気がつけば、教室は何かの最前線。

 担任している小2女児が、
「あのね先生、ラッスンゴレライって、韓国にめいれいされて日本の悪口を言ってるんだよ」
 と、“教えて”くれたのが連休前のことになります。
 
 思わず
「……誰が言ってたんですかそんなこと」
「お父さん」
 
 お父さんか……。
 
 いや、まあ、さして人間関係が広くもない2年生のこと、「やっぱりそうか」という思いも正直あったのですが。
 しかし、高校生・大学生ならいざ知らず、まさかいい歳こいた三児の父がそんな「ネットde真実」めいたことを娘に得々と言って聞かせるはずはなかろう、という願望めいた思いもあったりなかったり。
 
 淡い願望は打ち砕かれたわけですけども。残念ながら。
 
 まあ、学級担任が、ご両親の言うことを真っ向から否定するようなことを言うのも好ましくない(逆に言って、保護者が担任批判を始めると、担任は非常に困りますし)ので、その場は言葉を濁してしまったのですが。
 
 しかし、本日、8.6秒バズーカの「ラッスンゴレライ」の物まねをしている男子に対して、件の女児が「韓国にめいれいされて」云々をいちいち説いて聞かせているのを見て、
「あ、これは放置してはアカンかったかも」
 と思ったことでした。
 
 まあ……、ずっと以前、高学年の社会科の授業中、
「ピラミッドは5000年くらい前に、エジプトの人が……」
「違います先生、宇宙人が作ったってお父さんが言ってました」
 というやりとりがあった時にも困るには困ったのですが(あの時も放置してしまいました)、関係者が古代エジプト人ならともかく、存命中の個人となると……。*1
 
 個人的には、そもそも例のネタはYouTubeで一度見たことがあるだけで、何が面白いのかもさっぱりわからぬのですが、ギャグを擁護する気はなくとも、陰謀論的中傷に対して慎重であるべきことは教育上の配慮として(お父さんを悪く言わないように注意しつつ)伝えなきゃならんのかも知れない……と思うとなかなか気の重いことではあります。
 
 いやはや。
 教員になった頃には、よもやこんな言説とネット外で……まして教室で対抗せねばならなくなるとは思いもよらなかったのですが。
 嫌な時代になったものだなあ、と、教育界の先人に思いをはせるのでした。
 
*ついでに。
 もっと嫌な、なかば確信めいた想像なのですが。
 
 教室で「ラッスンゴレライ」の真似をしている子どもに対して、
「それは韓国が考えた日本に対する悪口だからやってはいけない」
 とか説いて聞かせている教員も、たぶん三桁のオーダーでいるんじゃないかな、と思ってしまう今日この頃。
 
 ……むしろ三桁ですむと思いたいのですが。
 



 
*追記
 
*「反・反日」的なコメントを書きたくなった方は、その前にこの部分を最後まで読みましょう。 もしあなたが日本語を読めるなら。
(読めない人がいっぱいいるみたいですけどね。現時点で10件くらいコメント削除してるので。……なんでこう、日本語が不自由な国士様が多いんだろう……?)
 
 ある程度予期し得たことですが、コメント欄に
「お前は反日教師だ」
 とか、
「8.6秒バズーカは朝鮮系と思われる反日と思われる外国人に間違いない。根拠がないという根拠がない」
 とか、
従軍慰安婦は捏造」
 とかいう香ばしい方々が沸いていらっしゃいます。
(まあ、むしろ、当初は好意的なコメントが多くて驚いたくらいなのです。時間が経つとコメントの質が変わる、というのは、情報が段々違う層へ拡散していく様子がわかりますね)
 
 この記事は、
「根拠のない陰謀論をもとに誰かを中傷するべきでない」
 というのは自明の前提だとする立場で書いたものです。
 前述のような不毛なことをどうしても他人のブログで論じたくて我慢できない方は別記事(http://d.hatena.ne.jp/filinion/20150500)へどうぞ。
(どちらかというと、「チラシの裏にでも書いてろ」という思いでいっぱいですが)
 
 こちらのコメント欄に書くと、削除するかも知れません(しないかも知れません)。

*1:言うまでもないことですが、これが「韓国の陰謀」であろうと「アメリカ帝国主義者の陰謀」であろうと「ユダヤロスチャイルドフリーメーソンの陰謀」であろうと、根拠がなきに等しい中傷を避けるべきなのは同じことです。
 こんな念を押さなきゃいけない、と思ってしまうのが嫌ですね。