プロの力。

 遠足などで使うバスには2種類あります。
 
 一つは営業車。観光業者など、代金を払って借りるバスです。
 もう一つは、公用車。市が所有するバスです。
 
 前者はプロの運転手が運転しています。
 後者は、わりとただの市役所職員が運転していたりします。
 
 この間バスに乗ったとき、隣に座った子が聞いてきました。
 
「先生、このバスは騒いでもいいバスなんですか?」
「……いい、ってことはないけどな……」
 
 ……市のバスだと、乗っている子どもが騒ぐと運転手の機嫌が著しく悪くなるのです。
 教師が怒られたり、後で市役所から校長に苦情が来たりするんですね。
 
 こっちはバス&運転手を無料で貸してもらってる立場だから強いことは言えません。
 
 「子ども嫌い」という人種の存在を思い出す瞬間です。
 ……小学校なんかに勤務していると、その存在を忘れがちなので。
 
 市バスに乗っている間は、普通の路線バスくらいに静かでないと駄目……ってことは、まあ事実上一言も話すな、ってことですか。
 
 ……でもさ、遠足のバスとか思い出して欲しいんですが、70人の小学生を満載したバスが、そんなに静かなわけないですよね……。
 だから、市のバスって、子どもにとっても教師にとっても、非常に神経をつかうものなのでした。
 
 これが営業車だと、運転手も子どもに慣れてるし、まあこっちはお客さんなので、あまり気を遣わずに済むんですが……。
 
 あと、市バスだと、
「行き先は〜〜ですね?」
「はい」
「どうやって行くんですか」
 
 ……道を知らない。
 事前に調べてもこない。
 だからこっちが、「バスが通れそうな道」を確認しておかないといけない。
 
 プロの運転手じゃないから仕方ないとはいえ、プロ意識がないわけです。
 
 あと、営業車だと早めに来てくれるけど、公用車はしばしば時間に遅れて来ます。
 
 ……お役所的プロ意識。
 
*余談。
 
 鱶沢小学校で、幼稚園と乗り合わせで公用車を利用したときのこと。
 
 きゃいきゃいはしゃぎ始めた園児達に向かって保育士さんが一言。
 
「ほらみんな、静かにしないとバスが怒っちゃうよ?」
 
 小学校職員一同感心することしきり。
 
「そうか!“運転手が怒るから静かにしろ”とは言いづらいけど、“バスが怒る”という表現があったのか!」
「さすが保育士だ!」