教職員による不祥事防止。または、腐ったミカンを摘む人々。

少し前のYahooのニュースから。

授業や生徒指導をめぐり、都道府県・政令指定都市教育委員会から「指導力不足」と認定された公立学校の教員が、昨年度は全国で566人に上ったことが9日、文部科学省のまとめで分かった。2003年度より85人増加し、過去最多だった。(後略)
出典:http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050809-00000085-jij-pol

ということでした。
 
指導力不足」なんて言われると私自身胸が痛みますが……。
 
ええと。
 
先日、「面接官の本音2004」*1という本を読みまして。
リクルート社の面接担当者だった、という著者が、面接についていろいろ語る本です。
 
内容的には、
「面接に『ひっかけ問題』などない」
「第一志望でないことを伝えても問題ない」
「本当の面接官は圧迫面接などしない」
「きちんとした面接を行うところでは、受験者の人となりを正確に知ろうとする。だから、無理に自分を飾ろうとしても無意味なばかりか、面接官の努力を妨害し、『よくわからない人』という印象を与えるだけだ」
……みたいな感じでした。
 
大変面白かったのですが、面接のハウツー本としての意味はあまりないと思います。
だって、「飾っても無意味」なんですから。
面接は受験者の人間性を正しく把握するまで行われるので、自分の技量、性格そのものを改善しない限り無駄、ということで。
 
読んでいて、「いやあ、これじゃあ自分はリクルートには入れないな」と、何度も思いました。
 
ただ、筆者が説明する「面接」というのは、かなり理想的な形のような気がします。
リクルート社は、一時は採用専任の人事部メンバーを100人も抱えていたとのこと。
だからこそ、一対一面接を何度も行って最終的な判断を下す、というような細やかな面接ができたのでしょうが……。
 
筆者自身そのことはある程度理解しているようなのですが、

  • あまりにも意味のない質問をする会社があります。『どのような服が好きですか?』『好きな食べ物はなんですか?』などがそうですが、こうした質問が多い会社は行かない方が良いのかもしれません。
  • 本当に圧迫面接をしていると思った会社があれば、逆に入社しない方がいいのではないかと思うのです。

……みたいに、「そんな会社行くな」の一言で片づけています。
 
……でも、世の中、会社を選べる人ばかりではないでしょうに。
 
小手先の技が通じてしまうような、(リクルートに比べたら)「行かない方がいい」会社に入らざるを得ない人もたくさんいるのでは、と思います。
 
まあ、そういった疑問とは別に、「人間的な力とはなにか」「それはどのようにして身に付くのか」といったことが端々で語られ、そちらのほうが大変参考になりました。
 
……で、非常に残念だったこと。
 
面接官の要件として、

  1. 相手を採用したら、どんな場面でどう活躍しそうかイメージできる。
  2. どういったタイプの人間がどういった状況でどのように成功し、あるいは失敗するのか把握している。

ということをあげた上で、

例えば、最終面接は役員面接なので学生一人に対して役員三人が面接。十分か十五分の間で自己PRをかねた自己紹介と志望動機を学生に話させ、意味のない圧迫面接的質問を二、三して終わりなんていう会社であれば、先に書いた二点を面接官は全く満たしていません。

……と、切り捨てます。

  • 一問一答式の面接では相手の人間性はわからない。
  • 三対一では会話になりにくく、より一層一方通行的になる。
  • 役員が普段接しているのは部長級以上なので、新採用の社員に何が求められるか、特に、社員がどんなに時に失敗するのかについては無知に等しい。

……というのが理由です。
 
……教員採用試験の個人面接、まさにこれだったんですが……。
 
教員による不祥事が少なくないのはとても残念なことです。
教員一人一人が胸襟をたださねばならないのはもちろんのことです。
 
でも、思うんですが。
 
そんな奴を採用してしまった教育委員会の責任はどうなんでしょうかね?
そっちを問う声はあまり聞かないんですが。
 
個人的意見としては、次の時代を担う世代を育てる立場にある教員が、リクルート社員より無能だなんて事は許されないと思うんです。
ですから、全国の都道府県教育委員会においては、是非とも採用試験のあり方を見直し、本当に有能な人材を採用できるよう制度を改革してほしいと思います。
 
とりあえず、民間人を面接官に採用するのもいいんですが、

  • 民間の大手企業の採用担当者を招いて、面接を始め採用試験の方式について意見を求めるとともに、面接官の研修を行う。
  • 面接官は、各学校の校長・教務主任・学年主任・新採指導教官など。若くても実績がある人材を登用。
  • 面接回数は不定。合否を最終的に判断できるまで面接を行う。

 
みたいな形でどうかと。(うわ、まともに提言してるよ、自分)
 
……いやあ、これじゃあ自分は教員になれないな。

2005/08/21 追記
こんな新聞記事を発見。
「富士山頂で採用面接 ネット通販のイマージュ・ネット」(http://www.asahi.com/job/news/TKY200508180501.html
しまった、これを絡めればもうちょっとおもしろい話になったかも知れないのに。
ちょっと遅かったか。
つまりヒトラー・ユーゲントが採用試験を(略)

*1:辻 太一朗著 日経BP社ISBN: 4822243079 私は古本屋で買いましたが、このシリーズは現在「2006」まで出ているようなので、興味を持たれた方はそちらをどうぞ。