異邦人の目。

ある大学で、亀に関連したレポートを書け、という課題が出た。
方向性は自由。
 
そして提出されたレポートのタイトルは次の通りだった。
 
ドイツ人学生:「亀の生態学・生物学的分析:観察と実験」
フランス人学生:「亀の恋愛」
中国人学生:「おいしい亀料理」
トルコ人学生:「我が国の輝かしい歴史と亀について」
日本人学生:「亀から見た日本人」

相変わらず、週に一度はバプテスト教会に通う日々。*1
敬虔なクリスチャン並みの日課です。
でも無神論
 
英語の勉強もさることながら、海外経験の長い人と話ができる、っていうのはとても面白いです。
日系ブラジル人で奥さんは中国人、とかいう一人で国際色豊かな人がいたりしてもはやよくわかりませんが。
 
個人的に面白かった話。
 
アメリカにもジャンケンみたいなものってあるでしょ?」
「うん……ある。あるけど、日本とは違う」
「ルールが違うの?」
「というより……、アメリカでは、そんなにジャンケンしない。日本の子どもは毎日するでしょ。先生とか親も、何か決める時にジャンケンをさせる」
「あー」
「それに、日本の子どもたちは、自分たちで何か決めなきゃいけない時にもよくジャンケンをするけど、その結果には決して文句を言わないでしょ」
「ああー!」
 
確かに。
あんまり考えたことなかったけど、ジャンケンをして決めたのに、その結果についてぐだぐだ言うのって、日本では「人としてやってはならない行為」扱いかもしんない。
 

「……仕方ない、ジャンケンで決めようか」
「うーん、仕方ないな。よし、ジャンケン……ポン!」
「ポン! よし勝った!」
「うわー……。いやでもさ、歳の順から言うと……」
 
往生際悪いよ。
 
アメリカではどうするの?」
「うーん。親とか先生が決める。『これはお前のだ』『君がやりなさい』って。ジャンケンはさせない」
「へえー」
 
ジャンケンで決めさせるのと、教育的効果はどう違うのかなー、とか思いました。
アメリカでは、当然、親や教師が
「これこれこうだからお前が」
って説明した上で裁定するんだろうから、筋の通った考え方ができるようになるのかなあ。あと、親や教師の権威が高まるのかも知れない。
でも、「困ったらジャンケン。文句なし」っていうのは、子どもの自治能力を高めているような気がするけどなあ。
ジャンケンは便利だけど、なんでも安易にジャンケンで決めるな、ってことでしょうね。やはり。
 
で、この前はブラジルの人と。
「中国の食べ物はおいしいけれど、苦手なものもあるよ」
「例えば?」
ピータンかな」
「味ですか?」
「それもあるけど、奥さんの実家で食べると、食べる前に必ず家の人が作り方を説明するから」
「うあ……。それは厳しいかも」
「奥さんの実家に、結婚前に挨拶に行った時、ピータンが出てきて。初めての挨拶だから、食べないわけにいかないと思ってがんばって食べた。他の料理もすごくたくさんあったけど、がんばって食べた。ところが、食べ終わるとお皿に新しく盛ってくれるの。食べ続けてると、とうとう奥で新しく作り始めて」
「わんこそばみたいだ」
「?? 向こうでは、お客さんが来て、食べ物を出したら、なくなってはいけない。少し食べ残すくらい出さないとならない。私知らないから、がんばって食べたんだけど、奥さん後で大笑いしてた」
「私も、知らなかったら『残したら失礼にあたる』とか思っちゃいますね……」
「でも、中華料理はブラジルにもお店がたくさんあって、結構繁盛してる。K村さんは甘いものが好きだって言ってたけど、中華料理のデザートは私も好きだな」
「中華まんとかですか?」
「いや。日本に来てから食べたことはないけど、バナナをたぶん揚げて、飴にくぐらせたデザートがあって、これならいくらでも食べられる」
「それは食べたことないなあ……っていうか、中国でバナナは採れないのでは?」
「あ……」
 
バナナチップにキャラメルのころもをつけたような感じでしょうかね。
なるほどうまそうだ。
 
「どこの国の料理も、その国に合わせるんでしょうね」
「うん。だから、中華料理の店でも、中国人が行く中華料理の店に行くと、味付けが違う。スパイスとか、ちょっとなじめない」
マクドナルドはどこの国にもあるって言いますけど」
「うん。どこの国の空港にもマクドナルドがあって、けっこう繁盛している。それも、外国の人がよく食べている」
「あはは」
「私も日本に着たばかりの頃は毎週マクドナルドに行っていた」
「ブラジルのマクドナルドは日本と同じですか?」
「いや、少し違うね。てりやきバーガーなんかは日本だけだし」
「なるほど」
「ホームシックになるのって、食べ物になじめないせいが多い。私もそうだった」
「日本の味というと、しょうゆとか?」
「違う違う。日本のものはなんでも甘い」
「甘い?」
「だってK村さん、日本のトマト普通の味だと思いますか? コーン甘くないですか?」
「ああー!」
 
言われてみれば確かに野菜が甘い。
ミカンやリンゴやカキが、品種改良の結果、江戸時代なんかと比べてとてつもなく甘くなっている、っていうのは知っていたけど……。
なんでも糖度が高い方が高級だものなあ……。
 
「ブラジルではコーンを入れたスープを良く作る。日本に来て、スーパーでインスタントのコーンスープを見て、飲みたくて買ったら……」
「確かにあれは甘いわ。私は好きだけど」
「ブラジルのは塩辛い。だからすごく変な気がした。カップラーメンとかも良く買ったけど、入ってるコーンを食べるたびに変な気がした」
「なるほど、それはホームシックになるかも……」
 
社会学感覚を読んだ時、「異邦人の目」って言葉が出てきましたが。
やっぱり、本当の「異邦」から来た人から話を聞くと、改めて日本のことが見えてくるなあ、と思います。
日本にずっと住んで日本のことを知っているつもりでも、実はさにあらず。
そこに浸っているだけに、日本の特異なところも、「当たり前」だと思ってしまい、意識できていないのですね。
 
「……ところで、ALTはいつ来るんだろう」
「もう30分も遅れてる。おかしいですね……」
 
(しばし間)
 
「今日は具合が悪くて来られない、って、Aさんにはメールがあったそうです」
「ぎゃあ。彼は携帯持ってないんでしたっけ」
「持ってるけど、アメリカには。でも日本では通じない」
「ううーん……」
 
日本にいると普段感じられない日本の特異性という。

*1:指導主事訪問の頃は行けなかったけど。