教師のバトン。

 話題の「教師のバトン」、私も書いてみたのです。


 140字でも280字でも書ききれなかったので補足を。
 
 ツイートに書いたとおり、本校…というか、市全体でタイムカードが導入され、各自の超過勤務時間がわかるようになりました。
「土日に来た時も押すように」
 とか言われています。
 
 その結果、多数の職員が過労死ラインを超えていることが判明したわけです。
 で、危機感を覚えた校長が、
「全員、18時以降は帰宅するように」(定時は16時30分。始業は8時です)
「毎月、定時退勤日を設ける」
 とか厳命しました。
 
 涙声で
「先生方にこんな無理を強いている自分の不明を恥じます」
 とまで言われてはなんとかしないわけにはいかない。
 
 ……しかし、それで業務が減ったか、というと全然減っていない。
 
 いや、校長先生の認識としては
「本校は働き方改革に積極的に取り組んでいる」
 らしく、確かにいくつかコマゴマした「改革」はあるんですけど、焼け石に水感がすごい。
 
 というか、本校の校長は割と几帳面で、特に通知表とかは一度提出した成績表に「ここはおかしい」「もっとこう直せ」といった修正指示が何度も何度も何度も何度も入るので、むしろ一番大変なのは校長対策。
 ただでさえ期末は繁忙期なのに。
 
 そもそも、前述の「超過勤務するな」指示を、昼休みに臨時打ち合わせするから全員集まれ、でやってるのがすごい無駄。
 授業の準備とかテストの採点とかしたかったのに……。
(規則上は、昼休みは休憩時間のはずですが……まあ……実際に休憩になっている学校を一つも見たことがない。
 同じく法令上は休憩扱いになっている昼食の時間も、「給食指導」として完全に「果たすべき業務」があるものと扱われているし)
 
 それでまあ、仕事の量が減ってないのに早く帰らねばならぬとなると、結局、自宅で作業を行う必要が生じるわけです。
 
 しかし、教科書も子どものノート類も持ち帰るのは大変(紛失したらもっと大変)だし、校務用PCは持ち出せないし、成績データの重要な部分はそもそもサーバー上にあって自宅からはアクセスできないし、コピー機印刷機も自宅にはないし……ということを考えると、自宅で仕事をするのは非常に効率が悪い。
 つまり、早く退勤するため、働く時間は結局伸びてしまうのです。
 
 ……で、結果、
「まだ帰れないけどタイムカードを押す」
 という行為が横行するようになりました。
 
 どう考えてもこれは公的記録の改竄とかそういうアレだと思うんですけど……。
 
 ……いや、残業を正しく申告できないとか、サービス残業が横行しているとかいうブラック企業にお勤めの皆さんはもちろん世間に大勢いると思うんですけどね。
 
 ただ、何しろ公立学校教員は、法令上、残業手当がつかないことになっています。

教育職員については、時間外勤務手当及び休日勤務手当は、支給しない。
(公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法 第3条の2)

 一般に、
「残業を申告できない」
 という場合、申告できない労働者側と、残業代を払いたくない雇用者側には利害の対立が発生し、度が過ぎた場合には、労基署への通報とかのインセンティブが発生すると思うのです。
学校の上司が勤務データを無断改変 予算オーバー防ぐため、残業620時間分減らす|社会|地域のニュース|京都新聞
 この事件が「不審に思った別の職員の指摘で発覚した」のも、残業代が本来はちゃんとと出るはずだからですよね。
 
 しかし、公立学校では、超過勤務を正しく申告しないことについて「利害が一致」してしまうわけです。
 そもそも残業手当は出ないんだし、超過勤務時間が長くなると校長に叱られるし、校長も他校と比較されるらしいし。
 
 なるべく、正確に記録するよう心がけてはいますが……何しろ、18:30を過ぎたあたりから、
「~~先生、タイムカード押しといたからね!」
「ありがとうございます!」
 みたいな会話が職員室で飛び交い始めるので……。
 
 なんだありがとうございますって。
 
 ……ともあれ、たぶん本市では教員の超過勤務時間は(記録上は)短くなってると思うのですが、それを信じないで欲しいな、とつくづく思います。
 
 ……いや、えらい人がそれを信じて、
「教員にも残業手当を支給することにして、その代わり教職調整(4%)を廃止した方が安上がりじゃん!」
 とか思ってくれた方がむしろいいのかも知れない……?