編集合戦とは。

教育基本法について説明する文章を考えてみましょう。
 

教育基本法

 

概略

教育基本法は、日本の教育のあるべき姿を定めた法律である。(とあるが、本当だろうか? 書かれているのは本当に「あるべき姿」なのか)
教育に関する諸法規の運用や解釈の基準となる性格を持つことから「教育憲法」「教育憲章」と呼ばれることもある。ということになっているが、実際には教育基本法を念頭に置きながら仕事している人なんて、学校にも教育行政関係者にもほとんどいない。
制定されたのは昭和22年(1947)だが、平成18年(2006)に全面改正された。本当は改悪に近い。
基本法は、戦後教育の基礎とすべく、教育刷新委員会の審議を経た後、国会(現行憲法制定後の、最後の帝国議会)で原案通り可決された。(ということになっているが、実際には教育使節団のお仕着せに過ぎない、というのは暗黙の了解である)
しかし、戦後60年を経て(といっても改正論議自体はずっと前からあるのだが)、21世紀を切り拓く心豊かでたくましい日本人の育成を目指す観点から(というのは建前で、憲法改正につなげたいだけである)、内容の見直しを図るべきであるとの声が高まり、改正に至った。(やらせTMで声が高まっていただけで、一般には別に高まってはいない)
 
……読みづらい。
 
と、思うんですが、どうでしょう?
 
いかに議論のあるトピックだとしても、一つの文章の中で賛否が入り乱れているのは非常に読みづらいわけです。
 
また、「教育使節団」とか「やらせTM」とか、一般にはなじみのない用語・略語を説明なしで使うのも読みづらさを増しています。
……といっても、この文章で
「教育使節団」

GHQの要請に基づき、日本の教育再生のためにアメリカ政府から派遣されたアメリカ教育使節団」
と書き換えたら、読みづらさが増すだけですが。
 
構成を変更してみます。
 

教育基本法

 

概略

教育基本法は、日本の教育のあるべき姿を定めた法律である。教育に関する諸法規の運用や解釈の基準となる性格を持つことから「教育憲法」「教育憲章」と呼ばれることもある。
制定されたのは昭和22年(1947)だが、平成18年(2006)に全面改正された。
基本法は、戦後教育の基礎とすべく、教育刷新委員会の審議を経た後、国会(現行憲法制定後の、最後の帝国議会)で原案通り可決された。
しかし、戦後60年を経て、21世紀を切り拓く心豊かでたくましい日本人の育成を目指す観点から、内容の見直しを図るべきであるとの声が高まり、改正に至った。
 

関係する議論

形式上は日本の議会での議論を経て成立したことになっている本法であるが、その基礎となったのは、アメリカ教育使節団(GHQの要請に基づき、日本の教育再生のためにアメリカ政府から派遣された)の報告書であることから、旧教育基本法について、アメリカのお仕着せに過ぎない、として改正を求める声は以前からあった。
一方で、改正に先だって行われたタウンミーティングにおいて、市民側参加者に内容を指定して質問を依頼し、謝礼を支払っていたなどの「やらせ」が明るみに出、問題となった。
教育基本法改正そのものが、憲法改正に弾みをつけるためのステップとして扱われているのでは、という批判もある。
 
……どうでしょうか、こっちのほうが読みやすいと思うんですが。
 
主張A(反論A)
主張B反論B
主張C(反論C)
 
という形よりも、
 
・見出し1
主張A
主張B
主張C
・見出し2
反論A
反論B
反論C
 
という形にした方が、読む側は混乱しなくて済むと思うわけです。
 
……何が言いたいかというとですね。
 
はてなキーワードの「Wikipedia」の項について。
http://d.hatena.ne.jp/keyword/Wikipedia
 
現状、「読みづらい例」の見本みたいになっています。
……たぶん。
 
編集合戦が繰り広げられているので、あなたが見た時にはそうではないかも知れませんが。
 
編集画面見ていただけばわかる通り……と言っても、はてな市民でない人には見られないので、画面キャプチャしたものをはっておきますね。
 
まず編集履歴

 
はてなキーワード、自分が一度編集したキーワードに手が加えられると、通知メールが来るのです。
最近、「Wikipediaとは」から連日のようにメールが来るので何事かと思えばこの有様。
 
そしてコメント欄。

 
私のコメントの後にも、tutumoereさんのコメントがついてたはずなんですが、消えていますね。
(お断りしておきますが、そんなに敵意に満ちたコメントではありませんでした)
なお、個人情報らしきものにはフィルタをかけています。あしからず。
 
誤解しないで頂きたいのですが、私は別にWikipediaの肩を持つわけではありません。
 
英語版では、「科学分野の話題を扱った項目の正確性では『ブリタニカ百科事典』に匹敵する」なんて言われたりもするWikipediaですが。
http://wiredvision.jp/archives/200603/2006032702.html
 
しかし、↓のリンク先にもある通り、Wikipedia日本語版の運営には疑問もあります。
http://beyond.2log.net/akutoku/topics/2007/0408.html
 
その他、参加者全般の水準に疑義を呈する声もあり……と、引用しようとしたら記事が削除されてた。
仕方ないのでGoogleのキャッシュにリンク。
http://209.85.175.104/search?q=cache:aBuTKESGQhAJ:d.hatena.ne.jp/yoriyuki/20061228/p1+%E7%9F%A5%E7%9A%84%E3%80%80%E8%A8%93%E7%B7%B4%E3%80%80%E6%8D%8F%E9%80%A0%E3%80%80Wikipedia&hl=ja&ct=clnk&cd=1&gl=jp

現実の日本語版Wikipediaでは参考文献が挙げられることはあまりないし、挙げられていたとしても一般のWebページであったりすることが多い。
参考文献は、最低でもauthourshipが明確で、常に参照でき、できれば専門家のreview process(学術誌の論文や公的機関の報告書などで行われるような)を経たものが好ましい。
また、日本語版Wikipediaではvalue-loadedな用語、例えば「捏造」といった言葉が乱用されている。
単に「XXXによるとこの主張は誤りである」と書けばよい。
捏造という言葉は、誤った主張をするものが意図的にそれを行った、ということを意味しており、それはそれで興味深い事実であるが、それは別に議論するべき話題であって、その主張自体の成否を論じるときに、そのようなnegativeな価値をもつことを自明とする用語は避けるべきだ。
(改行修正引用者)

いやまったく。
 
「これは個人的な感覚でうまく説明できないのだけれど、日本語版Wikipedia文体全体がそもそも知的な訓練を経た人物が書いたものとは思えないように感じる」
 
そう思える部分もあります。
 
はてなキーワードは百科事典を目指したものではありませんが、みんなで使うものである以上、「個人ブログよりも高い水準が求められる」のは同様と思います。
少なくとも議論の場ではありません。
 
もちろん、唯一の「正しい」見解のみを掲載すべき、とは全然思いません。
議論があるなら両論併記でいくべきだと思うのですが、しかし、「両論」が混在しているのは非常に読みづらい。
 
最低限の読みやすさは必要です。
みんなで使うものなんですから。
 
具体的には(すでに書いた気もしますが)、
Wikipedia運営側による見解」
「運営方針に対する疑問」
とかいう見出しをそれぞれ別に立てて、そこにそれぞれ書きたいことをまとめたらいいんじゃないかと思います。
 
それでも相手に消される、というのであれば本格的に問題だと思いますが、だったら自分ではてなダイアリーに記事を書いてリンクするとか、はてなダイアリーがプライベートモードなんです、という人ははてな匿名ダイアリーというものもありますし。(プライベートモードでも使えるものなんですよね? あれ)
 
いずれにしても、自分が書いた文章に無断で(というのは真っ赤な嘘)とか書かれたり、全面削除されたりした腹が立つし、フレーミングの火種を撒くようなものです。
 
やられて怒る人にはスルー力が必要なのかも知れませんが、やる方もどうかと思います。
 
それと、略語とか、一般には馴染みの薄い関連用語とかを説明抜きで多用するのも避けた方が賢明かと思います。
大学時代、全学連のビラを読んで思ったのは、狭い範囲でしか通用しない用語を平気で使う人は、広範囲の理解を得ることはないよなあ、ということです。
http://www.zengakuren.jp/
 
全学連にせよWikipediaへの問題提起にせよ、広く一般大衆(人民?)の理解を求めたいはずで、みんなに通じる言葉で書くのは大切だと思います。
 
ともあれ、はてなユーザーの一人として、はてなキーワードは使いやすいものであって欲しい、というのが、私の願いです。
 
(……しかし、通知メール、過去に「Wikipediaとは」を編集したほとんどの人に届いてるわけですが。
ほとんどの人は等閑視してるわけですよね。
……一番スルー力が必要なのは私か……)