さっそくですが虫注意。
我が家にいる、モンシロチョウの幼虫ちゃんです。
画面下が頭。
……なんで自宅で青虫にキャベツをやってるのかというと、今年は3年生の担任だからです。
例年、この時期には理科で「モンシロチョウをそだてよう」という学習があり、子どもたちが卵から成虫までモンシロチョウを飼育、観察します。
しかしご存じの通り、現在は新型コロナウイルス対策で休校中で、観察ができません。
さりとて、モンシロチョウに「休校が終わるまで孵化を待ってくれ」というわけにもいかないので、担任が卵を採取し、自宅で飼育し、それを学校のブログにアップしているわけです。
子どもにはブログの写真を通して学習してもらおう、という。
もちろん、モンシロチョウの成長については、NHKなどに素晴らしいビデオ教材があるのですが、それだと
「たった3日でこんなに大きくなるんだ!」
といった感覚は薄いですからね……。
「小学校 モンシロチョウ 写真」
などでググると、同様の取り組みをしている学校が全国に多数あることがわかると思います。*1
さて、3年生が4~5月の理科でモンシロチョウの観察をするのは、「春だから」という以外にも理由があります。
小学校では、1・2年生は「生活科」という学習があり、3年生から「理科」の学習が始まります。
生活科でも、昆虫や草花の観察はします。
しかし、同じ個体を卵から成虫まで通して観察し、そのライフサイクルを知る、というのは、3年生で初めてやる活動です。
草花についても、この時期にはヒマワリやホウセンカ、マリーゴールドなどを種から栽培し、「形は違うが、どの植物にも根・茎・葉がある」といったことを学んだり、種ができて枯れるまでを観察したりします。
つまり、モンシロチョウの学習が、1・2年生の生活科と、3年生以降の理科を接続する役割を果たしているのです。
これは3年理科に限らず、どの学年、どの教科においても、こういった
「この学習をやった後にあの学習をすると効果が上がるだろう」
「この時期にはこの学習をするといいだろう」
といったことに配慮して学習内容が配列されているわけです。……高学年とかほとんど担任したことないから知らんけど。
さて。
それで、最近話題の9月入学案。
「学習内容を単純に半年ずらせばいいじゃん」……ってわけにはもちろんいきません。モンシロチョウに秋まで待ってもらうわけにはいかないので。
さりとて、9月に進級・進学して、学年半ばの4月・5月にモンシロチョウの学習をしたのでは、「生活科とのスムーズな接続を図る」という効果はまったくなくなってしまうのですよね。
……誤解しないでいただきたいのですが、私は別に
「9月にモンシロチョウは育たないから9月入学なんてあり得ない!」
とか言いたいわけではないです。
諸外国が9月入学でやってるんだから、我が国にそれができないはずはないでしょう。
……よくカリキュラムを検討して、充分な移行期間を設ければ。
今年度、令和2年度は、新学習指導要領が完全実施される年です。(中学は来年度から)
「完全実施」というのは、それまでに2年間の移行期間があって、新たに追加される学習内容を別冊資料で学習したりとか、色々な移行措置を行ってきたからです。
で、それじゃあ何が変わったのかというと……まあ……教科書の中身をパッと見ると、それほど大きく変わったようには見えないかも知れないです。
教える側にとっては、評価の観点が変わったりとか重点目標が変わったりとか色々なんですが、内容は大差なく見えるのではないかと。
モンシロチョウの観察も前からやってることですしね。
その程度(とあえて言いますが)の変更でも複数年にまたがる移行期間を設けるのが通常なわけで。
それを、教育内容を半年ずらす(ずらせないものもある)、という大変動を、「今年の9月から」で実施できるかといえばそりゃあ無理だと思います。
いや、無理でもなんでもやれ、と言われたらそりゃまあ無理矢理やりますが(そういうの多いよね)……。
でも、元々、9月入学論が持ち上がったのは、休校期間で子どもたちの学習機会が失われ、学力の低下が心配だ、という理由だと理解しています。
それなのに、急ごしらえのつぎはぎ教育課程を押し通して、「見つかった問題点は来年度以降に活かしていきましょう」みたいなことをやるのは、かえって子どもたちへの悪影響が大きいのではないでしょうか。
……まあ、今年の子どもたちへの心配ではなくて、「諸外国と合わせた方が経済的に有利」みたいな動機もあるのかも知れないですけど、それこそ不要不急なわけで。
どうしてもやるなら、これから充分議論と検討を重ねて、次の学習指導要領改訂の時に実施する、くらいの心づもりが最低でも必要なのではないかと思います。
*1:いくら写真やビデオを見せたところで、実物を観察するのに比べたら学習効果は全然足りないとは思うんですけどね……。 でも、何もしないわけにはいかないし……。 普段以上に手間をかけて、得られる教育効果は普段より小さいという残念さ。