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二学期制の本校では、通知票の季節になりました。
いわゆる繁忙期です。
 
ちなみに、年度末はいわゆる修羅場。
 
もっとも、普段からこつこつと成績評価を行い、子どもたちの様子を記録に取っていけば、学期末だけがおそろしく忙しい、などということはありません。
 
私はおそろしく忙しいです。
 
この間、通知票の文例集を買いました。
まあ、そのまま使える文例というより、どんな心がけで書けばいいか、みたいなものです。

  • 記入を始める前に、机の上を片づけ、必要な者をそろえます
  • 机の上、使用するものをよくふき、手を洗います
  • 記入にあたっては、自書を座右に置きます
  • 校長・教頭・教務主任の先生方に点検してもらいます

みたいなのとか。
 
かつて、通知票は「長所を半分短所を半分」書くと言われていたそうです。
「ここは素晴らしいです。ここはなおしましょう」みたいな。
 
しかし、現在では、短所を書くと保護者との間でトラブルになることがあるため、全面的に賞賛しなければならない、ということになっています。
 
といっても別にそういう法律があるわけではありません。
というか、そもそも通知票について定めた法律がないのです。
 
従って、通知票というのは、いわゆるアカウンタビリティを果たすために学校が勝手にやっていることだ、ということになります。
ですから、書式などは学校ごとにまちまちで、「欠点は書くな」というのも基本的に校内での了解事項ということになります。
 
もっとも、今まで行った学校のどこでも「欠点は書くな」でしたが。
 
さっきの本に載っていた文例。
 
・悪い例
運動が得意で体育の時間になると積極的です。しかし、他の教科の学習にはきわめて消極的です。
・上の文の添削後
活発で明るい学校生活ぶりです。特に体育の学習は得意な運動も多く、自信を持って取り組んでいます。この意欲と自信を認め、他の学習にもその力が発揮できるよう励ましていきます。
 
・悪い例
友達は作品をとっくに仕上げているのに、平気で続けています。
・添削後
物を作る時や作業には、時間を忘れて取り組むよさがあります。このよさを大切にしながら、時間内に終わる工夫を指導しているところです。
 
・悪い例
○○君とは、仲良くできないようです。相手の考えもよく聞いてほしいです。
・添削後
級友と対立することもありますが、すぐ仲直りすることもできます。さらに、相手の考えをじっくり聞くことの大切さを機会をとらえて教えていきます。
 

本校に赴任した年、教務主任から「子どもの欠点は書かないように」という注意がありました。
 
「はい、わかりました。 つまり、『学習に集中する態度が見られません』はだめだと」
「だめです」
「『学習に集中する姿勢が身に付いてきました』は?」
「いいでしょう」
「『学習に集中する姿勢を身に付けられるよう努力しているところです』はどうですか?」
「OKです」
 
結構甘い基準でした。
 
おおよそ、通知票を見て「〜〜できるよう努力しています」「指導しているところです」「励ましていきます」などと書いてあったら、それは担任の脳内添削の結果だと思います。
 
まあ、こういう長所のみ書くやり方は、教師にとっても良い点はあって。
 
先日受けた研修で、誰しも「問題を抱えた児童」だと思ってその子を見てしまうと、長所が目に入りにくくなってしまう、という指摘を受けました。
要するに、嫌いな奴のやることはなんでも悪く見える、ということが、教師と児童の間でも起こるわけです。
 
ですから、こうして、受け持ちの全ての児童について、定期的に原稿用紙数枚分の長所を書かされる、という作業は、その子どもを見直すよい機会になるのかも知れません。
 
でもやっぱり、文面を考えるのは大変。
似たような記述が複数の児童に出てくると、校長教頭に却下されたりしますし。
 
例えば、
A児:運動会の練習では、リレーに意欲的に取り組み、本番でも精一杯走りきって、本人も満足する成績を残すことができました。
B児:運動会では、積極的にリレーの練習に参加し、運動会当日も一生懸命に走って、立派な成績を収めることができました。

みたいな文章を書くと、手抜き扱いされるわけです。
 
まあ、私みたいに小規模校でそれをやったら手抜きだけど。
でも、人数の多いところだと、この子とあの子は同じところで努力して、同じところで輝いた、ということもあると思うんですが……。
 
うまいこと文章が出てこないのは、私の語彙の貧困さもあります。
他の先生が書いた所見欄を見せてもらうと「なるほど、こういう言葉の使い方もありか」「こういう表現ができたのか」みたいな発見があったりします。
 
しかし今は時間がない。
 
で、発想支援ツールを自作しました。
文例を「いつ」「なにを」「どのようにし」「どうなったか」の部品に分解します。
で、それを組み合わせて文章を作るという。
 
ランダム作成ボタンもつけました。
押すと、部品を適当につなぎ合わせて、ランダムに適当な文章を作ります。
こういうの好きなんです。ランダムメーカー系の。
 
それ、ポチっとな。
 
「ボール運動では、準備にのびのびと活動し、まとめることができました。」
裏方で生き生きするタイプ。
 
「友達が困っている時、学習に自信を持って取り組み、友達のいいところを見つけていました。」
微妙にヤな奴だな。
 
「野菜の栽培では、作文に時間を守って発言し、理解を深めることができました。」
作文と脳内対話。
 
「長さの学習では、話し合いに元気よく取り組み、完走することができました。」
元気よすぎ。
 
……だめだ役に立たん。
 
いや、そもそもランダム作成ボタンの主要な目的は所見書きの気分転換。
それと、所見欄を書くのに行き詰まった時にとっかかりをつかむために使うので、いずれにせよツールで書いた文章をそのまま通信票に書いたりはしません。誤解のないよう。
 
例えば、最初の文例だったら、これを見て
「ああ、でも、そういえばA児が、ドッヂボールのコートを書いたりボールを準備するのを一生懸命やってくれたっけなあ」
……と、思い出して、それを元にまともな所見を書いたりするわけです。
 
というわけでこのツール、自分で考えた文例を追加するのも容易な仕様で、今ならわずか500円で頒布致します。
所見欄にお悩みの先生方のお供にぜひ!
 
……気分転換の役には立ちます。
 
……さ、仕事しよ。