「えんとつ町のプペル」を読んで。(感想文)

 
結論:あんまり好きな話ではなかった。
 
 絵は素晴らしかったです。
 特に「えんとつ町」の風景が。
 
 それをどなたが描いたのかというと、メインイラストレーターは六七質、という方なのだそうで、ブログを見てもなるほど美しい。(http://3276771.blog.fc2.com/
(「まあお聞き。」ブログの記事、えんとつ町のプペル」に携わった方々について調べてみたhttp://www.mariyatsu.com/entry/pupel)による)
 
 一方で、あの……あー……いかにも絵本絵本した感じの登場人物は、氏のイラストとはだいぶ違うので、また別の方が関わっているのかな、と。
 
 で、ストーリーなのですけども……。
 
「僕はハッピーエンドが好き」
 ということらしい西野氏ですけれども、この話って「ハッピーエンド」じゃないよなあ……と。
 
 主人公のルビッチにとっては、「父ちゃん」が帰ってきてくれたわけだからハッピーなんじゃないの? ……と言えなくもないですけど、しかし、近所のいじめっ子や町の人々が「ゴミ人間」に冷たい、という現実は何ら変わるところがないのですよね。
 地上に降りれば、また友人や町の人々から白い目で見られる日々が始まるわけで、あんまり問題は解決してない。
 
 ただ、あとがきを見るに、
「えんとつ町は、夢を語れば笑われて、行動すれば叩かれる、現代社会の風刺」
 と、わざわざ太字で書いてあるので、たぶんそういうことなのでしょう。
 
 たぶん本作には、氏の、自身に批判的な人々への思いが反映されていて。
 氏はおそらく、周囲の人の態度が変わるとか、社会を変えられるとか思ってないのではないかなあ……と思いました。
 
 ……本作の登場人物は、「ルビッチ」だの「アントニオ」だのいう名前で外見も白人風。
 なのに、町の看板やらなんやらが「小林建設」「株式会社日本デザイン」「ひばり号」とかやたら日本語出てきて違和感バリバリだったんですが……。
 あれは、「日本社会の風刺」のつもりだからなんでしょうね……。
 
 主人公のルビッチも、煙突掃除人という設定なのに、それらしい場面がほとんどなく、むしろ「学校でいじめられた」とか現代日本の子どもみたいだし。
 
 だったら登場人物も日本人にして「日本のどこか」設定でやれよ、と思わなくもないですが。
 
 あと、すっごい細かい話なんですが、
「4000メートルの崖にかこまれ、そとの世界を知らない町がありました」
 で始まるので、
「4000mの崖で囲まれてるって、盆地なのかな? 台地なのかな? 煙突の煙がこもるということは盆地かな?」
 などと思いつつ読んでいたら主人公の父親は漁師だったという設定が出てきて、街外れには普通に砂浜があった。
 
 どんな地形なんだ。
 
 別に海でなくて、崖を登って外の世界を見ようとして死んだ、とかいう設定でも良かったのでは……。
 
 あと、どぶ川に落としたはずのロケットがあそこから出てくるのもちょっと謎。
 
 ともあれ、個人的には、一度はプペルに冷たくした人々が、プペルとルビッチの父親を見直して、「空を見上げる」ことの意味を思い出す……という希望溢れる話の方が好みだし、子どもたちにもそういう話を読んで欲しいな、と思いました。
 
 ……西野氏がそういうイメージを抱くことができるといいな、と思います。