学校給食と牛乳に関する過去記事(食べ合わせ。)
の続き。
PSJ渋谷研究所X様よりトラックバックを頂いたので、ちょっと調べてみます。
トラックバック元:「あれれ:学校給食に牛乳は必須なのか?」
トラックバック元の記事で引用されている記事(ややこしい)では、
文部科学省スポーツ・青少年局学校教育健康課学校教育係長の川田耕二氏(当時)が、
「牛乳がなければ給食と認められないという事にはならないです」
「(学校給食法が成立した)昭和29年から制度的にそういう形でやっています」
などと発言しています。
むむ。
そもそもの「昭和29年」の学校給食法自体には、給食の内容の規定はありません。
しかし、同年の「学校給食法施行規則」では、「給食は常にミルクを含む」的規定があったのは前回書いたとおり。
さて。
足立区の給食について報じる記事で、
文科省は、学校給食実施基準の中で児童・生徒1人が1食で摂取すべき熱量やカルシウムなどの栄養所要量を定めているほか、その栄養をどのような食品からとるべきかという目安を標準食品構成表で明示。
8〜9歳の児童の場合、1食で牛乳206グラム、米48グラム、小麦23グラム、豆製品20グラム、魚介類16グラム、小魚類3グラム――など25食品について摂取量を記載している。
……とありました。
記事中では「学校給食実施基準」とありますが、見たところ、同基準では、栄養成分については規定していますが、むしろ給食設備についての規定が主で、食品構成表はない模様。
食品構成表を伴っているのは、文部省体育局長通知「学校給食の食事内容について(平成7)」のようです。
ここでは、
「学校給食の標準食品構成表(幼児、児童、生徒1人1回当たり)」
として、
「パン:小麦粉55g イースト1.4g 食塩1.1g ショートニング1.9g 砂糖類1.9g 脱脂粉乳1.9g」
など、えらく細かい規定があります。
その中に、
「ミルク:牛乳206g」
の記述も。*1
ところが。
文部科学省スポーツ・青少年局長通知「学校給食における食事内容について(平成15)」では、
「平成7年3月29日付け文体学第131号「学校給食の食事内容について」は廃止します」
とあり、この細かな食品構成表は廃止。
平成15年の通知の内容は、「学校給食実施基準」と同様で、栄養成分表はあるものの、食品構成表はありません。
従って、現在の学校給食では、
「牛乳を何ml出さねばならない」
という規定はない模様です。
(ということは、件の読売新聞の記事は誤っていた、のかもしれません)
まあ、栄養成分表にしても食品構成表にしても、
「適用に当たっては、個々の児童生徒等の健康及び生活活動等の実態並びに地域の実情等に十分配慮し、弾力的に運用すること」
という条項を含んでおり、裁量の余地は残されているわけですが。
しかしながら、どこまで裁量を認めるか……という、むしろ管轄省庁側の弾力性が問題になる状況のようです。
人によって言うことが違うのは、その辺の弾力性の違いなのかも知れません。
とはいえ、学校給食法施行規則の、「ミルクを含まない給食はない」式の規定自体は死んだわけではありません。
また、平成15年の通知でも、牛乳については、
「児童生徒等のカルシウム摂取に効果的であるため、その飲用に努めること。
なお、家庭の食事においてカルシウムの摂取が不足している地域にあっては、積極的に調理用牛乳の使用や乳製品の使用に努めること」
とあります。
加うるに、
文部事務次官・農林事務次官通達「学校給食用牛乳供給事業の実施について(昭和39)」
では、
「学校給食用牛乳の年間の供給日数は、夜間定時制高等学校の生徒にあつては二四六日、その他の幼児、児童及び生徒にあつては二一五日を基準として実施可能な日数とすること」
「幼児、児童及び生徒一人一日当たりの供給量は、幼児及び児童にあつては二〇〇ccを、生徒にあつては三〇〇ccを、それぞれ基準とすること」
とかいう規定があります。
(ちなみに、基準となる「215日」というのは、昨年度の本校の授業日数より多い)
おまけに、同法で言及されている「酪農及び肉用牛生産の振興に関する法律」
では、
「国は、国内産の牛乳及び乳製品の消費の増進を図ることにより酪農の健全な発達に資するため、基本方針に即して、国内産の牛乳及び乳製品について、これを学校給食の用に供することを促進するほか、集団飲用を奨励し、流通の合理化を促進するための援助を行う等必要な措置を講ずるものとする」
「農林水産大臣は、政令で定めるところにより、国内産の牛乳の消費の増進を図ることにより酪農の健全な発達に資するため、国内産の牛乳を学校教育法(昭和22年法律第26号)に規定する小学校及び中学校その他政令で定める学校における学校給食用として広範に供給することを目途として、国内産の牛乳の学校給食への供給に関する目標(以下「学校給食供給目標」という。)を基本方針に即して定め、これを公表しなければならない」
とかいう規定が。
集団飲用とか。
トラックバック元のコメントでは、ララ物資(戦後、アメリカからやってきた食糧支援。米国内で余ってた脱脂粉乳とかが大量に来た)との関係とかが取りざたされていますが、現状では、子どもたちに牛乳を飲ませたがっているのは、我らが日本国政府のようです。
それも、文部科学省だけではなく、農林水産省も共謀。
だから、
「とりあえず牛乳はいっぱい飲ませようぜ。具体的な量はともかく」
というのが国策であるとすれば、
「バイキング形式にして、水とお茶と野菜ジュースと牛乳から飲み物を選べるようにしてみましたー。
結果的に、牛乳の消費量がゼロになっちゃいましたー。
いっぱい用意しといたんですけどね、てへっ☆」
というのが認められるとしても、
「牛乳は出しません! 用意もしません!」
というのは、文科省(および農水省)の逆鱗に触れるおそれがあるのではないか、というのが、個人的な結論です。
ここまで調べて、牛乳だけ別ルートで供給されてる事情も、ちょっとわかった気分です。
まとめ:
学校給食法(昭和29年にできた法律。給食関係の基礎。内容については規定せず)
学校給食法施行規則(↑と同じ年に出た省令。「ミルクがあらざれば給食にあらず」)
学校給食実施基準(告示。↑と同じ年。栄養成分と給食設備を規定)
学校給食の食事内容について(通知。平成7年。栄養の他、食品構成についても詳細に規定していたが、すでに廃止されている。)
学校給食における食事内容について(通知。平成15。↑を廃止した。平均所要栄養量の基準を定める)
(この他にも、学校給食法関連の法令は、すでに廃止されたものを含め、いっぱいあったっぽい)
学校給食用牛乳供給事業の実施について(通達。昭和39。給食用牛乳を「年間215日、一回200ml」を基準とする)
酪農及び肉用牛生産の振興に関する法律(法律。昭和29。「数値目標を定めてどんどん飲ませよう」的内容)
……しかし、法律調べるのってめんどくさいなあ。
「後法は前法を破る」とか「特別法優位」とかいう原則があるのに、後法・特別法が存在するかどうか条文を見てもわからないんだもの。
「この法律に言及している他の法令を探す」
とか、
「最新バージョンかどうかチェックする」
とかいう機能があればいいのに……。
*1:これは「児童(6歳〜7歳)の場合」で、幼児や違う学年の児童の場合はまた分量が異なります。