素人にもわかりやすい政治。

安倍晋三総理と愉快な仲間たち教育再生会議教育基本法のみならず、学校教育法などの改正にまで踏み込むつもりなんですね。
 
いやあ、油断してました。見損なってました。
 
今まで、教育基本法改正だって、どうせ「教育改革に本気で取り組むポーズ」を国民に示して支持率を稼ぐためにだろうと思ってましたが。
どうやら安倍総理、本気で教育改革に取り組むつもりのようです。
 
……日本はどうなってしまうんでしょう。
 
そんな首相の本気の教育改革をサポートする、教育再生会議有識者の皆さん。
首相官邸のサイトに、その豪華な顔ぶれがリストアップされてます。
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/kyouiku/kousei.html
 
この豪華でバラエティ豊かな顔ぶれ。
 
いやまあ、「東京大学総長」とか「京都市教育委員会教育長」とか「百ます計算」とかは、まだメンバーになった理由がわかるようなわからないような気がしますが。
しかし、「トヨタ自動車株式会社会長」とか「劇団四季代表・演出家」とか「スポーツコメンテーター」とかになると、もはや本格的にわけが分からないんですがどうですか。
 
東京都知事選挙の顔ぶれと見分けが付かないぞ。*1
http://www.senkyo.janjan.jp/election/2007/13/00005580.html
 
いやまあ、わけがわからないのは、私が勉強不足なせいかも知れませんね。
スポーツニュースとか。
 
さて。
 
えーと、例えば、
「日本の遠洋漁業の今後について」
とか、
「映画産業の望ましいあり方とは」
なんて質問をいきなりぶつけられたら、たいていの人は困ってしまうと思います。
 
しかし、これが
「日本の教育の今後について」
「教育の望ましいあり方とは」
という質問であれば、ほとんどの人が何かしら思うところがあるわけです。
 
これは素晴らしいことです。
 
もちろん、そういう一般の意見には、
「今の若いのは軟弱すぎる。軍隊に放り込んでたたき直すべきだ」
とか、
教育機関は全て民営化して、教育に対する政府の統制を一切撤廃し、保護者が自由に教育機関を選べるようにすべきだ」
とか、方向性もばらばらなら、必ずしも十分な知見に裏付けられたものでもない意見が多数含まれるだろうと思いますが、そもそも一般市民は教育問題の専門家ではないのですから、専門的知見を持っていないのは当然です。(もちろん私も……というと言い訳臭いですか)
どのみちそういう意見が直ちに政治に反映されるわけじゃありませんし、むしろ、専門知識のない一般市民が、教育問題についてこれほど高い関心を持っている、というのが、我が国の素晴らしいところだと思います。
 
世の中には「床屋政談」なんて言葉もあり、一般には揶揄的に使うようですが、床屋で政治談義を戦わせるほど政治に対する関心が高い、ということ自体は、別に笑われるようなことではないわけです。
一般国民による多数の「床屋政談」が、最終的には政府の政治的決定の水準を底上げする、というのが、議会制民主主義の優れた点なんだと思います。
床屋政談が笑われるのは、個々の水準があんまり高くないからなんでしょうが、政府の施策を決定するのは、特定の床屋政談の結果ではなくて、それら多数の国民の総意として選ばれた、政治の専門家たちの話し合いによるわけですから。
いや、「政治の専門家」とやらをそんなに信頼していいのか、という問題はさておき。
 
さて。
 
教育再生会議:2次報告へ向け、道徳教育の拡充論が加速 目標に「卑劣なことはダメ」

(略)
川勝平太同分科会主査が、郷土の伝統・文化・産業などを学ぶ「ふるさと学」を提案した。
昨年12月に「わが国と郷土を愛する」と明記した改正教育基本法が成立したのを受け、郷土愛をはぐくむことを狙ったもの。
川勝氏は「家族・地域の大切さを知り、規律ある人間を育成する」と道徳教育との連動性を説明。
委員の間からは「市町村合併が進む中で大切だ」「一部の小中学校で総合学習で行っているが、高校・大学でも導入を考えたらいい」と賛成する意見が出た。

地域学習って、基本的には小学3年の内容なんですが。
それを義務化ですか。
ていうか、大学で「ふるさと学」て、地元学生しか入れない大学なんですかそこは。
 
「徳育」教科の新設提言=2次報告へ論点整理−再生会議

(略)
道徳教育は現在、絶対評価(小学3段階、中学5段階)の対象外だが、将来は対象に加える方向で検討し、5月に出す第2次報告に盛り込む。
(略)
授業では「心のノート」などの副読本が使われているが、教科化すれば文科省教科書検定を通過した教科書の使用が義務付けられることになる。

「教科」にしたら、成績つけなきゃならないんですが……。
「友情:95点 郷土愛:72点」みたいに。
 
で、どうやって成績つけるんですか。
「文部省検定教科書準拠・道徳科テスト」みたいなものができるんですか?
 
もし本当に、人間の道徳性を測定する技術が開発できたら、それはノーベル賞ものでは。
 
………………。
 
……いや、教育問題に関する専門家会議の意見に口を挟むつもりはないんですが。
 
でも、一つだけおたずねしたい。
 
あなたがた実は専門家じゃないですよね?
 
なんかこう、最近、すごい勢いで床屋政談レベルの施策が教育界に流れ込んできていてですね。
 
肩書きは立派だけど教育問題には素人同然……っていうか普通に素人なんじゃないですかあの人ら。
 
総理も今さら委員を交代とかできないだろうけど……ってよく考えたら、総理も教育問題に高い関心を示しているけど教育問題の専門家じゃないという。
経歴をざっと見ても、教育に関わるような経験はないし。(子どもさえいない)
 
教育問題に高い関心を持ってるけど専門的知見のない人達が動かす日本の教育。
 
床屋政断。
 
教育に対する関心が高い、ということ自体は、別に笑われるようなことではないわけです。
 
ていうか全然笑えないんですが。現状。
 
どうなる日本の教育。
っていうかどうなる日本の未来。
 
ちゃんと議会制民主主義をやろうよ……。

*1:都知事候補の皆さん済みません。