なくしたもの。

先日、教頭先生から呼び出されました。
 
「K村先生、先生のクラスのAちゃんのお母さんから電話がありました」
「はい」
「Aちゃんの運動着が、先週からないんだって? 聞いてた?」
「ええ……、聞いてました」
「それで、更衣室に忘れたんじゃないか、とか思って、お母さんからも6年生の子に頼んで探してもらったりしたそうなんだけど、見あたらなかったんだって」
「そうなんですか」
「それで、ひょっとして誰かに隠されたんじゃないかとか、Aちゃんがいじめられてるんじゃないかとか、心配して電話してこられたんだわ」
「そうですか……」
 
確かに、見つからない、という話は聞いてましたが、「そのうち出てくるだろ」くらいに思って忘れてしまっていました。
間違って他の子の運動着を着てしまうこととか、よくあるので。
 
担任じゃなくて教頭先生に話す辺り、どうやら保護者から信頼されていないっぽい。
まあ、事実上放置していたんだから、信頼もされないだろうけども。
 
A児は利発な子ですが、保育園が他の子と違うことから、1年生の頃にいじめを受けたことがあり、保護者の方がそういう面で敏感になっています。
今でも、放課後に家が近い子と遊んだりすることは少ないのですが、学校で見る限り、朗らかで、他の子とも一緒に遊んでいるようなのですが……。
 
で、教頭先生が女子更衣室を探したら一番下の棚にありました。
 
……。
 
A児は、「ちゃんと体操着袋に入れた」と言っています。
そうだとすると、誰かがそこから出して違う棚に入れたのかも知れません。
 
しかし、うちのクラスでは、
「体育が終わった後教室に持って帰って来て、机のわきに掛けたのにない」
はずの紅白帽が体育館に置き去りになっていたり、
「朝ちゃんとロッカーに入れたのにない」
はずのリコーダーを、お母さんが学校に届けてくれたりすることがままあるので。
 
とはいえ、初日の放課後に、私が女子更衣室をちゃんと探していれば、何の問題もない話だったわけで。
A児が現在いじめられている様子がなかったこともあって、対応が後手後手になってしまいました。
 
深く反省。
子どもの訴えにきちんと耳を傾けないでは、担任として失格です。
 
翌日。
 
K村「おや。この、ロッカーの上に出しっぱなしになってる運動着の長ズボン、誰のですかー?」
B児「おれのじゃなーい」
K村「名前は書いてない……けど、この膝小僧のつぎあてに見覚えがある人はいませんかー?」
B児「あ、やっぱりおれのだ!」
 
C児「先生、うんどうぎがきゅうにきつくなった!」
K村「それはびっくり。 ……名前を確かめてごらん?」
C児「……(すそをめくってタグを確認)……Aちゃんのだった!」
K村「うん、じゃあ、返してあげな。きっと困ってるから」
 
C児「Aちゃーん! うんどうぎ返すー!」
A児「えー?(すそをめくる) あ、これCちゃんのだ、ごめーん!」
 
運動着は共有にするとか、どうよ。