日本における民族教育について。

ニュースから。
ちなみに今回オチはありませんよ?
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20070117i405.htm?from=main4

朝鮮学校生の受験、玉川大「資格ない」と拒否
神奈川朝鮮中高級学校(横浜市神奈川区)の高級3年の男子生徒(18)が、玉川大(東京都町田市)の入試に出願しようとしたが、大学側から「試験を受ける資格がない」として拒否されていたことが17日、わかった。

 学校教育法では、朝鮮学校は「各種学校」。入学資格の有無については2003年の施行規則改正で、各大学が個別に判断できるようになっている。

 在日本朝鮮人人権協会(東京都台東区)によると、国立大学では現在、朝鮮学校の生徒に受験資格を認めていない大学はなく、私立の4年制大学では「改正以後、拒否は初めて」としている。

 神奈川朝鮮中高級学校によると、この生徒は玉川大農学部を志望。中高級学校が10日、玉川大に出願資格を問い合わせたところ、高等学校卒業程度認定試験の合格が必要と拒否された。

 玉川大は「各種学校については、すべて平等に高等学校卒業程度認定試験の合格を求めている」としている。

他のいくつかの新聞でも似たような報道ですね。
 
http://news.goo.ne.jp/article/kyodo/nation/20070116a4600.html
http://www.chunichi.co.jp/flash/2007011601000356.html
http://www.asahi.com/national/update/0117/TKY200701170455.html
 
で、朝鮮新報の記事によれば、
http://www1.korea-np.co.jp/sinboj/j-2007/02/0702j0119-00002.htm
18日、同校教員や人権協会の弁護士ら5人が玉川大を訪れ(写真)、個別審査を要求、入学資格認定書交付申請書を提出した。
 
だそうで、つまり闘う姿勢なわけですね。
 
さて。
 
私自身は、この問題に関しては体制寄りの立場でして。
 
というか、そもそも朝鮮学校出身者に大学受験資格を与え得る、という政府の規定自体がおかしいと思っています。
フリースクールでさえ疑いの目で見ているくらいですから、私。
 
例えば、そこらの一般人が近所の子どもを集めて勉強を教えたとして、
「うちは学校だ。卒業生に一条校*1並みの卒業資格を与えろ。助成金もよこせ」
……と主張したって、それは認められないわけですよね。
それは「私塾」であって、「学校」ではないですから。
 
じゃあ、「学校」とは何か、となると、政府の細かな規定があります。
 
施設・設備について言えば、校舎・校庭の広さ、図書室がなければならない、保健室もなければならない、通風や採光、天井の高さ……etc。
 
同様に、職員の資格、人数、その職務(校長・教頭・養護教諭……)などについても規定があります。
もちろん、教育内容についても、学習指導要領の定めがあるわけです。
 
実に煩瑣な規定ではありますが、そういった最低限の基準を法で定めることによって、教育の水準を保障し、国民全てが一定以上の水準の教育を受けることができるようになっているわけです。
 
「画一的だ」という批判もあるでしょうが、これらは最低限満たすべき基準を定めたものであって、例えば規定より広い校舎であっても何ら問題はないわけです。*2
 
私個人の信念では、
「すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。」
という憲法の定めは、ほとんど神聖なものです。
 
そうして、誰もが一定以上の水準の教育を受けられるべきだ、という公教育の理念も、やはり神聖なものです。
 
ところで、朝鮮学校は、このような政府の定める基準を満たしていません。
 
というか、基準を満たしているかどうかについての政府の調査を拒否しているため、満たしているかどうかを判断しようがありません。
 
教育内容についても、授業時間については政府の規定に「だいたい」一致している、とされていますが、その内容がどういったものであるかはよくわかりません。
(ちなみに日本語は「外国語」扱い)
 
その上、朝鮮学校で生徒の教育にあたる職員は、朝鮮大学校の卒業生であることが資格とされ、日本の教員免許は取得していないわけです。
 
施設・設備も教育内容も職員も、何もかも日本の規定を満たしていないのに、日本の高校卒業資格を与えよ、という主張自体無理があると私は思います。
 
そういうことを言うなら、日本の教員にも朝鮮学校の職員になる資格を与えたらいいじゃないですか?
 
民族教育というものの必要性はわからないではありませんが、
 
・法的な地位を要求する
・でも、それに見合う内容があるかどうかの審査は拒否する
・その上、政府の教育予算まで要求する
 
……というのは虫が良すぎるし、そのような朝鮮学校の主張を認めるのは、むしろ公教育の理念に反すると思います。
 
学校とは、子どもに一定水準以上の教育を施す機関だ、というのは妥協すべきでないことであって、過去の歴史的事実とか何とかかんとかを斟酌する余地はないと考えます。
 
無論、私も「世界中の学校が文科省の基準を満たすべきだ」みたいな教育的八紘一宇思想を持っているわけではありません。
日本国内においても、例えば、イギリスなりドイツなり、他国の政府がその教育水準を保障した学校について、日本でも一定の校種と同等の水準を満たしていると認める、といった制度も必要と思います。
制度上も「民族学校」の区分を定めた上で、民族学校においては教科「民族教育の時間」を設けられることにする、といった措置も必要かも知れません。
 
ただ、他国の教育制度に従って運営されている学校を、日本の教育機関と同等のものとして認定するためには、相手国の教育制度について十分に調査して、信頼がおけると判断した上でないとならないのは当然でしょう。
 
で、朝鮮学校(及び北朝鮮)って、そんなに信頼できるんですか?
 
到底そういう状況にない、というのが実状ではないでしょうか。
 
いわゆる朝鮮学校とは別に、韓国政府の後援で設置されている韓国学校については、現に一条校の指定を受けている学校があるわけで、民族差別だとかいう指摘はあたらないと思います。
 
現状、一条校並みの卒業資格が必要なら、一条校並みの施設・設備・職員・教育内容をそろえて政府の認可を受け、民族教育は道徳とか総合的な学習の時間を活用して行ったらどうかと思います。
 
ともあれ、
「受験したいなら大検を受けるべきで、各種学校朝鮮学校だろうがアメリカン・スクールだろうが同じ扱いですよ」
という玉川大の見解は筋の通ったものだと思います。
 
玉川大の毅然たる対応を望みます。

*1:学校教育法第一条に定められた、いわゆる「学校」。幼稚園や小学校、中学校、高等学校、大学、専門学校、養護学校などなど。

*2:学習指導要領の内容に納得しているか、というのはまた別の話ですが。