一つの直線が二本の直線と交わり、同じ側の内角の和が二直角より小さいならば、この二直線を限りなく延長すると、二直角より小さな角のある側で交わる。
(ユークリッドの第五公準)
少し前の算数の授業。
K村「……では、自分で作図した平行線に対して、今度は垂直に交わる線を何本か引いてごらん」
どんな図になるかイメージできない方は、はしごの絵を思い浮かべてください。
K村「では、今引いた垂直線の長さ……つまり、平行線同士の距離を、全部定規で測ってください。何cmになりましたか? 一カ所目は?」
A児「5cm7mm!」
B児「12cm3mm!」
C児「3cm!」
K村「ばらばらだな。じゃあ、二カ所目は?」
A児「5cm7mm!」
B児「12cm3mm!」
C児「3cm!」
K村「なるほどなるほど。三カ所目は?」
(略)
K村「……というわけで、具体的な数字は各自ばらばらだけど、平行線の間の距離は、一カ所目・二カ所目・三カ所目……で全部同じだったわけだね。
つまり、平行線というのは、どこまで伸ばしてもお互いの距離が等しいわけだ。
言い換えると、平行線はどこまで延長しても決して交わることがない……」
D児「えー、交わるよ?」
…………。
K村「……まあ、人間が手で作図した場合、どうしてもちょっとは誤差があるから、どこかで交わるかも知れないけど、正確な、本当の平行線の場合は、お互いに交差しないという……」
D児「だってほら、地球は丸いから……」
K村「…………」
*まめちしき
球面上(地球表面……地面を含む)に描いた三角形の内角の和は、180°よりも大きい。
いや、D児、絶対非ユークリッド幾何学とかリーマン球面とか知りませんよ?
K村「……まっすぐ伸ばすんだから、地球をぐるっと一周して交わったりしないぞ? そのまま宇宙の彼方まで伸ばしていくんだぞ?」
D児「そしたら宇宙の果てまで行ってそこから戻ってくるから……」
「宇宙はドーナツ型」説、復活へ?
いや、D児が言ってるのは、空間が歪曲したり宇宙が三次元トーラスだったりという話でもないと思います……。たぶん。
K村「…………わかった。高校・大学まで行って数学を勉強すると、確かに平行線が交わることもある。
けど、小学校・中学校のレベルでは、“平行線は普通は交わらない”と覚えておいてくれ……」
*まめちしき
我々の周囲の空間はみんな大なり小なり重力で歪んでいるので、ユークリッド幾何学が成り立つ空間の方が実は特殊。
……しかし、まあ。
「正確でないけど便宜的に正しい知識」を学校で教えることはない(そのような場合には必ずそう断ってある)……とか昔書いたことがありますけど。
教科書には、はっきり「平行線は交わらない」って書いてあるなあ……。
正確に説明するのが難しい事柄って、低学年よりむしろ高学年に多いのかも知れないですね……。