金がないわけ。

連休中、結婚式場の下見に行って参りました。
下見、というか、式場選びのための調査というか。
式場選びという以前に、結婚するかどうかが定かでないので、むしろイメージトレーニングというか。
 
最初に行ったのが、県北にある教会。
 
結婚式場として実績のあるところで、礼拝堂の他、規模の異なる複数のホール、レストラン、衣装室などを併設。
ブライダルフェアということで、いろいろ見学してきました。
 
外観も内装も良い感じで、案内してくれた方も親切で好感が持てました。
 
「……あの、巨大な花瓶に球状に生けてあるあの花は、もしかして本物の花なのかなあ……」
「……本物だよ……。だって、ここまで香りがしてくるもん」
「……あんな大量のユリの花を見たのは生まれて初めてだ……」
 
しかしあれですね。
 
ロビーで待たされている間、それ系の雑誌もちょっと目を通したんですが、ウエディングドレスのデザインとかについて色々書いてあってですね。
 
「出した方がスッキリする!」って、つまり、腕とか肩とかはあえて布地で隠さないタイプのデザインがどうとかこうとか。
 
えーと。
そういう言い方は不敬罪にあたるんじゃないでしょうか。 
 

 
いや、皇籍を離脱されたわけだから、関係ないのか?
 
とか、
「こちらの礼拝堂は、ピンクがかった色調の大理石を用いていまして、かわいい感じで、女性の方には人気なんですよー」
「こちらのパーティーホールの内装も、かわいい感じに仕上げてあって……」
 
なんか、件の雑誌、ウェディングドレスの写真はあっても、相手方の男性がしばしば写ってなかったり。
 
Q:男はおまけなんですか。
A:おまけです。
 
ともあれ、ここで言われたこと。
 
「うーん、でも、結婚をする上で、最初のハードルになるのが、招待される人数を決めることなんですねー。そうでないと、どの会場を設定して、どんなプランで進行するかが決められませんのでー……」
「ああ……」
「それと、やっぱり期日ですねー。ドレスは、メンテナンスの関係もあって、式当日だけでなくて、二週間前から予定をおさえる形になるんですよー。だから、どんなにドレスを見て試着して、気に入ったのを選んでも、スケジュールを決めて頂かないと、その日に着られるかどうかわからないんですよー……」
「なるほど……」
「お料理も、こちらでは、その時々の素材を使った料理をお出ししてますし……式の内容も、例えばテラスを使ったプランは冬季には実施できない、といった制約もありますので……」
 
丁寧でしたが、言うべきことはきっぱり言って下さる方でした。感謝。
(他も見て回りましたが、こういうのは貴重みたいです)
 
試食・試飲させてもらったデザートとかノンアルコールカクテルも大変美味でした。
 
県内なので、ここではっきり名前を書けないのが残念。
 
「こちら、観光地からは奥まったところにありますので、静かな中で式を挙げて頂けますしねー」
「あはは」
 
「観光地から奥まっている」のは事実で、確かに周辺は静かでしたが、その手前が力の限り観光地化されていて、連休中は最寄りのインターチェンジ周辺が恐るべき渋滞でした。
 
14時到着の予定が16時に到着。
 
でも、もっと遅れているペアもいて、スタッフも全然あわてていないという。
 
とりあえず挙式するなら観光シーズンはパスだと思いました。
 
帰りも大渋滞で、ひどい目に遭いました。
その日、大学時代のサークルの友人が集まって、焼き肉だー、とかいう話だったのに……。
えらい迷惑をかけました。
 
で、その翌々日、「軽井沢ウェディング」なるものにも興味がある彼女と共に、はるばる軽井沢まで出かけてきました。
 
軽井沢が長野にあるなんてことさえ知らなかったこの私が。
 
「軽井沢」というだけで、途方もない富豪が行くところのような気がしていた私でしたが、駅前はそこそここぎれいではあるものの、土産物屋だのレンタカー事務所だのが並ぶ観光地然としたたたずまいで、安心したようながっかりしたような。
 
道沿いのブライダルショップの数の多さには圧倒されたがな。
 
宿泊した「旧軽井沢ホテル 音羽ノ森」は、部屋に関して言えば普通のビジネスホテルでした。
 
料理はおいしかったけど……でも、あれでビジネスホテル四泊分の金を取るのは暴利だろう……。
 
ビジネスホテルに泊まって、浮いた金でレストランに行った方が満足できたんじゃないか。
 
いやまあ、目的は下見であって観光ではないんですが……。
 
礼拝堂も、まあ、昔建てたんだな、と言う感じの漆喰っぽい小さな建物。
「洋風建築の公民館です」と言われたら信じてしまいそうな。
市町村の公民館じゃなくて、小さめの地区公民館。
 
「軽井沢にある」というだけのことで、恐れることはないなあ、と彼女と話し合いました。
 
……でも、繰り言で申し訳ないんですが、値段は恐るべき物で……。
 
昨日、クレジットカードを使おうとしたら、なんか、使用不能になっていてですね。
金曜が引き落としの日だったんですが、どうやら残高不足で不渡りになったらしく。
 
……クレジット、今月で期限が切れるんだけど……。
新しいの、送られてこなかったらどうしよう……。
 
翌日見たのが、
 
・軽井沢高原教会
イングランドハウス ウィンザー
・石の教会
 
でした。
 
高原教会は、まあ、ログハウス風の。
……ログハウス風でした。
 
んー、まあ、もちろんとてもきれいなログハウスで、ログハウスとしては大きい建物ではあったんですが……。
これといって印象がないなあ……。
 
驚いたのは、司祭服(……と、言って良いのか?)を着た女性が礼拝堂の前に立っていて、近づくと
 
「見学の方ですか?」
「ええ、はい」
「今、挙式中ですので、あと……15分くらいしたら式が終了して、中をご覧いただけます」
 
観光客への対応が整備されてました。
 
ウィンザーは……
印象からして、「昔ははやってたんだけど、今は寂れた観光レストラン」みたいなところ。
 
事実その通りだったみたいですが。
 
二階席を含めて100人まで収容できる礼拝堂と、結婚したペアの名前を石板に彫り込んで壁に貼っておく「メモリアルタワー」がセールスポイント。
 
……や、教会に対して「セールスポイント」なんて言うと怒られるのかも知れませんが、でも、案内してくれた人がそんな感じなんですよ。
 
「ここはプロテスタントの教会でしてね。まあ、戒律とかはあまり気にしないというか……ぶっちゃけた話、〜〜教会さんとかはカトリックですから、バツイチの方とかはそれだけでアウトですけど、こちらは、二回目でも三回目でも、もちろん初婚の方でもOKですし……」
「ドレスも、衣装屋さんで買い取りとかいう話になると、10万20万かかっちゃいますけど、ウチだと、こちらの衣装室の衣装のレンタル代がプランに含まれる形で……」
「ウチも、昔は軽井沢ってそんなに教会がなくて、まあ言ってみれば独占状態だったんですけども、最近石の教会さんとか、まああのグループがあちこちで式場を作って……というか、傾きかけた式場を建て直して盛り返していて、ウチなんかは結構厳しい状態なんですよね。また、新しく大きな教会もできますし……」
 
……こういうところで、あんまり生臭い話をするのもどうかと思うが。どうよ。
ていうか、いくらプロテスタントでも、「二回目でも三回目でも」とか言うな。
 
さて。
 
で、石の教会。
本当は高原教会で「あと15分」と言われて待っている間に行ったんですが。
 
隣に「内村鑑三資料館」とやらを建設中で、なんだか入り口に工事現場オーラが漂っていました。
 
例によって祭服の女性が立っていて、
「ただいま挙式中ですので、あと10分ほどでご案内できます」
で、パンフレットをくれました。
 
教会の建物と内村鑑三の思想がどうの、建築家ケンドリック・ケロッグがどうの。
 
神が作った自然の中には、神の生命が現れている。自然の教会とは、神の生命が形となって現れたものである。
その天井は蒼穹、その床は青い野。
無教会の思想。
制度のしての教会ではない、日本人にとって、自然な「祈りの場」としての教会。
 
有機的な建築。
多様な宗教を受け入れる、日本人のための教会建築。
 
「うわー…………。うさんくせえ」
 
率直な感想がそれ。
 
なんか、敷地入り口から、しばらく壁で仕切られた通路が続いていて、入り口で時間を待っている間は、礼拝堂入り口が見えない構造なのです。
 
つい、ディズニーランドのアトラクションとか、万国博覧会のパビリオンとかを思い出しました。
 
待ち時間があるので、その間に高原教会の内部を見てこようか、などと彼女と相談していたら、
「よろしいですか? あと一分少々で出発します」
 
出発?
 
つまり、その祭服のお姉さんが、あれこれ解説しながら館内礼拝堂内を案内してくれるのです。
 
よく見ると、確かに、祭服には、飛ぶ鳥を模したとおぼしきマークが描かれ、十字架はどこにもありません。
これが、「多神教日本のための教会」ということなんでしょうか。
 
そんなこんなで、見学ツアーに出発。
 
……そこでふとお姉さんの背中に目をやると。
 
「……ああっ! 背中にチャックが!」
 
……や、背中にチャックがあるからどうだってわけではないんですけどね。
 
中の人も大変です。
 
…………。
 
と。
 
そんなわけで、批判的スタンス全開で臨んだ「石の教会」だったんですが……。
 
や。
 
たしかに、あれはすごいものでした。
 
広さはさしたるものではないんですが……。
 
高々とそびえる石のアーチの連なり。
周囲の壁にはツタが生え(根本にプランターが見えるのは気付かないふり)、ぱちゃぱちゃという水音が絶え間なく反響し。
 
ゴシックの大伽藍に神への畏敬の念を新たにする人もいるのでしょうが。
しかし、あの光の差す洞窟のような空間こそ、日本人が「神」を思う場所かも知れません。
 
……うーん。
確かに圧倒されました。
 
何か、原始宗教、とかいう単語が頭をよぎりました。
いや、原始キリスト教というのは、紛れもなく砂漠の宗教なので、ツタだの水音だの明らかに無縁なんですが。
 
夜はまた違った雰囲気なんですよ、と言われて、素直にそれも見てみたい、と感じました。
 
むう。
すくなくとも、あそこに設計者の意図が正しく反映していることは、疑う余地がないと思います。
 
彼女も、他の場所はかなりどうでもいいものの、石の教会だけはすごく心に残ったようでした。
 
……あんなに遠くて高くなきゃいいんだが……。
 
余談。
 
お姉さん「この石の教会は、大きさの異なる石のアーチが、互いに寄りかかるように建っていて、この位置から見ると……モスラってわかります?」
K村「ええ……、でも、私、ナウシカ王蟲かと思いました」
お姉さん「ああ、そっか……。そっちのほうがわかりいいですかねー……」
 
いや、どっちにしてもどうよ。
 
多宗教とはいえオウムはまずいよね。(違)