昔書いたことですが、朝の会で、日替わりでいろんなことをやっています。
読み聞かせとか、なぞなぞとか。
で、その中に「先生の昔話」というコーナーがあります。
文字通り、担任が昔のちょっとしたエピソード(主に失敗談)を話すのですが、これがよくネタ切れになります。
……小中学生の頃の「1分間スピーチ」では、よく自分の「幼稚園の頃の話」をして笑いをとっていた記憶があるのですが……。
しかし、あのとき私が何を話していたのか、もう記憶にありません。
……中学の時は覚えていたけど今は忘れている幼児期の記憶、というのもあるんですよ。
ちょっとショック。
ともあれ。
そんなわけで、仕方なく、全然関係ない話をしたりします。
この間は、「こわい話がいい!」というリクエストだったので、
「ほんとに? 聞かない方がよかった!……って思うかもよ? 一人でトイレに行けなくなっても知らないよ?」
と脅した上で、怪談をやりました。
効果覿面だったのでご紹介。
わりと有名な話ですが、ちょっとアレンジしてあります。
「カシマさんの話」。
カシマさんの話をします。
カシマさん、というのは、幽霊の名前です。
髪の長い、女の人の幽霊で、本当の名前は「カシマレイコ」さん、といいます。
カシマさんは、子どもが大好きです。
カシマさんは、夜、子どもが一人で部屋の中にいるとやってきます。
そして、外から、窓を「コン コン」……と、ノックします。
その子がトイレに一人でいるときは、トイレの窓をノックします。
部屋が2階にあっても、2階の窓を外からノックします。
それから、
「お暇ですか?」
と、尋ねてきます。
この質問に、正しく答えられないと、カシマさんは部屋に入って来て、その子を連れて行ってしまいます。
連れて行かれた子がどうなるのかはわかりません。
……誰も帰ってこないからです。
ノックしたとき、その子が寝ていると、カシマさんはあきらめて帰っていきます。
でも、その子の目が覚めていると、たとえ寝たふりをしていても、カシマさんにはちゃあんとわかってしまいます。
カシマさんに
「お暇ですか?」
と聞かれたら、すぐに正しい答えをしなければいけません。
正しい答えは、
「お暇ではありません。カシマさんです」
です。
すぐに答えなかったり、言い間違えたりすると、カシマさんに連れて行かれてしまいます。
……ただ、カシマさんは、どの子のところにでもやってくるわけではありません。
来る子どもは決まっています。
それは、「カシマさんの話」を聞いた子どものところです。
……カシマさんの話を聞くと、その後一年の間に、必ず1回、カシマさんがやってきます。
カシマさんが来た時にたまたまその子が寝ていれば、気がつかないかも知れません。
カシマさんがやって来るのは1回だけです。
1回やって来て、その時その子が寝ていたり、起きていたけれど、正しい答えを言えたら、もう2度とやって来ることはありません。
寝ている間に来るといいですね。
ただ、もしその子が眠っていても、ノックの音で目が覚めてしまうと、やっぱりカシマさんは
「お暇ですか?」
と聞いてきますから、気をつけてくださいね。
……これで、カシマさんの話は終わりです。
子どもたちきゃあきゃあ言ってました。
「“カシマさんの話”を聞いた子どものところです」
のくだりでは、あわてて耳を手で押さえる子がいたり。
遅えよ。
「カシマさんではありません」をメモにとる子がいたり。
「今夜こないかなー」とか。
わはは。
……“怪談”という文化が廃れないのは、怖がる子どもを見て喜ぶ大人がいるからじゃないか、と思ったりします。
ええと、要するに、夏休みを控えて、「夜は早く寝ろ」というメッセージを込めたわけですね。
で、先日、ある子のおばあちゃんに会ったんですが。
「あの子、ああ見えて臆病なんですよ。お便所に行くときなんか、居間のすぐそばなのに『そこにいてね!』とか言うんですよ」
……やべえ、効果覿面すぎる。