食育の現場から。

ニュースから。

3人に1人「おいしくない」 給食人気なし
3人に1人の中学生が給食をおいしくないと感じている――。そんな結果が、東京都小平市の中学生約3500人の答えた、市立学校給食センターのアンケートでわかった。
(中略)
自由記述欄には「うわさに聞いていたよりおいしい」などの意見がある一方、「人の食べ物とは思えない」や「コンビニ弁当の方がいい」といった厳しい意見も寄せられた。
http://mytown.asahi.com/tama/news.php?k_id=14000000612220001

ありゃー。
 
まあ、中学女子が「給食うまいうまい」ってむしゃむしゃ食べてる図もあんまり想像できないですけども。
(男子は話が別)
 
ただ、これを読んで自分の小中学校時代を思い出して「怪しからん!」と思うのもまあちょっと待った。
 
給食って、地域によって内容が違いますよ?
 
私自身は、義務教育時代の給食には満足してましたし、今現在も満足して毎日食べてます。
安くておいしく、バランスもいい。
大人になっても学校給食が食べられるというのは、教員のものすごい特権じゃないかと本気で思うくらいです。
 
もうすぐ冬休みですけど、長期休業って、食事の面では困りますよ。
 
さて、私が現在勤務している学校は給食センター方式ですが、前にいた、北海道の紫矢別町(むらさききゃべつちょう。仮名)の小学校は、自校給食でした。
学校に調理室があり、調理員が勤務していて、給食を作ってくれる方式です。
 
給食センター方式は、コスト面で優れている一方、食器などをトラックが回収に来る時刻が決まっているため、食べ終えねばならない時刻が制限される、給食が冷めてしまう、あるいは逆に、ゼリーなどが凍ったまま配られる、といった問題があります。
自校給食ではこのような難点がなく、温かい給食が食べられる、ということで、「自校給食はおいしい」というのが通説です。
 
実際、勤務している時にも、同僚の先生方は、
「この学校の良い点は、毎日おいしい給食が食べられること」
と言っていました。
 
……え?
私の意見、ですか?
 
…………甘い。
 
……甘かったんです。
 
何もかもが甘かった。
 
サラダのドレッシングが甘い。
カレーが甘い。
チキンライスが甘い。
甘い麻婆豆腐なんて、あの学校で初めて食べました。
 
つまり、たった一人の調理員の方が全てを作るため、その好みに味付けが左右されるわけです。
 
ある日、調理員の方が
「これ、夕飯にでも食べて」
と言って太巻きを作ってくれて。
さすがに寿司は甘くないだろ、と思って食べたら、具にアナゴが入っていて、これまた黒蜜のように甘いタレが。
 
もちろん、自校給食の利点はあります。
前述のようなことの他、例えばアレルギーの子がいると、その子だけアレルゲンを除いて別の鍋で作ってくれる、とか、おかわりの時(給食室までもらいに行くんです!)、学年によって違いをつけてくれるとか「あんたは太りすぎだからこのくらい」とか、本当に「温かい」給食でした。
その学校ではやっていませんでしたが、「しあわせにんじん」みたいな取り組みも、自校給食ならではですよね。*1
 
……でも甘かった。
 
また、一人で全部作っている関係上、おかずの品数が少なくなりがちです。
贅沢言うな、と言われるでしょうが、少ない品数で栄養のバランスを考え、しかもコストを抑えねばならない、というのは大変なことです。
つまり、一つのメニューにいろんな食材を入れなきゃならない。
 
カレーには毎回ブロッコリーが入ってましたし。
ハヤシライスにも。
ていうか、曜日ごとにほぼメニューが固定。
月曜はカレー類の日でした。
 
今週がカレーライスなら来週はハヤシライス。再来週は「マーボー丼」(ただのマーボー豆腐、なんて贅沢なメニューはないわけですよ)。
 
ごはんの上に何かかかっているか混ぜご飯か。
白いご飯を食べた記憶があまりありません。
 
また、一人(養護教諭が手伝うので実質的には二人でしたが……)で作る、というのは他にも問題があって。
調理員の先生は、風邪を引いたくらいでは休ませてもらえない。
 
もちろん、さすがに忌引きとなると話は別で、その時には、急遽、紫矢別の給食センターに連絡して、その数日だけがセンター給食になりました。
 
すると。
 
「……う……っ!」
 
主食はのびきった味噌ラーメンらしきもので、具にピーマンとちくわぶが入っていた……と言えば、その衝撃がおわかりいただけますか。
どうしても給食にラーメンを出すなら、ソフトめんみたいに麺だけ別にすべきなんじゃ……。
 
他の職員が「本校は給食がおいしい」と言っていた理由がわかった瞬間でした。
 
調理員さんがいない数日間、ずっとそんな感じ。
調理員さんが復帰された時には心底うれしかったです。
 
……ところが、他の学校の先生たちと話していると、
「紫矢別は給食がうまくていいよなー……」
という賛辞が。
 
……近隣の市町村は、もっと人間の限界に挑戦したメニューなんだそうです。*2
 
…………。
 
だから、実は私はかなり恵まれた給食体験をした(している)人間なのかも知れません。
さすがにそんな異文化探訪なメニューにはならないにしても、給食センターの主任調理士が替わるとメニューが変わるとか味付けが変わるとかいう話はあります。
 
だから、小平市の中学生たちが
「人の食べ物とは思えない」
……と言った時、一概に「贅沢言うな!」とは叫べないものがあります。
小平市の先生方は、毎日耐えているのかも知れない。
 
まあ、保護者給食会では好評だった……という話ですし、牛乳を残す、というのはまた別の話ですが。
 
……でも、保護者給食って、抜き打ちじゃないし……
というのは、さすがに考えすぎでしょうかね。
 
ともあれ。
給食調理員のみなさん、毎日おいしい給食をありがとうございます。

*1:「しあわせにんじん」についてはこちら。http://www.ichiba-e.funabashi.ed.jp/ninjin.htm

*2:丸のキュウリに味噌つけただけ、とかあるらしい。……カッパのえさですか?