試される大地。

 何の脈絡もなく、昔、北海道で聞いた話を思い出したので。
 うお、気がつけばもう10年前ですか。
 僻地の……酪農地帯の小規模校でした。
 
 地域の高齢者と交流する、という集会がありまして。
 で、おじいさんおばあさんに学校に来て頂いて、色々お話を聞いたのです。
 
 で、子ども達からの質問タイム。
 
 ……とはいえ、そこは子どもですから、昔の暮らしとかについての有意義な質問もあれば、どうでもいいような質問もあるわけです。
 
 3年生の女の子が、
「おばあさんの好きな花はなんですか」
 
 すると、聞かれたおばあさんは困ったように口ごもり、
 
「私らの時はねえ……。
 楽しみで花を育てる、という余裕はなかったですから。
 ただねえ……。
 牛を飼ってたんだけど、やっぱり大変で、本土に帰ってしまったお家もあってね。
 そうすると、その人らが植えていた……なんでしょう、水仙? がねえ、次の年に、誰もいなくなった家の前でまた花が咲いて……。
 ああ、人間はいなくなってしまっても、花はまた咲くんだなあ……と……」
 
 重すぎる。
 
 これ……以前の話とは言え、聞き取ったのは平成の話ですよ?
 北海道開拓の歴史って、本当に大変だったのだなあ、と。