大阪市の教育統計と全国学力テストの話。

 なんか、大阪市が、全国学力・学習状況調査の結果を、校長・教員の給与に反映させるって言ってるらしいんですけど……。
 
 どう考えてもそれは不正の温床になると思うんですよ……。
 
 もちろん、あのテストは全国一斉に行われるものですから、問題などが外部に漏れないよう、学校に送られてきた用紙は厳重に梱包されています。
 
 しかし、実施するのは普通の教室で、試験監督は教員です。
 つまり、「教師は子どもに答えを教えたりしないだろう」という性善説的な前提の上に立って調査が行われているわけです。
 
 なんで過去10年ほどそれでやってこられたかというと、「成績を水増ししても教師の得にならない」からですね。
 いやまあ、自分が担当するクラスの成績が悪ければ、もちろん担任としてはプライドは傷つくのですが、成績を水増しすると、子どもたちの学力……というか、どんな分野が弱いのか、といった状況を正しく把握することができなくなり、指導に活かせなくなる、ということがあります。
 あのテスト、やるの一日がかりですし、実施学年以外も「テスト中だから授業も静かに。休み時間も騒がないように」とか、学校全体としてそれなりに負担です。
 不正をすれば、テスト結果が資料として無価値になり、その苦労が完全な徒労になってしまう、ということから、まあ公正にやっているわけです。
 
 しかし。
 テスト結果が校長や担任の給与に直結する、となると、事情はだいぶ変わってしまいます。
 なにしろ問題は事前に学校に届いてるわけですし。
 試験監督はだいたい担任ですし。
 
 大阪市の子どもたちをみんな別な会場に集めて、学校職員以外の誰かに試験監督をやらせれば、試験中の不正は防げるかも知れませんけど……。
 でも、この記事「大阪市長「学力テスト発言」が危険である根拠東洋経済オンライン)」で懸念されてるような、
「音楽や体育をつぶして、国語や算数の授業を増やす」
「過去問を宿題にする」
 といったことまでは防げないわけで……。
 
 というか、大阪市の教育が、民間人校長の登用などでかなりおかしなことになっている、というのはもうかなり前からですが。
 統計を見るだけでもすでにかなり不安なところがあって。
(以降の記事は「政府統計ポータルサイト」による)
 
 文科省による調査を見ると、大阪府では校内暴力の発生件数が1000人あたり8.2件。
 全国平均が4.4件ですから、ほぼ2倍です。
 
 一方で、いじめの認知件数は、全国平均では1000人あたり23.9件であるところ、大阪では19.0件と、2割くらい少ない。
 
 つまり、
「大阪の子どもは、暴力は振るうけどいじめ事件は起こさない(少なくとも認知はされない)」
 という現象が起きている。
平成25年には、大阪のいじめは全国平均の1/5くらいだったんですけど、今ではそれほど露骨ではなくなったようです)
 
 まあ……そういう子どもの特性なのかなー、と考えることもできますけど。
 
 また、長期欠席の統計を見てみましょう。
 全国平均では、長期欠席の児童は全体の2.07%です。
 一方大阪では、これが2.75%。
 
 つまり、大阪では、小中学生が長期欠席になる率が高い。
 
 ところが、大阪ではそのうち「不登校」とされているのは全体の56%弱で、全国平均の64%より低いのです。
 
 じゃあ何が多いのかというと「病欠」。
 全国では「病欠による長期欠席」は20.6%ですが、大阪ではこれが28.4%と高い。
 
 まとめると、
「大阪の子どもは、他所の子どもよりも長期欠席する率が高い。ただし不登校は全国平均より少なく、病気がやたら多い」
 ということになります。
 
 ……いや……これはさあ……。
 なんか現場に圧力かかってるんじゃないの? と思うんですけど。
 
 すでにこういうことが起きている……疑いがあるわけです。
 
 現場に不用意な圧力をかけると統計が改竄されて適切な政策決定ができなくなる、というのは、かつてソ連が歩み、あるいは日本が「働き方改革」で歩みつつある道なわけですが、大阪の教育もそれに追随しようというのかなあ、と感じます。
 
 ……ていうか、そもそも全国学力・学習状況調査って、時の文科省中山成彬氏が
「日教組の強いところは学力が低いのではないかと思ったのでそれを証明しようと思った」
 と言ってて、調査の結果全然関係ないことがわかったわけなので、無駄金使うのはとっととやめたらいいんじゃないかと思うんですけどね……。