なんだかんだ言った末に、結局英会話はN社に申し込みました。
G社
メリット
・近い(家から30分くらい)
・担任制(きめ細かな指導が可能)
・初〜中級の講師は、留学経験のある日本人なので、疑問に思った点は日本語で質問できる(授業は全て英語)
デメリット
・高い
・時間割が固定(履修できなかった授業を、その週の別な時間に振り替えることは可能*1)
・日曜と祝日は休み
N社
メリット
・柔軟なスケジュール
・安い(G社の4〜6割くらい)
・テレビ電話による履修が可能
・全国どこの教室でも受講できる
・講師は全員外国人なので、ネイティブスピーカーから学べる
・日曜もやっている
デメリット
・遠い(一時間以上かかる)
・講師が毎回変わる(毎回カルテが作成されるので、弱点などは次の講師に引き継ぎが行われる)
……こんな感じ?
決め手になったのはなんと言っても値段かと。
スケジュール編成が自由なのも魅力でしたね。
時間がある時に予約を入れればいいんだし。
……でも、そういうシステムだからこそ、「いつの間にか行かなくなった」人が多くなるんだろうねえ。
説明を聞きに行くだけなのに、
「銀行印をお持ちください」
とか言われて怯えていた私ですが、怖いお兄さんに囲まれたりはしませんでした。(当たり前だ)
ただ、契約が、基本的に
「会員登録」
↓
「レベルチェック」
↓
「プラン決定」
↓
「受講」
の順番で進むのですね。
説明会にて。
「それじゃあK村さん、レベルチェックの予定だけ入れておきますか?」
「えー、はい」
「では、こちらの申込書の、太線枠内に記入をお願いします」
「は……い」
CAUTION!
脳内で警報が鳴ったので書面をよく見ると、「入会申込書」って書いてある。
「申込書」ってのは、「レベルチェックの申込書」ではなくて、「N社の入会申込書」なんですね?
「印」の欄がありますが、私は銀行印はおろか三文判すら持参してなかったので、そこは押せません。
が、太線枠内に、なぜか名前を書く欄が二つあります。
片方は「氏名」。
もう片方には「署名」って書いてあります。
えーとつまり、名前を二回書くだけで、印を押さなくても契約になると?
いやまあ、私は、この時点ですでに入会する気になっていたから別に良かったんですが、そういうことをしっかり説明しないで契約書にサインさせるのって、トラブルの元になるんじゃないですかね。
っていうか、明らかにミスリーディングしてるよな。
「期間限定の割引キャンペーン」というのは事実だったらしいですけど。
「K村さんは、キャンペーンの話を聞いていらしたんですか?」
「いえ」
「そうなんですか!? 今、安くなってるんですよ! 今いらっしゃる方は大抵それを知っていらっしゃるんですが……。 ラッキーでしたねえ!」
全国5万人の中から特別に選ばれたみたいにラッキー?
いや、割引率が示されたパンフレットのコピーを見せてくれたので、割引は事実なんでしょうが。
ただ、
「なぜか、キャンペーンの期間がどこにも書いてない(開始期日も終了期日も)」
「そもそもなんでコピー?」
などの疑念もついつい抱いてしまう私。
「で、料金プランなんですが、一回の受講につき基本的に1ポイント必要になります。50〜300ポイントまで一括で購入いただけるんですが、たくさん購入した方が割安になる計算になっています。月々のお支払いで言いますと……」
まあ待て。
私とて小学校教員のはしくれですよ?
一年が何週間か知らないと思ってるんですか。
週二回ずつ来たって、300時間の授業を受けるのに3年かかっちゃいますよ?
「一番安いプランは赤字覚悟」と言ってましたけど、そのプランを強く薦められるんですよね。
たぶん、ポイントを使い切る前に来なくなっちゃう人が多いから、N社的にも魅力的なプランなんじゃないでしょうか。
「そう言えばK村さん、どういったきっかけで英会話を始めようと思ったんですか?」
「小学校で英語の授業がある、っていうのが大きな理由でしょうか。 それに、N社は弟もやっていて……」
「そうなんですか!?」
「ええ。 いや、『英会話を習っている』って話しか聞いてなかったんですが、今日説明を受けた内容と、本人の話が一致してるんで、間違いないと思います」
「ああ、そうですか……。 そうすると、少し安くなるかも知れませんよ? 『紹介を受けて入会』だと、受講に必要なポイントが5%割引になるんです」
「おお! ……いや待て、『やっている』だったかな『やっていた』だったかな」
「……わかんないんですか?」
「メールで聞いてみます。あの人返信早いから」
『つかぬことを伺いますが、あなたはN社の会員ですか? または、でしたか?』
『今でも会員ですが?』
「会員だそうです」
「そうですか。じゃあ、料金プラン印刷してきますね」
携帯が鳴りました。
「ああ、弟だけど」
「やあ。メールありがとう」
「なんでまた急にそんなこと聞くのかと思って」
「いや、今、N社の受付にいるんだけど、かくかくしかじかで、まだ会員かどうか確かめたくて」
「ふうん……。てことは、僕の名前とか住所とか教えたの?」
「いや、まだ。これから聞かれるのかも」
「うーん。だよねえ? でないと、誰からも紹介されてないのに『紹介されてきました』って言って申し込む人がいるかも知れないもんね」
なにやら、警戒もあらわな様子の弟。
CAUTION! CAUTION!
しばらくして。
「兄さん、今ネットで調べたら、N社の営業時間は21時までになってる。 もう22時近いよ?」
「ああ。いや、20時前に入ったんだけど、説明聞いたりレベルチェックを受けたりで時間がかかってね」
「そう……。 いや、実はね、N社を名乗って金をだまし取る詐欺があるらしいんだよ」
「うわ。そうなんだ。 いやでも、県庁所在市のショッピングモールに入ってる教室だから、大丈夫だと思うんだけど」
「ああ、〜〜モール校ね。確かにそれは実在するね」
…………。
ここで思ったんですけど、ひょっとしてうちの家族って、金を払うことに絡むと警戒心の強い人達なのかしら。
K村家ドクトリン
「書面にサインする前に熟読せよ。そして疑え」
「金を払う前に立ち止まれ。そして疑え」
いやまあ、そういう疑り注意深さって大切ですよ、やっぱり。
「……と、弟が申しておりましたが、弟の名前とか住所とか言わないとなりませんか?」
「え? そうですね、いや、ご本人がそれを望まないのであればかまいませんよ」
「そうですか。 ……でも、それだと、誰からも紹介されてないのに『紹介されてきました』って言って申し込む人がいるかも知れないんじゃないですか?」
「ううーん、いや、まあ、確かにそういう可能性を考えるのも必要かも知れませんけど……。 でも、ここまで色々聞かされて、それで全部嘘でした、ってことになったら、それはもうどうにも仕方ないですねえ」*2
人を信じる気持ちって大切ですよね、やっぱり。