ルールなき教育論争。

 
体罰否定論者「体罰がなくても教育は可能だ。体罰に頼らなければ指導できないというのは教師の指導力が足りない証拠だ
体罰肯定論者「正しい体罰なら子どもはよりよく成長し、教師に感謝するはずだ。そうならないのは教師の指導力が足りない証拠だ
 
 いいからお前らお互い同士で議論して学校には近づくな。
 
 なんというか、
体罰否定論は、言葉だけで子どもたちを善導できるという主張だ」
 という理解に基づいたわら人形叩き(中には“ほめて伸ばす”だけだとお考えらしき向きも)とか、体罰について「ルールが定められていない」と思ってる大阪市長http://goo.gl/PYh8V)とか見てると、いかに教育というのが見くびられているかと思います。
 
 教育論議って、誰しも……教育に関わったことのない人でもなぜか一家言ある分野です。
 しかし、学校教育を受けてるから教育政策の妥当性を云々できる、って発想は、病気になったことあるから医学研究の妥当性を云々できる、みたいなものです。
 まあ、一般人が趣味で一般人同士で議論してる分には自由なんですけど。
 
 さて、体罰禁止に関して、学校教育法には以下のようにあります。
第十一条  校長及び教員は、教育上必要があると認めるときは、文部科学大臣の定めるところにより、児童、生徒及び学生に懲戒を加えることができる。ただし、体罰を加えることはできない。
 
 つまり、「懲戒」は禁じられていません。
「ほめて伸ばす」一辺倒だ、とかいうのは誤解です。
(ほめて伸ばす方が望ましいとは私も思いますけど)
 
体罰」と「懲戒」の線引き(よく、しつけと体罰の線引きが難しいとかなんとか言われる点)についても、文科省からガイドラインが出ています。(http://goo.gl/RtoZy
 
 大まかに言うと、
 教室に居残りさせるのは懲戒。しかしその間トイレに行かせないのは体罰
 授業中、教室内に起立させるのは懲戒。炎天下に長時間だと体罰
 学習課題や清掃活動を課すのは懲戒。
 
 もちろん、子どもが虚弱体質だとかそういう事情を考慮してケースバイケースで判断すべきものだ、ともされていますが。

いかなる場合においても、身体に対する侵害(殴る、蹴る等)、肉体的苦痛を与える懲戒(正座・直立等特定の姿勢を長時間保持させる等)である体罰を行ってはならない。
体罰による指導により正常な倫理観を養うことはできず、むしろ児童生徒に力による解決への志向を助長させ、いじめや暴力行為などの土壌を生む恐れがある

 学校では、懲戒は必要に応じて存在しても良いが体罰はまったくの違法行為です。
 今回の問題は、違法行為を犯した教員(とその上司)をどう処分するか、という問題です。
 
 もちろん、文科省の定めたガイドラインが未来永劫に渡って無謬のものである、などと主張するつもりはないのですが、「体罰是か非か」などと議論する人……特に権力の地位にある人は、現行のルールに無知なまま床屋政談的なことを放言するのではなく、ルールをきちんと知った上で、その改善すべき点を探る、という議論をして欲しいと思います。
 
 ……床屋政談と言えば、教育再生会議とかな。
 どう考えても教育については専門外だろう、みたいな人が教育機関の上層部に据えられるとか何事なの……。