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本校では、学年便りを月に一度発行しています。
 
学年便りとは、その学年のその月の行事や、これまでの活動などを保護者の方にお伝えするものです。
 
大規模校では、「学年便り」のほかに「学級便り」があって、学年便りは学年内でそれぞれの担任が回り持ちで書いたりしますが、本校の場合、一学年一学級しかありませんから、「学年便り=学級便り」ということになります。
人数が少ない関係もあって、カラー印刷で。
 
自分で言うのもなんですが、私の書く学年便りを待ってくれている保護者の方は多いのです。
 
発行予定日に出ないから。
 
……いや、それもあるんですが。(毎月一日発行のはずが、末日に出たりする)
 
内容的にも、子どもたちの様子をなるべく生き生きと保護者の方にお伝えすべく、日々記録を取り、推敲を重ねて書いています。
 
昨年は、発行が遅れると(ほぼ常にそう)子どもたちからも「早く読みたい」とせっつかれましたし(2年生は言いません。漢字が読めないから)、年度末には、保護者から
「来年は何年生の担任なんですか? もしうちの子の担任じゃなくても、学年便りだけうちにもください」
なんて言われたり。
……まあ、社交辞令なのはわかっていますが、社交辞令でまず学年便りの話が出るくらいの出来ではあったのかな、と。
 
具体的な内容としては。
……えーと、ここで書いてることとあんまり変わりません。
っていうか、ほぼそのまま流用してるところもあるし。
 
ここに書いていることのを少し薄めて、末尾にちょっと教育的っぽいまとめをするだけ。
 
一例としては。
ここの、11/8の記事「なまはげ」を学年便りに載せるとしたら。

ある日の休み時間、女の子たちが話してくれたこと。*1
「あのねえ、この子のうちのお母さんはこわいんだよー」
「そうなんだよー」
担任「へえ。怒ると怖いの?」
「ううん。わるいこと3回するとね、ピーティーエーに言いつけるって言うんだって」
担任「……それは怖いねえ」
 
まだ、PTAがどんなものかちゃんと知らない子たちでも、「なんとなく権威がありそうだ」ということはわかるのでしょうか?
おうちのしつけの邪魔になってはいけないので、PTAについての詳しい説明は控えました。
でも、PTAというものについて、怖がるばかりでなく、それが自分たちみんなのためにがんばっているんだ、ということも早く理解できたらいいですね。

……みたいな感じでしょうか。
 
とりあえずこれは没ですが。(どう修正しても、件の保護者が読んだら気分が良くないから)
 
毎回、書いた記事の半分くらいは没にしています。
子どもの写真も入れる関係上、どうやっても紙面が足りないし。
いきおい、字の大きさもだんだん小さくなっていくわけですが。
 
で、しばらく前。
学年便りを一読した校長先生からこのような指示。*2
 
「K村先生、この学年便りだけど」
「はい」
「字を半分にしなよ」
「は?」
「こんなに字が多かったら、誰も読まないって」
 
いや、むしろ校長先生の書いている「学校便り」こそ、「よくわからない格言とかばかりでつまらない」って文句言っている保護者がいましたよ。
……とはとても言えません。
 
「いや……、あの。 これですでに半分に削っているわけで……。子どもたちの名前が入っていますし、保護者の方にはそれなりに興味を持って読んで頂いているのではないかな、と思っているのですが……」 
「だって、こんなに字も小さいしなあ……」
「……ではですね。字は大きくします。その上で、両面印刷で発行しようと思うのですが、それならよろしいですか?」
「……わかった」
 
以来、本校では2学年便りだけは両面印刷。
文章の量はむしろ増えました。
いや、紙面が広がったのはありがたいんですが。写真も増やせるし。
 
でも、チェックする校長先生にとってはありがたくないかも。(……字が大きくなったからいいのかな……)
 
そして最近のこと。
教頭先生から。
「K村先生、この学年便りだけど」
「はい」
「この、会話文のカギ括弧の最後には、『。』が付くべきじゃないの?」
「あー……。なるほど」
「それとさ、『えー』とか、ひらがなに長音記号をつけるのもおかしいと思うんだけど」
「え、いや……、それは……」
「あと、『?』っていうのは、基本的に英文で使う疑問符だよね。日本語の文中で使うというのはどうなの?」
「いや…………。どう、といいますか……」
 
これを読まれた方はどうお考えでしょうか?
(会話文末尾の『。』、つまり、会話文の一番最後の「。」については、活字では使われないのが通例です。お手元に新聞・小説等があればご確認下さい。……ただ、教科書だけは別なんですが)
 
「まあ、最近の小説なんかだと、その辺りめちゃくちゃだったりするけどさ。やっぱり、教師というのは指導する立場だしね? うるさい保護者もいるしさ」
「はあ……。いや、まあ……、その、私としては、子どもたちの様子をなるべくありのままに保護者の方にお伝えしたい、と言いますか……」
「でも、『鱶沢小学校第二学年担任』の名で出している以上、一応公文書だしね」 
 
だったら私文書として出してやる!
……とは言いませんでしたが。
 
つまるところ、いわゆる学校の作文の作法に則って学年便りを書け、ということなんですが……。
 
私の考えでは、作文の作法というのはいわば文章技術の基礎であって。
ですから、小学校時代は、その基礎に忠実な文章を書くことが求められます。
しかし、成人して、基礎をきちんと理解した上であれば、その上に応用を利かせることは悪いことではないと思ったのです。
 
もちろん、作文の作法に則って学年便り・学級便りを出している先生もたくさんいます。
会話文なんかそもそもほとんどなし。
そのほうが多数でしょう。
 
ただ……
 
日々だんだんと風が冷たくなり、冬が近づいてくることが感じられます。
でも、2年生の子どもたちは、寒い日でも、元気に外で遊んでいます。
今月は、校内マラソン大会もありますので、外で力いっぱい遊んで、体力を付けてほしいですね。
ただ、風邪の季節でもありますので、手洗いとうがいの習慣だけはきちんと付けさせたいと考えています。
ご家庭でも、ご指導よろしくお願いします。

 
……読んで面白いですか? こんなの。
少なくとも、書いている方は面白くないんですが。
 
こんなのB4両面にずらずら書いたって、それこそ「今月の行事予定」と「今月の集金」だけざっと目を通して、あとはあまり読まずに冷蔵庫に貼って終わり、になってしまいそうな気が。
 
これは公文書だ、と言われれば、まあその通りですが……。
 
でも、子どもが「えーと、なんで?」……と言ったのを、「エート、なんで」にしたら、ニュアンス変わると思うよな……。
 
私だって、教頭先生に負けず劣らず自分の文章を厳しくチェックしているつもりです。
ただ、その方向性が違うだけで。*3

 
まあ、くだらないこだわりかも知れません。
 
教頭先生と私は、一つ世代が違いますし、言語感覚というのは保守的なものです。
(ちなみに、保護者の多くは私と教頭先生の中間)
 
私だって、もし、後輩の先生(ほとんどいないけど)の学級便りに、顔文字とか2ちゃんねる語が出てきたら、大変違和感を感じると思います。
今、教頭先生が感じているのもそれに近い感覚なのかも知れません。 
……とりあえず、どうやってごまかしたものか考え中。*4

*1:話題が家庭内のことに及んだり、問題行動をした話だったりする時は、子どもの名前はさりげなく伏せます。
もっとも、どんなに伏せても、子ども本人に聞いたら分かってしまうので、ほんとにまずいことは書きません。

*2:学年便りなど、外部に出る文書は、教務主任・教頭・校長が目を通して決済した上で発行されます。

*3:いや……教頭先生には負けるかも。
毎回毎回、行頭はそろえろとか、漢数字と算用数字どちらかに統一しろとか、四桁をこえる数字は三桁ごとにコンマを入れろとか、細かいこと細かいこと。
……几帳面さに欠けるんです、私。

*4:本校で一番誤字脱字の多い公文書は、前述の学校便り(校長筆)なんですが……。
教頭先生、そっちもチェックしてあげたらいいのに……。