もう20年以上前、私が他県の教員採用試験を受けた時のことです。
その時の私は、腕を怪我してギプスで固定していました。
というのも、その採用試験では体育の実技があったのですが、それを事前に練習していて腕を痛めてしまったのです。
「怪我人に遠出させるのは心配だ」
ということで、弟が付き添いについてくれました。その節はありがとう弟。
さて、当時、私が他県の教員採用試験を受ける時には、2日前から現地入りしていました。
「前日入りでは何かトラブルがあって間に合わないかも知れないし、そうでなくても疲れが取れなくて実力が出せないだろうから」
という……つまり親が往路の新幹線代と2日分の宿泊費(しかもこの時は2人分)を出してくれたわけで、親にも感謝しかない。決して金持ちではないのに。
とはいえ観光に行ったわけではないのです。まして怪我人だし。
ホテルについて荷物を置いた後、弟と一緒に再び駅まで歩き、電車とバスを乗り継いでさらに少し歩いたところが会場。(確か高校だった)
「なるほどここが受験会場か。当日はまたここまで来ればいいんだな。その時もよろしく頼みます(to弟)」
などという話をした後、再び徒歩・バス・電車でホテルまで帰ってきました。
ホテルに着いたところで弟が一言。
「兄さん兄さん、それで夕食は」
「えっ?」
「『えっ?』じゃなくて。ホテルを出る時、『じゃあどこかに夕ご飯を食べに行こう』って言ってたでしょ」
「そんなこと言ってた!?」
「ええ……」
自分では完全に忘れていたのですが、食事をするつもりでホテルを出たはずのものが、どこかで外出の目的が「会場の下見」にすり替わり、全く気づかないまま会場を下見して帰って来てしまったのです。食事はしないで。
黙って付いてきてくれた弟にはまったく感謝しかない。
……という話を今書いたのは、先日この匿名ダイアリーを読んだから。
anond.hatelabo.jp
いや……部屋を片付けながら服を脱ぐくらい普通なのかも知れない。
私にとって、この「それで夕食は?」の件が衝撃だったのは、「弟が同行していなければ永久に気づかなかった」であろうからです。
自分の奇行に自分では全く気づかなかった……ということは、普段一人で行動していても、似たようなことをしょっちゅうやっているのかも知れない。
というか、やっているという確信がかなりある。
おそろしいことです。
……今にして思うと、親が試験の2日前に現地入りさせるのは、息子のそういうところをよく知っていたからではなかったか、という気もしますね。
余談
ところでその試験は落ちました。
実技試験を受けられないんだからそりゃ当然なんですが、ほとんど無理に決まっている試験に協力してくれた家族はほんとにありがたい。
なお、なるべく疲れないために往路は新幹線でしたが、復路は各駅停車でした。無用の贅沢をさせてくれる親でもないので。
(北海道の試験を受けた時も、往路は飛行機、復路は寝台車だった)
その辺も含めてまことにありがたいことです。