しばらく前のこと。
養護教諭から声をかけられました。
「K村先生、シイタケいらない?」
「シイタケですか……」
シイタケ、あんまり好きじゃないんですが……。
「んー、やっぱりいいわ。これからホダ木の駒打ちするから誘ったんだけどね」
“シイタケ”?
「原木の話ですか!?」
「そうだー」
田舎ってすげえ……。
読んでいる人の中には、もしかすると
「シイタケって畑で取れるんでしょ?」
「山から取ってくるんでしょ?」
「工場で人工的に培養してるんでしょ?」
とかいう都会の方がいるかもしれないので説明しておくと、「ホダ木」というのは、シイタケ菌を育てるために使う木のことです。
クヌギとかコナラとかが良し。
それも、枯れ木でないとだめなので、短く切ります。
(養護教諭に言わせると、切ったその年ではなくて、翌年まで放置しないとだめなのだとか)
そこに、ドリルで穴を開け、シイタケ菌を含んだ種駒を木槌で打ち込むのです。
で、できあがった苗木(ホダ木)を、シイタケ菌が育つにふさわしい環境に置いておけば、シイタケが生えてくる、というわけです。
田舎の山林(山奥ではなくて、民家の裏山とか)に行って、こんな風に短い丸太が立てかけてあるのを見つけたら、それはたぶんキノコ栽培をしているのです。
「……しかし、私アパート住まいなんですが。シイタケって、室内でも栽培できるものなんですか?」
「あー、だめだね。直射日光が当たらなくて、風通しはいいけど湿度の高い、薄暗くてちょっとじめっとしたとこでないと」
「それじゃあどのみち無理ですよ……」
「どうだい新居に」
「新居って……」
薄暗くてじめじめした新居。
「……キノコが生えるような環境に住むのはちょっと……」