合理的ブラック大企業vs不条理ブラック中小零細企業。

 ワタミのような、くら寿司のような、ユニクロのような、王将のような、すき家のようなブラック企業など断じて利用するものか!
 
 ……と思うのだけれど、じゃあどの店に入ろう、と考えて、例えばそこらのあまり有名でないチェーン店とか家族経営で「アットホームな」中小零細企業ならいいのか、と考えると、これがまた二の足を踏んでしまうところがあって……。
 
 何を今更、なのかも知れませんけど、世の中には、社長とその一家がものすげーどんぶり勘定で業務や労働者や金を管理している、仲良しサークル並みの(しかし従業員は別に仲良しでない)企業がたぶん山ほどあるわけです。
 そういう、本気で
コンプライアンス? なにそれおいしいの?」
 レベルの企業の実態って、ブラック法務部門が存在する巨大ブラック企業に勤めるのとはまた違った、不条理なブラックさがある気がします。
 
 社長の息子が店にやって来てレジから金を抜いていくとか、経理上どう処理されてんだそれ。
「8時始業なんだけど機械は6時から動いてて、その一時間前に出勤しないと給料出ない」とかいう作業所の話も聞いたことあるし……。
「出ない」ってなんだ「出ない」って。
 
 記憶が定かでないんですが、かつて、
「企業でいじめにあった」
 と主張する人を、小飼弾の人とかが
「従業員のそんな不合理な行為を黙認する企業は自由競争経済の中で淘汰されているはず。組織的ないじめなどなおさら。まさかとは思いますがその“いじめ”とは(ry)あなたの年収分を賭けてもいい」
 とか言った事例があった気がします。(うろおぼえ)
 
 しかし、実のところ「自由競争経済」の中には、不合理そのものみたいな企業があまた存在しているのではないかなあ、と感じます。
 たぶん、業界の最前線で戦うような人は、本人を含め周囲に有能な人材と合理的な組織しか存在しないので、そうは感じないのかも知れないですが。
 
 でも、有能な人材で構成された合理的な組織だけで日本を埋め尽くすことなどできません。
 だって、世の中には、合理性や有能さでどっちかというと平均以下な人間がいっぱいいて、そういう連中も企業を組織して働いて食っていくわけですから。
(優秀な人たちだけが働いて、平均以下の人間をみんな養ってくれる高福祉社会が到来するなら話は別ですけど、現状はそうでないし、どっちかというと今の日本はそこから遠ざかりつつある)
 
 そして、そういう、平均以下従業員を寄せ集めて作ったボンクラ企業も、競争相手が同レベルのボンクラである限りは「自由競争」の中で生き延びていくことができるわけです。
 
 そこに大企業チェーンが参入してくると事情は厳しくなるでしょうけれど、社会の「平均以上」の人材に限りがある以上、大企業側も「平均以上」の人間ばかりを雇って拡大を続けることはできないはずです。
(まして、人材を使い潰しながら稼働するブラック大企業組織であれば)
 
 このようにして、意味不明な経営指揮の下、従業員のブラック労働によってかろうじて存続しているような、淘汰された方がみんなが幸せになりそうな企業が市井にはあまた存続しているし、し続けると考えられます。
 
 そして冒頭の疑問に戻るわけです。
 
 ワタミユニクロみたいな巨大ブラック企業は全国的に目立つし叩かれもしますけど、じゃあブラックじゃない企業ってどこなんでしょう?
 ブラックでない企業が提供しているモノやサービスなら、多少高くてもいい……国内「フェアトレード」的なことを考えるのですけど……。
 
 まあ、結局「自由競争経済」の中で従業員の権利を守ろうにも、企業の自発的努力には限界があるのであって、労基署の規模を拡大するとかして、ブラック労働を力尽くで辞めさせないといかんのかも知れないですね。
 その結果、モノやサービスが値上がりして、みんな今より仕事は楽だが経済的に苦しい生活になるのかも知れませんけど、それが今より不幸な社会なのか、と言われると別にそれでいい気がします。