夏休み科学相談。

夏休みこども科学電話相談!
……を聞くたびに、いつも思うことがあったんですが。
 
「なんで親が答えてやらんのよ?」
 
ということ。
 
過去の放送内容は、番組のサイトから聞けますが、
 
・植物はどうして根を張るの?
・キノコはタネがないのに何故はえるの?
・へびはどうやってアゴをはずすの?
・すずめはどうして家の屋根に巣をつくるの?
・人の卵とめだかの卵では、どうしてめだかの卵の方が大きいのですか?
・どうして海の水は塩からい味がするのですか?
 
……とか、たとえ即答できなくたって、ちょっと調べれば誰でも答えられそうな質問がほとんどじゃないですか。
 
もちろん、中には専門家も答えに窮するような質問もありますけど。
 
でもそういうのって、
 
・なぜレッサーパンダは凶暴なの?*1
・どうして、クマの耳は丸いの?*2
 
とか、そもそもかなり答えようのない質問が多いわけで。*3
 
もちろん、回答者は専門家ですから、聞いていると思いもよらない深い回答があって、勉強になることもあるんですが。
 
でも、質問者・回答者とも話をするプロではないから、聞いていて
「そこはそうじゃねーだろー!」
とか、もどかしい思いをすることの方が実は多かったり。
 
ともあれ、親が自分で答えてやればいいのにわざわざ番組に電話をかけさせるのは、
「我が子の声が公共の電波に乗る」
ということの魅力がかなりの比重を占めているのではないかな……と、思っていた頃もありました。
 
先日のこと。
 
放課後の職員室で、温暖化か何かの話題で、CO2とかその辺りの話になりました。
 
R先生「あー。昔から不思議だったんですけど、その“2”ってなんなんですか? H20とか……」
K村「……は?」
R先生「Hが水素でOが酸素なのはわかるんですけど、どこから2が出てくるんだよー、とか、中学時代から理解できなくて……」
 
ちょっと待ってー。
 
K村「え、えーとですね、つまりこれが水素分子で……(図を描き始める)」
R先生「あの、ちょっと」
K村「はい?」
R先生「その丸って、描かないと説明できないもんなんですか?」
 
「丸」って。
 
K村「……描かなくても説明できないことはないけど、描いた方がわかりやすいかと」
R先生「あー、じゃあ続けてください」
 
……と、そんなこんなで十数分。
分子が原子からできていたり「結合の手」があったりしながら、どうにか化学式まで到達しました。
 
K村「……ってことなんですけど……」
R先生「あー……。とりあえず、暗記してどうにかなるもんじゃない、ってことはわかりました」
K村「暗記してたのか!」
 
教科書に出てくる化学式暗記したってなあ……。
 
っていうか、そっちの方がずっと大変だろうと。
 
さらに別の日。
 
H先生「5年の理科を教えてるんですけど、よくわからなくて……」
K村「へえ。どのへんですか?」
H先生「植物に種ができるあたりなんですけど。おしべとかめしべとか、花の部分の名前が、自分でもよく覚えられなくて……」
K村「あー……。がくとかやくとかですかね。子房と胚珠とか、私もよく取り違えていた記憶が」
H先生「はい……。あと、おしべとめしべって、どう違うんですか?」
 
おいっ!
 
K村「そ、それは……。えーと、中央に一つだけあるのがめしべですよね?おしべの先端で花粉が……」
 
そして二十数分。
受粉で花粉管で受精で種子が形成されるところまでどうにか説明しました。
 
H先生「ああ、そうだったんですね」
K村「っていうか、おしべめしべの“お”と“め”は、雄と雌ですよ」
H先生「そうなんですか!」
K村「知らなかったのか!」
 
……確かに、教科書ではひらがなで習った気がするが……。
 
H先生「“しべ”は何ですか?」
K村「“わらしべ長者”の“しべ”と一緒じゃないかな。“蘂”って漢字があるんですよ」*4
H先生「そうなんですか!」
 
……うむ……。
 
いや、かく言う私も、人力検索
「小学校教師ってのは行列の基礎も知らないでなれるのか!」
とか言われたことがあるので、偉そうに他人の無知をあげつらうことはできませんが……。
 
なんというか、
「空はつながっているのに、なぜオーロラを日本で見ることができないの?」
とか聞かれて、回答はおろか調べる糸口すらつかめない、って人も、実は結構いるのかもな……などと思わされました。
 
追記:
なんか、たいへんなブックマークを頂いてしまってあせっています。
 
H先生、立派な先生なんですよ?
……教員として一般に望みうる範囲では。
 
というわけで今日書いた記事にリンク。
http://d.hatena.ne.jp/filinion/20081001/
 

*1:「ええと、どうして凶暴だと思ったのかな?」
「顔が凶暴だったから」
「顔かぁ……うーん……」

*2:「ええと……五感ってわかるかな?」
「わかんない」
「ええと……ウサギの耳は長いよね?」
回答者迷走。

*3:ちなみに、これらの質問は番組のサイトには載ってないようです。
番組サイトに残される、最初にリストアップしたような質問は、かなり
「いい質問(理科的な意味で)」
に限られるんですね。
でも、こどもがいつでも「いい質問」をしてくれるとは限らない。

*4:この説明はちょっと怪しい。
「蘂」は「蕊」の俗字。霞先生ご教示ありがとうございました。