リアル与太郎。

それ、つらつらおもんみれば、大恩教主の秋の月は、涅槃の雲に隠れ、生死長夜永き夢、おどろかすべき人もなし。
ここに中頃、帝おわします。
御名を聖武皇帝と申し奉り、最愛の夫人に別れ追慕やみがたく、涕涙目にあらく、涙玉を貫く、思いを先路に翻し上求菩提のため、盧遮那仏を建立し給う。
しかるに去んじ治承の頃、焼亡し畢んぬ。
かほどの霊場絶えなんことを嘆き、俊乗坊重源勅命をこうむって、無常の勧門に涙を流し、上下の真俗を勧めて、かの霊場を再建せんと諸国に勧進す、一紙半銭奉財の輩は、現世にては無比の楽に誇り、当来 にては、数千蓮華の上に座せん。
帰命稽首、敬って申す。
歌舞伎「勧進帳」より。

読書の秋。
 
本校では、
「職員読み聞かせ」
というものがあります。
 
職員が、他の学年に行って、何かの本を読み聞かせるのです。
 
私は今年5年生で読み聞かせをしました。
 
前日、何を読むか、いろいろ考えながら選びました。
 
かわいそうなぞう
とか、
100万回生きたねこ
とか、しんみりした絵本もいいなー、と思ったんですが、5年生だと読んでいる人がいそうです。
 
ていうか、この2つだと、読み聞かせながら泣きます。私が。
 
で、考えた末に選んだのが、「おはなしのろうそく1」所収の「エパミナンダス」。
 
なかなかいいですよ、これ。
こちらに全部掲載されてる……。いいのか、著作権的に)
 
「そーっと歩いて」とか、いちいち動作化しながら語ると、かなり受けます。
・語り口は、いかにも「おとぎ話」調に、穏やかにやるとギャップが激しくて良い。
・エパミナンダスは「元気・はつらつ」とした感じで。
 
次に、

小さなわらいばなし (上) (ポプラ社文庫―日本の名作文庫)

小さなわらいばなし (上) (ポプラ社文庫―日本の名作文庫)

この本から、
「身投げ」。
 
……この話、子どもに語って聞かせて笑いを取れたためしがないんですが。
 
今回も、
「毎晩身投げをするのはてめえだな!」
……で、みんなぽかんとしてました。
 
「……『毎晩自殺するのはお前だろう』って言ったんだよ」
と説明すると、ようやくちょっと笑いが。
 
いや……、
「身投げというのは、要するに自殺のことだ」
と、最初に説明してから語ったのに。
 
次回語る時は、最初から
「毎晩自殺するのはてめえだな」
にします。
 
でもまあ、これが受けないのはほぼ予想通り。
真打ちは、同書の「与太郎」です。*1
 
これ、「エパミナンダス」とよく似た構成なので、続けてやるとくどいんです。
 
これが大受け。
 
私個人は、「与太郎」の方が好きです。
最後にご隠居(「エパミナンダス」のお母さんにあたる)がぎゃふんと言わされるところが。
 
ところで、今回の読み聞かせ、一つ大きな失敗してまして。
 
……朝学校に来たら、本を持ってくるのを忘れてたんです。
 
で、全然関係ない本を手に持って、記憶を頼りに語りました。
 
読み聞かせてねえー。
 
なんか、「エパミナンダス」の最初の方で、
「それ、先生の作り話でしょ!?」
とか言ってる声が聞こえましたが気にしない。
 
……まあ、大受けしたからいいかー。

*1:たぶん、「与太郎」は本当は話の名前じゃないと思うんですけど。