単一民族ランド。

だいぶ前の朝鮮日報から。

韓民族単一民族」? 南北代表が論戦

 南北将官級軍事会談2日目の17日、鉄道連結や海上境界線問題などを論議する本会談前の会談で、南北代表間で意外な‘純血論争’が巻き起こった。

 論争は北朝鮮のキム・ヨンチョル団長の「南の気候は暖かいから、農民たちは今、勤勉に働いていることだろう」という言葉に対し、韓国のハン・ミング首席代表が「農村人口が減り、農村の独身男性はモンゴル・ベトナム・フィリピン女性と結婚するケースが多い」と答えたことから始まった。

 にわかにキム団長は顔を曇らせ、「わが国(北朝鮮)は1つの血統を重視してきたが、民族単一性が消えてしまうのではと心配」と述べた。ハン首席代表は微笑みを浮かべた顔で「漢江の水にインクを一滴落とすレベルだ。主流があるから、ともに暮らせば大して問題はない」と答えたが、キム団長は「われわれは昔から三千里錦繍江山(三千里の国土と美しい自然を持つ国、韓国・朝鮮の別称)だ。インク1滴でも落としてはならない」と‘純血主義’を強調した。

 ハン首席代表が「歴史を振り返ると、私たちは東夷族だったが、周辺の靺鞨(まっかつ)・女新真・満州族などとともにありながらも韓民族アイデンティティを守ってきた」と述べたが、キム団長は負けずに「確かにそのとおりだが、古朝鮮から中世・近代に至るまで、われわれが単一民族として代々受け継いできたことは否認できない」と応酬した。

ユ・ヨンウォン記者

朝鮮日報

http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2006/05/18/20060518000042.html

民族の純血が大事で外国人労働者も嫌だ、ってんなら拉致とかするなよ、と、とりあえずオーソドックスな反応をしておきますが。
 
しかし、「単一民族国家」という幻想が隣国ではまだ生きている、ということにちょっと驚きました。。*1
記事を読む限り、韓国側も、韓国も原則的には単一民族国家で、それは優れたことである、という立場のようだし
 
欧米はもとより日本でも、そういうことをうっかり言うと良識を疑われると思うんですが。*2
 
そもそも、単一民族国家こそ国家の望ましい姿だ、ということになると、一民族一国家が必要になるわけですが、そんなのはもちろん不可能なわけで。
民族浄化政策とかアーリア人至上主義とか極端なことは言わなくとも、マイノリティを軽視して同質性を尊ぶ社会というのは、むしろ文化的には貧しくなるような気がします。
 
……と、そんなことを思っていたのですが、先日、韓国より近くに、より過酷な人種政策を採っている地域(王国)を発見しました。
 
http://5th.tokyodisneyresort.co.jp/goody/index.html
 
リンク先でダウンロードできる壁紙、きれいな服を着て楽しげに笑ってる人たちがたくさんいますね。
これ、もとはもっと大きな絵で、これが電車の吊り広告になったりしてたんですが。
 
元の絵の範囲で見ても、人間がみんな白人です。
 
すごいぞ東京ディズニーランド
 
……いや、一人だけ黒人がいるんですが。
料理を捧げ持って船から降りてくるコックが黒人。
 
東京ディズニーランドは夢と魔法の王国です。
 
夢と魔法の王国は南部連合(奴隷州)に属しています。*3
I have a dream !”
 
ウォルト・ディズニー・カンパニーの名誉のために言っておくと、アメリカ本国のディスニーワールドのサイトとかは、明らかに意図的に肌が白い人と黒い人と黄色い人とを使っていて、こんなアパルトヘイトカンザスネブラスカ法な状況にはないんですけども。
 
そういえば、映画版ゲド戦記*4について、原作者のアーシュラ・K・ル・グィンがいろんなことを書いてましたが。
その中で、

肌の色の問題
 アースシーの登場人物のほとんどを有色人種にし、白人を辺境に住むやや後進的な民族にしたのは、言うまでもなく欧米の読者に向けた道徳的な配慮です。
 ヨーロッパの伝統では、ファンタジーの主人公は当然のように白人――1968年当時はほぼ世界的にそうでした――で、肌の色が濃いのは邪悪さと結びつけられることが多かったのです。
 この思い込みをくつがえすだけで、作家は偏見に揺さぶりをかけることができます。
 
 アメリカのテレビ版制作者は、自分たちは「色を気にしない/色盲だ」とほざいて、アースシーの有色人種人口を1人半に激減させました。
 わたしはアースシーを脱色したことで彼らを非難しました。許すつもりはありません。
 
 日本では事情が異なります。
 日本での人種問題についてはほとんど知らないので、この件では何も言うことはできません。
 それでも和製アニメ映画が、このジャンルのほとんど不変の慣例にまさしく陥ってしまっていることはわかります。
 和製アニメの人物はその多くが――欧米人の目には――「白人」に見えるものですが、日本の観客の受け取り方は違うのだと聞いています。
 今回のゲドもわたしが見るよりも色黒に見られるという話でしたので、そう願いたいものだと思います。
 登場人物のほとんどがわたしには白人のように見えましたが、少なくとも褐色やベージュなど、好ましいバリエーションはありました。
 テナーが金髪で青い目なのは、あれで構いません。カルガド諸島出身の少数民族ですから。

「和製アニメの人物はその多くが――欧米人の目には――「白人」に見えるものですが、日本の観客の受け取り方は違うのだと聞いています。今回のゲドもわたしが見るよりも色黒に見られるという話でしたので、そう願いたいものだと思います」
……と。
 
でも、ゲドもアレンも白人に見えるよね、吾朗さん。
 
あー。
 
まあ、欧米の人が白人中心のアニメを作るのと、日本人がそれをやるのとは違うわけですけども。
(と言っても、私たち、アジア人しか出てこないアニメになんの違和感も抱かないのが普通なわけですが)
 
「鉄の夢」とかの話もしたくなってしまうんですが実は未読。*5
 
ともあれ、どうやら日本で文化を発信する企業も、単一民族で白人優位主義な思想に毒されているようです。
 
企業のこのようなマイノリティを無視した態度は許せません。
もしもこのような組織的な人種差別を座視しているならば、日本政府も同罪であります。
 

提言
・日本政府は、東京ディズニーランド及びスタジオジブリに対して経済制裁を発動すべし!
・その期間は、前者が5周年記念画像を、後者が映画「ゲド戦記」を検証可能な形で作り直すまで!

 
……要は、原作者が褒め称えるような形の、アニメ「ゲド戦記」が見たいだけなんですが。

Q:ナチス突撃隊(SA)とステーキの共通点は?
A:外側は茶色で中は赤い。(初期には左翼武装組織が吸収されたから)
 
Q:日本人とバナナの共通点は?
A:外側は黄色で中が白い。

実際には、日本国内の歴史を見たって、いろんな民族や社会階層が、それぞれの文化を持っていたわけです。
 
そういう多様な視点で社会や歴史を見直すのは有益だし、エンターテイメントであってもその方が豊かで楽しいんじゃないでしょうか。
 
例えば、教科書では幕府や農民中心に語られがちな日本史にしても、明治頃まで地方にはサンカなどの非定住民がいて……
って、それは「もののけ姫」ですか。
 
ともあれ、政府にせよ企業にせよ、マイノリティを軽視しないようよく注意して欲しいと思います。
オタクとかな。*6

*1:DNAを分析する限り、日本も韓国も、いろんな人種が混じっているので、「大和民族」とか「韓民族」というのは、遺伝的な見地からは定義できません。
いやまあ、「民族」というのは必ずしも血統のことを指すわけじゃない、というのはわかってるんですが。

*2:鈴木宗男とか。
北海道出身でそれはないだろう……。

*3:そういえば、テレビ東京では、四本指とか三本指のキャラクターは「身体障害者を連想させる」とかで御法度だって聞いたけど。
ディズニーはいいのか?

*4:私は見てません。
原作が好きなので。
ちなみに、ロード・オブ・ザ・リングは見ました。
原作が好きなので。

*5:ノーマン・スピンラッドのSF(絶版)。
放射能に汚染され、ミュータントが徘徊する核戦争後の世界で、純粋な人間たちは奇跡的に残された汚染されていない土地に国家を建設していた。
ミュータントの魔の手に脅かされる純人間国家、ヘルドン大共和国に、鉄の意志とカリスマ的指導力を持った一人の男が現れ……という。
で、これが、「幻のSF作家アドルフ・ヒトラー最後の傑作、1954年度ヒューゴー賞受賞作『鉤十字の帝王』を紹介したもの」という体裁だと。
うわあ読みてえ。

*6:現在のオタクがどの程度マイノリティなのか、という疑問もあるんですがそれはまた。