旅行委員に任命されていません。
……いませんよ?
旅行委員というのは、正式な校務分掌でもなんでもなく。
要するに、職員旅行の幹事です。
去年は、ベテランで、現在私の尊敬する身近な人No.1であるところのH教諭とともに旅行委員を務めたのですが、何もしませんでした。私は。
いや、計画末期に、旅行のしおり作りをしたんですけど。
写真とか入れて無駄に凝って。
でも、一番面倒な、日程の決定とか交通機関の確認とか宿泊施設の選定とかは何一つせず。
それで、
「いや、昨年は申し訳ないことをしましたよ。もし、今年旅行委員になったら、精一杯やらないとならないですね」
……と、人知れずつぶやいていたら。
ある日校長がやって来て、
「K村先生、今年旅行どこ行くんだい?」
「は? まだ、決まっていないものと思いますが」
「おれ、12月は3・4しかあいてないんだ。そこにしてくれや」
「は? いや、そういうことは旅行委員の先生に言わないと。っていうかまだ旅行委員が選出されていないものと思いますが」
「じゃ、よろしくなー」
「ああ! なにが!?」
その日以来、なんとなく私が旅行委員のような雰囲気が職員室に漂っているのです。
……なにそれ?
旅行委員は、正式な校務分掌ではありません。
従って、任命権が誰にもありません。
それは誰が任命するわけでもなく、職員の中から自然と現れる。
それが人類の決戦存在。嘘です。
……えー。
あと一月足らずなのになぜ旅行委員が決まっていないかというと(決まってないんです!)、ほとんど誰も職員旅行なんか行きたくないからです。
テンションが低いので、積極的に「旅行委員誰にします?」とか、誰も言い出さないのです。
行きたがっているのは、
- 校長
- 教頭
- 教務主任
の3名。
一方、学級担任一同は、「このくそ忙しいのに2日も旅行なんて」……というのが正直なところ。
(養護教諭・事務・用務員の3人の立場はよくわかりませんけど)
土日ではあっても長期休業中ではありません。
「職員研修のため休業に致します」……というわけにもいきませんし。
平日、みんなで年次有給休暇をとることもできない。
となると、週末まで授業をして、土日に一泊二日の旅行に行って、戻って、翌日からまた授業。
心身共にけっこうつらいものがあります。
でも、3人が行く気満々のところ、「今年からやめましょうよ」……と言い出す勇気が誰にもないのですね。
さらに問題なのは、行きたがっている3人の意見が、
- 劇団四季のCAT'Sとか、いいわよねえ。あと、宝塚とか。
- それとも、歌舞伎とか、寄席でもいいね。美術館巡りなんかもいいんじゃない?
- ホッケーの試合、あれはいいぞ。
……という感じで。
一方の担任一同の見解は、
- ……寄席はもういい。3年前に行ったし。あの雰囲気は、一度味わえばもういい。
- 寒い中スポーツ観戦はきつい。
- 美術館なんて、行きたい人が行けばいい。
いや……「行きたい人が行けばいい」のは、この旅行計画全体がそうなんですが……。
ちなみに、初日の夕食は、校長先生の知人が経営するレストランで確定(らしい)なので、「今年は京都にします」などの選択肢はなし。
個人的には、去年も行ったからもういいんですが、校長と教頭が大乗り気なので仕方ない。
っていうか、四季とか宝塚とか帝国劇場とか、一月足らず先のチケットが今頃残ってるわけがないでしょうに。
……というより、今頃残ってるチケットなんて、ハズレばかりなんじゃ……。
担任6人の中でも、行きたい場所はもちろん一致しておらず。
確実なのは、歌舞伎とか実年層向けの娯楽の受けが悪いことだけ。
……ひょっとして、旅行委員って憎まれ役?
あー……。
H先生、やはりあなたは偉大な方でした……。