どっちが勝っても釈迦の恥。

(宗教教育)
第9条
 宗教に関する寛容の態度及び宗教の社会生活における地位は、教育上これを尊重しなければならない。
2 国及び地方公共団体が設置する学校は、特定の宗教のための宗教教育その他宗教的活動をしてはならない。

教育基本法より

新聞には、新刊書や雑誌の広告が出ています。
私の実家でとっている新聞に出る広告の中に、仏教関係の雑誌の広告が3つあります。
雑誌の広告ですから、毎月の特集記事のタイトルなどが紹介され、見る人が購読したくなるよう工夫されているわけで、これがなかなか興味深いのです。
 
まず、「大法輪」。(大法輪閣
“仏教総合雑誌”を謳うこの雑誌は、
「毎号さまざまな視点で宗派を超えた「仏教」を紹介しています。法話、講話をはじめ、専門的な記事から初めて仏教を学ぶ方のための入門的記事まで掲載」
だそうです。
 
9月号の特集は「法華三部経のすべて」。
 
記事を適当にピックアップすると、

  • 私の出会った仏教者③後藤瑞巌老師の教え
  • リレーコラム・仏教の眼 生命といのち
  • 重々無尽のいのち『華厳五教章』を読む②
  • 〈新連載〉ブッダのことばパーリ仏典入門
  • 仏教の可能性祖師たちに死に方を学ぶ②

 
など、「一般人が仏教の考え方を学んで、自分の生活の中に活かしていくための雑誌」という感じでしょうか。
 

  • 心と身体に効く寺社法昌寺(東京・下谷)の唱題行
  • ぶらぶらお墓紀行・柳田国男の墓
  • 仏教なんでも相談室

 
なんてところは、いかにも我々凡人向け。
あなたもお墓でぶらぶらしませんか。
 
私は仏教には詳しくありませんが、バックナンバーの目次など見ると、結構いろいろな宗派を幅広く扱っているのかな、と感じました。
 
次が「寺門興隆」(興山舎)。
「仏教界ならびにすべての住職・寺族のための最も信頼できる実用実務月刊情報誌」
だそうで、つまり想定される読者はお寺の住職。
 
特集は、

  • 檀家が住職にお布施値下げに退任を突き付けた真相
    • 檀家の寄付によって本堂が完成したのに退任を要求され、葬儀や新盆のお布施も値下げを求められている住職がいる。在家から仏門に入り晋山した住職と檀家の間に何があったのか。

 
何があったんですか。
 

  • お寺の子供が仏教系の宗門大学に入らなくなった!?
  • 宗門は教学研究機関をどう位置付け研究者をどう遇するか
  • 東本願寺紛争提起から36年後の宗教的利害得失を問う
    • 戦後最大の宗教事件、東本願寺紛争は宗門に何を生み出し、何を失わせたのか。宗門内部の熾烈な対立の内実とは。

 
戦後最大の宗教事件! ……知ってました? (ていうか、白装束集団とかオウムとかは宗教事件ではないのですね)
 

  • 仏教は日本・中国・台湾・韓国・北朝鮮の中学校歴史教科書でいかに教えられているか。仏教にも歴史認識問題はあるのか?

 
歴史認識問題はここでも重要トピックですね。
 

  • 本堂に欠かせない仏前の供物器「三方」と「高坏」の知られざる歴史と新製品の価格・選び方

新製品とかあるんですか。なにか違うのか。除菌コートとか? 光触媒とか?
 

  • お寺の第一印象にも重要なトイレットペーパー再チェック

客商売なんですねえ。
 
それからショートルポ。

  • 奈良・名刹の国指定文化財「から風呂」は公衆浴場法に触れる?

それは大変。
 
続いて連載記事。

  • そもさん! 玄侑和尚の説教部屋「遺骨を山に撒きたいという檀家」

考えてみれば、散骨だと永代供養料とか払わないんですね。
委託散骨なら5万円台から、遺骨を粉にするだけなら3万円程度で、墓地も不要となると、これは安い!
……金の問題じゃあないですけど、金の問題ですね。
 

  • 臨床仏教学の眼「ペットロス症に日本仏教を」

「臨床仏教学」なんて初めて聞きました。
「実験仏教学」とか「行動主義仏教学」とかもあるんでしょうか。
 

  • 今にして創価学会とは何か「宗教を利用する政党と政治を利用する教団」

ノーコメント。
 

なぜレッサーパンダ
気になるあなたは本誌をチェック!
 

  • 住職活動のカウンセリング「聞く側の権威に惑わずに」

住職たるもの、偉い人相手でも堂々と説法ができないとならないんですね。
ていうか、やっぱり気後れするんですね。
 

……経営者は大変ですね。
 
それから、別冊付録「法話特集」。

  • お説教のタネ本…「たべものことわざ辞典」

……講話のタネ本って、「中間管理職のための」とか「校長のための」とかありますけど、お坊さんもか……。
 
1200円+税の本誌は、大法輪(800円+税)に比べてかなり記事の数が多く、かなりはしょりました。(例えば、別冊付録の中には、「たべものことわざ辞典」の他に6つも記事が入っています)
 
というわけで、「一般人向けの仏教雑誌」と、「住職向けの雑誌」では、かなり方向性が違うというか、「きれいごとだけじゃやっていけないんだよ」感が漂っているというか。
 
……三誌めですか?
 
えーと、タイトルは、「大白蓮華」。
発行元は創価学会……
 
えと、私は、創価学会のことはほとんど何も知らないんです。
SGI会長? 社長は朱鷺田さんですよね? スザク・ゲームズに会長がいたんですか?
大学の講義で、テキストにちらっと名前が出てきたんですが、それは戦前の話、「創価教育学会」の話で、「創価教育学体系をまとめるなどしたが、後に宗教的傾向を強めた」で終わり。
つまり、普通の教育者にとっての創価学会は、戦前に一時期存在した小さな団体に過ぎないんです。
 
ですから、自民党が単独で絶対安定多数をとっちゃって大変ですね、とか、被害者の会がありますね、とか、ソ連が崩壊して宗教教育が再開された時、各学校が手探りでやっているところへ独自編纂のテキストを無償で配布しましたね、とか(それでロシア政府から「内容が偏っているので気をつけろ」と警告が出た、とか)いうことは全然知らないので。ええ。
 
なので内容についてはノーコメントで。
 
……で、話変わって今回この記事を書くためにあれこれ検索していて見つけたのが、「B-young」という雑誌。
 
「善いことをしたら、善い結果が自分に返ってくる、悪いことをしたら、悪い運命が自分にやってくる」
仏教の根幹である『因果の道理』を簡単に説明したものですが、ビーヤングはこれをテーマに、 仏教とその精神を分かりやすくマンガにして、親子で楽しめる月刊誌です。
 
子ども向けの仏教雑誌ですよ。
 
おそらく日本広しといえど、このような仏教月刊マンガ誌は他に例を見ないでしょう。
 
……そうだろうねえ。
 
分かりにくいと言われる仏教を手軽に知りたい時、子供に健全な心を伝えたい時、そして自分が癒されたい時、どうぞビーヤングを手にとってみてください。
 
……こういう雑誌を手にとって子どもに与えようと考える保護者、というのはどういう人々なんでしょうか。
 
「保護者のページ」を見ると、
 
うちには、小学生の娘が二人います。 『ビー・ヤング』の購読を始めたのは平成13年の6月からでした。 妹と二人、毎月楽しみに読んでいます。テレビゲームをしていても、『ビー・ヤング』が届くと、パタッとやめて、夢中になって読んでいます。親子で買い物に行く時など、ポストに届いているのを見つけると、そのまま車の中に持ち込み、後ろの座席で取り合いをするほどです。貸出表を作って、友達にも貸しています。(後略)(岐阜県 女性)
 
……お友達の保護者にも好評なんでしょうか。
 
私は養護施設で働いている保育士です。(中略)
 
おい。
 
『ビー・ヤング』を通して因果の道理をしっかりと学び、大きくなってほしいと期待しています。広島県:保育士:女性)
 
おいおい。
 
最近の生徒は自己評価が低く、「どうせ自分は、大したことない。何事もそれなりにやっておけばいい」と、苦労を避けています。進路相談でも、行きたい大学ではなく、今の学力で、合格できる大学を知りたがるのです。(中略)
 
今度は高校かよ。
 
「戦後、教育から仏法精神が失われたことが、今日の教育の荒廃につながっている」という声を、教員の間でも耳にします。
 
私はちっとも耳にしないんですがどうですか。
っていうか、戦前の日本の教育は、明治の廃仏毀釈以来ずっと神道一本槍でしたから、「戦後、教育から仏法精神が失われた」という表現には難がある気がしますよ?
 
子供や生徒たちが『ビー・ヤング』 から、努力することの大切さを学び取れば、素晴らしいですね。大阪府:教師:女性)
 
……どう考えても高校向けの内容じゃないんだがな。
 
っていうか、創価学会ホームページの教育実践記録集(Member Support>平和・文化・教育>WAIWAI教育プラザ)だってこんなに宗教がかってなかったぞ。(それはそれで意図的なものだとは思いますが。)
 
ちなみに、『ビー・ヤング』紙は「仏教入門」を標榜しているだけですが、発行元である「チューリップ企画」は、「チューリップ企画は、浄土真宗を開かれた親鸞聖人のご一生を描いたアニメ映画や、浄土真宗入門の月刊誌を皆さまにお届けしています」とホームページに明記している会社です。
教育活動に取り入れようとお考えの先生方はご注意下さい。
 
っていうかやめろ。
クリスチャンの保護者とかが来たら大変なことになりますよ。
 
まあその。
 
教育基本法万歳!
 
参考URL
『大法輪』バックナンバー(大法輪閣ホームページ内)
寺門興隆ホームページ
創価学会ホームページ
創価学会教育本部ホームページ
B-youngホームページ(本誌掲載の漫画なんかがオンラインで読めます。教材化をお考えの先生はぜひやめろ)
チューリップ企画ホームページ