先日、職員連絡網で連絡が回ってきました。
「本日、教育委員会から通知がありまして、本校のプール、使用禁止になりました」
「ええっ」
「プールの底の金網が、ボルト止めしてないからだって」
「じゃあ、工事するまで使用禁止ですか」
「そうだねえ。再開時期未定だってさ」
ってことは、プール監視員で学校に行かなくていいわけだ。
休みが一日増えた。わーい。(おい)
そんなわけで、夏真っ盛りだというのにプールが中止。
で、翌日教頭先生から電話。
「K村先生、プールの注排水のやりかたってわかる?」
「いえ」
「それが、木曜か金曜に業者が来て、金網のボルト止めをしてくれるんだって。で、それに備えて、当日朝から排水して、工事が終わったらまた注水しなきゃならないのよ」*1
「ははあ」
「ところが、その日は体育主任が学校来られないらしいわけ」
「なるほど」
「だから、K村先生明日学校に来て、やり方教わってくれない?」
「はい……」
とほほ。
むしろ休みが減った。
まあ……なんですね。
本校のプールの排水口の構造は、下の記事の図が一番適切だと思います。
http://www.asahi.com/national/update/0807/TKY200608070410.html
1996年に文部省(当時)が定めたプールの安全基準では、金網をボルト止めした上、その奥に吸い込み防止金具を設置して、もちろんそれも固定しないとならないのだとか。
本校の場合、金網のボルト止めが欠けていたわけです。
今回の対応は迅速といえば迅速ですが、基準があるにも関わらず10年にわたり整備を怠ってきた本市の教育委員会にも、その辺の細かい基準を全然知らなかった学校関係者にも非があるでしょう。
もちろん、どこの学校でもそうでしょうが、子どもたちが入っている間に排水する、ということはあり得ませんし、金網もえらく重いので、蓋が落ちて子どもが吸い込まれる、と言った事故は普通は起きるものではなく、幸いにして事故はこれまでありませんでした。
とは言え、学校のプール使用規則では、金網を触ったりしないこと、とされていましたし、当然、子どもたちにも、金網には気をつけるように、という指導をしてきたわけですが……。
「……と、これが注水用のバルブだね」
「なるほど」
「注意することは、バルブを全開にしないこと。1/3〜1/5くらいの量にして下さい」
「? なんでですか?」
「このバルブはプール専用の水源じゃなくて、地域の水道なんだわ。鱶沢浄水場の。あそこは緩速濾過方式*2でさ、ここのバルブ開けっ放しにすると、地域の水道使用量が一気に増えてまずいことになるらしいんだ」
「ここら一帯が断水ですか」
「そう。今、お盆だから洒落になんないよ」
田舎の小さな水道設備だしなあ。
水道の給水人口が大きい、大都市圏にある学校ならば、プールの一つや二つ負担にならない……のだろうか。
ちょっと考え直して計算してみました。*3
その結果、一般に、地域の小学校がプールに一日で水を入れた場合、その地域の水道使用量がその日だけ通常のおよそ2.06倍に増大するという計算になりました。
これは大変。
実際には地域によりけりで、学校の規模が小さかったり、人口に占める子どもの数が多かったりすると影響はもっと大きくなりますが、平均としてはこんな感じだと思います。(逆に、大規模校があって、しかも全人口に占める学齢児童の割合が小さい地域では影響が少ない)
特にここいらはお盆になると人口が増える土地だし、切実です。
まあ、つまり。
学校は、プールに水を入れるのにも地域への配慮が必要だと。
プール安全指導
「プールの金網には触らないこと」に関する指導の実践事例
T「……そして、それ以来、夜にプールに入ると、金網の下からじいっとこちらを見つめる目が!」
C「きゃー!」
T「金網の間からざわざわと伸びてきた髪の毛が、上で泳いでいる子どもの足にからみついて……」
C「きゃあー!」
T「……というわけで、プールに入った時は、あの金網にさわったり、上に立ったりしないようにね」
C「はーい……」
C「あーこわかった」
しかし、こうして実際に子どもの死者が出てしまうと、来年からこんな話はできませんね。不謹慎で。
*1:プールは、使用中止になってすぐ、ほとんど排水してあります。
ただ、完全に乾いた状態にしておくと塗料がひびわれてしまうのだとかで、底に10cm程度だけ水を張ってあるのです。
だから、工事の際にはそれを抜いて、工事終了が終了したらまた10cmくらい水を張るわけですね。
*2:薬品や機械で濾過する急速濾過方式に対して、細かな砂と微生物の作用で水を濾過する方式。
コストもかからずおいしい水ができるが、浄水場の敷地面積あたりの給水人口が少ない。(ただし、機械設備が不要のため、規模の小さい浄水場では逆の場合もある)
*3:プールのサイズを25m×10m×1.25m、人間が使用する水道水が一人当たり3.61立方メートル/月として計算すると、学校のプールに一日で水を入れた場合、その地域の水道設備に、その日だけ約2597人の人口増加があったのと同じだけの負担を強いることになります。
一方、日本の6〜11歳児の人口は、総人口の6.3%です。
そして平成17年の段階で、小学校一校当たりの児童数は平均154人。
すると、小学校一校(児童154人)につき、校区住民の総人口はおよそ2444人であるということができます。
2444人の住民が住む地域に対して学校のプールが一つあるわけで、このプールに一日で注水すると、その日だけ地域の人口が5011人に増大したのと同じ負担になります。
……子どもって少ないんだな。
小学校にいると、世の中の20%くらいは小学生で構成されているような気がしてしまうんですが。