ポリコレに配慮しなかったら面白くなる…というわけではもちろんない。

 よく、
「ディズニーはポリコレに配慮するあまりつまらなくなってる」
 なんて言う人がいます。
 
 まあ、正直、わからないでもない。
 人魚姫が黒人なのは個人的には違和感がありますし。(問題発言)
 
 ディズニーじゃないけど「アリータ:バトル・エンジェル」(「銃夢」の実写版)で、原作のゴンズさんが黒人女性に差し替えられてたのとか、ポリコレ対策にしても雑すぎないかと思いました。*1
(っていうか「アリータ」、ガリィもマカクもヒューゴも原作ではアジア系なのに、映画ではみんな白人になってて、ほんとに多様性が増してるのかわかんないよね……)
 
「Ghost of Tsushima」がアメリカでは「文化の盗用だ!」って言われた一方、日本ではウケていた、なんて話もありました。
www.all-nationz.com
 
 ただ、じゃあ日本人がアメリカ人より寛容で、配慮されなくてもキレないのか、というとたぶんそうではなくて。
 
 昨年には、「バーベンハイマー」がひとしきり炎上したのをご記憶の方も多いと思います。
president.jp
 アメリカ人を甘やかすなってよ。
 
 2015年8月9日には(もうそんな昔!?)ディズニー・ジャパンの公式Twitter
「なんでもない日おめでとう」
 とツイートして炎上しています。


 
 そう考えると、日本人にも地雷となる表現はあり、やっぱり配慮は必要なのだと思います。
 
 それを
「ディズニーはポリコレに配慮しすぎ」
 と笑うのは、言い換えれば
「不必要な配慮はしなくてもいいけど、私が不快に思う表現は事前に察知して排除してもらいたい」
 という、一番タチの悪い「お気持ち」表明ではないでしょうか。
 
 逆に、日本人にとっては地雷でも何でもない表現でも、他の国では炎上することもあり得ます(顔を黒塗りにして黒人の真似をするとか)。
www.afpbb.com
https://en.wikipedia.org/wiki/Pocahontas_(1995_film)#Critical_response
 
 このように、炎上は、一部のソーシャルジャスティスウォリアーが起こすものばかりではありません。
 実際に、外国人やマイノリティが非難の声を上げたのが原因ということもあるのです。
 そういう声が届くようになったのは、まあ良い時代になったのだろうなと思います。
 制作側が極力そういう危険を避けていくのはやむを得ないことなのでしょう。
(それでもなお回避しきれないんだし)
  
 そんな時代、私たちに必要なのは、

  • 他所で作られたコンテンツに不快な表現があったら落ち着いて抗議すること。
  • 誰かの地雷を踏んでしまったら真摯に謝罪し、それが地雷だと覚えておくこと(別な誰かが踏んで炎上した時にも)。
  • そして、よくわからん配慮があっても「誰かのために必要なんだろうな」と受け止めること。

 ……なのだろうと思います。
 
 黒人の人魚姫、私にはよくわからないのですが、それを必要とする人もいるのでしょうね。
 
*以下は余談です。
 
 ここまで、日本人の地雷は原爆だけ、みたいな話になってしまいましたが、たぶんそんなことはないはず。
 天皇陛下を雑に扱われてもきっと炎上すると思うのですが、まあ海外でもネタにする人は少ないから……。
 
 最近「やべえ」と思ったのは、SCP-5254、「ポケモン、ゲットだぜ!」かな……。
 
(内容紹介。まあ脇道だし、ネタバレなので畳みます)
 

クリックで開きます。「ポケモン、ゲットだぜ!」
 
scp-jp.wikidot.com

 リンク先は、アメリカの創作怪談サイト(雑な説明)である「SCP財団」の記事(の日本語訳)です。
 
 この記事の設定では、任天堂は、人間をポケモンに変身させる不可思議な技術を研究しています。
 そして、株式会社ポケモンの地下には、実験台として誘拐されてきた大勢の子ども達が閉じ込められており、その多くが半ばポケモンに変異していたり、それに失敗して死んだりしている……という。
 
 そして、記事中、メールサーバーから回収された、任天堂の君島達己社長*2のメールの
「氏が人手を欲した時は、差し上げてください。本邦ではこういった部落民を惜しんだりはしないでしょうから」
 という一文から推して、どうやら任天堂被差別部落出身者を組織的に誘拐しており、なおかつ、作中の日本ではそれがあまり問題視されないらしい、という……。
 
 この記事、現時点で、日本支部では評価が-34になってるんですが、一方、本家アメリカでは+68の高評価を獲得しています。*3
scp-wiki.wikidot.com

 
 被差別部落問題、日本人にとっては、今なお尾を引く「生きた」問題なわけですが。
 しかし、海の向こうのアメリカでは、
「先進国ジャパンで、江戸時代に起源を持つ身分制が密かに続いてるんだってさ! エキゾチック!」
 みたいな扱いをうけがちなんだとか。
(日本人がインドのカースト制に抱く感覚に似ているのかも知れない)
 
 日米どちらでも、SCP財団参加者は、ネット民の平均に比べて特にポリコレに親和的でもその逆でもないと思います。
 だから、SCP-5254にマイナス評価を与えるのは、日本では普通の反応でしょうし、逆にアメリカではプラス評価になるのが一般的な反応なのでしょう。
 
 そう考えると、アメリカ人がメディアを海外展開するにあたって、
アメリカ人自身には理解できないポリコレ対策」
 をやることは、日本人にとっては重要だし、同様に、
「日本人には理解できないポリコレ対策」
 が、どこかの誰かにとっては重要である、というのも当然あり得ることなのだろうなあ、と思います。
 
 まあ、SCP財団はそもそも商業メディアではないし、世間一般からすればマイナーだし、ましてやその中の1つの記事なんて気に留める人も稀だったのが日米双方にとって幸いですが。
 
 しかし、商業メディアではそうも言っていられません。
 TRPGルーンクエストの追加資料集「ランド・オブ・ニンジャ」の日本語版が発売中止になったという事例もあります。
 その件について
部落解放同盟朝日新聞が悪い!」
 みたいなこと言う人もいますけど、少なくとも令和の時代……SCP-5254が-34の評価を受ける時代だったら、普通の人でも「これはヤバい」と感じてドン引きしたんじゃないかな、と思います。
(SCP-5254が書かれたのは2022年、ランド・オブ・ニンジャの発売中止は1990年)
 
 少しずつ世の中は良くなっているのでしょう……たぶん。
 

*1:ディズニーじゃないけど20世紀フォックスなので、今はディズニープラスで公開されている。

*2:2018年に退任したのは、実は本件が政府に発覚した結果だった、という設定らしい。

*3:財団では、サイトの質を保つため、メンバーが創作した記事は、評価が「-3」になるとと72時間で削除されることになっているので、-34というのはものすごく低い。(ただしこの削除基準は翻訳記事には適用されない)