足手まといの話。

以前に卒論とした会話。
「海外旅行に行くならどこがいい?」
「ヨーロッパ!」
「“ヨーロッパ”って日本より遙かに広いし。具体的にどの国がいい?」
「うーんとね……。ロンドンとか、パリにも行ってみたいし……、あとローマも見てみたい!」
 
それ国名じゃないし。
しかも全部違う国の都市なんですが。
 
と、そんな彼女が、職場の同僚と海外に行きました。
 
ちなみにドイツ。
 
ロンドンもパリもローマも関係ないぞ。
美術館見学などして、大変印象的だったようです。
 
で、色々おみやげを買って帰ってきたのですが、その時、マフラーを選びながら、地元のおばさん(店のお客だった)とあれが似合うとかこっちの方が安いとか話をして楽しかった、というエピソードを聞かされたわけです。
もちろん、ドイツ語が話せるわけではないので、片言の英語に身振り手振りを交えて(逆かも)だったそうなのですが。
 
ともあれ、地元の外国人と親しくコミュニケーションがとれる、というのは素晴らしい。
大いに自慢されたわけです。
 
「でね、思ったんだけど、確かにドイツ人って日本人に近いところがあるかも」
「へえ?」
「バスとかちゃんと時間通りに来るし。きちっきちっとしてるところが。確かに、イタリアはともかくドイツはありかなー、って思った」
 
えーと、そこでイタリアが出てくる理由は一つしか思い当たらないんですが。
 
「……それはあれか、『今度はイタリア抜きでやろうぜ!』ってやつ?」
「そうそれ!」
 
何を私みたいなことを。*1

ヒトラーの官邸に側近が駆け込んできた。
「閣下、大変です! イタリアが参戦を発表しました!」
「何? それでは、直ちに陸軍3個師団を派遣し、イタリアとの国境を防衛せよ」
「いえ、そうではありません閣下。イタリアは我々の側に立って参戦したのです!」
「なんだと!? 仕方ない、それでは直ちに陸軍30個師団を派遣し、イタリアを防衛せよ」

「私はまだ海外に行ったことないなあ」
「行けばいいじゃん。若いうちに」
「うーん。……できれば一緒に海外に行きたいなあ」
「えー? だって先輩、地元でガイドとかしてくれる? ホテルのフロントで手続きしたりとか」
「いや……無理」
「じゃあやだ。先輩がリードしてあれこれやってくれるなら一緒に行く。先輩が足手まといなら友達と行く」
「くっ……」
 
……それが英語を習い始めた主な理由だったりするわけですが。
動機は何でも、それが力になればいいんじゃないかと。
 
そういや母も、
「海外旅行でもプレゼントしようか」
と言ったら、
「父さんと一緒じゃやだ」
……って言ってたなあ。

*1:
訳が分からない人のために言っておくと、これは第二次大戦で枢軸国として戦った、日独伊三国同盟の話です。
イタリアは、ドイツの側に立って参戦したものの、アフリカでイギリスに惨敗してドイツから戦力を割いてもらった上、真っ先に降伏して今度は逆にドイツの敵になり、連合軍の通り道になる、という、終始ドイツの足を引っ張る存在だったのです。
なので、日本人がドイツに行くと、冗談で
「今度はイタリア抜きでやろうぜ!」
と言われる、という一種の都市伝説があるのです。
……でもまあ、ドイツがイギリスのみならずアメリカとも戦う羽目になったのは、日本がアメリカに宣戦布告したせいなので。
そういう意味ではドイツは味方に恵まれない国だったのではないかと。