「日本じゃなくて、“Japan”」?

 英語学習の時間がありまして。
 
 で、英語のCDをかけるわけです。
 給食の時間とかにも、英語の歌が流れたり。
 
 バリエーションはいっぱいあるんですが、その中に、正しい英語の発音を覚える歌があります。
 
 軽快なメロディーに合わせて、男女が
「バナナじゃなくて、“banana”!」
 とか歌います。
 
 まあ、それはわかります。
「ice cream」の発音は、決して「あいすくりーむ」ではないですものな。
 
「ホチキスじゃなくて、“stapler”!」
 ……というのも、まあ。わかります。
 うっかりすると「ホチキス」が英語のような気がしてますものな。*1
 
 でも、
「エジプトじゃなくて、“Egypt”!」
 とか
ギリシャじゃなくて、“Greece”!」
 とかって、どうなの? という気が。
 
 再びWikipediaに依れば、いわゆる「エジプト」は

正式名称は、アラビア語で جمهوريّة مصر العربيّة。ラテン文字転写(一例)は Jumhūrīya Misr al-‘Arabīya)。通称は、مصر(Misr)。

 「エジプト」だの「埃及」だのが現地人的に正しい発音だとは全然言えませんが、じゃあ「Egypt」が正しいかと言えばこれも全然。
 「ギリシャ」にしても、

正式名称はギリシャ語で Ελληνική Δημοκρατία (ラテン文字転写はEllinikí Dhimokratía、読みは「エリヌィキ・ジモクラティア」)。通称は Ελλάς (ラテン文字転写:Ellás、読みはエラス、古典語ではヘラス(Hellás))または Ελλάδα(ラテン文字転写:Elláda、読みはエラザ)。

 なんだよGreeceって。
 
 というか、例えば「ヘラクレス」だと、ギリシャ語では「ヘーラクレース」に近い発音で、英語では「ハーキュリーズ」なんですよな。
 どっちかというと和風発音の方が原語に近い気がする。
 
 まあ、原語に近ければ偉いってわけではないですけど、
ヘラクレスじゃなくて、“Hercules”!」
 みたいに、「和風発音=誤 英語=正」、みたいな言い方を無批判にするのもいかがなものかな、と思います。
 
 だって、その伝で言うと、
中華人民共和国*2じゃなくて、“China”!」
 とかいう話になっちゃいますから。
 
 ……なーんてことを、ついこの間
「英語が世界共通語になるのは必然だよ」
 とか書いた人が言うわけですが。*3
 
 ともあれ、英語教育大変結構とは思うのですが、それが
「英語こそ真の“外国語”であり、その他の雑多な諸言語はおまけである」
 みたいなことを暗黙の了解にするのではなく、
「世の中には色々な言語が存在し、英語もその一つである」
 という立場に立ったものであれば良いなあ、と思っています。

*1:あれをホチキスと呼ぶのは、日本で初めて販売されたstaplerがE.H.Hotchkiss社の製品であり、呼び名が「ホッチキス自動紙綴器」であったことに由来する、と、Wikipediaに書いてあった。
 ちなみに機関銃のホチキス社とは縁もゆかりもないのだそうな。がーん。
 ……しかし、「ホチキス機関銃」って、撃たれるとえらく痛そうな名前ですよな。

*2:発音は「ジョンファ・レンミン・ゴンフゥグオ」。

*3:全体の趨勢と個別の事例は別、だと思ってるので、言ってる本人の内部では矛盾してるつもりがない。悪質。