「生い立ちの授業」の話。

 昨年度は2年生を担当していました。
 
 で、年度末ごろ、生活科で「生い立ちの授業」……つまり、生まれてから今までの自分の成長を、保護者に聞いて振り返る、という学習をしました。
 そして、その発表会を、年度末の授業参観でやるという計画。
 
 いや、これとか「1/2成人式」とかって、世間では
「センシティブな個人情報に必要以上に学校が立ち入りすぎではないか」
「被虐待児童や離婚家庭などへの配慮がない」
 といった批判があるのは承知しています。
 
 とりわけ、はてな界隈では
「学校は授業だけやってればいいのに余計なことするな」
 とか蛇蝎の如く忌み嫌われている授業です。
 
はてブの反応の例(どっちも主題は1/2成人式だけど)
[B! hatena-bookmark] 考え直してほしい「2分の1成人式」――家族の多様化、被虐待児のケアに逆行する学校行事が大流行(内田良) - 個人 - Yahoo!ニュース
[B! hatena-bookmark] 「名前の由来」「昔の写真」必要か? 2分の1成人式(内田良) - 個人 - Yahoo!ニュース
 
 でも、生活科の教科書に載ってるんだから担任の判断で勝手に省略できないじゃないですか……。
 
 で、保護者に、これまでのエピソードを子どもたちに教えてくれるようお願いしたり。
 入学以前の写真を用意してくれるようお願いしたり。
 子どもたちにエピソードをいくつか選ばせて原稿を書かせたり。
 原稿にあった写真をスキャンしたり。
 写真がない場面については絵を描かせてそれをスキャンしたり。
 
 正直すごいめんどくさいので担任としても二度とやりたくない気持ちでいっぱい。
 写真はスキャンしたらすぐ返すけど、万一汚損したら……とか思うと気が気じゃないし。*1
 
「お母さんへのお礼の手紙」とかはやりませんでした。
 片親とか再婚とかの家庭がないらしいことはわかっていましたが、お母さんへの手紙を書いてお父さんが参観に来たら気まずいし。
 
 それに、手紙を書くとしたら授業の最後に渡すことになるわけですが、保護者はそれまで教室にいないんじゃないかな、と思ったので。
 
 というのも、子どもたちの発表って、
 
「ぼくは生まれる前、お母さんのおなかを元気にけとばしていたそうです」
「わたしが生まれた時、お父さんとお母さんとお兄ちゃんはとてもよろこんだそうです」
「1才の時、つかまり立ちをしました。どこへでも行ってしまってお母さんはたいへんだったそうです」
「年長さんの時、はじめてなわとびができました。おかあさんにほめてもらって、とてもうれしかったです」
「3年生になったら、字がていねいで、かきゅうせいにやさしい3年生になりたいです」
 
 ……みたいな話を、スライド(写真or本人の描いた絵)とともに発表する……という内容。
 
 一応は全員違う内容だとはいえ、そんなに劇的に違いがあるはずもなく。
 似たり寄ったりな話を30人くらいぶっつづけで延々聞かされるという……。
 
 自分で授業参観にぶつけておいてなんですが、ものすげー退屈な内容なのですよ。
 
 だから、保護者には事前に
「出席番号順に発表します。時間は1人あたり2分弱です」
 と連絡しておき、自分のお子さんの発表だけ見られるように配慮しておきました。
 
 第一、他の学年に兄弟姉妹がいる場合、そちらの授業も見に行かねばなりません。
 何分頃に見に来ればいいのか伝えておくのは大切なことです。
 
 ……という計画だったのですが。
 
 いざ子どもたちの発表が始まってみると、保護者の真剣さたるや。
 もちろん、兄弟姉妹関係で途中離席する保護者もいたのですが、ほとんどの方が、自分のお子さんの発表が終わってからも食い入るように発表を見ておいでで。
 教室後方に用意した保護者席はほぼ満席。
 
「どういうことなの……」
 
 そして、授業後に回収されたアンケートはわりと絶賛の嵐。
 
「子どもたちの成長をあらためて感じる素晴らしい授業でした」
 いや担任はほとんど眺めてるだけの『授業』でしたけど。

「今は毎日の慌ただしさに追われていますが、毎日が笑顔だったあの頃を久しぶりに思い出しました」
 大丈夫ですかお母さん。
 
「最後の先生のお話は、まさに私が言いたかったことを言ってくださった、という思いでした。*2
 みんなにその気持ちがあれば、いじめなどなくなると思います」
 その、いじめが「起きない」じゃなくて「なくなる」って言い方はどういう……。
 
「話す順番でない子も仕事があるなど、工夫されていて良かったです」
 『仕事』って言っても、発表待ちの子は自分の前に発表する子のスライド係をやる、ってだけなんですけど……。
 PCのカーソルキーを押すだけの簡単なお仕事。
 担任は当日は全体を見ていたいし、それに、担任がスライドをミスるのは失策だけど、2年生がミスっても微笑ましく見ていただけるので……。
 
 まあ、もちろん、アンケートを提出されない保護者の方が多いので、不満がないのかどうかはわかりませんが。
 しかし、少なくとも苦情めいたアンケートは一件もなく。
 
「退屈なんじゃないか」
「人権的にどうなのか」
 などという不安があったにもかかわらず、結果的には、過去何十回かやった授業参観の中でも特に好評だったという……。 
 
 結局、同じ発表であっても、子どもがいない私が見るのと、実際にそのお子さんを産み育てた保護者の方が見るのでは、全く違った感慨があるのでしょう。
 今回はたまたまそれが良い方向に働いたとはいえ、保護者の目線でものを見るのは難しいことだな、とつくづく思いました。
 
 そして、はてなーの一人を自認する私としては複雑な思いですが、子どもの個人情報……特に、家庭環境や生育歴といった情報は学校からは切り離すのが望ましい、というはてな的価値観は、保護者間では必ずしも一般的なものではないのだ、と感じた次第でした。
 

余談

 
A児「ねえ先生、お母さんのおなかの中の絵って、何色でぬればいいの?」
担任「うーん……。覚えてないの?」
A児「ないよ!」
担任「まあ、赤とかオレンジとかピンクとか、そのへんの好きな色で塗ればいいんじゃないかな?」

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*これは実際の子どもの絵ではなく、筆者が描いた絵に自動着色ツールを使ったもの
 
担任「……で、君の……その絵は何の絵?」
 
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B児「おなかの中にいた時の絵!」
担任「そう……。じゃあ、何か色を塗った方がいいんじゃないかな?」
B児「塗らない」
担任「いや……でも……」
B児「これ、ちょうおんぱの絵だから」
担任「……ああー!」
 
 ちなみに、「今までの様子がわかる写真」というお願いに、超音波エコーの写真を持たせてくださった保護者もいました。
 
担任「じゃあ、お話しする台本に、『これは、ちょうおんぱでおなかの中を見た時の絵です』って書いておこうね。
 ……でないと、見た人びっくりすると思うから」
 

*1:できればデータで欲しい、とお願いしたんですけど、ほとんどの家は物理写真でした。

*2:『みんな、自分が生まれる前、生まれた時、お家の人がとっても喜んでくれた、大切にしてくれたことがわかりましたね。
 そして、お友達もみんなそういう話をしていたよね。
 だから、みんなは、自分も、友達も、みんなお家の人にとっては大切な宝物なんだよ。
 だから、自分のことも、お友達のことも大切にしてくださいね』
 という……まあ普通の話だよね?

学校での心付けの話。

 全くの思い出話なんですけど、昔は、遠足とかでお世話になるバスの運転手さんに、「寸志」って書いたのし袋を渡していた気がします。
 私が産休補助として働いていた頃……もう二十年近く前ですけど。
 
 正規職員ではないので、
「学年主任が何かやってる」
 くらいの感覚でしたが、考えてみればあれってチップを渡していたわけですね。
 
 なんか、ここ数日の、キモチップがどうとか心付けがどうとかいう話で唐突に思い出しました。
 
 しかし、自分が正規採用の教員になってからは、そういう光景を目にしたことはないし、自分の学級でお金を出したことも、「出した方がいいよね」という話を聞いたこともないです。
 バス会社に支払う費用は、事前に見積もりをとって、後日会社から請求された分だけです。
 
 公立学校の遠足だから、必要な費用は保護者から集金して、決算は教育委員会に報告するわけですけど、当時、運転手さんへのチップってどう処理されていたんだろう……?
 
 今でもやってる地域もあるんでしょうかね……?
 

保護者と感覚が違うなあ、と思った話。

 本校……じゃなかった、私が昨年度まで勤務していた学校では、始業式に、各学年の代表者が、新しい学年でのめあてを作文で発表することになっています。
 
 始業式……つまり、新学年の最初の日に読むわけですから、年度末に子どもたちが作文を書き、代表者を選ぶところまでは担任ができますが、その後、春休み中に練習し、当日作文を持って来るのは本人任せになります。
 
 なんだかんだあって作文が一応できあがって代表が決まった後、練習用の原稿を家に持たせて、保護者に連絡。
 
「……というわけで、お子さんが学年代表になりました。
 原稿は持ち帰っていると思いますので、おうちで練習させてあげてください。
 教室で練習した時はとても上手に読めましたけれど、春休み中に忘れてしまうといけないですし」
 
 すると保護者の方が、
 
「それで、持ち帰った原稿はどうしたらいいですか?」
「え? それは差し上げますのでどうぞ家で持っていてください。
 当日は、台紙……と言っても色画用紙ですけど、それに貼って装丁したものを読みます。
 それも……たぶん記念に持ち帰ることになるんじゃないですかね。その時の担任の考え次第ですけれど」
「まあ! あんなきれいにしたのをもらっちゃっていいんですか?」
「えっ?」
 
 ……えー、その持ち帰った「原稿」というのはですね。私がパソコンで打ったやつなんです。
 
 いえ、もちろん、元々の作文は子ども本人が書いたんですけど……(その「元の作文」も持ち帰ってるんですけど)。
 
 ただ、
 
「ぼくが2年生できるようになったことは、プールで25メートルおよげました」

「ぼくが2年生でできるようになったことは、プールで25メートルおよげるようになったことです」
 
 のように、担任が若干手直ししてしまっていたり。
 
 いやその、国語教育上、そういうのはもちろん本来は子ども自身が書き直すべきものなんですけれど……(もにょもにょ)
 
 しかし、年度末で時間がなかったことでもありますし。
 それに、紙媒体だと年度末の人事異動や教室移動に紛れて紛失しないとも限りませんので、データにしておいた方が安心ということもあり……。
 加えて、正直なところ、子ども自身も、自分が書いた字よりパソコンで印刷した字の方がスムーズに読めるという……。
 
 ………………と、いうように、担任としては、
 
「子どもが自分で書いた作文→尊い
「大人がパソコンで打ち直した作文→手抜き」
 
 という認識が「常識」として染みついていたのですが。
 
 ところが件の保護者の視点では
 
「子どもの作文を担任がパソコンで打ち直した原稿」→「きれいにしてもらった」
 
 という認識だったようで……。
 
 こう……絵を額装してもらったとか、手書き原稿をオフセット印刷に製本してもらったとか、そういう感覚なんでしょうか。
 確かに、「子どもが書いた作文」と「子どもが作った作文に担任が一手間かけた原稿」と考えると、そっちの方が手間がかかってるように見えるのかな、などと思い直しました。
 しかし正直……子ども自身に清書させると、担任がパソコンで打つより10倍くらい時間がかかるので……。
 
 ……今まで、社会科見学とかでお世話になった時には、子どもがつたない字で書いた「お礼の手紙」を送ってきましたけど、あれってちゃんと気持ちが伝わってるんだろうか、とちょっと思いました。

異動のお知らせ。

 まあ、何しろ今の学校に8年もいましたので、異動自体は驚きではないです。
 
 ただ、今いるA小学校は、市内で一番の小規模校。
 で、今回発表になった異動先は、市内で一番大きいG小学校。
 
「ひえっ……」
 
 小規模校も大規模校も同じ小学校ではありますが、仕事の進め方も違えば子どもたちの様子も色々と違います。
 当市の場合、おおむね小規模校の方がのどかな雰囲気。
 
 市内で一番のどかな学校から、一番……ええと……現代的課題を抱えた学校に異動になるわけです。
 
 内示が発表になると、今までお世話になったY先生が
「びっくりだね! G小学校! てっきりB小学校とかかと思ってたよ!」(B小は市内2番目の小規模校)
「私も内々示を聞いた時はそう思ってましたよ……」
 
 帰宅して卒論ちゃん(最愛の妻)に伝えると、
 
「ええーっ!? G小学校だけはないと思ってたのに……。B小学校かと思ってた。今の教育長は配慮が足りないんだよ!」
「いやまあ……他の先生とか学校の構成とかとの兼ね合いもあるんでしょうし、私にばかり配慮してもいられないのでは……」
 
 まあその、私は以前、隣市の僻地校から、当市のF小学校(2番目の大規模校)に異動になり、その年度中に鬱を患って休職してしまった過去があって。
 それもかれこれ10年前のことではありますが。
 しかし、その10年のうち8年間はA小学校にいたわけでもあります。
 
「10年も経ったんだからもう大丈夫だろう」
 という話なのかも知れませんが、それでいきなり児童数が4倍の学校に行くとか、経歴をさておいてもちょっと心配です。
 
「死ぬ前にお仕事休むんだよ? 万一そういうことになっても私は全然気にしないから。休職期間中も共済組合からある程度お金はもらえるし。ダーリンが毎日家にいてご飯作ってくれたらそれはそれで安心だから」
 
 すでに私がメンタルを病む前提で話している卒論ちゃん。
 ちなみに奧さんは学校教育課にいた経験もあるし、今は市立美術館勤務で校外学習の受け入れもしているので、各学校の子どもたちの様子とかある程度知っているのです。
 
「まあ、異動先の校長も、履歴書は読むだろうし、いきなりハードな学級を持たされたりしないとは思うんだけど」
「むしろ、担任なしで個別支援専門とかでもいいかも知れない」
「それはさすがにないんじゃないかな……」
 
 というわけで、例年以上に不安な年度末となりましたが、まあその、なんとか無事に乗り切りたいものだと思っています。
 

アイドルマスター(デレステ)の政治的正しさについて。(あと、ガールズインフロンティアすごくいい)

 しばらく前からスマホゲーム「アイドルマスター シンデレラガールズ スターライトステージ」をやっています。 
 
 長い。以下「デレステ」とします。
 
 アイドル育成ゲーム「アイドルマスター」シリーズの一作で、ゲームの基本的な内容はリズムゲーム音ゲー)です。
 
 ……しかし、はてなにいると、
「これって要するにギャルゲーでしょ? 未成年女性の性的消費では? ジェンダー的価値観の強化にあたらない? フェミニズムの観点からどうなの?」
 
 ……といったことを自問してしまいます。
 フェミニズムを系統的に勉強したことはないけれど、影響されてはいる私……。
 
 それでも本作が好きなので、その良いところ、それでも問題だと思うところを挙げてみようと思います。
 
*なお、私は「デレステ」以外の作品はアイマスシリーズも他のスマホゲームもほとんど知らないし、本作についてもよく知らないキャラクターとか大勢いるので、トンチンカンなことを書いていたらどうぞ教えてください。

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まだこのくらいのレベル。
*記事中の画像は、断りがない限り全て「アイドルマスター シンデレラガールズ スターライトステージ」のものです。
 

良いところ。

 

  • キャラクターがかわいい。

 ……どのキャラクターもかわいい。好感が持てる。
「そのようにデザインされてるんだから当然では?」
 という話なんですけども……。
(そして、それはかえってフェミニズムの人を激昂させそうでもあるのですけど)
 
 でもまあ、本作の魅力としてはそれを第一に挙げざるを得ない。
 
 ちなみにウチの奥さんに一番似てるのは前川みくさんだと思います。ウチの奥さんも語尾がにゃーにゃー言うし(誰も聞いてない)。
 

 個々のキャラクターに、「コミュ」と呼ばれるある程度のストーリーが用意されています。
 
 本作の登場人物は、いずれも大変個性的です。
 元警察官であるとか、腐女子であるとか、女子高生で起業家であるとか、ネグレクトの疑いのある幼児であるとか、ドバイからの経済難民であるとか。
 
 そんな彼女らが一様にアイドルを目指し、ファンを獲得していくわけですが……。
 その過程で、彼女ら一人一人の個性が活かされ、個人的な願いもきちんと成就する、という物語になっています。
 
「『かわいいアイドル』になるために、これまでやってきた空手の道を捨てる必要はない。それはむしろ魅力として活きるのだ」……という、空手家・中野有香の物語とか。
 
 神崎蘭子中二病)と、白坂小梅(ホラー映画大好き)が意気投合するストーリーコミュとか非常に印象的でした。

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一人で物語の世界に浸っている子どもだった蘭子さん。
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すごくよくわかる小梅さん。
非コミュにシンパシーを抱く筆者)
 
*画像はクリックすると拡大されるみたいです。
 
 歌い手に合わせて歌が作られたりする世界なので、歌い手について知らないと、歌詞が部分的に意味不明だったりする例も。*1
 
 あまりにも個性が強くて、「普通」の社会ではやっていけそうもない子たちが、ありのままでちゃんとアイドルとして活躍していく姿を見ていると、
346プロダクションって、発達障害者の支援機関としても優秀なのでは?」
 
 ……なんて言うと、発達障害はこんな甘いものじゃない!」とか叱られるかも知れませんが。
 
 でも、諸星きらりのご両親とか、我が子のデビュー……というか就職が決まった時、すごく喜んだろうし、安心したと思うのですよ……。
(いや、決してそんなキャラクターばかりではありませんけれども。「前職は会社員」「元アナウンサー」とかいう人たちもいるし)
 
 前川みくについても、当初
ネコミミで語尾がにゃーにゃー言うアイドルとか、媚び媚びじゃねえか……」
 と思ったのですが。
 しかし、ストーリーを追っていくと、その「猫アイドル」こそが本人の考えるアイドルの理想型であり、それを貫くために前の事務所を飛び出してきたこと、事務所内でもとりわけファン思いでプロ意識の高いアイドルであることが明らかになってくるというですね……。
 
 ……とはいえ、現実の芸能界が、このような、個人の個性が活かされる幸福な場所なのかどうかについては、わりと強い疑いを抱いてはいます。
 
 というか、現実の労働全体が、そんな幸福なものではないかも知れない。
 しかし、だからこそ……
デレマスというアニメを見て驚いた

アイマス世界では、学生アイドルはちゃんと学校に行き、薬物も枕営業もストーカー被害もない。現実の芸能活動…ひいては労働全般が、アイマスのように心身ともに健康的で自己実現に繋がるものならいいのに、と常々。

2016/06/19 08:41

 
 ちょっと話が逸れますが、イベント曲「Spring Screaming」のMVについて。
 この曲、夜の学校の校庭で3人が踊る……のですけど、よく見ると、完全な深夜ではなく、まだ少し空が明るいのがわかります。
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一番左が龍崎薫
 これたぶん、労働基準法の関係ではないかと思っています。
 この曲を歌う「龍崎薫」は設定上まだ9歳なので、撮影が20時を超えないようにしている、という表現なのではないかと。
 
 ……まあ、昨今では、現実の子役の労働基準の方がユルユルになっているという話ではありますが。働き方改革
労基法は子役を守ってくれない? 児童労働の規制緩和が進行中(今野晴貴) - 個人 - Yahoo!ニュース
 
 あと、細かいけど本作のいいところとして、過去何度かUIの改善があって、その都度確実に使いやすくなっているのはすごいと思います。
 
 ゲームとはいえ、インターフェイスが変わるたびに炎上するどこかのソーシャルブックマークサービスとかどこかの動画サイトとはわけが違う……。
 

良くないところ。

 
 ……まあ、絶賛してきたわけですけど、それでも「これはなあ……」と思うところはあります。
 

  • 女性が受動的である。

シンデレラガールズ」というタイトルの通り、モチーフがシンデレラなのですね。
「普通の女の子が、魔法使いに魔法をかけてもらうことによって変身する」
 という。
「魔法使い」に相当するのが、プレイヤー担当する「プロデューサー」であるわけです。
 どうなんすかねそれ。
 

  • ダサピンク。

 ダサピンクとは、「ピンク色はダサい」という意味ではありません。
「こういうピンク色にしときゃ『カワイー!』とか喜ぶんだろ?」
 というおっさんセンスが生んだデザインがダサい、という話です。
 
 まず特訓アイテムがダサい。

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幼児向けのおもちゃっぽい。
 アイドルの特訓に実際にイヤリングやらガラスの靴やらを何個も消費するはずはないので、あれは何か仮想的な概念のアイコンなんでしょうけど。
 具体物でないならむしろもう少し何とかならなかったのか。
 
 それから、肝心のアイドルも、ノーマルやレアのアイドルは、特訓後の衣装がしばしばダサい。
 具体的な名前を挙げると角が立ちそうなので避けますが、
「クリスマスツリーとか雪だるまとか、仮装大会じゃねえんだぞ!」
「柄も色使いもひでえセンスだな……」
「とりあえずヒラヒラフリフリでリボンがついてりゃいいと思ってない……?」
 とかいうのが多い。
 
こち亀」(なつかしの駄菓子屋講座)に出てきた「リコちゃん(リカちゃんのパチモノ)」を連想させる衣装がしばしばある。決して全員ではないけど。
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ひどいデザインのニセ物と、美麗な「本物」をちゃんと描き分けるプロ漫画家すごい。
*2

 
 とはいえ、同じキャラクターでも、Sレア、SSレアになると衣装デザインは「本物のリカちゃん」並に大幅に洗練されます(しばしば顔のデッサンも大幅に改善される)。
 
 ……あと、未プレイの方に誤解を与えてはいけないので書いておくと、ゲームの仕様上、ノーマルやレアのアイドルの衣装がどんなにダサくても、それでステージに立ったりすることはないので、ダサい衣装を見るのはほんの一時的なものです。まあ割と気分の問題です。
 
 

  • 恋愛主義。

 リアルアイドルの歌をあんまり聴かないので、現実もそうなのかわからないんですが、本作の楽曲は恋の歌がやたら多い。
 次に多いのは、「自分がアイドルであることの喜びと決意」を歌う系。これは明らかにゲーム特有だと思うのですけど。
 
 どちらでもない、と確実に言えるのは、市原仁奈の「みんなのきもち」とか数えるほどではないかと。
 

  • 反恋愛主義。

 かように楽曲では「恋」を前面に押し出しているのですが、ストーリー中では、アイドルの恋愛は注意深く排除されています。
 
 いや……どこぞの事務所のように「恋愛禁止」「彼氏を作ったら丸坊主で謝罪動画」という世界ではなく、ただ単に「恋をしているアイドルがいない」
 
 中にはご丁寧にも
「恋を知らない自分に恋の歌を歌えるのだろうか?」
 と悩む話があったり。

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空手少女、中野有香
 そして、相談に乗る周囲のアイドル達が、そろいもそろって「私も知らないけど……」というスタンス。
 
 いや、別にね?
「今どきの若い子なら、彼氏の一人や二人いるでしょグヘヘ」
 とかそういうことが言いたいんじゃないんですよ?
 
 でも、3ケタ人の若い女性がいて、みんな顔もスタイルも性格もいいのに、誰一人(禁止されてるわけでもないのに)そういう話がないって、軽くホラーだと思うのですが。
 
 いやまあ……理由はよーくわかるのですけどね……。
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結局、「恋はわからないけど、歌を届けたいファンや、仲間や、プロデューサーの事を考えて歌えばいいんだ」という結論に達する中野有香
 

  • 舞い飛ぶハートマーク。

 ゲームシステム寄りの話になりますが、本作では、キャラクターをユニットに加えて「ライブ(リズムゲーム部分)」に参加させると、「親愛度」というポイントが貯まります。
 これが増えると色々強くなる(雑な説明)。
 
 で、これが一定値に達するごとに「親愛度演出」という、簡単なストーリーイベントみたいなものが発生します。
 基本的には、そのアイドルが
「プロデューサー、いつもありがとうございます! 私らしく活躍できるのはプロデューサーのお陰です! これからもよろしくお願いします!」
 みたいなことを言うという。
 

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主力ヒロイン(たぶん)島村卯月さん。
 内容には個人差があって、恋愛感情……とまでは言えない例が多いけど、基本的にはプロデューサーへの信頼や個人的好意が表明されるイベントです。
 
 ……しかし正直、こっちはそこまでその子のことを知らないでやっていたりします。(システム上、コミュが見られるようになるより親愛度が貯まる方が早いことが多い)
 特に、数合わせでユニットに入れただけの子(とにかく5人集めないとライブができない)からそこまで言われると、こっちがいたたまれない気持ちになったり。
 
 それでも、何十人と親愛度演出を見ていると段々慣れてくるのですが、逆に「慣れていいのか?」と思う時もあったり。
 
 ……これ……「親愛度」である必要ありましたかね?
 ライブに出演すると増えるポイントなんだから、「ステージ経験」とかで良かったのでは……。
 それで、アイドルが「自信が付きました! これからもがんばります!」と言うだけで良かったのに……。
 こんなにハートマークが乱れ飛ぶピンクの画面にしなくても……。
 

  • 人物描写が薄い。

「個性的」であることの裏返しでもあるのですが……。
 本作のキャラクターって、何か一つ強烈な「個性」を持たされて、それ以外の人間性が希薄になっている例が少なくないような気がします。
 
 実際に存在する例を挙げると角が立つのでやめておきますが、例えば「納豆が好き」というアイドルがいたとします。
 
 すると、その子は寝ても覚めても納豆の話をしている。
 MCでも納豆の話をするし、前述の親愛度演出でも、自分とプロデューサーの関係を大豆と納豆菌に例える。
 
 現実には、たとえ納豆大好きで納豆メーカーに就職したような人だって、納豆以外の趣味があり、家族があり、納豆と関係ない悩みがあるはずだと思うのですが。
 
 しかし本作では、「納豆好き」という単機能しか与えられておらず、それ以外の、人間としての内面があたかも存在しないかのように描かれるキャラクターがいる。
 
「それしかないのか」という話は、作中、ロード画面の1コマ劇場でも時々ネタにされているくらいです。
 
 いや、決して全員がそうだというのではなく、イベント等で内面が掘り下げられる例もまた多いのですけれども。
 

  • セクハラっぽさ。

 まあ……露出度高い衣装がしばしばあるのは……まあ……多少はやむを得ない? の? かな?
 アイドル衣装が普段着とデザインが違うのは当然ですよね? たぶん。
 
 でも、未成年の堀裕子とか及川雫を、ユニット「セクシーギルティ」に入れてセクシー担当扱いするのはどうなのかと……。
 
 あと、及川雫の特訓後衣装、あれさすがに酷すぎませんかね……。

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実家が酪農家。
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初仕事の衣装がこれ。
 いや、「酪農家の娘で、牛が大好き」って設定があるのはわかりますよ?
 プロデューサーは「これで大丈夫?」って心配するんだけど、本人は全然気にしてない、って描写もある。
 
 でも、「本人が好きでやってる設定だからセクハラじゃない」ってのをあまり押し通すと、作品全体の説得力が落ちる気がするんですよ……。
 あんまり言うとセクシーギルティに「世直し」されてしまうかも知れませんが……。
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あっ、これオレかも。
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キキー、開き直った!?
 

  • かわいい至上主義。

「そのアイドルの個性が活かされる、自己実現の物語であるのが良い点だ」
 ……と書きましたが、実は例外があります。
 
 本作では、
「かわいい系じゃなくて、カッコいい系を目指したい」
 というアイドルが何人かいます。
 
「ロックなアイドル目指してます!」だったり
「サッカー選手のほうが興味あるんだけど……カッコよくプロデュースとかもできるのか?」だったり、
「地元じゃ特攻隊長なんて呼ばれてたがな。アイドルなんて興味ねえっつーの!」だったり。
 
 で、そういう子に無理矢理ヒラヒラした衣装を着せる展開がわりとよくある。
 カワイイハラスメント(カワハラ)とでもいうか。
 
 まあ、上に挙げた3人の場合、いずれも、カワイイ衣装とは別に、カッコいい系の衣装も用意されてたりはするのですけど……。
 
 でも、カワハラを受けてるうちに、
「これもアイドルっぽくて、アリですね……」
「カッコかわいいって言われたんだ。アイドルだから、それでいいのかもな。オレもオールラウンドになってきたっていうか、弱点がなくなってきたっていうか…」
「ああいうピンクだのフリフリしたヤツだのも、ファンは喜んでんだよな」
 とか、程度の差はあれデレが入るのもある種のお約束になっている。
 
 嫌よ嫌よも……ってそれアカンやつなのでは。
 
 一方で、逆の展開、「かわいい系を目指したい子に無理矢理カッコいい系を着せる」……という展開は、私が見た範囲ではないのです。
(もっとも、765プロ菊地真がさんざんそういう目にあっている気もする)
 
 一方の前川さん。 

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ナチュラルボーン。
「女の子なら可愛いに憧れるものであり、その頂点がアイドル」
 という価値観を信じて疑わない人。
 これ……親戚に女の子が生まれたら何の迷いもなくピンクでフリフリしたベビー服を送ってくるタイプだ……。
 

それでも好きなところ。

 
 ……と、読み返すとなんか問題点ばかり挙げてる問題。毎日プレイしてるゲームなのに。
 
 実際のところ、キャラクターとストーリーの魅力に引っ張られてプレイしつつ、内心で色々もやもやしていたのです。
 
 しかし、それだけに衝撃だったのが、「デレステ」3周年記念イベントのために制作された曲「ガールズ・イン・ザ・フロンティア」でした。

[デレステ MV 3Dリッチ] ガールズ・イン・ザ・フロンティア
 
 なにしろ、本作は前述の通り「シンデレラ」をモチーフにしています。
 なのに歌詞が
 
「お気に入りだったフェアリーテイル なぞるように生きてきたけれど 幸せのそのイメージは 今ではもうホコリかぶりで」
バックパックに希望詰めて 自分の足で歩け! シンデレラ」
「夢は他人に託すな かけがえない権利」
 
 え? 何? エマ・ワトソン監修か何かなのこの歌?
 
 イベント内容としても、
「今まで自分たちは、色々なことに挑戦してきたつもりだけど、それはプロデューサーが用意したハードルを跳んできただけではなかったろうか?」
「これからは、進むべき道を自分で切り拓いていかなければ」
 という話で、これまでのイベントとかをそういう風に総括するの? え? いいの? そこまで言って大丈夫? という感じ。
 
 曲の冒頭~前半部分で、過去のイベント曲の映像やステージを出しておいて
「守るべきは過去じゃない」
 って歌詞もすごいなーと。
 
 ……まあ、そうは言っても、この歌、このイベントの後、ゲーム自体が劇的に変わったわけではありません。
 アイドルが自主的にレッスンに取り組んだりはしないし、プロデューサー……プレイヤーに不満を抱いて事務所を出て行ったりすることもない。
 親愛度演出では相変わらずハートマークが乱れ飛んでいる。
 
 しかし、今後の楽曲とか、イベントとかで、少しずつ変化が出てくるのではないかな……と、期待しています。
 

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でも曲はもらうもの。
 あれだけ「夢はプロデューサーさんからもらうものじゃない」とか言っておいて、やっぱり曲はもらうのかよー。
 765プロは、ひきこもりの千早のために自分たちで作詞したんだぞー。
 

こまごまと問題だと思うところ。

 
 まあ余談です。
 重箱の隅的な話。オチはありません。
 
・20代後半アイドルが年齢でいじられがち

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川島さんは28歳、菜々ちゃんは「永遠の17歳」。
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オバマが大統領になったのが2009年……?
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やめてさしあげろ。
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ライフステージ。
 でも川島瑞樹さん、ゲーム内に登場した時点ですでに28歳だし、しかもサザエさん時空だから引退して女優にもならないじゃないですか……。
 
 
・「お料理、得意なんです!」はいいけれど。
 いや、「趣味は家事」ってのが悪いとは思わないんですよ、全然。
 しかしですよ?
 
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お嫁さんにしたい有名人アワード……。昭和か。
「結婚したい」じゃないですからね。「お嫁さんにしたい」ですからね。
 
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受賞おめでとうパーティー
 しかも周りのアイドルも喜んで祝賀会とか開いてるし。君たち……。
 
 
はてなだと炎上しそうなやつ。
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食べて応援! ウナギ絶滅キャンペーン!
 ちなみに「結局ウナギは買えなかった」ってオチがつくので、これがウナギである必然性は全然ないのでした。
 
 
アメリカだと炎上しそうなやつ。
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ホワイトウォッシュ。
 
 
ちびくろサンボ(父:ジャンボ、母:マンボ)
 
 本作のアイドルは、基本的には姓名が決まってるんですけど、姓がない外国人キャラがいるのちょっと気になるんですよね。
 上のケイトとか、ナターリアとか、ライラとか。
(「宮本フレデリカ」「メアリー・コクラン」「楊菲菲」みたいな人たちもいるので全員ではない)
 
 まあ、
「ライラさんの名前は、ライラ・ビント・アフメド・イブン・アブドゥッラフマーンですよー」
 とか言われても、カタカナ表記だと名前欄に入りきらないですけど……。
 
 それにしても、表記はともかく設定上も姓が決まってなさそうなのがちょっとかわいそうだし、二次創作とかで困るんじゃないかな……?
 
 あと、年齢に比べてアホの子が多いのも女性差別かしら、と思ったのですが、「SideM」(男性アイドルを育成する、女性プレイヤーを意識したゲーム)に出てくる男性アイドルもわりとアホの子が多いっぽいので、これはまあある種の宿命なのかも知れませんね……。
 

余談の余談。

 
私と、最愛の妻である卒論ちゃんの会話。
 
私「……というわけで、デレステというゲームをやってるんですけど」
卒「ほうほう」
私「しかしアイドルマスターシリーズには、『SideM』って、女性向けの作品もあるんですよ。男性アイドルを育てるという」
卒「そんなのあるの!」
私「基本システムはまあだいたい一緒らしいんだけど、違うのは、ほとんどの男性アイドルには『前職』があるってことなんだ」
卒「ほほう!」
私「医者だったり警察官だったり……まあ、デレステにもそういうキャラクターはいるんだけど、SideMの方は『元なんとか』っていうのを前面に押し出してるんだよね」
卒「それはさー、その方が安心だからじゃないの?」
私「安心」
卒「だって、いきなり直接アイドル目指す人とかちょっとやばそうじゃない」
私「うっ」
卒「その点、前職があってアイドルになりました、って話だと、『ああ、何か事情があったんだね』って感じになるじゃない」
私「……確かに、『わけあって、アイドル!』というのが、SideMのキャッチコピーであるらしく……」
卒「でしょー?」
私「それでなんか、実は過去に暗いいきさつを抱えている……みたいな人が多いという噂」
卒「女子はそういうの大好物だからねー。男の人はさー、女の子の過去とか興味なくて、今が明るくてかわいければそれでいいんだろうけどさー」
私「うっ」
卒「といっても、暗い過去を引きずってる男子とかめんどくさいから、『辛い思い出があるんだけど今はそれを乗り越えてやっていて、ふとしたきっかけでそれを話してくれる』みたいなのが女子的には萌えなんだけどさー」
私「それはそれで、他人の人生のオイシイとこどりのようにも思える……」
 

*1:Kawaii make MY day!」の「とりあえずドーナツ?」とか。まあ、キャラクターソングである、と言った方が簡単かも知れないけど。

*2:上の画像は「こちら葛飾区亀有公園前派出所」61巻「なつかしの駄菓子屋講座」より。ていうかeBookJapanのサイトで一話全部試し読みできます。 こちら葛飾区亀有公園前派出所 61巻 | 秋本治 | 無料まんが・試し読みが豊富!eBookJapan|まんが(漫画)・電子書籍をお得に買うなら、無料で読むならeBookJapan

男女七歳にして。

 最近、両親のアルバムから自分の子どもの頃の写真を見つけてちょっとびっくりしたこと。
 
 自分が小学生だったころの集合写真を見ると、男子と女子が分かれて並んでいるのです。
 
 入学式に始まり、各学年の遠足、修学旅行など、全部。
「向かって右側が女子、左側が男子」とか、「前列で座ってるのが女子、後列で立ってるのが男子」とか。
 
 今、「遠足 集合写真」とかでググると、集合写真を載せてるサイトがたくさん出てきますが(それはそれで心配なんだけど)、そこまで男女をくっきり分けて整列させてるのはほとんどないように思えます。
 
 そういえば、今は名簿も男女混合だけど、当時は違った気がします。
 全然意識したことはなかったけど、時代は変わっていたんだな、と……。
 

ブルゾンちえみの「キャリアウーマン」が、フェミニズムの観点からどうなのか知りたい。

 今さら説明するまでもないと思いますが、「35億」で有名な、お笑いタレント、ブルゾンちえみ氏のコントの話。

 これを初めて見た時、
「これは……笑っていいのか? 政治的に正しいのか?」
 と脳がフリーズしてしまったのを覚えています。
 
 思いつく限り、主な論点は以下のようになるでしょうか。
 

差別にはあたらないと思われる根拠

 
・劇中の「キャリアウーマン」は、明らかに鼻持ちならない人物である。社会的弱者とも言えない。そういう「意識高い系の強者」の滑稽さを笑いものにするのは差別にはあたらない。
・このネタを考えたのは、ブルゾンちえみ氏自身で、氏は女性である。内容としても女性一般をネタにしたものではない。だから、女性差別とは言えない。
・劇中の「キャリアウーマン」は、一人の男性にこだわるべきでないと言っている。これは「女性は一人の男性に尽くすべき」という封建的、父権主義的な価値観に対抗する、女性に自由をもたらす主張である。
 

差別ではないかと思われる根拠

 
・本作は、「効率的な仕事ぶり、充実した生活」を送る女性……「キャリアウーマン」をカリカチュア化している。それは差別にあたるのではないか。
・あたかも、キャリアウーマンは意識高い系で「男はガムと同じ」と言い放つような人物だ……というかのような表現は、誤ったステロタイプではないか。
・仮に、本作の「キャリアウーマン」の恋愛観が、女性の望ましい姿であるとするなら、それをネタとして笑うことはやはり差別的ではないか。
・本作は、多数の男性を含む審査員・視聴者受けを狙って制作されたものである。だから、作者であるブルゾンちえみ氏が女性であることは、内容が差別的でないことの根拠にならない。
 
 個人的には「差別なのでは」に傾いているのですが、好意的な意見もあるのですよね。

キャリアウーマンになれば、交際相手に記号的価値や経済的な利用価値を男性に求めなくて済む。そうなれば、恋愛における自由度が増す。
(略)
ブルゾンちえみ演じるようなキャリアウーマンが増えれば、経済的に不安のある若年男性にとって、女性からの「男性の経済的能力を値踏みする視線」から解放されることになる。

「ブルゾンちえみ」が気になる理由をまじめに考えてみた | GLOBIS 知見録

 つまり、ブルゾンちえみ氏の演じるような女性像は、男女双方にとって理想的なものであり、それゆえに受けたのだ、と。
 
 ううむ。
 
 思うに、女性が、一部の「意識高い系キャリアウーマン」を指して
「ああいう女ヤだよねえ」
 って笑ってる分には、差別にあたらないと思うのですよ。
 
 一方、男性が
「そうそう、キャリアウーマンってこういうおかしな連中ばっかりだよな」
 って笑ったら、それは差別になってしまう。
 
 では本作は、誰が誰をネタにしているのか?
 女性が一部のおかしな女性を笑う構図なのか?
 男性が働く女性一般を笑っている構図なのか?
 フェミニストの人たちはどう考えているのか?
 
 そのあたりを考えてずっと困惑しているのです。
 
 まあ、なにぶんフェミニズムにも様々な立場があるそうなので、これときまった答えはないのだと思いますが。
 それでも、フェミニストの立場からはあれはどのように解釈されるのかな、と、気になっています。
 
 ……余談ながら、このコントの存在を私に教えてくれたのは、自らも働く女性であるところの最愛の妻でですね。
「これ面白くない?」
 とスマホを見せてくれたものの、画面を凝視して硬直してしまった私を見てこれまた困惑、という。