教員採用試験対策(集団面接編)

教員採用試験対策の第二回。
小論文編はこちら→http://d.hatena.ne.jp/filinion/20060722
しかし、受験生は見てるのかな……?
 

集団面接

よくあるのが、面接官が2〜3人いて、その前に受験生がずらっと並ぶ形式。
面接官が質問して、答えたい人が挙手。
 
よく、「最初に話すのが有利」とか言われますが、必ずしもそうとは言えないような気がします。
 
集団面接では、一度指名されるともう一度指名されるかどうかわかりません。
それで後に話す人は、前に話した人の発言を参考にして考えを進めることができるので、より深い意見を言うことができるのです。
 
Q 「いじめへの対応で大切なことはなんだと思いますか?」
A1「はい!」
Q 「はい、A1さん」
A1「はい。まず第一に、本人の話を良く聞くことだと思います。
事実関係をよく確認して、適切に対処するためには、実際の状況の把握が欠かせません。
それから、いじめた側に対しても、毅然とした対応は必要ですが、ただ高圧的に対処するのではなく、いじめられた子の気持ちを伝えて、きちんと反省させることが大切だと思います。
さらには、両者の保護者ともよく話をして、保護者の方から見た子どもの様子について尋ねると共に、事実関係を報告して、こちらの対応について理解してもらうことが必要だと思います」
Q 「なるほど。 他の方は?」
A2「はい」
Q 「A2さん、どうぞ」
A2「はい。A1さんがおっしゃっていたように、本人やいじめられた子への対応が、まず第一になると思います。
しかし、当事者だけの話では状況がよく見えてこないこともあります。
いじめにおいては、周囲で傍観している子が多数いることが多いですから、学級全体からよく話を聞いてみることが大切だと思います。
同時に、いじめは許さない、という教師の姿勢も、学級全体に対して示し、いじめられた子を学級全体でサポートすることが必要です。
それから、教師一人だけの視点では見えてくるものも限られますから、他の先生方から見たその子たちの様子を尋ねるとともに、事実を報告し、指導上の協力をあおぐことも必要だと思います。
そういった、全校態勢での指導を確立すれば、保護者に報告した際にも理解が得られやすいし、保護者から連絡があった場合にも迅速に対応できると思います」
Q 「なるほど。 他の方は?」
 
……上の例で言うと、A2の人の方が賢そうに見えると思います。A1の人よりも深く考えた意見を言っているからです。
でも、これは単に、A2はA1が話している間、それを元に考えを進めていたから、というだけのことです。
最初に手を挙げるのは確かにやる気がありそうですが、そのテーマについてゼロから意見を言わねばなりません。
 
後から話すことのメリットは、他人の意見を参考にできることです。
一方、先に話すことのメリットは、やる気をアピールできることと、他の人が言いそうなことを先に言ってしまえることです。
 
それで、最初に話すのは大変だけど、あんまり後から発言すると、言うべきことは前の人が全部言ってしまっている、ということになりますから、2・3番目辺りに発言するのが私としてはねらい目でした。
もちろん、そのテーマについて自分が深い見識がある、という自信があれば、最初に発言して、言うべきことを皆言ってしまえば、後の人は「A1さんがおっしゃったように……」と、みんなで言うほかなくなりますので、もちろん有利ですが。
 
……もっとも、考えることは皆同じで。
以前、集団面接で、問いに対して誰一人挙手しなかったことがありました。
 
それで試験官が困って、
「それでは、誰も意見がないようですので、次の質問……」
もちろん落ちました。(たぶん、あの室内にいた人はみんなそうだろう)
 
他の人より深い意見を言うための発想法を一つ。
「関係性の中で考える」ということがあります。
 
いかなる問題も、一人で解決することはできません。
 
私は。
 
そこで、周囲の人に働きかけ、協力を求める必要があります。
誰に、どのような働きかけをするか、という視点から問題を見ることで、いろいろな方策を考えることができるのです。
 
例えば、上述の例では、
 
被害児童・加害児童・両者の保護者・周囲の児童・同僚
 
が登場しています。
 
しかし、学校の周囲には他にもいろいろな人たちがいます。
問題の種類によって、協力を求めるべきかどうかは違ってきますが、例えば、
 
周囲の児童の保護者・教科専任の先生・養護教諭・管理職・地域の人・児童相談所・警察・出入りの業者・情報を提供している企業・研究先進校の先生……
 
等々。
こういった人たちにどう協力を求めるかを考えるのです。
 
あと、言い忘れましたが、
「なぜそれが重要な問題なのか?」
は、必ず心の中でおさえておきましょう。
 
テーマがいじめ問題であれば、重要さなんてあえて言うまでもありませんが、被害児童にとって重要、その保護者にとって重要、加害児童にとっても重要、クラス全体にとっても重要です。
その理由をしっかりおさえておくことで、解決策を述べる時にも説得力が出ます。
 
それから、
「障害になるのは何か?」
を考えましょう。(報復を怖がる周囲の児童とか、事実を否定する加害児童の保護者とか……)
 
障害になるものが思いつけば、それを解決するための配慮を考えて……と、どんどん考えられます。
話しながら考えたっていいんです。
 
この方式は、「いじめ」「不登校」「学力不振」……といった問題への対応を問われた場合を想定していますが、工夫すれば、「開かれた学校づくり」「総合的な学習の時間の活性化」……といった議題にも対応できると思います。
(どうしても関係性とかじゃ対応できない、という時には、「学力の向上・国際化への対応・アカウンタビリティ」とか、別の項目を立てて考えて下さい)
 
ともかく、頭の中で様々な視点を箇条書きにするように考えてみると良いと思います。
 
あれです。話す時、「理由は3つある」とか前置きしてから話せ、と言われますよね。
あれは、「3つの理由」は、それぞれ異なる観点なわけです。
それを頭の中で組み立ててから発言しよう、と。
3つと言わず、もっとたくさん。
 

討論形式

小グループでテーブルを囲んで、討論を進める形の面接もあります。
お互いの中で司会者を選んで、話し合いを進めるように求められます。
 
討論ですから、意見を出し合って、できれば建設的な結論を出すのが目的……ではありません。
あくまで「討論形式」の「面接」ですから、本当は自分が他の人よりも賢いことをアピールするのが目的です。
 
もちろん、そのために出しゃばり過ぎて、協調性のないところをさらけ出してはなんにもなりません。
(前、試験官から「最後に、今回のテーマについて、一言ずつ簡単におっしゃってください」と言われて、2〜3分しゃべってたボケナスがいましたが。次の面接のグループに迷惑だろうがよ)

 
で、よく、「司会に立候補した方が有利」
とか言われますが、私の経験では怪しいものです。
 
というのも、まず、司会は自分の意見を言う機会が少ないので。
 
もちろん、
「自分は話し合いの司会進行をするのが得意で、話し合いの交通整理をしながら適切にみんなの意見をまとめることができる」
……という自信があるなら、ぜひ司会をやるべきですが。
 
再び例示。
 
司会「えー、それでは、『開かれた学校づくり』について話し合っていきたいと思います。……えーと、それじゃあ、どうしましょう、どうすれば開かれた学校が作れるか、みなさんに意見を出してもらいましょうか?」
A2「うーん……、提案、いいですか?」
司会「あ、はい、A2さんどうぞ」
A2「まず、私もそうなんですが、ここにいる人って、産休代替とかで学校に勤めた経験のある先生が多いと思うんですね。だから、まず、ご自分の勤務校で、開かれた学校づくりのためにこういったことをしていた、こういったことが課題だった、ということがあれば、それを簡単に出してもらうといいんじゃないでしょうか」
司会「あ、なるほど……、えーと、じゃあみなさん、それでいいですか?」
(みんなうなずく)
A2「じゃあ、時間も限られてるので、簡潔にいきましょう。司会の方、邪魔してすみません。あとお願いします」
 
上の例では、どう考えてもA2が仕切っていますし、手慣れているように見えます。
しかし、これは前述の集団面接と同じで、誰かがしゃべった後で口を開く方が有利、というだけのことです。
 
自分が司会者になってしまうと、話し合いの上手い進め方を思いつこうとつくまいと、場を仕切り続けねばなりません。
その点、上のA2の立場なら、とりあえずは司会者に任せ、「もっといい方法があるな」と思った時にだけ「提案」すればいいわけです。
司会者のやり方でいい、と思ったら、そのまま任せておけばいいわけで。
 
もちろん、司会者がこういうことに手慣れている(特に、一般企業経験者)だと、ものすごく上手に掌の上で踊らされてしまう可能性もありますが、そういう時はおとなしくその人に司会を任せ、その進行の中で少しでも良い意見を言うことに専念しましょう。
 
注意
面接では、自分に熱意があって賢いところを見せねばなりませんが、あんまり他の人の意見を否定するようなことを言うのは、少なくとも日本では好意的に見られませんので注意が必要です。
 
また、ここで挙げたのは、技術的なことであって、「何を話すか」が重要なのは言うまでもありません。
 
以前受けた集団面接(宮城)で、大変はきはきと、熱意のある口調で話す受験生がいました。
「こいつがライバルだ!」
と思ったものです。
 
その時のテーマは「ジェンダーフリーについてどう考えますか」。
 
私は、「ジェンダーはわかるけど、ジェンダーフリーってなんだっけ?」という駄目受験生だったので、とりあえず他の受験生がしゃべっているのを聞いて、それを元に言葉の意味を推測して答えました。(3番手くらいだったかな)
 
繰り返しになりますが、「どう考えるか」ですから、その重要性をまず述べます。
なぜ重要なのか、誰にとって重要なのか。
その後、ジェンダーフリーを実現するための障害となるであろうものをまず挙げて、それを解決するためにどう動けばいいか、を述べます。
 
それで、一通り全員が話した後、試験官が、
「学校において、たとえば、担任が、重い物を運ぶような作業を男子だけに任せる、というようなことがあります。そういうことについてどう思いますか?」
と質問しました。
 
そしたら、その「ライバル」が真っ先に挙手。
そして、
「統計的に見て、男性の方が女性よりも力があるので、そういうことになるのが当然だと思います」
と宣いました。
 
うわ、やっちまったよコイツ!
 
確かに、平均値をとればそういうことになるでしょうが、個人のレベルで見るとそうとは限りません。
ある女性が、男性の平均より力がある、という可能性もあります。
ですから、能力を言うなら、実際に力がある児童に力仕事を任せる、というのが合理的でしょう。
その結果、男子が力仕事、という事になる可能性もあるし、それはそれでいいわけですが、特に小学校段階では身体的な発達には個人差が大きいし、とりわけ中学年あたりでは、女子の方が体も大きく、力が強くなります。
そう考えると、男子が力仕事、というのは、合理的とばかりは言えないでしょう。
 
……と、2番目に手を挙げた私が言いました。
 
もちろん、そのまま言うと全否定になってしまうので、
「1番さんの言うことはもっともだと思うんですが、少し付け加えると……」
とか前置きして。
 
付け加えでも何でもないけどな。
 
1番さんは呆然としてましたが、それは本人の責任です。
 
私のせいじゃないですよ?
 
まあ、つまり、最初に手を挙げるのはこのようなリスクがある、ということですね。
 
そして、「はきはきしゃべる」とか、第一印象をどんなに良くする努力をしても、やっぱり教育的に正しい見解を述べられなければ無意味、ということです。
どんなに巧みな弁舌を振るっても、「言うことを聞かない子どもは殴って従わせるべきだ」と主張したら落ちます。
 
そういった点は、技術的にどうにかできるものではありませんので、どうか、受験生の皆さんはがんばって勉強して下さい。
 
個別面接対策も書いてみた。→http://d.hatena.ne.jp/filinion/20060818/1155917959