予算折衝……をしない話。

又聞きで、隣の市の教育委員会の若手職員同士の会話。
 
学校事務員*1経験者の職員が愚痴をこぼします。
「まったく、学校の先生には困るのよ」
「何が?」
「予算がないのに物を買っちゃうの!」
「どういうこと?」
「学校予算には、消耗品費とか庁用備品とか教科用備品とか、それぞれ枠があって金額も決まってるわけよ。
それなのに、そういうこと何にも考えないで、事務に相談もなしで、
『あ、今度ホットプレート買ったから』
とか言うのよ!
『えー、それ何の備品なんですか』
『そうだなー、家庭科で使うんだけど』
『家庭科の予算は、今年はもう使い切っちゃいましたよ』
って言うと、
『いや、大丈夫、お金はおれが出しとくから』
とか言うし!
そういう問題じゃないっつーの!」
 
「自腹で買ったならいいだろう」……と思うのは甘いわけで。
それを学校の授業などに使うわけです。
 
で、大きいものだと自分の家に置くのが邪魔だとかで、資料室なんかに置いておくわけです。
どうせ、学校でしか使わないものだし。
 
その上、「まあ、ちょっと古くなったしなー」みたいな感じで、異動する時そのまま学校に置いていく先生もいます。
「寄付しよーっと」みたいな気分ですかね。
 
……ところが、これが事務側からすると大迷惑らしく。
 
学校の備品は公共の財産です。
学校には備品台帳というものがあって、それぞれの備品が、何年度にいくらでどこから購入されたか、予算の種類別(市の予算なのか県の予算なのか? その中の国語予算なのか生活科予算なのか?)に整理されています。
廃棄する時には、この台帳と付き合わせて処理しなければなりません。
 
……ところが、知らないうちに「寄付」されたものは、「どの台帳にも載っていない備品」になってしまいます。
そうなると、廃棄しようとするとどこにも記録がない、など、何かの拍子に混乱を生じるわけです。
 
「このデジカメ、台帳に見あたらないんですけど、何の予算で買ったんですか?」
「んー? なんだろう、ずっと前からあるけど」
「〜〜先生(すでに異動している)がいる時に買ったんじゃないかなあ?」
「困るんですよ、学校のデジカメって、台数の基準があるから、それを上回っては買えないことになってるんです。これが備品かどうかで、来年度の予算請求も違ってきちゃうんです」
「んー、〜〜先生に電話して聞いてみようか? でも、本人も覚えてないかもなあ……」
……みたいな。
 
「ホント困るのよ……」
 
と、その人は嘆いたそうですが。
 
隣で聞いていた教育長が、
 
「……まあ、先生たちはそれでいいんだよ」
 
教員にとっては、「必要だから買う」以上の考えはないですから……。
「授業で使いたいけど、予算がないから来年にしよう」……なんて考える先生はむしろどうか、と、私は思ってしまいます。
必要なのは、今、目の前にいる子どもたちにとってですから。
 
……かく言う私も、自腹で買ったものが相当あるんですが(大抵は消耗品だから一回使い切りだけど)。
……ともあれ、耐久消費財を買う時は、事務の先生にも一声掛けようと思った次第です。

*1:事務員は、教員ではありません。
職員室に机がありますが、立場としては市の職員。給与は市から出ます。
(教員は県の職員で、給与は半分が県、もう半分が国から出ます。
……ああ、今度から、三分の二が県、三分の一が国になります。……不安だ)
つまり、市役所の職員と同じ立場です。