多層的甘やかし。

注目URL」から。

http://b.hatena.ne.jp/entry/http://www.sankei.co.jp/news/060722/sha102.htm

「今すぐクラス移して」…教師に無理難題、理不尽な親急増

 「あの子の親と仲が悪いから、今すぐうちの子を別のクラスに移して」「うちの子がけがをして学校を休む間、けがをさせた子も休ませろ」…。保護者が教師に無理難題を言うケースが各地で急増している。教師が頭を悩ますこうした「理不尽な親たち」について、大阪大の小野田正利教授(人間科学、教育制度学)は、文部科学省の科学研究補助金を受けて教育関係者や弁護士、精神科医らによる「学校保護者関係研究会」を発足させ、原因究明と対策に乗り出した。(池田証志)
(後略)

あー。
 
記事中で、いくつも「理不尽な親」の例が挙げられているわけですが。
 
しかし……そうだよなあ……。
 
これって、やっぱり普通の人が聞いたら驚く話なんだよな……。
 
それを、
「あー、いるいる、そういう親」
程度のレベルで返したくなっちゃうのは、やっぱりこっちの神経が麻痺してるんでしょうか。
 
いますよ?
 
前にも書きましたが、
「うちの子は洋式トイレでしか用を足せないので、学校のトイレを改築して欲しい」
とか。
 
運動会の応援に来て、酒を飲むのみならず、バーベキューセットで肉を焼き始めるとか。
それも、昼食時間じゃなくて、競技時間中に。
 
自分の子どもが他の子に怪我をさせてしまって、事情を説明したら、
「うちの子に悪気はないのに、向こうの親に謝らなきゃならないんですか」
とか。
 
子どもがけんかで軽い怪我をした翌日、学校を連絡なく欠席したので心配して電話したら、
「怪我は大したことないけど、怪我させた子への見せしめで休ませました」
とか。
 
ううー。
 
でも、「子どもの前に親を教育しないとねー」みたいな言い回しって、ずっと前からあるんですよ。(大学にいる時から聞かされました)*1
 
はてなブックマークは、「これはひどい」みたいな発言がいっぱいありますけど、小野田教授の元に寄せられた、この記事で紹介されている親って、珍しいケースでもなんでもない、というのが現実です。
 
かなり以前、書店で教育雑誌を立ち読みして、呆然としたことがあります。
「おそい・はやい・ひくい・たかい」だったかな?
 
子どもの担任が臨時に家庭訪問をしてきて、
「おたくのお子さんが、授業中私語がひどく、何度言ってもやめない」
みたいなことを言うんだけれど、どう対応したらいいか、という。
 
それがつまり、
「ああそうですか、私もこまってるんですよー」
みたいに適当に受けて、あとは放っておけばいい、というのです。
 
……担任が臨時に家庭訪問、ということがすごく軽く扱われているなー、という。
 
だって、逆に考えて、保護者が臨時に学校を訪問して、うちの子がいじめられて困っている……とか言った時に。
「ああそうですか、私もこまってるんですよー」
って……。
 
ありえないですよね?
 
さて、前述の記事へのコメント群の中に、こんなのがありました。
web2.0とか騒いでるクリエーターとそのユーザーみたいな関係図だな。学校同士でアライアンスを組み、問題と解決方を共有するだけでだいぶ変わるだろう。教師がこの問題に悩むだけで関心を持たないことが敗因。」
 
なるほどね……。
 
ただ、児童生徒でもそうですが、学校って、扱っているのがプライバシーに深く関わるだけに、情報の共有に慎重になりがちなんですよね。
 
「こんなひどい親がいて、こう対応したらうまくいきました」
みたいな話を学校間で共有するのは、まだまだ抵抗があると思います。
 
もっとも、指導困難な児童への対応が、事例研究なども含め、学校間で共有されている(十分じゃないけど)ことから考えて、今後こういった問題が大きくなれば、理不尽保護者対応研修みたいなものが組まれ、教育委員会が対応マニュアルの整備に動き始めるかもしれません。
 
かつて、研修の時、講師が言っていました。
 
少子化核家族化の影響で、集団遊びの経験がなく、社会性のない子どもが増えた……というのはもはや過去の話。
 
今は、そういった子どもたちが親となり、その子どもたちが学校に入ってきているのだ、というのです。
 
「困った子ども」の時代から、「困った親」の時代へ。
 
しかし、教員がそれに対しておとなしいのは、教員が「最近の若い奴は!」と言えない職業だからだと思います。
最近の若い奴を育てたのは自分たちであり、それは自分たちの責任なのです。
すくなくともある程度は。
 
……あ、ドジっ子の私が、なんで先輩の先生から親切にしてもらえるのか、今わかったぞ。*2

*1:その一例は、アメリカのヘッドスタート計画かも。
所得の格差が、入学前から学力格差をもたらしている実状を是正すべく、公共放送での教育番組の提供など、無償の就学前教育を拡充したのです。(「セサミ・ストリート」とかはこの一環だった)
しかし、その成果ははかばかしくなく。
もっとも成果があったのは、保護者に対する啓発プログラムだったのです。

*2:不適格教員対策は、理不尽保護者対策より先に整備されそうですけど。