なんか普通にだらだら書いてみる。
小学5年理科。
K村「ここにインゲンマメの種があります。……もう買って2週間くらいになるんですが芽が出ませんよおかしいなー。不良品かな?」
A児「袋に入れっぱなしじゃ出ないに決まってますよ先生」
K村「えーなんで? 芽ってなんか出る条件があるの? じゃあ例えば、これを宇宙空間に放り出したら芽は出るかね?」
B児「出ませんよー」
K村「ふーん? みんなの意見も同じ? じゃあ、プリント配るので、宇宙では芽が出ない理由を書いてごらん」
さて問題。
植物(ここではインゲン)が発芽するために必要な条件は次のうちどれでしょう。(複数)
・空気
・光
・磁場
・放射線
・適切な温度
・周囲の土
・土中の水分
・土中の養分(肥料など)
回答は脚注で。*1
K村「グループごとに、芽が出るために絶対必要なものが何か予想しましたね? それを確かめるために実験をしましょう」
スチロールの使い捨てコップ*2の中にインゲンを植えます。
で、それをそれぞれ違う条件の中に置いて、芽が出るかどうか確認するわけです。
K村「さて。ちょっと考えてみよう。例えば、
A:水をやらない・光に当てない・肥料をやらない
……というインゲンに芽が出なかったとします。
で、
B:水をやる・光に当てる・肥料をやる
……というインゲンは芽が出たとします。
この場合、
“芽が出るためには水と光と肥料が必要だ”
……と言えるでしょうか?」
C児「言えるんじゃない?」
D児「言えないと思う」
K村「なんで?」
D児「んー、全部いっぺんにやったから、どれが関係あるのかわからない」
K村「そうですね。水と光と肥料、3つの条件を一度に変えたら芽が出たわけですが、実は水は関係ないのかも知れない。光は関係ないのかも知れない。
だから、3つの条件について確かめたければ、全部を与えた場合の他に、水がない場合・光を与えた場合・肥料を与えた場合……の、全部で4つの実験をする必要があります」
……という考え方でいいんですかね?
2つが欠けた場合とか、順列組み合わせでやる必要があります?
E児「せんせー、重力が必要だと思うんですが、重力がない場合ってどうやって実験したらいいですか?」
K村「……それは無理っぽいな」
宇宙とか余計なこと聞かなきゃ良かったかも。
F児「ぐるぐる回し続ければいいんじゃない?」
K村「……その方法を見つけたらやってみましょう」
ちなみに、一応発芽はするが伸びる方向が定まらない、が正解みたいです。
(特に根。茎は、地上に出た後は日光を感じて伸びるが、根は重力を感じて下に伸びるので)
参考:JAXA|植物は無重力でどうなるの
G児「種が絶対必要ですよ先生!」
K村「ははは。そりゃまあそうだなー」
H児「種を植えた後の事を言ってるんだからそれはおかしいと思います!」
K村「……そんなムキにならんでも……」
いや、まじめに授業しろよ。
I児「先生、男子が遊んでてちゃんと実験の準備しません!」
J児「先生、女子が勝手に話進めておれたちの意見聞いてくれません!」
K村「あー、なんか新鮮だなその雰囲気」
小規模校にいると「男子が」「女子が」みたいな括りは乏しくなるので。
いや、だからまじめにやれよ。
ともあれ、そんなこんなで、子どもたちの実験は、
「水・空気・温度・土・光」
……といったところに落ち着きました。
K村「実験に必要な物があれば買いますので言ってください。光は? 箱をかぶせるんですね? 空気がないってのはどうやって作るの?」
K児「ラップで包むとか……」
L児「水に沈めればいいんじゃない?」
K村「ラップで包むと水も通らない気がしますね。温度は?」
M児「冷蔵庫に入れればいいと思う」
N児「氷で冷やす!」
K村「芽が出るまで、氷が溶けるたびに交換するのか……? 悪いことは言わないから冷蔵庫にしときな」
まあ、大体予想通りの展開でしたが。
さて第2問。
ここまでの実験で、科学的手法として問題があるのはなんでしょう。
……正解はこちら。
O児「……ねえ先生、冷蔵庫に入れると、温度が低いだけじゃなくて、光も当たらないから、条件が一度に2つ変わっちゃいますよ?」
……いや、素晴らしい科学的態度。
教科書でも冷蔵庫に入れることになってるんですけどねー。
科学的じゃないよなー。
K村「……なんか方法を考えます」
で、冷蔵庫の庫内灯を、ドアを閉めても消えないようにできないか試したけど挫折。
給食室にガラス張りの冷蔵庫があるので入れさせてもらえないか聞いてみたけど不可。*3
結局、乾電池と豆電球でお茶を濁すことにしました。
許せ。
*追記
なんか予想外にブックマークとかもらったので返信。
>WinterMuteさん
>”宇宙とか余計なこと聞かなきゃ良かったかも” でワロタ。
その辺は悩みどころなのですが、
「別な聞き方にすりゃよかったかな?」
と思っているところです。(だから、全く無計画に質問したわけでもない)
授業の流れとして、「発芽に必要な条件(予想)」の中に水と空気と温度の3つが出て来なきゃならないんですが、水はともかく空気というのは当たり前にありすぎて、逆に気づかないんじゃないか、と考えたわけです。
(温度もそうではある)
そこで、
「宇宙では発芽しない」→「発芽するために必要な条件は?」
と問うことで、空気という案が自然に出てくるのでは、と考えました。
その意味では、宇宙について聞いたのは成功だったのですが、条件があまりに特殊すぎて、実験が難しい意見も出てきてしまったな、というのが反省です。
(「バンアレン帯!」とか言い出す子がいたらどうにもならんところだった)
……実のところ、20%くらいの子は「正解」を予習してきてたりするので、こんなに凝らなくても、グループで実験の条件を話し合う時に、「空気と水と温度(+α)が必要」という予想にはなったと思うんですけどね……。
でも逆に、予習してきた子にとっても、「重力って必要なのか?」とか、教科書にない範囲を考えさせる機会になったかなー、とか……。むむ。
ちなみに、重力については結局実験できなかったわけですが、件のJAXAのページを資料にして、子どもたちに教えてやろうと思っています。
べ、別にこのブログの読者に教えるために調べたわけじゃないんだからね!
>yukitanuki
>冷蔵庫は落とし穴だなー。
教科書だと、最初から
「水がない場合・温度が低い場合・空気がない場合」
で実験することに決まっているのです。
(一応、条件を予想して話し合うことになっているものの、それ以外の条件は「出ないことになっている」)
光は関係ない、という予想であれば(事実そうなのですが)、光はあってもなくてもよいわけで、冷蔵庫で実験してもまあ誤りとは言えない。
>弟
>空気・光・磁場・放射線・適切な温度・周囲の土・土中の水分・土中の養分(肥料など)
>以上の8項目で、それぞれ有る無いのすべての組合せを試すと、パターンは256通りになります。大変ですね。
>計算量爆発問題ってやつです。
実際に8項目を「不可欠な条件」として出してきたグループはいなかったけど、5項目(32通り)でも充分大変ですわな……。
>発芽には植物さんへの思いやりが必要なのですよ。イエース。
「ありがとう」という言葉をかけてやることも大切ですな。