温故知新。

3年生の社会科で、昔の暮らしについて学ぶことになっています。
 
電気・ガス以前、炊事や照明には薪や炭が使われていたわけです。
 
担任「というわけで、昔の明かりについて体験してみたいな。でも、あんどんなんて、ある家はないよなあ……」
A児「忍たま乱太郎で見たことある!」
 
本校周辺は古い家も多く、七輪や洗濯板、櫓こたつでさえ現役で使っている家があったのですが、さすがにあんどんはありませんでした。*1
 
担任「まあいいや。要するに菜種油を燃料にすればいいんだ。菜種油というのは平たく言うとサラダ油のことだ」
 
いいのかそれで。
 
家庭科室から小皿とサラダ油を持ち出し、小皿に油を注ぎ、ティッシュで作ったこよりを灯心としてこれに浸します。
 
担任「みんなに問題です。一体これに火を付けるとどのくらい明るいでしょう」
B児「けいこうとうくらい?」
C児「けいこうとうのとなりについてる、黄色い電球くらい?」
担任「はっはっはー。楽しみだねえ。 ……で、暗くないと実験の意味がないわけだが、みんなが学校に来てる時間は明るいんだよな、当然ながら」
D児「体育館に行って、あんまくをしめれば暗くなるよ?」
担任「暗幕閉めても、実はかなり明るいからなあ。体育倉庫はどうかな?」
A児「体育そうこ、おくにまどがついてるよ?」
B児「物置は、中に入って戸をしめると真っ暗になるよ!」
 
試したのか。
 
そんなわけで、クラス全員で物置にこもってサラダ油に火を付けることに。
 
小規模校ならでは。
 
っていうか、この出たとこ勝負っぷりはどんなものか。
 
やってみるとわかりますが、およそロウソクと変わらない程度の明るさになります。
昔、停電の時にやったことがあるのです。
 
周りを半紙で覆うと、明かりが広がって明るくなるのですが(光学的な原理はよくわかりません)、それでも、その明かりで本を読んだりするのは難しそうです。
 
担任「みんなどうかな? この明かりだけでは、物置の隅もよく見えないね。 ためしに持ってきた教科書も読みにくいだろう。 ……あ、そうだ。 この小皿の下、灯りのすぐそばなのに暗いよね。 このことから、『灯台もと暗し』という言葉ができたんだよ」
C児「何それ?」
担任「あー、聞いたことないか。 そうだなあ、例えば、消しゴムがなーい! とかいう時。 机の中にない! 足元にも落ちてない! 床を見回してもない! ランドセルの中もロッカーの中も見たけど見つからない! ……で、試しに筆箱を開けてみたらあったー。 ……みたいなことがあるだろう」
 
「『ありの行列』がなーい!」とかな。
 
担任「そういう時に使います。 身近にあって、かえって気付かない、というような意味だね」
 
それ以来。
 
E児「あれ? 赤えんぴつがなーい!」
F児「とうだいもとくらし!」
担任「……見つかる前に言うな」
 
でも大抵ほんとに「もと暗し」なんだよな。

*1:
実のところ、教科書に言う「昔の暮らし」というのはせいぜい明治ごろのことです。
一方、あんどんというのはロウソク以前の技術ですから、まさに「乱太郎」の時代。
教科書よりはるかにさかのぼっています。
(教科書に即して考えるなら、石油ランプあたりが「昔の照明器具」としては妥当)