夏休み自主研修の続き。
今回の本はこれ。
「自分で試す 吃音の発声・発音練習帳」。
前回の本「吃音の合理的配慮」は、
「吃音は自然に治ることはあるけど、意図的な訓練で治ることはない」
という立場でしたが、これは一転して吃音を軽減するための自己トレーニングの本。
吃音のある子に「こういう練習をしてみるといいかも」と勧めるのに使えるのではないかと。
本の前半は段階を追ったトレーニングで、後半は吃音FAQ。
トレーニング
1準備 2発声練習 3発音練習 4苦手な場面の練習 5発話時の感覚を高める練習(および、6練習の継続と終了)の、5段階46課題が掲載されているのだけど、おおまかに箇条書き的にまとめ。
体の力を抜く(のび・腕を前後に振る)
舌ストレッチ・のどマッサージ
肩の運動
腹式呼吸(「んー」10秒)
意識的な呼吸(横隔膜の筋力)
声帯の震えを自分で感じる(あいうえお・かさたはなまやらわ)
声帯の震えを途切れさせずに音読する
声帯振動の開始を捉える
話し始めの一拍目が短すぎないよう意識する
息継ぎをゆっくり(3拍)
話したい内容で練習する
ア行(有声音)
ヤ行・ワ(半母音)(複合した母音)
(本人からのカミングアウトについて)
マ行・ナ行(鼻音)鼻筋に触れる
ダ行・ガ行・バ行・ザ行(無声音)声帯振動の遅れを感じる(やってみたけどよくわからなかった)
ダ行・ガ行・バ行・ザ行・ラ行(舌や肩に力が入りがちなので意識して力を抜く。ゆっくりと)
タ行・カ行・パ行・サ行・ハ行(無声音)
イ段(舌やのどに力が入りがち。発話前の吸気で力が入らないように)
拗音(ゆっくり。「きゃ」なら「きーいーや」の「い」で声帯振動が始まる)
促音
苦手な音(発音しづらい音は変化するので、それを意識して記録する)
イメージトレーニング。
あいさつ、会話、発表、食事の注文、電話の受け答え、面接など、場面や相手を想定して練習。
固有名詞。
大きな声を出す。
軟起声(少しずつ声を大きくする)
間を取る
*「声帯の振動を感じる」という話がよく出てくるのだけれど、それが吃音とどうつながるのか私には今ひとつよくわからない。いいづらい音を発音する時の口や舌、のどの状態をおぼえる、ってことなんだろうか。
*間を長く取ること。本人だけでなく、吃音の人と話す側も、間を長く取って返事をするように心がけるとよい、というのは、担任にとって有益なアドバイスだと思いました。学校は忙しいので、ついついむしろ食い気味に返事をしてしまったりする……。
FAQ
吃音の人本人や、保護者からよくある質問20問への回答。
「質問の中には、決まった回答がないものや、専門家の間でも意見が分かれるものも含まれています。そのため、異なる2つの視点からの回答を載せました」
ということで、1つの質問に対して2つの回答が書いてある。しかしそれぞれが誰の回答なのかが書いてない謎。
筆者が言語聴覚士2人だから、それぞれの回答ってことなんだろうか……? でも、添えてある回答者のイラストがバラバラなんだけど……?
まあ、異なる視点からの回答があるのはちょっと面白いかな、と思いました。
質問としては、
「吃音は遺伝しますか」
「吃音はなおさなければいけないものですか」
「カミングアウトしたほうがいいですか」
「吃音が原因で不登校になり引きこもっています」
「親ができることはありますか」
「先生にどう伝えたらいいですか」
「言語治療で吃音はなおりますか」
など。
本書でも、吃音がある人の割合は1%程度とされていました。
自然になおらない人がそのうち20%程度だとも。
吃音があって漫才師やアナウンサーになっている人もいるので、吃音があるから絶望だ、と悲観する必要はない(逆に言って、どんなに話し方が流暢でも、他の面で資質に欠けた人は採用されない)。
トレーニングに取り組んだり周囲の協力を求めるのは必要なことだが、本人の意思を無視して進めることのないように。
吃音の「なおる」には色々な定義があるが、本書にあるトレーニングは
1・言語聴覚士との会話や音読で吃る頻度を減らす
2・日常生活で会話を避けなくする、言葉を置き換えることを減らす
3・自分で必要な練習を継続できるようにする
ことを目的にしている。完全に吃音をなくすことは目標ではない。
病院の言語訓練で症状は緩和されるが、それに必要な期間は人により千差万別。
吃音の子は何人かいますので(連発が明らかな子もいるし、遅発が疑われる子もいる)、その対応のために参考にしたいと思います。