年にも続く可能性は充分あるのではないでしょうか。
 
 今日の処理水が安全だ、というのは科学的な事実でしょう。
 しかし、核燃料デブリの除去や汚染水の浄化の持続性は、科学的に予見された事実ではありません。
 ただ、核燃料デブリは2051年になっても20051年になっても人体に危険なレベルの放射線を出し続けているはずです。それは科学的に予見可能な事実です。
 
 だからALPS処理水を飲むのを生涯の仕事にしたくはないんですよね。何年続けられる仕事かわからないから。
 
 韓国政府が
「汚染水(処理水)放出に計画上の科学的・技術的な問題はない」
 としつつも、
「実際の放出が計画と異なるように進めば日本側に中断を要請する」
 と釘を刺しているのは、まことに現実的な懸念だと思います。
原発処理水、各国反応割れる 「科学的問題なし」「強く反対」 - 日本経済新聞
 何しろ、東京電力および経産省の計画通りに進んだためしがないので。
 
 また、処理水放出への反対は風評被害を煽るものだ、という人もいます。
 風評被害対策大切ですね。
 
 風評被害というと1999年の所沢産ほうれん草が思い出されます。
 あの時は、ほうれん草側には何の原因もなく、メディア側に全ての責任がありました。
 
 しかし、処理水放出は
「最大限うまくいってプラスマイナスゼロですよ」
 の施策を現実にやってるんだから、まずそこに「風評」の原因があります。
 
 反対する漁民は自ら風評被害を煽っている、みたいな言説はむしろ暴力的だと思います。
「お前らに何のプラスもないけど黙って従え」
 って言ってるも同然なわけで。
 
 もちろん、そもそもの原因となった政府や東京電力は、風評被害対策に力を入れるべきです。
 まあ、一番の風評被害対策は、東京電力がちゃんと約束を守ることだと思いますけれども。
 
 こうして書いてくると、
「じゃあ保管しきれない処理水をどうしろっていうんだ、対案を出せ」
 とか言われそうです。
 
 そりゃまあどうしようもないんでしょうね。
 
 しかしそもそも「保管しきれなくてどうしようもない」というのは、あくまで日本国内の不祥事ですから、それで部外者が納得してくれたら驚きの寛容さです。
 
 っていうか、自分の都合で他人に迷惑掛けてるのに
「だってしょうがないじゃねーかよー」
 って言って押しつけてくる奴、私超嫌い(私怨)
 
 ともあれ、あえて「対案」というなら、先日、
「コンクリートの製造に使うなどしてはどうか」
 という話を聞きました。
「福島の魚を一生食べ続けてもトリチウム摂取量はバナナひと口分」──処理水放出、海外専門家の見方|ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト記事後半、「太平洋諸島フォーラム科学委員会」の話)
 
 建材に混ぜてしまうというのは一案です。
 
 それだけで全量消費するのは難しいでしょうが、国内でなんとかすべき、というのはまことに筋が通っています。
 
 なんでも、ALPS処理水のトリチウム濃度は14万Bq/Lだそうです。(常時モニタリングはしてないとかなんとか……)
ALPS処理水の第三者分析|大熊分析・研究センター|国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 福島研究開発部門
 一方、WHOの基準では、飲料水のトリチウムは1万Bq/L以下でなければならないので、14倍に希釈すれば飲料水の基準を満たすことになります。
 
 ところで、東京都水道局によると、東京都の水道使用量は一日およそ412万立方メートルだそうですから、一日100トンのALPS処理水を都民の水道に混ぜれば、41200倍に希釈することができます。
 100トンといえばせいぜい大型タンクローリー5・6台分。
 矢木沢ダムあたりに全量流してしまえば、健康被害も出ないし国外からは文句も出ないのではないでしょうか。
 
 トリチウムの生体半減期は10日しかないので大丈夫ですよ。
(それはつまり、都民に飲ませたトリチウム下水処理場を経由してほぼそのまま東京湾に流れるということですけれども)
 
 もちろん、国内世論は大爆発して内閣が吹っ飛ぶかも知れませんが、科学的には問題ないから大丈夫です。
 
 ……いやまあ、絶対実行されないでしょうけれど。(万一やるというなら反対はしません)
 
 ダムに流して国内で世論の反発が予想されるなら、海に流して外国の世論が反発するのも予想されるだろ、という話です。
 
 結局のところ、過去の経緯を見ても、現状は反対されて当然、不安に思う人がいるのが当然なのです。
 
 放出がどうしようもないならそれは我々の無策・無力を遺憾に思うべきで、
「処理水放出に反対するのは疑似科学! 反日勢力! 共産主義者!」
 みたいなことを言ってる人たちはちょっとおかしいんじゃないか? 国内外に無駄に敵を増やしてはいないか? と思うのです。
 
 むしろ私たちは、渋々ながらも容認してくれている国が多いことに、最大限の感謝をするべきなのではないでしょうか。
 
*2023/08/28 20:56追記
 
 id:sisya氏より、ALPS処理水の解釈が間違っている、とのご指摘を頂いてしまいました。

ALPS処理水の解釈が間違っています。「トリチウムは安全基準を満たしていないわけ」ではなく、トリチウム以外を全て取り除いた物を、安全基準内まで薄めたものが処理水であり、安全基準は満たしています。

 ご教示ありがとうございます。
 スターをつけている方もたくさんいますね。(現時点ではトップブコメですね!)
 
 自分でもリンク先を何度も読み返したのですが。
東京電力福島第一原子力発電所におけるALPS処理水の定義を変更しました (METI/経済産業省)

 今後は、「トリチウム以外の核種について、環境放出の際の規制基準を満たす水」のみを「ALPS処理水」と呼称することとします。 

 って書いてありませんか?
 
 これは、ALPS処理水が
トリチウムも安全基準を満たしている」
 という意味の日本語なのでしょうか?
 
 私は、
「ALPS処理水はトリチウムの安全基準を満たしていません(だから海水で薄めて捨てます)
 という意味に理解したのですが。
(実際の放射線量は、この記事後半で触れたとおりです)
 
 申し訳ありませんが、私の理解力が乏しく、100字のブックマークコメントだけでは理解しきれませんでしたので、記事の修正は当面保留したいと思います。
 詳しくご教示頂ければ幸いです(このブコメにスターをつけている皆さんでも構いませんのでよろしくお願いします)。
 
*さらに追記
 丁寧な返信をいただきました。

(追記への説明)「海水で薄める」という手段も安全基準を満たすための手段の一つです。ALPSと海水希釈の二段構えで安全基準を満たしているという意味です。ちなみに世界の大半の海水は処理水よりトリチウム量が多いです

 薄めてるのはもちろん私も存じております。
 
 結局、
「ALPS処理水はトリチウムの基準を満たしていない」
 ということですよね?
 
「ALPS処理水の解釈が間違って」
 はいない、ということでよろしいでしょうか?
(もっと言うと、id:sisya氏のブコメこそ、善良なはてブ民の誤解を招くものなのではありませんか?)
 
 ともあれ、申し訳ないのですが、文字数制限の厳しいブコメでご返信いただいても詳しい科学的なご説明は難しいと思いますし、メタブタワーでは読者が話を追いづらいかと思います。
 まだ私に誤解があるようでしたら、ぜひコメント欄でお返事を頂ければ幸いです。
 
 正直、私自身、この記事では、希釈する前のものを「ALPS処理水」、希釈後のものを「処理水」と呼ぶように注意して書いたつもりですので、ご指摘はいささか驚きでした。
 
*追記3
 今見たら、id:sisya氏の最初のブコメ

sisya ALPS処理水の解釈が間違っています。「トリチウムは安全基準を満たしていないわけ」ではなく、トリチウム以外を全て取り除いた物を安全基準内まで薄めたものが処理水であり、安全基準は満たしています/通報しました

 になってる!?
 
 ええ……なんか通報される要素ありましたか私……?
 
 誰だって時にはうっかり間違ったことを書くこともあるし、もしかしたら私もこの記事に科学的に間違ったことを書いてるかも知れないと思うんですよ。
 だから、私に謝罪しろとは全然思わないですけど……。
 
 でもせめて、id:sisya氏は
「私はこの記事の趣旨には賛同できませんが、最初のブコメは誤りでしたのでブコメ訂正します。スターをくれた皆さんすみません」
 とか書くのが筋であり、読んでくれた人に対する誠実さなのでは……?
 
 ブコメ訂正する手間を掛けるならさあ……。
 
*他にもブコメに返信したのですが、あまりにも追記が長くなってしまった(そしてこれからも長くなる予定)上に本筋とは逸れるので、別記事に分けることにします。

*1:いや、そういう人も多少はいるのかも知れない……翌2016年の検討会の時点で、海洋放出は地下処分や大気放出などと並ぶ選択肢の一つとして出てくる。

とおくのおおきなこおりのうえを。

 1年生が長音について学習する時期となりました。
 光村の「こくご 1 上 『かざぐるま』」では、「おばさんと おばあさん」という教材で学習します。
 
 授業では、
「このクラスだと、太郎君の名前にのばす音があるね。
 口では『タロー』って言うけど、書くときは『たろう』だね」
 といった話をしました。
 
 授業の後。
 
A児「先生! うちのじいじの名前にも、のばす音があるよ!」
K村「そうなんだ! おじいちゃんの名前、なんていうの?」
A児「『じい』!」
K村「……そっかー、たしかに伸ばす音だね!」
 
 なお、ご両親の名前を知らない子もわりといる模様。
 

学校にはたくさんのいきものがいます。かんさつしてみよう!

 先日、校内に新しい掲示物を見つけました。
 飼育委員会担当の先生が貼ったもののようです。
 ほうほう、「がっこう動物新聞」とな。(制作は日本獣医師会

 
 ……おや?

 
 おやおや?

 
 ……いやほんと、この柄のマスクしてる子ほんと多いですからね……。
(市販品だったり手作りだったり、市松模様の細かさは子どもによってマチマチ)
 
www.chunichi.co.jp
(↑サムネイルだと見切れてるけど、写真右にいる男児も同じ柄のマスクをしている)
store.shopping.yahoo.co.jp
rentalpoem.jp
 
 さすが獣医師会、いきものをよく観察している……。
 
 ……この柄の商標登録は失敗したそうで、それでジャンプとは無関係のメーカーがこぞってマスクや巾着に使い始めたわけですが。
 それが単なる「小学生によくある柄」として外部の団体に補足されて描写されてしまうの、ある種天然の三次創作みたいで面白いと思いました。(いや獣医師会だって「鬼滅の刃」の存在くらい知ってるでしょうけど)
 そして商標じゃないから、ポスターに使っても問題ないわけですね。よかったよかった。
 

餅は餅屋。水道は指定業者。

 マグネットの水道業者にはぼったくりが多い、という話がバズってたので、自分の経験談を。(なおマグネットの業者は出てきません。なんだそれ)
togetter.com
 
 先日引っ越しをしまして。
 段ボールも大型家電も何もかも運び出して、空っぽの部屋に最後まで残ったのは食洗機の分岐水栓でした。パナソニックの。
 
 そもそも、この食洗機を最寄りのコジマ電気で購入したとき、
「工具があれば15分くらいで取り付けられますよ!」
 と言われた分岐水栓です。
 
 しかし賃貸の水回りで何かあったら怖い。
 そのコジマ電気で業者の手配をお願いし、取り付けてもらいました。
 
 それがもう何年も前の話。
 
 ちょっと検索すると、今はYouTubeでも分岐水栓の着脱を扱った動画がたくさんあります。
www.youtube.com
www.youtube.com
 
 で、動画ではまず、手前の一見シールみたいに見えるキャップを外し、中のネジをドライバーで外すとあります。
 
 そこで、すでに何もない家にドライバーとモンキーレンチを持ち込んで、手前のキャップを外すと……
「……なんだこれ」
 
 動画では普通のネジがあることになっていた場所には、六角形の穴が開いた何かがありました。(六角穴付ボルトとか言うらしい)
六角穴付ボルト - Google 検索
 
 いや、学校でも最近はそういうボルトを使った学習机を見るので何なのかはわかったのですが、対応する工具が手元にない。
 
 そこでもう諦めました。
 もちろん、ホームセンターに行けば細い六角レンチも売ってるでしょうけど、それで六角穴付ボルトを外した先がどうなってるかわからない。
 また特殊な工具を要求される何かがあるかも知れない未知の空間です。
 それならもう専門家を呼んだ方がいい。
 
 ……ということで電話したのは最寄りのコジマ電気。
 
「あのう、そちらで数年前に食洗機を購入したものですが……」
「はい?」
「家電に関するご相談でなくて申し訳ないのですが……」
「はい?」
 
 ありがたいことに、とうの昔に保証期間が切れている食洗機なのに、アフターサービスのために業者を手配してくれました。
(実は引っ越し業者にも「分岐水栓を外せないか」って頼んだのですが、「業者に確認したら今は繁忙期なので来月まで無理だそうです!」「それ退去日過ぎてしまう……」という展開が)
 親切にありがとうコジマ電気!(親切にしてもらったので業者名を連呼)
 
 ……で、当日、ヒゲがないマリオとルイージみたいな業者の方が来て作業を始めたのですが。
 
「ンっ! ~~~~ッ! なんだこれ!」
「ちょっとそっち押さえてて」
「んんんん~~~~! ……ちょ、これは……」
 
 大苦戦。
 
「……これ、何年くらい使いました?」
「えー……? 7・8年くらいですかね?」
「いやもう……隙間が水垢でガッチリ固まってて動かなくて……」
「ええー……そうは言われても水栓の接合部なんて掃除できないし……」
 
 世間一般のご家庭では年末大掃除に蛇口を取り外してパッキン交換とかするんですか……?
 
「蛇口本体はともかく、分岐水栓はもう使わないので、傷が付いても大丈夫です、なんとかお願いします」
「ええまあ……どうにもダメだったら『我々の手には負えません申し訳ありません』って言うしかないんですが……」
 
 で、かれこれ1時間以上、2人して叩いたり引っ張ったりの大手術の後、
「いけたあ!」
 という叫びとともに本体が回転、無事取り外しが終了しました。
 
「いやあー、通常なら1人で15分くらいで終わる作業なんですがね。接触してた部分にサビが生じて回らなくなってたみたいです」
「ははあ……」
「これは一回メンテナンスが必要だと思うんですけど……。まあ、お客さんは引っ越されるわけだし、それは大家さんが心配することでしょうね」
「お世話になりました」
「それじゃ代金ですけど……」
「こんな椅子もない部屋で一時間以上、なんか上乗せしなきゃ申し訳ないみたいですが……」
「いやいや、作業自体は規定のことしかやってないので」
 
(業者名を書きたいところですが地域が特定されるので書けない)
 
 ……というわけで何が言いたいかというと、
「水道回りの作業を甘く見ない方がいい」
 ということ。
 
 マグネットの業者やグーグル検索上位の業者をうかつに呼んではいけないのは確かなのでしょうが、だからといって自力で解決しようとせず、とりあえず管理会社とか施工会社とかと提携してるところを呼んだ方がいいと思います。
 いくら動画では簡単な作業に見えても、現場ではイレギュラーな事態が起きるかも知れません。
 マリオとルイージの2人組でも手こずるような作業に素人が手を出して辺りを水浸しにしてしまったら、マグネット業者を呼んだ方がマシだったみたいなことになりかねません。
 そうなる一歩手前で踏みとどまれて私は幸いでした。

学校勤務だけどChatGPTの使い方を考えてみた。

 春休みですね。卒業、進級おめでとうございます。
 先日の卒業式に先だって、教務主任からこう言われました。
 
「K村先生、卒業式の開式の前、保護者が会場で待機してる時間に、会場で流しておくBGMを考えて欲しいんだ。
 クラシックで……たぶん前にそういうの詳しい先生がいて、CD-Rとか残ってると思うんだけど」

 
 探したけど残ってませんでした。
(式中に使う曲のCD-Rは残ってた)
 
 さあ困った。
 私は音楽とか全然分かりません。
 音楽主任に聞いてもいいけど、音楽主任が今年度の卒業担任でハチャメチャに忙しくなかなか捕まりません。
 
 卒業式関係の曲でググると、「G線上のアリア」とか「パッヘルベルのカノン」みたいな、卒業証書授与の曲や、「桜の栞」「GIVE ME FIVE ! 」みたいな卒業ソングはたくさん出てくるのですが、「開式前のBGM」というピンポイントだと難しい。
 
はてな人力検索で聞くか……」
 
 ……と思ったその時ハッと気づいたのが
「AIに聞けばいいんじゃね?」
 
 幸いにして、ChatGPTのアカウントはすでに持っていました。
 今までは、色々なことを尋ねて、トンチンカンな回答をするのを楽しんだりしていたのですが……。
 

 テキスト起こし。

卒業式の会場で、開式前にbgmとしてクラシック曲を流します。
候補となる曲のリストを作成してください。
式典にふさわしい曲で、なおかつ明るい曲を挙げてください。

ChatGPTの回答は、

以下は、卒業式の会場で流すことがふさわしい、明るいクラシック曲の候補リストです。選曲にあたっては、学校のイメージや雰囲気に合わせて、最適なものを選んでください。
 
1.モーツァルト: アイネ・クライネ・ナハトムジーク
2.ベートーヴェン: 交響曲第9番「合唱」第4楽章
3.ブラームス: ハンガリー舞曲第5番
4.ヴィヴァルディ: 春(四季)
5.シュトラウス2世: こうもり序曲
6.ラヴェル: ボレロ
7.ショパン: 華麗なる大円舞曲
8.グリーグ: ピアノ協奏曲イ短調 第1楽章
9.ハイドン: 交響曲第45番「別れの交響曲
10.シベリウス: フィンランディア
 
これらの曲は、明るい雰囲気を持ち、式典のスタートにふさわしい曲が含まれています。ただし、式典の性格によっては、より穏やかな曲を選ぶ必要がある場合もあります。

 うおっ、すごい! 知ってる曲もあるけど知らない曲がいっぱい!
 ただ、試しにYouTubeで聞いてみると、いささか賑やかすぎる感じもしました。
 AIが
「式典の性格によっては、より穏やかな曲を選ぶ必要がある場合もあります」
 と忠告しているとおりでした。
 
 もう一度質問。

もう少し穏やかな曲でリストを作成してください。リストに
ヘンデル:水上の音楽
を含め、それに全体の雰囲気を合わせてください。

以下は、卒業式の会場で流すことがふさわしい、穏やかなクラシック曲の候補リストです。ヘンデルの「水上の音楽」を含め、全体的にやさしく優雅な雰囲気の曲を選んでいます。
 
1.ヘンデル: 水上の音楽
2.モーツァルト: アイネ・クライネ・ナハトムジーク
3.シューベルト: 交響曲第5番 第2楽章
4.メンデルスゾーン: ヴァイオリン協奏曲ホ短調 第2楽章
5.フォーレ: パヴァーヌ
6.ドビュッシー: 月の光
7.ハイドン: 弦楽四重奏曲「皇帝」第2楽章
8.ショパン: ノクターン第2番
9.サティ: ジムノペディ第1番
10.シューマン: 交響曲第1番 第2楽章

これらの曲は、優雅で穏やかな雰囲気を持っており、ヘンデルの「水上の音楽」と合わせて、式典の全体的な雰囲気に合わせた曲となっています。

 ちゃんとこちらの注文を理解してるのすごい……。
 
 ……いや、原理的にはChatGPTは何一つ「理解」などしておらず、渡されたテキストに対して「最も妥当性が高そう」なテキストを生成してるだけ、のはずなのですが、使っている限りはすごく「理解している」ように見える……。
 
 ともあれ、割といい感じだけど、今度は穏やか過ぎる感じがします。
「~を含めて」がうまくいったので、今まで挙げてもらった曲でイメージに合ってたのを候補に含めてみます。

リストに以下の曲を含めて、2つ目よりも少し壮麗な曲のリストを作成してください。
ヘンデル:水上の音楽
モーツァルト: アイネ・クライネ・ナハトムジーク
F.シューベルト 交響曲第5番 第2楽章
ハイドン: 弦楽四重奏曲第77番「皇帝」第2楽章
ショパン: ノクターン第2番
シューマン 交響曲第1番 第2楽章
ハイドン: 交響曲第45番「告別」第4楽章

以下は、卒業式の会場で流すことがふさわしい、壮麗なクラシック曲の候補リストです。前回のリストに加えて、ハイドンの「告別」交響曲の第4楽章を含め、力強く華やかな曲を選んでいます。
 
1.ヘンデル: 水上の音楽
2.モーツァルト: アイネ・クライネ・ナハトムジーク
3.F.シューベルト: 交響曲第5番 第2楽章
4.ハイドン: 弦楽四重奏曲第77番 「皇帝」 第2楽章
5.ショパン: ノクターン第2番
6.シューマン: 交響曲第1番 第2楽章
7.ハイドン: 交響曲第45番 「告別」 第4楽章
8.ベートーヴェン: 交響曲第5番 「運命」 第1楽章
9.チャイコフスキー: 交響曲第5番 第2楽章
10.メンデルスゾーン: 交響曲第4番 「イタリア」 第1楽章

これらの曲は、壮麗な雰囲気を持っており、式典の場で華やかに響く曲が含まれています。ただし、式典の性格に合わせて、曲を選ぶことが重要です。

 また警告されていますが、わりといい感じの曲を挙げてくれました。
 ……ただ、なぜかAI側で「10曲のリストを作る」という作業になってしまっていて、7曲候補を挙げたら3曲しか出してくれない……。
 
 リストに追加してもらいます。

最後のリストにさらに5曲追加してください。

以下は、最後のリストに追加した、卒業式の会場で流すことがふさわしい、壮麗なクラシック曲の候補リストです。
 
1.ヘンデル: 水上の音楽
2.モーツァルト: アイネ・クライネ・ナハトムジーク
3.F.シューベルト: 交響曲第5番 第2楽章
4.ハイドン: 弦楽四重奏曲第77番 「皇帝」 第2楽章
5.ショパン: ノクターン第2番
6.シューマン: 交響曲第1番 第2楽章
7.ハイドン: 交響曲第45番 「告別」 第4楽章
8.ベートーヴェン: 交響曲第5番 「運命」 第1楽章
9.チャイコフスキー: 交響曲第5番 第2楽章
10.メンデルスゾーン: 交響曲第4番 「イタリア」 第1楽章
11.ブラームス: ハンガリー舞曲第5番
12.シューベルト: ロザムンデ序曲
13.モーツァルト: ピアノ協奏曲第21番 第2楽章
14.シュトラウス2世: ワルツ「美しく青きドナウ
15.ワーグナー: 「ローエングリン前奏曲

これらの曲も前回のリストに比べて、力強く壮麗な曲が多く含まれています。しかし、式典の雰囲気に合わせて曲を選ぶことが大切であるため、卒業式の性格に合わせたリストを選んでください。

 ……というわけで、最終的にいい感じになりました。(この15曲をそのまま使ったわけではなく、結果的にはその半分くらいに絞ったのですが)
 
 人間相手にこのやりとりをしたら相当面倒がられると思うのですが、ChatGPTはものの数秒でリストを再提出してくれるからすごい。
 
 ……っていうか、これ、はてな人力検索は存亡の危機なのでは……?
 
 ともあれ、すでに業務でバリバリ活用されている方からしたらこんなの初歩の初歩だと思います。
 でも、公立学校ではまだChatGPTなんて使ったことない人の方が圧倒的に多いでしょうからね。
 この業界では私が最先端と言ってもいいな!
 
 ……などと思っていたらなんかもっと「先進的」な事例が出てきて仰天。
note.com
 どこやらの教育委員会で、子どものデータをAI(ChatGPTとは書いてない)に渡して、不登校などの問題行動の早期発見を行おうとしている、という話。
 
 マジか……。
 私が想像するよりずっと腰の軽い行政部局が存在したわ……。
 
 隊長が怒っているとおり、問題行動を予測するには充分な教師データが必要なわけで、それがない状態で児童生徒のデータを分析させても、プライバシー流出の危険が増すだけで、まともな結果が出るとは思えません。
 ChatGPTは、不充分なデータでも「一見もっともらしそうな回答」をしてくるからタチが悪い。
 
 ……子どもの問題行動早期発見を行うAI、というのはいずれ必ず出てくるだろうと思うのですが、それは今ではない。
 
 ともあれ、教育機関でのAI活用は思いのほか乗り気だということがわかりました。
 まあ……人手が足りないからな……。
 
 それで、「BGMのリスト作成」よりもう少し踏み込んだ作業ができないか、ということで、「日記・作文のコメント作成」を試してみました。
 
 なお、以下の例に出てくる作文等は、外部サイトに「小学生の作文の例」として出ていたもので、実在の児童の作文ではありません。
 また、最後に書くとおり、実際にAIが生成したコメントを私が教室で使っているわけではありません。
 
 まず、ネット記事を参考に、AIにやって欲しいことを定義します。

あなたは、小学校の教師として、私が示す作文に対してコメントを書いてください。
 
条件:
*肯定的なコメントをする。
*コメントは50文字前後。
*小学生の名前は増田君。
*6歳児にもわかる文章で書く。

方針:
*作文に書かれた喜ばしい内容があればそれをピックアップし、それの何が良いのかを表現します。
*必ず、作文の内容から、書いた人の努力や人間性の良さを見出し、それを賞賛します。
*作文の表現に良さがあればそれを褒めます。
*賞賛する表現は、1つずつ違うものにします。「素晴らしい」を複数回使ってはいけません。

コメントの例:
*自転車に乗れるようになって良かったですね!
*リレーで一位になれてすごいですね!
*一生懸命練習をがんばった増田君は立派ですね!
*妹と遊んであげる増田君はやさしいですね!
*いきいきした表現で、様子が伝わってきます。
*増田君のうれしかった気持ちがよくわかる文章ですね。

増田君、素晴らしい作文ですね!自分で考えた言葉がとても鮮やかで、読んでいて楽しい気持ちになりました。おめでとう!将来が楽しみです。

 私は増田君じゃねーっての。
 ……こっちの説明をすでに「作文」だと思ってコメントを始めている……。
(なお、こちらで挙げた条件は私が考えたもので、「子どもの作文にコメントする上でこれが最善だ!」というものではないです)
 
 なお、
「「素晴らしい」を複数回使ってはいけません」
 と言わないと、
「素晴らしい作文ですね! 楽しい体験ができて素晴らしいです! 増田君は素晴らしいですね!」
 とか、「素晴らしい」を連呼する現象が発生しました。
 
 気を取り直して、作文の例を投げてみます。
(以下、「作文」のテキストは以下のサイトのものです)
manabi-enjoy.com

ぼくは土曜日にお父さんと魚釣りに行きました。朝の5時に家を出発したので、とても眠たかったです。お母さんは家で留守番です。
どこに魚釣りに出かけたのかというと、海です。お父さんが「車で2時間もかかるぞ。」と言っていたけれど、本当に2時間くらい車に乗っていました。海は遠いなと思いました。海に着くと、水がとてもきれいだったので驚きました。大きな魚が釣れるかもしれないと、何だかワクワクしました。
お父さんがエサの付け方を教えてくれました。そして釣り始めました。何度か魚がエサを食べていました。でも、なかなか釣れませんでした。もうあきらめて帰ろうとしたときのことでした。ぼくの竿がグーンと大きく曲がりました。あわてて竿をつかみましたが、何も釣れていませんでした。「今日はあきらめて帰ろう。」とお父さんが言ったので帰りました。
魚は釣れなかったけれども、海で遊んだので楽しかったです。

増田君、とっても楽しそうな土曜日を過ごされたようですね!お父さんと一緒に魚釣りに行くという経験は、きっと大切な思い出になりますよ。きれいな海の風景や大きな魚を釣る期待感を描写する表現が良かったですね。次回はぜひ、大漁を期待してみてください!

 ……わりとちゃんとしている気がする……。
 

わたしは日曜日に父と博物館に行きました。博物館では恐竜展が開催されていて、いろいろな恐竜の模型が展示してありました。わたしが一番驚いたのは、ティラノサウルスという恐竜の大きさでした。映画で見たものと違って、目も口も歯も予想以上に大きかったのです。
体験コーナーでは、化石の発掘体験ができました。わたしは「化石が見つかるといいな」と思って挑戦しました。グルグルと巻いた模様のアンモナイトという貝の化石を見つけました。家に帰ってアンモナイトについて調べてみることにしました。
いつか機会があれば、また化石発掘に行きたいです。

増田くん、博物館での体験が素晴らしかったですね!ティラノサウルスの大きさに驚いたんだね。そして、アンモナイトの化石を見つけたんだね。調べるのも楽しそうですね。これからもいろいろな体験をして、興味を広げていってくださいね!

 急に語尾が「ね」になったぞ。
 
「書いた人の努力や人間性の良さを見出し、それを賞賛します」
 という条件が無視されている気がするので、条件文をもう一度渡した上で続けました。
(条件文を渡すと、またそれを作文だと勘違いする、というコントが発生しました)
 

「ドッカーン!ドッカーン!」
これは、夏祭りの花火の音です。毎年、祭りの最後に打ち上げ花火があります。きれいな花火がいくつも上がるので、わたしは花火が大好きです。
今年の夏祭りは、おじいちゃんと弟と行きました。出店がたくさんあって、何を買おうか迷いました。かき氷とたこやきをおじいちゃんが買ってくれました。たこ焼きは弟といっしょに食べました。大きなタコが入っていておいしかったです。
金魚すくいを弟がしました。大きな金魚をすくいたいとねらったけれど、逃げてしまいました。でも、お店の人が同じくらい大きな金魚をくれたのでよかったです。また来年も夏祭りに行きたいです。

増田君、素敵な夏祭りの作文ですね!花火の音や美しい光景を想像しました。おじいちゃんと弟と楽しい時間を過ごせたのは素晴らしい経験です。かき氷とたこ焼きもおいしかったようですね。金魚すくいで逃げられたけれど、お店の人が同じくらい大きな金魚をくれたのは優しい行為でしたね。また来年も楽しみにしていますね!

 お店の人の人間性を賞賛し始めてしまうChatGPT。
 

日曜日が雨だったから、わたしは一日中家にいました。家の中には、お母さんと妹とわたしの3人がいました。妹はお絵かきをして遊んでいました。
「何をかいているの?」
わたしが聞くと、雨の絵をかいていると言いました。おもしろそうだったので、わたしもいっしょにお絵かきをしました。窓から庭に雨が降っているのをながめて、絵をかきました。色えんぴつで色をぬりました。妹も上手にかいていました。できあがった絵は、お父さんが帰ってきて見せました。
「上手にかけているね。」
ほめてくれました。うれしかったです。

増田君、すばらしい日曜日の過ごし方ですね!家族と一緒に過ごす時間は大切です。雨の日でも楽しめることが見つかったのはすばらしいですね。絵も上手にかけていて、お父さんから褒められたのは素晴らしいです!家族で楽しく過ごせた日は、宝物になりますね。

「素晴らしい」と「すばらしい」は別の表現だということなのかしら……。
「雨の日でも楽しめることが見つかったのはすばらしいですね」
 が、人間性への賞賛だと言えないことはない……かな?
 

プールに行きました。
プールについて驚きました。人がたくさんいたからです。大きなプールも、小さなプールも、どのプールも人でいっぱいでした。特に多かったのは、すべり台があるプールでした。すべり台の後ろにある階段に、長い行列ができていました。
ぼくは、お父さんに泳げるようになったところを見せたかったので、大きなプールに入りました。
「お父さん、見ててよ。ぼく向こうまで泳ぐから!」
ぼくは、お父さんにそう言って、25mをクロールで泳ぎました。と中で、水を少し飲んで苦しかったけれども、がんばって泳ぎました。25m泳ぎおえると、お父さんが、
「すごいぞ。じょうずに泳げていたぞ。」
大きな声でほめてくれました。とてもうれしかったです。お父さんと競争したり、水中でじゃんけんをしたり、とっても楽しいプールでした。また行きたいです。

プールに行って楽しそうですね!お父さんと一緒に泳いだり、競争したり、じゃんけんをしたりして、とても充実した時間を過ごしたようですね。

泳ぐことは、体を動かして健康になるだけでなく、自信をつけることもできます。25mをクロールで泳ぐことができたのは、すごいことですね!お父さんからの褒め言葉も、さらに自信につながったでしょう。

また、プールにはたくさんの人がいたようですね。すべり台の列も長かったようですが、楽しんで過ごせたようで何よりです。プールに行くことで、新しい友達もできるかもしれませんね。次回も楽しい思い出が作れるように、準備していきましょう!

 

今日から、学校のオンライン授業が始まりました。休校で、ずっと友達や先生と会っていなかったので、たのしみでした。
時間になったので、お母さんといっしょにタブレットの準備をしました。画面に先生の顔がうつりました。友達の顔もうつりました。みんなと会えたので、とてもうれしかったです。
先生が、「みなさん、元気にすごしていますか。」と言いました。
ぼくは、「元気です。」と答えました。
先生の話を聞いて、オンライン授業は終わりました。明日も楽しみです。

よかったですね!オンライン授業が楽しかったようですね。家で学ぶことは、時に孤独に感じたり、退屈に感じたりすることもありますが、友達や先生と一緒に学べるのは素晴らしいことですね。明日も頑張ってください!

 自分がその「先生」だという自覚はない模様。
 
 ……ここまで、なんやかんや言って割と妥当なコメントをしてきたChatGPTですが、それは作文サイトに載っている「良い作文」だからなのでは? と思い、箸にも棒にもかからないタイプの小学生日記を投げてみました。(なので以下は自作のテキストです)

 きのう、友だちがうちにあそびにきていっしょにあそびました。
 かくれんぼをしてあそびました。
 そのあとおやつをたべました。
 たのしかったです。

それは素敵な一日ですね!友達と過ごす時間はとても大切で、楽しい思い出になりますね。かくれんぼは、みんなでワクワクしながら遊ぶので、とても楽しいですよね。また、おやつを食べるときも、友達と話したり笑ったりしながら、とても楽しい時間を過ごせますね。次回も楽しい時間を過ごせるといいですね!

 ……ちゃんとしている気がする……。
 
 ……というわけで、実験的にコメントを考えさせたところ、だいぶいい感じの文章を書き出してくれることが分かりました。
 
 ただし、それではこれをそのまま教室で使えるか、むしろすでにこういう手抜き(子どもの作文読まずにコメントするんだから「手抜き」と言って差し支えないと思います)をしている教師が存在する可能性があるか、というとまあないんですけど。
 
 なぜかというと、そもそも教室でのやりとりは紙ベースだから。
 
 子どもの文章をAIに投げるのはまあOCRで解決できるとしても、AIが出力した「コメント」を教師が赤ペンで転記するのでは、全然省力化にはなりません。
 というか、作文へのコメントって、子どもの作文読みながら同時進行で脳内に思い浮かぶと思うので、文面を考えること自体はそこまで大変でないです。
 
 まあ、子どもが作文をクラウド上にテキストで提出して、教師がそこにテキストでコメントする……みたいな環境ならこれが使える可能性はあります……が、そういう状況では、むしろ子どもの提出した作文がAI出力である可能性を考えた方がいいかも知れないですね。
 
 使えないならなんでこんなことしたんだ、という話ですが、まあ……実際使える「手抜き」を試してネットに晒すと炎上しそう、ということもありますが、何より「子どものよさを見つけ、賞賛する」という重要な仕事をAIが行えるのかを試してみたかったのです。
 小学校の教員は、「AIに代替されない仕事」の上位に入っており、数年前には「最後まで人間に残されるのはクリエイティブな仕事と感情労働」などという言説が一般的でした。
 
 しかしながら、こうして見てみると、「子どもの話に寄り添い、子どもを褒める」というまさしく「感情労働」的なことを、ChatGTPがかなりの水準で行えることを感じます。
 
 まだGTP4は試していないのですが、ChatGTPがわりとすぐ記憶を失う(「教師としてコメントする」という前提を忘れ、突然作文を英訳し始めたりすることもありました)のに比べ、長文を扱うことができ、画像にコメントすることもできるとのこと。
 つまり、子どもが書いた「アサガオのスケッチ」を見て「葉の形をくわしく書いていますね!」とかコメントすることも可能だし、なんなら、児童一人分の成績資料を渡すと通知表のコメントを書くことが……できるのはまだ先かも知れませんが、いずれ可能になるでしょう。
 
 ファミレスで配膳を行っているようなロボットが教室内を「担任サポートロボット」として周回し、「字が上手になりましたにゃー!」「いい姿勢でかっこいいにゃ!」「けんかはやめてにゃー!」とか子どもに声かけする時代はそれほど遠くないのかも知れません。
 ……少なくとも、私が高齢者施設に入る頃には、介護支援ロボットがいっぱい「感情労働」をやっていそうな気がします。