身近な食育の重要性について。

 長年の謎が解決したので書いてみます。
 
 卒論ちゃん(我が最愛の妻)が、マルチ商法(具体的に言うとFLPジャパン)が売っているアロエジュースその他の怪しげな健康食品にハマって、月何万かつっこんでいる、という話は以前から書きました。
 
 それだけでも困るのですが、
「人間は食べ物でできているんだにゃ! 食べ物に気を遣わないといけないにゃ!」
 とか言い出して、砂糖も甜菜糖だし、まあ色々。
 
 おかげさまで、私も結婚したら半年だけ試しに飲んでみる、という約束だったはずのアロエジュース、いまだになし崩し的に飲まされています。
(代金を払えと言われたらやめようと思っている)
 
 まあ波風を立てない方向で、とは思っているのですが、以前、前日にコンビニで買ったオレンジジュースを彼女が注いでくれたら味が変だったので問い詰めたら、
アロエジュース混ぜたんだけど……わかっちゃった?」
「わかるに決まってるだろう!」
「えー、味、変わんないと思うけどー」
 
 飲めと言われれば飲むが、騙して飲ませようとするのは許せない、という話になりました。
 
 味を表現するのは難しいですが……。
 皮の部分だけしぼったレモンジュースみたいな味。
 
 あれを「混ぜてわからない」とか、味覚が麻痺してるんじゃないか。
 
 あまりに飲みづらいので、卒論ちゃんが蜂蜜を入れてくれるようになりました。
 もちろんFLPジャパン製のバカ高い奴。
 
 それから、体の具合が悪い、というと、「ポーレン」とかいう謎の錠剤を飲まされます。
 蜂が集めた花粉だそうなんですが、「飲む」には大きな錠剤で、かみ砕いて飲め、と言われます。
 
 それを最初に噛んだときの私の表情から、当家では「チコの実」と呼ばれるようになりました。
「長靴いっぱい食べるなんて死んでもごめんだけどな」
 概ね、おがくずに蜂蜜を染みこませて押し固めたような味がします。
 
 そんなもんに効果があるわけないだろう、と、私は思います。
 
 なるほど、人間の体が食べたものからできているのは事実です。
 しかし、食べたものがそのまま血肉になるわけではなく、消化器系でいったん分解されてから人体に組み込まれるわけですから、例えば炭水化物がご飯に由来するかパンに由来するか、といったことに違いはなく、全体としてバランスのとれた食生活であればよい、というのが、私の理解です。
 まして、謎めいた「微量元素」とやらを補うために、高価なサプリメントを輸入してまで飲む必要はないと思うのです。
 
 ……というのが、まったく科学的に妥当性の高い理解だろうと思うのですが……。
 
 不思議なことに、FLP以後の卒論ちゃんは、明らかに元気になっていたりします。
 
 かつては年中病気がちで、「生きるのがつらい」的なことを何度も何度も聞かされたわけですが、今では皮膚の発疹が出るのは体調を崩したときだけになり、風邪を引くこともあまりなくなりました。
 本人の言によると、
「イタリアンとか、脂っこいものを食べると肌にボツボツができる」
 ということで、今のところ我が家の食事は和食オンリー。
 
 ……しかし、彼女の体は事実本人が言う通りに反応しているから困る。
 
 はて。
 
 FLP会員の、アロエジュースを飲めばアトピーも糖尿も治る、みたいな言いぐさは断じて信用できないのですが……。
 しかし、何年も皮膚科に通っても一向に改善しなかった卒論ちゃんの体に、確かに劇的な改善をもたらしたのは明らかであるように見えます。
 
 この、理解不能な「非科学的」な現象が、長年にわたって私の身近な謎として頭を悩ませてきたのですが。
 
 しかし、先日、卒論ちゃんとの会話の中で、ついに疑問が氷解しました。
 
卒論ちゃん「ダーリンは、大学時代、一人暮らしでお料理とかしてたんだよねー。えらいなー」
私「“料理”と言っても、カレーとチャーハンと“野菜スープ”*1ばっかり作ってたなー。
 お昼は学食で済ませてたし」
卒論ちゃん「えらいにゃー。私は、お昼はパンだけとか多かったから」
 
 えっ?
 
卒論ちゃん「高校時代も、お昼はメロンパン、とか、お菓子だけとか……」
私「私は、うちの母がお弁当を詰めてくれましたが」
卒論ちゃん「うちのお母さんも、詰めようとはしてくれるんだけど、朝が弱くて詰められなかった」
私「それでも野菜は食えよ。私だって誉められたものじゃないけど……それでも、大学時代、お金が無くても、“肉まん+サラダ(80円)”とか、最低限野菜は食べたぞ。
 何日か野菜を食べないと、なんとなく体がだるい気がしてきてさー」
卒論ちゃん「私はずっと体調が悪かったでーす」
私「それだ!」
 
 それだ!
 
 彼女が何年も何年も体の調子が悪かったのは、
 
・朝食:なし
・昼食:メロンパン
・夕食:ポテトチップ
 
 みたいな日が頻繁にあったからだと思います。
 
卒論ちゃん「でもあの頃、野菜を食べないのがいけないんだ、って、誰も言ってくれなかったなー」
私「……だって、大学生で、家から通ってるのに、そんな食生活だなんて思わないじゃん……。
 あー……。あの頃、
『なんで私、こんな体に生まれてきたんだろう……』
 とか卒論ちゃんが言ったら、
『野菜食えよ』
 って言ってやれば良かったのか……」
卒論ちゃん「でも今は、調子よくなったよ!」
私「それ、アロエとか関係なくて、野菜を食べるようになったおかげだよね……」
 
 だと思います。
 
 アロエジュースやらなんやらが体を改善してくれたわけではなく、それとともにくっついてきた、
「体は食べるものでできている!」
 といううさんくさい健康食志向が、結果的に体調を改善してくれたのだと思います。
 
 だからたぶん、まず常識的な食生活をしていれば、アロエジュースも「善玉菌が生きて腸まで届くカプセル」も必要ないのだと思います。
 ただ、それらと出会う前の彼女の食生活が、あまりに常識的「でない」状態だったので、結果的に生活改善になった、という……。
 
私「そりゃ、いくら皮膚科に行ってもよくならないわけだよ……。体の栄養バランスが致命的に欠けてるところに何の薬を塗ったって、土台がしっかりしてないのに家を建てようとするようなもんだ……」
卒論ちゃん「ダーリンいいこと言うにゃ!」
 
 で、今は、彼女と私はだいたい同じ食生活をしているわけですが、それでも彼女の方が体調を崩しやすい気がします。
(新婚旅行で、毎日安いイタリアンを食べ続けた時とか差が顕著)
 それが、基本的な体質の差なのか、高校・大学時代に不健康な食生活を続けた影響なのかはわかりませんが。
 
 ともあれ、今日も彼女はアロエジュースを飲んでいます。
 ……私も。
 
私「皮膚科でも、そういう食生活改善の指導が必要だったのかなー……。でも、まさか患者がパンとお菓子だけの生活をしてるとは普通思わないよな……」
卒論ちゃん「でも、自分の食生活が悪いなんて思わなかったよ?」
私「“バランスの良い食生活を”なんてどこでも言うじゃん! 小学校の家庭科でも習うでしょ?」
卒論ちゃん「それは、“赤・黄・緑”の3種類の栄養とか習ったけど……。でも、それが崩れるとこんなことになるなんて教わらなかったもん」
 
 うーん。
 
 なんか、「食育」って、“早寝早起き朝ご飯”とか“地産地消”とか、よくわからない方向に進みつつありますけど。
 それより、
「バランスの良い食生活が大切だ。さもないと……」
 という、最も基本的なことを徹底するのが重要なんじゃないかなあ、と思ったことでした。
 
 土台がしっかりしていなければ、家は建たないのですよ。
 

*1: 今にして思うとポトフに近い。
 ニンジン・ジャガイモ・キャベツ・タマネギ・ソーセージをコンソメで煮込む適当料理。