「6×8は正解でも8×6はバッテン?あるいは算数のガラパゴス性」
http://blogs.itmedia.co.jp/magic/2011/12/6886-2d5b.html
はいはいガラパゴスガラパゴス。
いえ、主張自体には基本的に賛成なんですが。
これも定期的にネットで話題にのぼるよな……。
そろそろ2年生が九九を覚えてテストを受ける時期なので。
このあたりの事情は以前も書きましたが、
・個人的には、「2×5=5×2」で良いと思う。
・学習指導要領には、特に順序に関する記述はない。
・しかし、教科書(文科省検定済み)には、掛け算は「単位あたりの量×何個分」である、と明記してある。(つまり、文章題においては交換法則は適用できない!)
という状況にあります。
(教科書の記述については、
「教科書会社のトップ「東京書籍」に言わせると、「5×3≠3×5」らしい。」
(http://d.hatena.ne.jp/filinion/20101118)にまとめました)
掛け算の「順序」が問題になるのは、文章題の時だけです。
ちなみに今年も私は担任を持ってなくて、あちこちのクラスで主に算数を教える感じです。
算数はつまづく子が多いので、一つのクラスを半分に分けて、担任と私で半分ずつ丁寧に教えるわけです。
で、テストの採点は私がしてます。
……さて。
今年度、教科書が新しくなったんですが、確認したらやっぱり
「5つの皿にりんごが2こずつ乗っています」
の時は、式は「2×5」でなきゃならない、というのが東京書籍の立場みたいです。
掛け算を最初に教える時に、
「おなじものが何こかずつあるときは、“かけざん”というものをつかうよ」
「2こずつ、5つあるときは、“2×5”というしきになるよ」
「“ひとつあたりの数”דなんこぶん”ということだよ」
……という形で導入します。
まあ、最初の理解としてはそれでいいと思うんですが、教科書ではそれをずーっとひきずった挙げ句、それが「規則」になってしまうんです。
そして、わざわざ
「5つのお皿に2こずつ」
みたいな“引っかけ問題”まで出題されるという。
絶対おかしいと思うんだけどな……。
ちなみに、長方形の面積を求める公式(4年)は、
「たて×横」でも「横×たて」でも、どちらでもいいことになってました。
指導書には、順序にこだわる児童がいるので、どちらでもよいことをきちんとおさえるように、というありがたい注意書きまでしてありました。
どの口でそれを言うかな。
さて、2年生のテスト。
九九を学習する時には、まあ、一応教科書に沿って、
「2×5」というのは、「2が5こある」ってことなんだよ、とは繰り返し教えました。
で、単元途中のテスト(というか、2〜5の段までで一つの単元なんです)では、悩んだんですが、順序が「逆」でも、正答扱いにしました。
で、赤ペンで「順番は逆にしてください」という旨のコメントを付ける形に。
めんどくさかった。大勢いたから。
ところが、その次のテスト(6〜9の段および1の段)では、採点前に担任の先生から、
「順番が逆の時は誤答扱いにしてください」
と言われてしまいました。
…………………………仕方ないね。
(でも、式は誤答扱いでも答えは正答にしましたよ?)
納得いかない人は多いでしょうし私も納得いかないんですが……。
義務教育において、教師が
「教科書にはこう書いてあるけど、これは教科書の間違いで、本当はこうなんだよ」
と教えるのが、どの程度認められるのかなあ、と思います。
唯々諾々と検定教科書の記述をなぞるのもアレかとは思いますが、「教科書に載っていない真実」と称するものが大体当人の独り善がりに過ぎないというのもまた事実で……。
ともあれ。
この問題に関して、
「小学校教師にはおかしなのが多い」
という風に結論づける方が多いようなんですが、教師の独善によってそういう変なことが起きているのではなく、むしろ逆なのだよ、と抗弁させてください。
……ちなみに、英語圏では「2×5」は「2 times 5」……「2回の5」なので、日本語と逆になります。
そういう意味で、掛け算の「順序」と称するものは文化に依存するものであって、数学的真理とは無関係だ、というのはまったく冒頭のリンク先の通りです。
……でも、英語圏では、「5このお皿に2個ずつりんごが」を「2×5」と書くと誤答扱いにされることがあるらしいので、日本の算数がガラパゴスなのかどうかはなんとも言えないです。