「クトゥルフの呼び声」シナリオアイデア「水晶より来たる者(仮題)」

概要
 探索者達は、連絡がとれなくなった友人を探すうち、とある団体について調査することになる。
 「クォーツチャイルド協会」というその団体は、表向きは育児セミナーなどを行っている民間の組織だが、実は、スタッフのほとんどは、異次元から来た知的生物*1に精神を乗っ取られている。
 真実を知ってしまった探索者達は、協会から命を狙われることとなり、彼らの侵略と戦わざるを得なくなる。
 
シナリオの背景
 クォーツチャイルド協会を支配する侵略者たちは、物理的実体を持たない精神存在であり、人間の母親から、胎児に乗り移って生まれてくる。
 協会では、「セミナー」などと称して様々な集まりを催し、その間、密かに会員達を特殊な力場に晒すことで、会員や胎児を自分たちに合った体質に改造し、侵略の足場を広げようとしている。
 会員の子どもたち(「クォーツチャイルド」や「アクアマリンチャイルド」などと呼ばれる)は、肉体的には子どもだが、精神的には成熟しており、テレパシーを始めとする特殊な能力を持っている。
 「チャイルド」たちは、互いの知識をやりとりしたり、支配した人間を使ったりして、前述の力場発生装置を完成させ、現在は、特殊な旋律で人間の精神に影響を与える方法を研究している。
 
主要NPC
 
友人A(男性:20代前半)
 失踪した友人。フリーライター(?)。探索者達と知り合ったきっかけはプレイヤーに任される。古くからの友人だったのかも知れないし、ネット上で知り合ったのかも知れない。比較的近くに住んでいたこともあって、時々連絡を取り合い、時にはメールで仕事の話などもしていた。
「“7次元が高次元だとか言うけど、超ひも理論によればこの宇宙も10次元で……”とかいう話を喜ぶ読者はほとんどいないんだよな。結局みんな、単に変な連中の変なところを叩いて喜びたいだけで。
 でもまあ、俺的には叩くべきだと思う相手を叩いてるんだけど」
「子どもに罪はないんだけどなー……」
 
会員B(女性:20代後半)
 「クォーツチャイルド協会」の熱心な会員。育てている赤ん坊(男児・生後4ヶ月)は、一見ただの乳児に見えるが、実はクォーツチャイルドで、成人並みの知性を有している。
 普段は専業主婦として通常の生活を送っているが、協会の波動の影響を強く受けており、息子は必要に応じていつでも彼女を精神的に支配することができる。
 夫は妻が「妙な団体」に参加していることに気付いているが、仕事が忙しくて会話する時間が少ないこともあり、妻が母親サークルで育児ストレスを軽減できるなら、と、事態をあまり深刻に捉えていない。
「うちの子は、私が考えていることがわかるのよ。それに、あの子が、言葉を使わないで私に話しかけてくるのを感じるわ」
「戦争や環境破壊まみれの今の文明は、いずれ滅びてしまうのよ」
「Нетрозыбезшипов!」>(突如白目を剥き、意味不明の言葉を叫びながら襲いかかってくる。SANチェック
 
会員C(女性:10代後半)
 協会のスタッフ。実は最年長の「アクアマリンチャイルド」。全体に若いスタッフが多い協会だが、ある程度年長のスタッフが幹部でないと一般の会員が集まらないため、組織の表向きの運営は支配したり雇用したりした人間に任せ、自分は目立たないポストにいる。
「あなた方……や私たち人類は、新たな進化の段階を迎えているのです。素晴らしいことだと思いませんか?」
「順調ですよ、なにもかも」
「……見てしまいましたね?」
 
研究者D(男性:60代後半)
 このキャラクターを登場させるかどうかはキーパーに任される。探索者達の調査がうまく進まない場合、手助けするために登場させると良い。
 市内に一人暮らしをしている自称「超次元研究所所長」(著書数冊。いずれも自費出版)。知り合いや近所の住人からは変人扱いされている。
 彼は、独自に開発した「超次元スカラー波探知装置(愛称:ゼノセンサー)」によって、「超空間波動」が増大していることを感知し、その発生源が協会であることをつきとめている。探索者達が協会を調べていることに気付き、協力を求める。
「奴らは宇宙から来た侵略者なんだ! そしてアメリカ政府は彼らと結託しているんだよ! 私は何度も総理に警告の手紙を送ったんだが、なしのつぶてだ……。ひょっとすると、日本政府も奴らに影響されているのかも知れないぞ!」
「シーッ! この部屋も盗聴されているかも知れない! 私も最近めっきり体が衰えてしまった。君たちに頼むしかないんだ!」
「電波だ! 奴らは毒電波で日本人を骨抜きにしようとしている!」
(たぶん彼は、シナリオの途中で抹殺されるか、洗脳されます。そして、後を探索者達が引き継ぐしかなくなるのです。
 彼が作った「ゼノセンサー」は、大きな暗視ゴーグルのような代物で、装着して歩くと、かなり異様に見えます。
 これを通すと、「チャイルド」達が発する波動が可視化されます。「チャイルド」達が奇怪な怪物の姿に見える他、協会の力場の影響下にある人間も、その強度に応じて歪んで見えます。
 また、協会の本部にある力場発生装置が作動している間は、その周辺に空間の穴が開き、おぞましい何者かがその向こうにひしめいているのが見えます。(いずれもSANチェックが必要)
 なお、彼はこのゴーグルをつけて市内を何度もうろついているので、「チャイルド」たちもその存在に薄々勘付いています)
 
導入
 探索者達が、友人(以下、A)のアパート前までやって来たところからシナリオは始まる。
 Aは、しばらく前から「クォーツチャイルド協会」について調査していた。彼によれば、協会は、育児書や、妊娠・出産に関する雑誌なども発行している団体だが、その主張にはオカルト的なものが見え隠れし、組織も外部から見た印象と違って閉鎖的で、カルト的な気配も感じられる、とのことだった。 
「ウチの子はテレパシーが使えるんです! とかマジな目で言うし。超きめえ」
「なんか、隣の部屋の夫婦も会員みたい。うは、俺ヤバスwww」*2 
 ところがある時、Aからの連絡がしばらく途絶える。
 心配していたところへ、突然
「クォーツチャイルド協会を敵視したのは間違いだった。彼らは友好的で、何の問題もない素晴らしい存在だ」
 というメールが届く。
 
 不審に思った探索者達はAに連絡をとろうとするが、メール・携帯電話とも、それきり全く連絡がとれなくなってしまった。
 そこで、すこし時間もできたので、実際にAのアパートを訪れてみたのだが……。
 
(部屋に行ってみると、部屋に人の気配はなく、鍵のかかったドアの前に、新聞やダイレクトメールが山を成している。
 日付を調べてみると、Aから最後のメールが届いた時には、Aはすでにこの部屋にいなかったらしいことがわかる。
 しかし、アパートの駐車場には、Aの車が停まったままになっている)
アパートの管理人を説得して、鍵を開けてもらえば(もしくは鍵をこじ開ければ)、室内を捜索することができる。
 
(中略)
 
結末
・成功

 協会の力場発生装置を破壊することに成功すれば、ひとまずクォーツチャイルドによる侵略の危険は去る。
 彼らがあきらめたのかどうかは定かではないが、探索者達に今できることは、この平穏な日々が長く続いてくれるよう祈ることだけだ。
 
・失敗
 探索者達が生きていれば、協会本部で聞いたあの曲が、FMラジオで流れているのに気付く。
 始めは違和感(というより嫌悪感)を感じたその曲だが、妙に耳にこびりついて離れない。
 日が経つにつれて耳に馴染み、むしろ好ましく思えるようになっていく。
 いや、それどころかこの曲は、ぜひ全国放送でみんなに聴いてもらうべきではないか……。
 
参考資料:
「クリスタルチルドレン」とは何か?−スピリチュアルな世界へ【前編】
http://www.222.co.jp/netnews/article.aspx?asn=16814
(同じく後編→http://www.222.co.jp/netnews/article.aspx?asn=17018
 
エンジェル・セラピー[ドリーン・バーチュー日本語公式Webサイト]
http://doreen.jp/angelguide/007children.html
 
YouTube「クリスタルチルドレン」(NHK「みんなの歌」より)
http://jp.youtube.com/watch?v=brWYOHIaYCQ
*3
 
方向性が似ていてもっと洗練された他所の記事
「深海の呼び声」(HMS Wren’s LogBook)
http://d.hatena.ne.jp/SleepyEnsign/20080621#p1
 
#2008_07/04追記
 書くの忘れてた。
 
 このシナリオに登場する人物・団体・楽曲等はフィクションであり、実在の人物・団体・楽曲等とは一切関係ありません。

*1:「奴ら」は結局何者なのか、で、シナリオの方向性はちょっと変わるかも知れません。
 まずぱっと思いつくのは「イスの偉大なる種族」。
 人類より後の昆虫型種族に乗り移ることになっている彼らですが、それが何かの理由で現代にも侵略してくるという。
 単に、乗り移るには人類の方が適切だと考えた一派があるのかも知れません。あるいは、(人間には理解できない)政治的な理由で時間的に追放された連中とか。さもなくば、文明全体が時間を超えるための「中継時点」として、現代に基地を作ることが必要だとか……。
 他の同様に高い技術を持っている連中としては「ミ=ゴ」とか。あるいは蛇人間とか。

 しかし、私が適切なような気がしているのは、「イェクーブの住人(イェーキュブ人とも)」です。彼らは、特殊な水晶の(!)立方体を宇宙に無作為にばらまいています。そして、それをのぞき込んだ知的生命体は、精神をそれに吸い込まれ、体を乗っ取られてしまうのです。
 その立方体はかつて地球にも落下しましたが、人類の体は彼らに適しておらず、人類を乗っ取ったイェクーブ人はやがて凶暴化し、自滅してしまいます。
 ……しかし、高い技術力を持った彼らのこと。それを解決する何らかの方法を開発するかも知れません。それが、「クォーツチャイルド協会」と、その「セミナー」なのです……。
 
 もちろん、キーパーが独自に考えた神話生物でも一向に構わないわけですが。

*2:いくら友人相手とはいえ、調査中の内容をこんなに軽々しく他人に知らせるフリーライターがいるのか、というのはよくわからない。
Aは特にそういう意識の低いライターなのかも知れないし、あるいはライターではなく、個人的な理由(親戚が協会にはまってしまったとか、単純な好奇心であるとか)から調査をしていたのかも知れない。
NPC紹介に「フリーライター(?)」と書かれているのはそのため)

*3:クリスタルチルドレンについてはそのうち記事を書く、かも。