健康産業。

校長先生が、体にいいから、って言って、ペットボトル入りの海洋深層水を勧めてくるんですけど……。
 
ま、それはそれでいいんですけど。
 
でも、海洋深層水ってさ。
 
確かに、雑菌は少ないし、ミネラルは豊富です。
くみ上げた時点では。
 
でも、要するにあれは海水なわけで。
塩辛いはずなんですよ。
 
それをああしてごくごく飲める、ってことは、何らかの方法で脱塩しているわけで。
 
そこで逆浸透膜を使っているとすれば、できるのは蒸留水も同然。
電気透析を使っているとすれば、一部のミネラルは残るかも知れないけど、ナトリウム・カリウム・カルシウムなんかの電解質は失われてしまうはずで。
 
……あとからミネラルを足して売っている製品もあるって聞いたよな……。
 
私は、昔からああいうものには懐疑的で。
 
岩盤浴とかマイナスイオンとか電子水とか聞くと、まず
「どういう原理で効くの?」
と尋ねて、実際の所どの程度信頼できるのか確かめないと気が済みません。
 
とりあえず、岩盤浴は「波動が効く」と言われた時点でパス。
マイナスイオンも、どうも作用機序がうさんくさい上に、実際の効能もきちんと確かめられたためしがないようなのでパス。
電子水も、水のクラスター構造云々の説明が、物理学の知見とかけ離れているのでパス。
 
っていうか、そもそも「体の中の悪いものを出してくれる」とかいう時点でどうよ。
なんだ「悪いもの」って。
水銀等の重金属のことなのか、ダイオキシン類のことなのか、それとも活性酸素のことなのか。
「老廃物」とか言っていることもあるけど、それにしても二酸化炭素なのか乳酸なのかアンモニアなのか。
「毒素」とか言い出すともう意味不明ですよ。
 
仮にこの世にガンに効く薬があるとしても、ガンとインフルエンザと糖尿病に効果があって、塗れば水虫とアトピーにも効く、なんて薬があるはずはなく。
同じように、水銀とダイオキシン活性酸素を一緒くたに排出してくれる薬なんてあるわけがないのです。
 
人間の体の中の化学反応は大変複雑で、無数の物質がバランスを取りながら関わっているわけで。
そういう人間の体の実態を無視した物言いをする健康商品は信用できないな、と思います。

 
と、正月休みに実家で母に話したら、
「あー、あたしは、『体にいい』って言われた時点で信用できない」
 
……いや、それもどうなんだ。
 
まあ、個人的に変なものを信じるのは勝手です。
父も、「松が体にいい」と信じていて、山で松の葉を集めては電子レンジで乾燥させてすり鉢でつぶして、毎日飲んでいます。
松ヤニを摂取してるだけのような気もしますけど。
 
そういうのはまあ個人の思想信条の自由ですけど、そういう怪しげな健康理論を吹聴して金を稼ごうとしている人たちは人間としてどうかと思います。 
 
ひっかかった人こそいい面の皮で。
 
「……だからまあ、父さんの場合、怪しい健康食品に月に何万も貢いでるわけじゃないだけいいんだと思うよ」
「……レンジが変な臭いになるのは勘弁して欲しいんだけどねえ……」