超然としている、と言えば聞こえが良い。

 自分が働いていない身分であまり他人のことをとやかく言うのもなんなんですが。
 
 近く復帰訓練が始まるのですが、私が勤務する静音沢小学校の校長先生、顔立ちとか雰囲気が、ちょっとモアイっぽい印象があります。
 イースター島のあれ。

 
 先月、復帰訓練の開始には校長が主治医と面談することが必要だというので、私が通院する日に校長も同席しました。
 
 そこで、状況を説明した後、主治医が
「1月から復帰訓練が始まって、正式の復帰は4月から、と聞いています。
 復帰後、校内での仕事の配分等、何らかの配慮を考えているわけでしょうか?」
 

校長「いいえ、何も考えていません」
 
私「!?」
 
 うん、びっくりした。
 
 以前、校長と教育委員会の人が家に来て、復帰訓練のことなどについて説明していった時には、
「復帰後も、あまり負担が大きくなりすぎないように配慮する」
 って聞いてたのに。
 
 まあ、それを言ったのは校長じゃなくて教育委員会の人でしたが、校長も間違いなく同席していたわけで。
  
 なので、びっくりはしましたし、主治医も虚を突かれた風でしたが、私としては特に傷ついたりはしませんでした。
「ああ、さすが校長」
 と思った程度で。
 
 昨年の話。
 
 本校、学校統合を控えている関係もあって、プールが使用できません。
 
 そこで、昨年の夏、体育の水泳学習については、市営プールに頼んで貸し切りで使わせてもらいました。
 また、多くの学校では、夏休みにプール開放があって、子どもたちが学校のプールを利用できるようにするわけですが、本校ではそれができないわけです。
 
 ……できないわけです、と思っていたら。
 
校長「市営プールに交渉して、市営プールでプール開放を行いましょう」
他の職員「えっ」
 
校長「例年通り、職員と保護者が交替でプールの監視をするということで……」
他の職員「えっ」
 
 だって、市営プールは、夏休み中も普通に営業しているわけで。
 当然ながら、監視員も常駐しています。
 だから、そこで泳ぎたい子どもは自由に行ったらいいわけです。
 
 そこへあえて学校職員と保護者が出張で監視員をやって
「学校主体でプール開放」
 という形を取ることに何か意味があるのかと。
 
 市営プール側が言うには、
「夏休み期間中に貸し切りにするわけにはいかないが、コースロープで仕切って、半分だけ静音沢小専用にすることはできる」
 ……という話。
 
 そして職員会議。
 
教頭「え−、それでは、夏期休業中のプール使用についてご意見を伺いたいと思います」
教務主任「学校統合に向けて、夏休み中に職員で進めねばならない作業もありますし、実施は難しいのではないでしょうか」
学習指導主任「学校のプールの監視を保護者にお願いするならともかく、市営プールの監視をお願いするというのは、保護者の理解も得にくいと思います」
児童指導主任「他校の児童や地域の方がやって来る可能性も当然あるわけで、事故やトラブルがあった場合の責任を考えると不安があるかと」
教頭「他にご意見はありませんか? ……ないようですね」
 

校長「はい。では、体育主任を中心に実施に向けて検討してください
私「えっ、私?」
 
 ……会議後、教頭は
「学年主任からも意見を出してもらうべきだったかなあ……」
 とか反省していましたが、いや、あの状況で「実施の方向で」って押し切るんだから、誰が何を言っても同じだったろうと思います。
 
 それから、私が休みに入った後の話。
 
 卒論ちゃん(我が最愛の妻。教育委員会勤務)が聞いてきた話では、私が病休に入った直後、学年主任会で校長に質問……というか詰問があったそうで。
 曰く、
うつ病で病休、なんて事態になる前に、なぜもっと早く我々に伝えてくれなかったのか?」
 
 ……といっても、病休前は私も呆然としているうちに教育委員会主導で話が進んで、あっという間に休みになってしまったので、私自身、隣のクラスの先生に話せたのが休みに入る数日前、という状況だったのですが。
 
 で、校長が質問に答えて曰く、
 

校長「先に知っていたら何か対応できたんですか?」
 
学年主任一同「〜〜〜ッ!?」
 
 ……いやあの、校長教頭はそれぞれに対応してくれてましたよ?
 私が病休に入るのって、校長にとっても突然の話だったろうと思います。
 
 でも、そういう言い方をしたら
「お前らの協力体制なんてたかが知れてるし、管理職として協力体制を構築するつもりもない」
 って言ってるみたいじゃないですか。
 
 せめて、
「学校としても非常に急な話だったので、先生方に協力を求める暇がありませんでした」
 とか言えばいいのに……。
 
 ……とまあ、前からこんな調子の校長なので、病院で
「何も考えていません」
 って言った時にも、
「ああ、何も考えてないんだな。まだ半年近く先の話だし」
 と思っただけで、別に悪意があるとかは思いませんでした。
 
「普通は『配慮しないといけないと思っています』くらいのことは言うよな……。
 たとえ具体的には何も考えてなかったとしても」
 とは思いましたけど。
 
 自分としては、現在のような状態に陥ってしまったのは、自分が今まで学習指導や学級経営について勉強もせず適当にやってきたこととか、精神的に弱いこととかが重なったのが原因で、他の先生方に協力してもらってどうにかなる種類の問題ではなかったような気がしています。
 
 まして校長のせいだとは全然思わないのですが、どうも校内では
「校長の対応が悪いから精神的に追い詰められてうつ病になってしまったんだ」
 という認識になっているようです。
 例の学年主任会以来。
 
私「……まあ、普通なら、『この忙しいのに休みやがって』とか言われてもおかしくない状況だと思うんだけど」
卒論ちゃん「なんか、職員間では、校長が全部悪い、みたいな共通理解になってる感じだったよ?」
 
 ……私の代わりに悪役になっていただけるのはありがたい、という感じです。皮肉でなく。
 
 校長、要するに「空気が読めない」ということなんだろうなー、と思うのですが、それは私もちっとも他人事ではありません。
 前にも書きましたが、私の世代は同期が少なく、私もいずれは管理職にさせられる可能性があります。
 その時、非コミュな自分に本校の校長よりマシな学校経営ができる、とはほとんど思えないわけで……。
 
 他の先生方が校長に不満たらたらなのを見つつ、今日の不満より数十年後の不安の方がむしろ先に立つのでした。
 
 ……でも、プールの計画立てさせられた時はさすがに頭に来ましたけどね。