「意図が正しく伝わっていない」
というのは、ふつうに考えると「発言が誤解されている」という意味ですが、政治家においてはそうでなかったりするようです。
簡単に言うと
「そこは本論じゃない」
という感じ。
本論じゃなくたって事実そういうことを言ったんなら誤解もへったくれもないわけですが、政治家の方には
「メディアは自分の発言の本論だけ……いわばきれいな上澄みだけすくって報道すべきだ」
という甘えがあるように思います。
国会中継とそれをまとめたニュースなど見ていると、そういう甘えを許している心優しいメディアの側にも若干の責任がある気がしますが。
もちろん、話し言葉をそのまま文字に起こして報道されては受け手にとっても理解しづらいですから、ある程度形を整えるのは当然と思います。
しかし、その際に角が立ちそうな部分を削ってマイルドにする作業が行われているような。
例としてはこんな感じです。
外交問題について。架空外務大臣の発言。
架空「A国との関係については、やはり、なるべく穏便にと言いますか、向こうの国民感情にも配慮して対話していかないと、まとまる話もまとまらなくなるわけです。
まあ、どんな国でもそうでしょうが、A国人は、執念深いというと語弊がありますけれども、受けた仕打ちを長いこと忘れないような、そういう性質の方が多いですから、あまり将来に禍根を残さないようにしないといけない
」
……これを報じるにあたって、心優しいメディアは、
「A国との外交関係について、架空外務大臣は、“相手国の国民感情にも配慮して対話していかなければ、まとまる話もまとまらなくなる。将来の両国関係に禍根を残さないよう、慎重に対応する必要がある”と述べました」
……という、穏便な形に整形して報道してくれるのが普通かと思います。
しかし、そういう優しさとか配慮とか持ち合わせるインセンティブのない立場のメディアは、
「架空外務大臣は、“執念深いというと語弊があるが、A国人には受けた仕打ちを長いこと忘れないような性質の人が多い”と述べた」
とか報じてしまったりします。
架空「意図が正しく伝わっていない(≒そこは本論じゃない)!」
報道「ああん? ウチの誤報だって言いてえのかてめえ? 録音してあんぞコラ」
まあ、メディアに揚げ足を取られた、全体の文脈を見るべき、といった意見もあるとは思いますが、政治家という立場上、揚げ足を取られないよう気をつけることもまた大切なこととと思います。
架空「誤解を招く表現でご迷惑をおかけした」
……誤解というか、猪瀬さんの発言の「本論」ってなんなんでしょう。
すくうべき上澄みより、イスラム蔑視的な澱の方がずっと多い気がしますけど。